体操部物語  その6

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「かわいー!!」
 私のレオタード姿を見て、みんなが言うの。
 す、すごい恥ずかしい……
 やっぱりこうなったか。
 またまた赤面してしまった。
「はじめて着るんで、とっても恥ずかしいです……」
「とっても似合ってるよ!」
 と1年生の岩井さゆりちゃんが言ってくれた。彼女も結構体操歴は長い女の子。
 ほんと、私は着るのも初めてで、着るだけでも恥ずかしいのに……
 知り合いにそんな姿を見られるのはもっと恥ずかしいよ!!
 でもこの見られる恥ずかしさがまたちょっと快感を感じてしまうんだけど。
 見られるのがイヤ! でも見られることが快感……
 レオタード姿の私は、これからやっと部の練習に合流することになる。

 どうも練習は、バレーボールでのゲームをしてるみたい。みんな輪になってバレーボールの打ち合い。
 たまにはこういうのもいいよね!
 バレーボールの輪は3年生組と、1・2年生組に分かれてた。
 私は一人レオタード姿で、1・2年生組の輪に加わってバレーボールをはじめた。
 1年生はみんな体操服とブルマー姿なのに、私だけはレオタード!
 やっぱりまだまだ恥ずかしい!
 河原の緑の芝生の上は、まだ露で締めっていて素足に心地よい感触。
 裸足でもこれは気持ちいいよ。
 ボールが飛んできても、それよりも常に私の注意は、チラチラと目に入ってくる私の身体から放っている光沢……。
 もう気になって気になって仕方がない。
 それが目に入るたびに、何度も何度も「私がほんとーにレオタード姿である」ことを認識してしまい、恥ずかしくて仕方がないの!!
 で私の後ろから、また「ファイト、ファイト!!」というランニング中の他の部の部員の声が聞こえるたびに、後ろからの見えない視線を感じてしまう。
 絶対、見られてる……
 男の子に見られるのはもちろんのこと、女の子に見られるのもなんか恥ずかしいよ。
 クラスメイトがいたらどうしよー。

 30分ぐらいバレーボールで楽しんでいるうちに、私も夢中になってきてレオタード着ている恥ずかしさも次第に忘れてきてきた。
 まあ恥ずかしいんだけど、バレーボールしている楽しさがそれを忘れさせてくれたの。
 そうこうしているうちに、もう午後5時30分。
 もうすぐ練習は終り!
 やっと今日も終りね。早く帰ってテレビ!
「では今日はこれまで。あとは整理体操!」
 という声が聞こえた。
 やった!
 心の中で喜んでいると
「室井さん!」
 といきなり3年生の早川さんに声をかけられた。
「はい。なんでしょうか?」
「室井さん、土手のランニングまだ途中じゃなかった?」
 は! そういえば私は2周目で転んでしまって……
 それから着替えたまんま……
「は、はい……。2周目で転んでしまったので……」
「じゃあ、最後にもう1周してきて! やっぱり練習メニューはきちんとこなさないとね!」
 え!!
 ちょっと!
 もしかしてこのレオタード姿のままで、学校外の土手ランニングをするんですかぁ!!
 1周2Kmの人目もあろうこの土手を、こんな恥ずかしいカッコで走るの!!
 は、早川さん、ひどい!
 ど、どうしよ!
 しかも一人で走るんでしょ!?
「こ、このカッコで土手走るんですか!?」
「もちろん! さ、早くいってらっしゃい! 室井さんが帰ってこないと練習おわんないよ」
 と笑いながら言う早川さん。
「早くう! 早くいってよー!」
 2、3年生の何人かが口を揃えて笑いながらいう。
「は、はい!」
 ひ、ヒドイよー!!

 言われるまま、私は河原の芝生から土手の上へと坂をかけのぼっていく。
 マ、マジですか〜!?
 そして土手の上のロードワークを再開。
 たった一人きりで、また土手を走り出しました。学校から向かって左手の方向に土手を走っていき、橋までいったらそれを渡って対岸へ。今度は逆にこちら側まで走っていき学校の向かい側から右手の方向へさらに走っていく。そして橋までいったらこちら側の岸まで戻り学校へと戻っていく。そういうコース。
 うう、芝生の上と違い土の地面なので、ホコリっぽいよー。
 なんで外でまで裸足で練習しなきゃならないのよ〜。だいたい何で同じ体操なのに女の子だけ裸足なのよ。男の子はシューズはいてるのにね。なんか不公平だよね。
 やっぱり足の裏が汚れていくのが、すごい気になっちゃう。
 土手の上から川の水面を見ると、夕日が水面で反射されて赤く揺れていてとてもキレイ。
 そして……
 夕日に照らされて、私の身体が赤く照らされて光沢を放つ……
 そうなのよ。レオタード姿で私、ランニングしてんの!
 青・白・黒のストライプのレオタード。夕日に照らされて美しく光沢を放っているの。特に白い生地が美しく赤く照らされていてキレイ。
 光沢を放つからまた、この衣装めだって恥ずかしい……。
 裸足もそうだけど、何で女の子だけレオタードなんて恥ずかしい恰好なんだろう! うーん、やっぱり体操は男女不公平だわ。
 といいながらも、その恥ずかしさが体験できて、こんな恰好ができて女で良かった……と思えたりもする。
 それはそうと、とにかくこんな恰好でランニングするなんて、めちゃくちゃ恥ずかしいよ!!
 しかも一人っきりで! みんなで一緒ならまだしても、たった一人でレオタード姿で土手をランニングするなんて!!

 うー、恥ずかしいよ!
 200メートル先の方に、こちらに向かって歩いてくる人が見える。
 こっち、見てるんだろうなあ。
 私は視線をぼやけさせて、その人の顔を見ないようにした。なぜならその人がこちらを見ている視線を見たくないの!
 あーん、もう恥ずかしいよ〜。
 絶対こっち見てるよ!
 200メートルあった距離は、走っていくごとに縮まっていく。
 ああ、もうヤダ!
 下をうつむきながら、走り続ける私。ほこりにまみれて走る小さな素足が見えた。
 一歩一歩、地面を蹴るごとに足の裏にホコリを感じた。
 しかしそれよりも、今はとにかくレオタード姿でランニングしていて、しかも人に見られているのが恥ずかしいの!
 どんどん近づいていく……
 散歩しているおじいさんだった。
 あ、しまった。
 一瞬だけ視線が合ってしまった!
 うう、恥ずかしい……
 もう視線を前に向けて、とにかくスレ違っていってしまうだけしか出来なかった。
 自然に、ランニングするスピードが上がる。
 早く戻らなきゃ!
 無我夢中で走っているうちに、おじいさんとスレ違っていった。
 この後はもうとにかく、何も考えずに突っ走るだけ。

 その後も何人かの人とスレ違っていった。
 でも私は、とにかく我を忘れて走ることに集中してあまり気にしないようにしていた。
 スレ違う人はみんな私のレオタード姿を見ていたんだと思う。でももうとにかく、それを忘れ去るように走るしかなかった。
 しかし、ふと我に返ってしまった。
 スレ違った小さな男の二人の男の子が、
「あ、面白いかっこで走ってる!」
 と叫んだのだ。
 は!
 また赤面してしまった。
 せっかく我を忘れて走ってたのに、その一言でまた恥ずかしさがこみあげてきた。
 顔を真っ赤にして、とにかく前へ走って男の子から離れていった。
 あーん、もう!!
 ほーんと、変なカッコで走ってんだよね〜
 恥ずかしいー!
 そうこうしているうちに、なんとか橋までたどりついた。
 橋は車道もあり、その脇の歩道を走っていく。
 アスファルトの土とは違った感触がまた足の裏を刺激する。
 この素足から感じる感触が違う部分にくると、また裸足の恥ずかしさが思い出されてしまうの。
 橋を渡っているときにも、車道を走る車のドライバーはみーんな私の姿を見てます。
 もういいですー
 どうぞ、私のレオタード姿をご覧くださーい!
 もう開き直るしかなかったよ。

 対岸にわたってから、また私は我を忘れて走ることにしました。
 もう逃げることできないもん!
 ただひたすら走って、人の目を意識しないことにした。
 しかし!
 恐れていた最悪の事態が起きてしまった!!
 他の部活動のランニング集団が100メートル先に見えたの!
 男の子の30人ぐらいの集団でした。先頭がランニングシャツの1年生。で後からジャージ姿の男の先輩たち。
 あー!! もう最悪!
 こんな姿、見られたくないよ……
 お互いにランニングしているので、どんどん近づいていく……
 向こうも、私がレオタード着てランニングしていることに気付いてジロジロと私のことを見ている!
 イヤ。
 もうこの恥ずかしさに耐えられなくなった。
 もう許してください。
 恥ずかしくて、恥ずかしくて……
 でももう逃げられなかった。
 もう手遅れ。途中で辞めるも何も、すでにレオタード姿でここまで来てしまったんだから、最後まで走るしかないの……。
 レオタードの光沢を放ちながら、土手を素足で走る私。
 そしてついに目の前まで、男子の部活動の集団がきてしまった!
 もう見ないふり、見ないふり!
 顔を真っ赤にしながら、下をうつむいて私は走っていきました。
 顔から火が出るほど恥ずかしかった!
 絶対に私のレオタード姿、見られてるよ〜
 スレ違ったら、もう全力で走っていきました。
 その後は、もう頭んなかは恥ずかしさで、他のことなど全く意識してませんでした。

 そうしているうちに、向こう岸からこちら側へと橋を渡ってました。
 とにかく先ほどの男子生徒の集団とスレ違ってしまった恥ずかしさで、集中力が薄れていたときに、
 ニュル!
 足の裏にみょーな感触が。
 は!
 先ほど滑ってドロンコになってしまったヌカルミゾーン!
 うわ! 忘れてた!
 うー、きちゃなーい。
 また足がドロドロになっちゃうよー。
 一歩一歩走るたびに、ニュルニュルっとした感触がする。
 足を踏むたびに、指と指の間からドロがニュルっと顔を出す。
 ドロの感触は最初はイヤなんだけど、慣れてくると気持ちよくなっていく。
 きたないけど、おもしろーい。
 おっと。
 さっきみたいにこけないように気をつけなくちゃ。
 そして無事にドロンコゾーン通過。
 あとは土手で待ってるみんなの元へ戻るだけ!

 無事にランニング終了しました。体操部の1年生のみんなが待っててくれました。
「おまたせ。もうめちゃくちゃ恥ずかしかったよ……」
「あはは……やっぱりね。しかも早苗ちゃんは初めてレオタード着たんだもんね」
「うん。恥ずかしすぎて死ぬかと思った!」
「じゃあ着替えてかえろ!」
「ねえねえ、お願いなんだけど部室に私の荷物、持ってきてくれない? このかっこで校内の更衣室まで行くの恥ずかしいだもん!」
「うん、いいよ!」
 はあ、やっと終った。
 私は一人部室にいき、みんなが荷物を持ってきてくれるのを待ってました。
 一人きりになったので、また私は自分のレオタード姿をじっくりと鑑賞しました。
 光沢を放ち、身体にピタっとフィットしてるレオタード。本当に今日、私はこんなカッコで練習してたなんて!
 あらためて恥ずかしくなってきました。
 そしてその独特のナイロン生地の肌触りを手でさわって堪能してました。色が違う部分は縫い目になっているのですが、その生地の縫い合わせの部分を指でいじる。
 ちょっとおっぱいの部分も指でイタズラしてあげると、とっても気持ちいい……。
 ああなんて心地よい、そして恥ずかしい恰好なのかしら……
 なんでこんな恰好が世の中に存在するんだろう……
 私はレオタードを着ている自分に堪能していました。その着ている恥ずかしさと共に、指で身体を触りまくって皮膚の感触も楽しんでました。

 そして今日の練習をふり返る。
 今日の練習はもう最悪だった……。
 裸足のまま外で練習。しかも校外へ出て裸足で土手をランニング。体操服のゼッケンに書いてある名前を子供に読まれて恥ずかしかった……。
 ドロンコでこけてしまい体操服がドロドロ。そしてなんとレオタードを初めて着て……しかもそのかっこのままで外で練習! さらに一人きりでレオタード姿のまま土手をランニング。
 恥ずかしかったよー。でも最悪だったとはいえ、恥ずかしいってのは、なんかちょっとドキドキしてしまう。ウレシ恥ずかしっていうのは、こういうことなんだろうか?
 また体操服をわざと忘れてみようかな? そうするとまたレオタード姿で練習……
 そんな想像しているうちに、みんなが私の荷物を持ってきてくれました。
 はあ、やっとフツーのかっこに戻れる。
 制服に着替えて、ホッとしました。
 しかし今日の恥ずかしい練習のことは、帰宅途中もずっと頭の中から離れませんでした。
 またレオタードで練習したい……。恥ずかしいんだけど……でもそれがいいの。

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