2次の課題曲は以下の(a)(b)(c)を15-20分にまとめて演奏するもの(繰り返しは自由)。
一昨年は(c)がLisztのみだったものが、今年はRachmaninov, Scriabinからでもよくなったのが変わったところ。 Liszt好きの私としては少し寂しいが、例年Lisztはイマイチの演奏が多いので(特に女性)、欲求不満が溜まる演奏を無理矢理聴かされるよりは選択肢を増やして得意な曲で勝負してもらうのはよいのかも。
ちなみに1次の課題曲はSchubertのソナタ第14番、さすらい人幻想曲、Schumannのソナタ第2,3番、Chopinのソナタ第2番、Brahmsのソナタ第2,3番の(いずれも第1楽章のみ)中から2曲を用意して抽選で1曲弾くもの。 今年も1次は1日(初日)だけ聴きにいった。 これだとChopinを弾く人が多いかなと思ったら、案の定最初のグループは10人中6人がChopinで、これはどうなることかと(課題曲の設定ミス?)思ったが、それ以降は案外バラけていた。 (それでもBrahmsの2番は2人だけ。)
1次の1日目を聴いたところでは、特に気に入った人はいなかったが、田中竜也君、草冬香さん、前田拓郎君、羽賀美歩さん、竹内真紀さん、下地亜衣さん(演奏順)あたりがまずまずと思った。(田中君は実力はまだ不明だが個性的な風貌と解釈が印象に残った…結局落ちてしまったようだが。) もっともSchmannの2曲などは私には(何度聴いても)良さがよくわからない曲なので(1番のソナタは好きなんだけど…)、それらを弾いた人のことははっきり言えないが。 Brahmsのソナタもあまりピンとこない曲だと思っていたが、でも羽賀さんの弾いた2番はこの曲を見直させてくれるような演奏であった。 個人的にはSchubertのソナタ第15,16,19番あたり(いずれも私の好きな曲)を加えてAll Schubertの課題曲にしてくれれば面白いと思ったが、それだと難易度的に問題があるかな。 (ちなみに1次初日で通った人9人中4人がSchubertの14番で、しかもこの曲を弾いた人が全員通っている。この曲に対しての審査が甘かったようである。)
以下、例によって2次予選2日目の全演奏の感想です(演奏順。番号は演奏者番号)。 ちなみに今回は曲目リストを配っていなかった(またしてもサービスの低下!)ので、もしかしたら曲を間違えているかもしれません(→3日目にリストが配られたのでチェック済み)。
73.
J.S.Bach: 平均律II-3 Rachmaninov: Op.39-1 Chopin: Op.25-11 Debussy: 組み合わされたアルペジオのための、オクターヴのためのBachのプレリュードは響きがやや多めでもう少しclarityが欲しい。表情もやや単調で、もう少し工夫があってもよい。 フーガももう少し変化があってもよいか。クライマックスのアルトでの主題拡大形が失敗気味。ただ全体的にはまずまず堅実である。 Rachmaninovは女性にしてはまずまず。さらにスケール感、メリハリがあるとよい。指もよく動いている。 Chopinもまずまず。やはりもう少しメリハリというかダイナミックさがあるとよいが、指回りはしっかりしている。 Debussyのアルペジオは悪くないがもう少し軽快感があってもよいかな。彼女の演奏は全体的に多少動きが重いところがみられる。 オクターヴのためにもまさにお手本通りの演奏。ただ中間部のスタカートのところはもっと軽い音が欲しい。その後のクライマックスでは少しミス。
80.
J.S.Bach: 平均律II-5 Chopin: Op.25-10 Debussy: 西風のみたもの Rachmaninov: Op.39-9Bachのプレリュードは溌剌として指回りも安定。フーガもすっきりしているが感じが出ている。全体的にBachは73番の人より印象がよい。 Chopinもなかなかのもの。スピードがあって音もしっかりしている。彼はなかなかの実力者である。 ただ中間部は音が硬い。もっと歌わないと。内声の出し方もいかにも機械的。 Debussyでは前半の右手高音部の速いパッセージをもっと輝かしく出したい。和音の出し方もやや単調か。でも全体的にはキレがあって悪くない。 Rachmaninovはいかにも力が入っている。スピード感もあり、最後の追い込みもなかなかのもの。
81.
J.S.Bach: 平均律II-5 Chopin: Op.10-8 Rachmaninov: Op.39-1 Debussy: 喜びの島最初のおじぎのときにニコっとするのがよい。 Bachのプレリュードは80番の人より落ち着いたテンポ。音がやや軽いか。 フーガはやや淡々としすぎている。主題の入りはもう少し強調してもよいのでは(前に一瞬タメを作るとか)。 あまりドラマ性が感じられなかった。80番の彼の方がよい印象である。 Chopinは最初の方でやや痛いミス。出来も少し平凡か。 Rachmaninovも音的な魅力が薄い。軽いというか、表面的というか、浅いというか、特に中〜高音部がキンキンした感じがある。 演奏自体はそれほど悪くないはずなのだが…。 Debussyは最初のトリルが少し甘い。高音パッセージでやはり音がキンキンしている(叩く感じ)。これも指回りは悪くないんだけど。
83.
J.S.Bach: 平均律I-18 Chopin: Op.25-4 Debussy: アナカプリの丘、沈める寺 Rachmaninov: Op.39-6Bachはよく言えばストレートで健康的だが、あまりデリカシーがない。 フーガはゆったりしたテンポだが主題にもう少し表情が欲しい(特に主題後半の、よくスタカートで弾かれる部分)。 ぶっきら棒でセンスをあまり感じない。このBachは心証がよくなかった。 Chopinもフレーズの切れ目で不自然なところがある。 Debussyはあまり聴き込んだ曲でないのではっきり言えないが、2曲目ではクライマックス部分で音が汚いのが気になった。 Rachmaninovも最初の赤頭巾ちゃんの部分の音がでかすぎる。もっと繊細さが欲しい(狼部分との対比が少ない)。 再現部でもその部分のメカニックやや不安定だった。
91.
J.S.Bach: 平均律II-8 Chopin: Op.25-10 Liszt: 吹雪 Ravel: クープランの墓より、トッカータ彼女もニコっとしたおじぎが好印象。 Bachは割りとストレートだが表情もついていて悪くない。 フーガは表情をつけようとしているが、手の内が見えすぎるというか表現が幼い感じがする。音のニュアンス、陰影が欲しいところ。 うまく盛り上げているが、多少「作った」感がある。 Chopinは彼女の体格からは想像できない迫力のある音。80番の彼にも劣らない感じである。 中間部も80番よりこなれている。ちょっと優等生的であるが。 Lisztは出だしから慎重でミスもほとんどない。これといった特徴はないが、安定度が高い。 さすがにチャイコンで1次を通過しただけのことはある。 Ravelははじけるように始まり、かなりのスピードで、上手い。同音連打が安定している。彼女の得意曲か。 音コンのトッカータとしては相当のレベルである。 これで2次通過を確実にしたのではないかな。 ただBachで特に感じたが、語り口の上手さというか成熟したものを身につけるのが課題かもしれない。
95.
J.S.Bach: 平均律I-4 Chopin: Op.25-11 Rachmaninov: Op.39-1 Debussy: 喜びの島Bachのプレリュードはしっとりとよく歌っている。トリルの入れ方もセンスがある。最初を少し聴いただけでこれはやりそう。 今日これまで聴いたBachの中では一番いいかも。なんと言っても呼吸がいい。 フーガも思わず聴き入った。と思ったら途中で暗譜が飛んで回復できず、かなりロールバックしてしまった。 これは痛いが大目に見て欲しいところ。 Chopinは最初の73番の人と違って、勢いはあるが右手が少し弱いか(clarityを欠く)。 かなりの音楽的センスの持ち主なんだろうけど、そのセンスに比べるとメカニックが少し弱いのかも。 Rachmaninovはまずまず。ただ例によって細かいパッセージはもう少し明確に出したい(特に中間部)。 Debussyも出だしのトリルから81番よりよさそう。語り口も上手く、メカニックの弱さもまったく感じさせない。 強弱のつけ方がツボを抑えており、リズム感もある。
105.
J.S.Bach: 平均律I-17 Chopin: Op.10-4 Scriabin: Op.42-5 Debussy: ピアノのためにより、サラバンド、トッカータBachのプレリュードは軽快で指回りも安定。これもかなりやりそう。 フーガも速めのテンポで、すっきりしているが必要な表情は付いている。(ただ息を吸う音が大きくてそれが少し気になった。) Chopinも速めのテンポでまずまず。少しミスはあったが、技術的なポテンシャルの高さを感じる。キビキビとしているのがよい。 Scriabinは前半は少し抑え気味で(個人的にはもう少しスケール大きくしてもいいかなと思ったが)、後半ではかなり盛り上げていた。 ただ第2主題部分で、合の手のように入る左手の高音部分をもって出して欲しかった(個人的趣味)。 ともあれなかなかの出来である。 Debussyももちろん悪くない。特にトッカータはスピード感があり、タッチにも変化がある。
106.
J.S.Bach: 平均律II-15 Chopin: Op.25-11 Rachmaninov: Op.39-6 Debussy: 花火Bachのプレリュードは可もなく不可もなくといったところ。 平均律の中でも簡単な曲と言われていることを思うと、もう少し聴かせる工夫があってもよいかと思う(あるいはもっと溌剌に弾くとか)。しかも繰り返しをしているのに変化がない。 フーガもどこか機械的で表情が乏しい。 Chopinはテンポがもっさりしている。リズムがイマイチというか、動きがない。 こういう無表情さが彼の芸風なのかもしれないが…でも曲には合っていない。 Rachmaninovも最初の赤頭巾ちゃんの部分が多少不安定(音抜けまではしていないが)。 この曲ももうひとつ乗り切れてない感じ。 Debussyは悪くないと思うが、これはそれほど聴き込んだ曲ではないからかも。
108.
J.S.Bach: トッカータBWV916 Rachmaninov: Op.39-9 Chopin: Op.25-12 Debussy: 西風のみたものBachは最初の方でいきなり中ミス。タッチがやや不安定で音色も単調。 中間の緩徐部分も硬く、歌がない。ポツポツと素人っぽい弾き方である。 フーガも(私に言わせれば)譜読みが終わった段階のような弾き方。ただ楽譜通りに弾いている感じである。表情がない。 Rachmaninovもまだ荒削りの段階。ここから磨いていかないと。メカニックもまだまだ向上の余地を残す。 Chopinはまずまず。スピード感があった。 Debussyも悪くない。メリハリがある。
112.
J.S.Bach: 平均律I-16 Rachmaninov: Op.39-4 Chopin: Op.10-1 Ravel: 道化師の朝の歌Bachのプレリュードはトリルがポイントとなる曲だが、それがもうひとつ安定していない。また初めから同じ刻みで入れているが、ゆっくり始めてだんだん細かくしていく方が玄人っぽくて絶対よいと思うのだが…(趣味の問題だから仕方ないか)。 フーガももうひとつ硬い。自信に満ちていないというか、やや不安定なところがある。 Rachmaninovももうひとつ。余裕を感じない。 Chopinも右手の1音1音をもっとくっきりさせたい。少し指が流れてしまっている。途中で心証の悪いミスもあった。 Ravelも平凡な出来と言わざるをえない。細かいパッセージなどところどころ音がはっきり出ていない。 全体的に少し無理をしている感じがある(技術的に)。頑張っているのはよくわかるのだが…。
115.
J.S.Bach: 平均律I-18 Chopin: Op.25-10 Debussy: デルフォイの舞姫、西風のみたもの Rachmaninov: Op.39-9彼は確か数年前にも3次まで進んでいる。 Bachのプレリュードは速めのテンポ。少しペダルが多めか。でもよくこなれている感じ。 フーガもやはりペダルのせいか響きが多めで多少音が混濁するのが気になる。 解釈的にすっきりしているのはよいが、思い入れがなさすぎる気がしないでもない。 Chopinはそういえば数年前に出たときもはやり弾いた曲(しかもいきなり)。 そのときと比べると多少落ち着いた感じがする(気のせい?)。 中間部はやはりもう一工夫欲しいか。この曲はここをいかに聴かせるかが難しい。 Debussyは最初の右手の高速パッセージが弱い。細部の完成度などの点でいまひとつの感がある。 Rachmaninovも細かいところがまだ荒い。細部までもっと大切(丁寧)にしたい。 まだ70%の段階で、これから磨いていかないと。 勢いはあるがやや勢い任せのところもある。
122.
J.S.Bach: 平均律I-23 Chopin: Op.25-11 Liszt: 吹雪 Ravel: スカルボ椅子に座ったらすぐに弾き出す。Bachのプレリュードは、音がいい。優しく、硬さがまったくない。かなりの実力者か? フーガはトリルの入れ方が少しくどいかなと思ったが、こと音色の変化、コントロールという点では他のどの人よりも上である。 Chopinは95番の人と同様、右手の1音1音をもう少しくっきりしたい。少し怪しく聴こえる感じがある。 メカニックが少し弱いのかも?と思わせる。 Lisztはいかにも手馴れている感じ。眼をつぶっても弾ける、みたいな雰囲気が漂っている(終盤でややミスが重なったのは惜しかったが)。アゴーギクというか呼吸がいい。95番の人と同じタイプかもしれない。(どう弾きたいか、弾くべきか、自分の中で曲のイメージがはっきりできている。あとは技術がそれについていくかだけの問題。) Ravelもまずまず。彼女のしたい音楽がよくわかる。 ただ意志が先行して、表現が少し荒くなってしまう傾向もある。 でも意図が明確で聴いていて楽しめた。
126.
J.S.Bach: 平均律II-14 Chopin: Op.10-10 Debussy: オンディーヌ、花火 Rachmaninov: Op.39-1Bachのプレリュードはストレート路線。残念ながら途中で一度暗譜が飛んでしまった。 フーガはトリルにもうひとつセンスがないかな。音がぶっきらぼうで、もう少し音色とかをコントロールしたい。 一応曲想にあわせて表情もつけているようだが、どこか機械的である。安定感に欠ける感じもあり、また途中で止まってしまわないか少しドキドキした。 Chopinは少しミスがあったが無難といったところ。正直あまり印象に残らなかった。 Debussyの花火は細かい動きの滑らかさがもうひとつ。 Rachmaninovもそれほど悪くないが、今日この曲を聴きすぎたせいかもうひとつ印象が薄い。
128.
J.S.Bach: トッカータBWV916 Chopin: Op.10-4 Ravel: オンディーヌ Liszt: 鬼火Bachは同じ曲を弾いた108番の人よりずっと生き生きしている。これはやりそうかも。 緩徐部分もすっきりしているが感じは出ている。(でも個人的にはもっとたっぷり歌ってもよいと思う。) フーガもかなり速いテンポでとてもよかったのだが…途中で止まって、何度も弾き直してしまった(残念!)。 Chopinもよい出来。Bachの失敗の影響はあまりないようである。 スケールはそれほど大きくないが、細かいパッセージに安定感がある。音もきれい。 Ravelもロマンチックというよりどこか古典的で抑制的。でも繊細さがある。音の粒立ちがよい。 鬼火も音コンとしてはかなりよい出来。(もちろん完璧とはいかないが。)軽やかなところが彼女の特質に合っているようである。 鬼火がこの出来ならBachのミスを挽回したかな?と思ったら最後の方の左手の半音階で少しミスってしまった。
129.
J.S.Bach: 平均律II-5 Chopin: Op.10-8 Scriabin: Op.8-2 Ravel: スカルボBachのプレリュードは元気溌剌。80番の彼と同じくらいのテンポかさらに速いかも。ペダルもやや多めだが過剰というほどではない。 メリハリがあって、聴いていて思わず体が動く感じである。 フーガは一転、優しめの音。表情がよくついていて曲の良さを引き出している。ただ最後が少し危なかった。 Chopinは最初のトリルが少し短かすぎたかも。でもテンポが速く、指回りがよいことがよくわかる。ただ左手はもう少しはっきり歌った方がさらによいかな。 Scriabinも悪くない。音が明晰である。 Ravelも最初の同音連打が上手い。メカニックは122番の人より安定している。 ただ「どう、すごいでしょ?」みたいなものが感じられて、曲に対する思いは122番の人の方がよく伝わってくるかも。 よく言えばクールである。
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というわけで2次の第2日を聴き終わった。 今日聴いてまずまずというか好感を持ったのは
80. 森田義史 91. 坂本真由美 95. 萬谷衣里 105. 碓井俊樹 122. 泊真美子 128. 阿部真理 129. 大住理沙である(演奏順、敬称略)。 人数から言ってこの人たち全員が3次に進めるとは思えないが、3次はこの人たちの中から出ればとりあえず不満はない。
全体的感想としては、いつものことだがやはりBachの出来が全体の印象を決めてしまう。 それにしてもLisztを弾く人が3人しかいないとは、Lisztも嫌われたものである(笑)。