体操部物語  その7

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 昨日は本当に、大変だったよ。
 レオタードで練習させられるし……それに体操服はドロンコになっちゃうし……
 もう一枚の体操服は洗濯中なので、今日はもう一組買わなくちゃ。実は今日は朝の一時間目から体育の授業なんですよ。
 今日は体育館での授業。朝礼が終ったら、更衣室へいきそこから体育館へ。
 その前に私は購買にいって、体操服とブルマを買ってかわなきゃいけない。
 
 朝礼が終った。私はジャージの入ったバッグを持って、走って購買へ向かった。
 今、制服着て青いラインの入った上履きをはいて走っている廊下。そして今日の午後はまたこの汚い廊下を裸足で走っていることだろう……。
 さっきトイレ入ったからなあ……。その汚れた上履きで廊下を汚していけばいくほど、後で自分に跳ね返ってくれんだよねえ。
 はあ、なんたる運命……。
 そして購買へ到着しました!
「女子の体操服とブルマをくだしい。Mサイズです。ゼッケンつきで」
 購買のおばさんに言う。
 うちの購買では、体操服は既に名札が縫い付けてあるバージョンが売られてます。これは非常に便利!
 そしてお金を払って、体操服を受け取ると、すぐにまた走って更衣室へ!
 早く着替えて体育館へ!

 更衣室へやっと到着。
 みんなそろそろ着替え終わってジャージ姿になり、体育館へ出るところみたい。
 早く私も着替えないと。
 先ほど買った体操服とブルマ。
 まずブルマをビニール袋から取り出す。ガサゴソとビニール袋が音をたてた。
 まだおニューのブルマは、なんだか手触りが違う感じがする。
 スカートをはいたままで、ブルマを足に通してお尻にフィットさせた。
 それから制服を脱いで、Yシャツを脱いで……。
 上半身がブラジャー一枚になる。そして体操服をビニール袋から取り出すとガサゴソと音をたてた。
 これまた新品の体操服。やっぱり手触りが違う。
 手触りが温かくて気持ちいいのです。白い半袖の体操服で、首と袖口が黒く縁取られてます。この小学生みたいな体操服はほんとにカッコ悪い。
 柔らかい手触りの体操服の生地とは違い、名札だけが少し固い感じの生地。真新しい名札にはまだ名前が書かれていない。
 とりあえず急がなくちゃいけないので、名前がないままで体操服を頭からかぶります。
 そして黒い縁取りが頭部をかすめて、体操服から頭が顔を出す。
 それから手を袖から通して体操服を着ました。
 スカートを脱いだら、今度はジャージを着ます。1年生は青いジャージなの。
 ジャージのズボンをはいてから、ジャージをはおりファスナーを上まであげて完成!
 体育館履きにはきかえて、さあ体育館へ!

 何とかギリギリ始業のベルに間にあいました。
 先生がくる前に、アップで体育館を軽くランニングします。
 ランニングしている最中に、クラスメイトの雪子ちゃんが声をかけてきた。
「早苗ちゃん、昨日レオタード着てたでしょ?」
 ギク!
 うう、やっぱり見られてた!
「うん……」
「可愛いレオタードだよね」
「あ、ありがとう。でもとっても恥ずかしかったよ」
「そんなことないよ。とっても似合ってたよ。わたしも着てみたいなあ」
「でも、実際に着ている方は、とっても恥ずかしいんだよ」
「あ、うん。人に見られるのは恥ずかしいかもね……」
「それにあんなカッコで外を走らされたんだもん!」
「そりゃ恥ずかしいなあ。でもやっぱ着てみたいな」
 昨日のレオタードでの練習。人に見られているのは分かってるけど、やっぱりあらためてその事を言われるととっても恥ずかしい。
 もう、みんなその事は言わないでえ!

 それから先生がきました。
 先生がきたので、ジャージを脱いで体操服姿になります。
 ジャージを脱いで恥ずかしい体操服姿になるこの瞬間が、なんかたまんないんだよねえ。
 ホントに恥ずかしい一瞬。
 しかしその一瞬が何かまた魅力的でもあります。
 そして先生の前に整列。横に10列、縦に5列に並びます。私は背が小さいほうなので一番前の列なの。
「気をつけ! 礼!」と体育係が号令して授業開始。
「今日は、バスケットボールをやります。ではまず2人組になってパスの練習。それからドリブルからのシュートの練習。後半は試合です」
 バスケかあ。あまり好きじゃないんだよなあ。
 基本的に私は球技はあまり得意じゃない。ボールに全然さわれないからキライ。
「えーと、そこの人!」
 先生は私を指さした。
「は、はい」
「名札に、きちんと名前を書くように」
「あ、すいません。さっき買ったばかりで……」
「他にも、きちんと名前を書いていない人がいるなあ」
 と先生は全体を見渡す。
 それから先生は整列している一人一人の名札を見てまわる。
「前に出なさい」
 と何人かの生徒が呼ばれた。

 6人の生徒が、前に並ばされた。その中には私もいます。
「いいかな、ゼッケンにきちんと名前書くように。この人たちのように、ちっちゃく書いたんじゃダメだからね。名前が分かるようにはっきりと名前を書くように! では他の人たちは練習開始!」
 整列している集団が一斉にちらばって、パスの練習がはじまりました。
 そして残された私たち6人。
 私のほかの女の子たちは、かわいらしく小さな文字で自分の名前を書いてた。確かに名前が読めないゼッケンだったの。
「いまから、ゼッケンの名前の書き方の見本をみせるよ」
 そういうと先生は、マジックを持って私の隣に立っている堀内さんの前でかがむ。
 そして堀内さんの体操服の前側の名札に名前を書きこみはじめた。
 かわいらしく極細の薄い字で書かれた「堀内」という文字の上から、太いマジックで大きく「堀内」と上書き。
 それから堀内さんの背中側にまわると、背中側のゼッケンも同じように太いマジックで名前を上書きしたの。

 そして次は私の番だった。
「名前は?」
 と質問される。私の体操服のゼッケンはまだ真っ白いままだったので名前を聞かれた。まだ入学して、新学期もはじまったばかりで名前は覚えられてません。
「はい、室井です」
 そして先生は、私の前に腰を低くしてかがむ。
 マジックで私が着ている体操着のゼッケンに名前を書きはじめた。
 着たまんまで、ゼッケンに名前を書きこまれてイヤな感じ……
 なんといーか、烙印を押された家畜みたいな感じです。
 そもそも自分の着ている服に名前を書いて、さらけ出していること自体が飼われている家畜みたいな感じ。
 自分の身体の上から、マジックで書きこまれているので、その感触がよく伝わってくる。
 うう、みっともない……
 はやく終らないかなあ。
「室井」と書きこまれている様子が、感触から伝わってくる。今どのあたりを書いているのかも分かるのです。
「あ、失敗」
 と先生がもらす。
 あわてて私もうつむいて自分のゼッケンを見ると、「室井」ではなくて「宝井」と書かれていた!
「字をまちがえちゃった。今なおすね」
 おいおい、間違ったじゃないよ!
 名札代を弁償しろよ!
 しかしこの漢字知らずのバカ教師は、名札を書きつづけた。
 間違えた部分を、さらに上書きしてるようである……
 ゴシゴシとゼッケンの上をマジックでなぞられる。
 文字の線を、さらに太くして間違えた部分を塗りつぶすようにして、なんとか「室井」に修正したのですよ。
 しかし、結局文字の太さのバランスが崩れてしまう……
 そのため間違えた部分だけでなく、「室井」という字の全てを、文字をさらに極太く濃い真っ黒に書かれてしまった!
 う、ダサい!
 かっちょ悪い!
 とてもよく目立つかっこ悪い名札になってしまった……
 そして、次に背中側の名札にも書きこまれる。
 背中の方が、よりマジックでなぞられている感覚が強い。
 ほーんと、従属的というか奴隷というか、そんな感じがする。
 さっきは「室井」と書かれている感じがあったんだけど、今度はなんか違うんだよなあ。
 なんなんだ。
 なんか画数が多いぞ。
 イヤな予感がする……。
 全然、書きおわらないんだけど。
 何度も何度もマジックでなぞられてるんだよなあ。
 そしてやっと終った……。
 それにしても、めっちゃ恥ずかしい名札にしあがってしまいました!
 極太マジックで、しかも文字の輪郭をさらに太く書かれて、濃く書かれてしまった。
 おいおい、いくらなんでも、こりゃないだろうよ。
「私は室井です!」と
 バカをさらけ出しているようなもんだよー。
 バカ先生が「室」と「宝」を間違えて書いたのを直したせいだ。
 他の子たちの名札もやっと全員書きおわった。
 みんな名前が太く書きなおされたんだけどね、私ほどヒドクないよ。
 あーあ、かっこわるー。
 そして、私たちも練習に合流した。
 体育の時間中、私は極太に書かれた私の名前の文字が気になって、しょっちゅう下をうつむいていましたよ。

 体育の時間がおわって、更衣室で制服に着替えなおします。
 さてさて、私はゼッケンが気になってまして……
 体操服を脱いでお腹側を見る。
 うわ、やっぱりかっちょ悪いー。
 極太まっくろに名前が書かれたゼッケン。
 そして先ほどは見れなかった背中側のゼッケンは……
 ああ、やっぱり!
 どうもなかなか書きおわらないと思ったら……
 ご丁寧にも、前側が極太に書かれたので、後側も一緒に極太で書いてくれました!
 やってくれるよ、バカ教師!
 余計なお世話だよ〜
 私だけだよ。こんな極太に名前書いてるのは。
 クソ真面目なガリベンの女の子の浅井さんていう子も、なんかゼッケンに極太で名前書いてたけどさ。
 あの浅井さんよりも、さらに極太に書かれてるじゃん。
 ああ、マヌケ。

 さてさて放課後の練習。
 更衣室で体操服に着替えます。
 さっきのあの体操服とブルマに着替えんだよねえ。
 首と腕を体操服に通すときに、ついついゼッケンに目がいってしまう……
 ブルマと体操服姿になると、裸足で更衣室を後にする。
 はあ。
 またまたこの汚い廊下を裸足で歩くのかあ。
 ペタペタペタ。
 外の土を裸足で歩くのも、なんかイヤなんだが……
 しかしまだこの廊下よりはマシだよね。あったかいしね。
 ビニール敷きで、細かいキズがあり長年のシミが黒くシミついた汚い廊下。
 冷たい廊下の感触。そしてキズ跡や細かいホコリ。
 何よりも、みんながトイレに入った上履きで歩いているところを、裸足で歩いているというのが、なんかイヤなんだよ。
 そして今日はさらに、私のお腹と背中に貼りつけた名札のまあ恥ずかしさが、より私の羞恥心を刺激してくれます。
 ブルマ恥ずかしい。ゼッケンかっちょ悪い。裸足が気になる。3重苦!
 昨日のレオタードよりはまだマシか。
 体育館の練習なんだけど、ぞうきんがけの後は、1年生はまたまた廊下のランニング。
 ペタペタペタ!
 と裸足で走る私たち。
 周囲の視線が気になる。
 体操服のゼッケンが
「裸足で廊下を走っている、かっこ悪い女は室井です〜」
 と周囲に宣伝してくれてます!
 はずかしい〜。

 今日は何事もなく練習は終りました。
 ゼッケンに書かれた極太の名前が恥ずかしかったです。
 練習後にぞうきんがけをしている時にも、背中の名前を誰かが見ているかと思うと、とっても恥ずかしかった。
 ほんとに体操服の名札は、なんか奴隷というか従属的な感じがする……。
 そして翌日、実はもう一枚体操服を購入したんです。
 かっちょ悪い名札の体操服を着ないで、新しいのを着るため……
 ではないのです。
 実はこの名札の恥ずかしさがクセになってしまったの。
 新しい体操服のゼッケンも、先生が書いたように極太に真っ黒にするため。
 自分でマジックで「室井」の文字を太く濃く記入していきます。
 できた!
 同じように極太く名前が書けました。
 うーん、しかし物足りない。
 そして前の一枚よりも、もう一回り太く縁取ってしまった。
 うん、かっちょ悪い名札になった!
 明日の練習では、これを着ます。
 待ちきれずに私は部屋の中で、さっそく体操服姿になってしまいました。もちろんブルマも。
 そして姿見に自分の姿をうつして、そのかっこ悪さを見ます。
 あらためて鏡見てみると、ほんとにカッコ悪い!
 そして私はそのカッコ悪さを強調している名札に注目。
 あまりにも気になって、その名札のやや硬質な布地を手で触わる。
 なんでだろうか?
 物に対してヘンな愛着というのが出てくる。
 恥ずかしさを与えてくれるこのゼッケンに対して、その手触りまでもが気になってくるのだ。
 レオタードを初めてきたときにも、そのフィット感や手触りを堪能したときのように、ゼッケンの手触りを楽しんでいたのだ。
 レオタードの場合は、ほんとうに気持ちいい感触なのだが、なぜゼッケンに?
 うーん不思議である。
 そして私は、この恥ずかしい私のカッコを気にしてヘンな気持ちになりながら、
 そのままのカッコで寝ちゃいました。

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