体操部物語  その4

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「こ、これを着るんですか……?」
 体操着を汚してしまった私に、新井さんは替えのウェアとしてレオタードを私に差し出したの……。
「そう」
 とそっけなく言う新井さん。
 う、うっそー!
「これで外で練習するんですかあ?」
「そうよ」
 とこれまた、そっけない返事が返ってきた。
 ま、まじでー!!
 そんなあ……
 すっーごく恥ずかしそう……
 青と白の黒の生地が斜めにストライプを構成したレオタード。ナイロン地の生地は、部室の電灯の明かりを浴びて、うっすらと反射し光沢を発していた……。
「学園祭とか体育祭での発表会で使うやつなのよ」
「はい……」
「あと下には、コレ着ていいから!」
 と新井さんはレオタードの下に着るワンピース状になったアンダーウェアを渡してくれた。
「はい」
 私はジャージを脱いで裸になった。新井さんにそのジャージを返した。
「どうもありがとうございました!」
 と裸のままで言う私。
 ブルマ姿だった新井さんは、そのジャージを上から着る。
「じゃあ、私は土手の方にいってるからね!」
「はい、どうもありがとうございます!」
 新井さんは部室を出ていった。
 親切な人だと思ったのにぃ、こんなの着せるなんてぇ!

 私はレオタードなんて着たことないの。だって体操なんてはじめてだし。
 体操ではレオタードを着るのは承知で体操部に入ったわ。
 レオタードなんて恥ずかしい恰好だけど、でもその恥ずかしい衣装を着てみてみたい……なんても思ってた。
 しかしこんなに早く着る時が来るとは……、心の準備が必要だよう!
 ドキドキしてきた……
 心臓の鼓動がとまらなかった。
 ドキッドキッ……
生まれたままの姿だったので、まずとりあえず下に着るワンピース状の下着をつけることにした。ちょうど水着のような形で生地が薄く、肩紐がもっと細いもの。
 下着を足からはいていき、少しずつ腰まで上げていく。
 あーん、まだシャワー上がったばかりで体が乾ききってないから、なかなか着れないよう……
 やっと腰まではまったら、今度は下着を胸の方へと上げていきます。
 最後に肩紐を両腕から通して完成。
 これで生まれたままの姿から、なんとかマシな恰好なったわね。

 はあ……
 さて、これからなのよね。
 ドキドキドキ。
 今から生まれて初めて、レオタードを着るのよ……
 あの恥ずかしい、でも憧れていたレオタード……
 ドキンドキンドキン。
 心臓の鼓動はもっと早く強くなった。
 そして私はうっすらと光沢を放っているレオタードを手にした。
 ドキドキドキ、手にしたときの心臓の鼓動は最高潮。
 レオタードや水着特有のこのナイロン地の手触り。
 うわ、どうしよっ! ついにこの瞬間がきたわ……
 よし、着るよ!
 私は両手でレオタードの丸首の部分を持ち、右足を少しずつあげた。
 右足を少しずつ降ろしていき……
 少しずつ少しずつ、右足をレオタードの中へと通していく。
 それから右足をレオタードの右足口に通した。
 次に左足。同じように左足を上げてから、レオタードの中へと少しずつ少しずつ左足を下ろしていく。
 左足もレオタードの首口から通していき、左足口から足を通す。
 ああ、緊張するよ……!
 ついにここまできたわ。
 ふぅ……両足をレオタードに通し終えてから一呼吸。
 ああん、もう……ドキドキする!
 レオタードを少しずつ上へ上へとあげていき、腰の部分をフィットさせた。
 私のウェストにピタッとフィットしたレオタードは淡い光沢を放つ。
 そしたら次に、さらにさらにレオタードを上へとあげていき、胸の部分までフィットさせた。まるで第二の皮膚になったように身体に密着するレオタード……。
 あ、ここまで来たよ! もうちょっと!
 ドキドキドキドキ……。
 さてと、次はいよいよ腕を通すよ。

 なんかムズカシそうだなあ。
 右手をレオタードの右袖の方に入れようとする。だけど私シャワーから出たばかりで、まだちょっと肌が湿っぽいから大変!
 よいしょ、よいしょ。ちょっとずつレオタードの右袖の中に腕をはめていきます。私の腕にもレオタードが密着していき、私の第二の肌が光沢を放っています。
 なんだか少しずつ、別の肌に侵食されているような気分……
 もう少しでレオタードの袖口から手が出せるところまできたんだけど……私の肩がなかなかレオタードの中へはまってくれない……
 先に袖口から手だけを出してしまって、そこからエイッ! がんばって肩をレオタードの袖の中へとピタリとはめました!
 片腕完了!!  あともうちょっとで、私もいよいよレオタード姿よ!
 左腕もはじめ! 少しずつ腕を袖へと通していきます。
 そして手を出してから肩をエイッとはめて!

 つ、ついに……
 あの、恥ずかしくて、そしてあこがれていた……
 レ、レオタードを……
 レオタードを着ちゃった……!
 す、すごいハズカシイ!
 そして気持ちいい!!
 私はアゴを引いて、レオタード姿になった私の身体を眺めた。
 ちょっと腕の部分がまだ、きちんとフィットしてなくてダブついてるとこがあったので、ひっぱってフィットさせた。
 私の身体は光沢を放っている。手にとって見たときよりも、着た後の肩が繊維が伸びるからもっと光沢が美しいの! このブルーの美しさ……
 青・白・黒の繊維がストライプになったレオタード。そしてそれを着ている私……
 これ私なんだわ……なんとキレイなんだろう……
 部室においてある大きな姿見の鏡に、自分の身体を写してみたわ。
 うわぁ、本当に……本当に……間違いなくレオタード着てるよ!
 これが私なんだ!
 レオタード着てるんだよ!
 すっごい恥ずかしくて気持ちいい!
 もうどうしよう……!

 それから私は、両手で私の第二の皮膚となったレオタードを触りまくった。
 なんて心地よい肌触りなのかしら……
 そしてこのフィット感がたまらない!
 ブルマとは比較にならないほど、身体のラインが思いっきり出ちゃう! 腰から上の身体のラインの全てが! 薄い布一枚で仕切られたほとんど裸と同じかっこだよ。
 身体にピタッと密着していて、私のボディラインをくっきりと出してしまう……
 だいたい何で上下がつながったワンピースなのかしら? なんか上下つなぎの服ってすごい恥ずかしい感じがする……なんか身体が包まれているって感じなの……
 それから何で袖があるのかしら? 袖があるからまた恥ずかしいよね。袖がなければ水着と同じだからちょっと慣れてるんだけど。袖がある分、余計に身体が包まれているって感じがするのね……
 はじめてレオタード見たときに、これどうやって着るのかしら?って思ったもの。身体が光沢のある生地で全身を覆われてしまうレオタードっていう衣装。着てみたら何てことない、ただ単に下から履いていけばいいんだけどね。でも子供心には、なんだか包まれてしまうみたいで不思議な感じがしたものだわ。
 この光沢……これがまた恥ずかしさを膨らませるよ。
 誰なんだろ……こんな恥ずかしさ衣装を考えたの! エライ!
 そしてこんな恥ずかしさ衣装を着ている私って、いったいなんなんだろ?
 こんな恰好してるのって、本当に私なんだよね?
 こんな恥ずかしいレオタードを着なくちゃいけない体操部って……最高です。
 なんで体操だけこんなカッコウしなきゃいけないんだろうね。
 ああ、もう着るだけで、なんか感じてきたわ……変な感じ……
 どうしよう、この衝動が抑えられないよ!
 ずっとレオタードを着ていたい!  

 私はしばらくの間、私は初めて着たレオタードの恥ずかしさに堪能していた。
 でも練習に戻らなきゃ……
 そう! このかっこで練習に戻んなきゃいけないのよ!!
 すっごい恥ずかしい!!
 ど……どうしよ! あまりの恥ずかしさで緊張して、私の心が破裂しそうなの!
 レオタード着るだけでも、こんなに恥ずかしくてドキドキしてるのに!
 でも、行かなきゃ……
 そして私は部室のドアを開けた。  


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