体操部物語  その9

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「来週の月曜日、壮行会があるから、その時のプラカード持ちをやってもらうよ!」
 なあんだ、それだけかあ……。
 ほっとしました。地区予選大会があるので、選手壮行会を月曜の朝礼でやるんです。
 早川さんは続けて、
「室井さん、明日の金曜の練習は部室に来てね。明日は午後に、壮行会の入場の練習があるから」
「はい、わかりました!」
「他の1年生は、練習休みね!」
 キャ! ワーイ! ヤッター!という声があがります。
 う……うらやましい……。
 やはりジャンケンに負けたのが悔しくなった〜。

 さて翌日、金曜日の放課後。
 これから壮行会の練習がありますので、部室にいきます。
 いつも通り、更衣室で体操服に着替えて素足になりました。別に着替えなくてもいいような気がしないでもないのですが、また「練習中は必ず裸足」と言われるような気がして……。
 そして、更衣室から体育館へ向かいます。運動部の部室棟は体育館裏に建てられたプレハブです。校舎と体育館をつなぐ渡り廊下があります。
 この渡り廊下から外に降りて、部室へ。
「失礼しまーす」
 プレハブの部室の扉を開けました。
「あ、室井さん」
 何人かの2年生、3年生が集まっていました。
まだ全員集まってません。
 部長の早川さんがいました。
「室井さん、じやあ今日はこのプラカード持ってって」
「はい」
 プラカードには「器械体操部」と書いてありました。
 私は部室の前で、先輩たちは部室の中で、皆が集まるのを待っていました。
 そして5分後には2,3年生の全員が揃いました。
「じゃあ、行こっか」
 校庭へと向かいながら、早川さんが私にいいます。
「今日、体操服じゃなくても裸足じゃなくてもよかったのに……」
「え! そうなんですか?」
 そういえば、みんなジャージではなく制服姿ばかり。グラウンドに行くからみんな運動靴だけど。
 なんだー、せっかく着替えたのに……。しかも裸足にもなったのに……。
 歩いていると、日差しが照りつけたコンクリートが、足の裏にポカポカと刺激を与えてくれます。そしてホコリも。

 校庭に到着すると、いろいろな部の生徒たちが集まっています。
 みんな、制服姿ばっかりじゃん! 中には私みたいに体操服着た1年生の姿もいますが、ほんの少しみたい。
 わーお! 制服姿ばかりなのに体操服ブルマでいるのって、むちゃ恥ずかしいぞ! しかも私の体操服はデカデカと「室井」と書かれていて目立つのだ! バカ丸だし……。
 そして! 当然のごとく裸足でいるのは、これだけ大勢の中でも私だけだ〜!!
 なんと恥ずかしい〜!
 靴はいてくりゃ良かった! 早川さんも、昨日のうちに言ってくれりゃ良かったのにー、イジワルだ〜。
「器械体操部」と書かれたプラカードを持っているけど、そんなもん持ってなくても「いつでもどこでも裸足」なんて部活は体操部だけだから、私が体操部所属だってことは、見りゃすぐ分かるだろう……。
 グラウンドに来てから練習開始までは10分ぐらい待ったかな。
 そのあいだ、私は手持ちぶたさでいました。そういう時って、とにかく自分の今の恥ずかしさだけが頭の中でグルグル回っているの。
 誰かと目を合わせてしまうたびに、赤面してしまう。
「ああ、あの子は、裸足でいるわ。こんなただの壮行会入場の練習でも裸足なんて、さすが体操部! かわいそー!」
 とか思われているんじゃないかって、勝手に被害的な妄想しちゃうの。
 グラウンドの感覚……。日光によってポカポカとした暖かいグラウンドの感触は気持ちいいといえば気持ちいいのです。でもなんか砂っぽい感じがして、裸足には汚い感じがしました。歩くたびに、グラウンドの砂がブツブツと刺激を与えます。
 ヒョイっと足をあげて足の裏をのぞくと、もう砂埃がいっぱいついちゃってました。ああ、きたない……。
 2,3年生は楽しそうにおしゃべりしてました。
 ただ一人、私だけがブルマ姿で裸足でいて、なんともいえぬ恥ずかしさでいっぱいでいるのに。

 ようやく練習がはじまりました。
 壮行会はこんな感じで進みます。グラウンドの端から、各クラブごとに行進しながらグラウンドに入ってきます。そして一般生徒が並んでいる前に、クラブごとに一例に並んで対面するような形になります。
 それから校長の挨拶とか、運動部代表の挨拶とか……お決まりのパターンよ。
 今日は、入場して並ぶ練習なのです。
 女子体操部は、13番目の入場になります。ちなみに男子体操部の後なのです。
 1回目の練習が始まりました。
 全員がグラウンドから、校舎裏へ。朝礼からは、この校舎裏が見えないので、ここから入場してくるのです。
 この校舎裏っていうのが、日があまり当たらないジメジメした場所なのです。土が冷たい! 最悪! 裸足が思いっきり汚れちゃうじゃん。イヤ〜。
 そして私は男子体操部の後から、プラカードを持って歩いていきます。その私の後を、体操部の先輩たちが追って歩いていきます。
 そして、練習を指導している先生たちが各運動部の入場をチェックしてます。また他の部員たちも待機中はヒマなので、他の運動部の入場をチラチラと見たりしてます。
 私だけ裸足で思いっきり目だっているよ〜!(たぶん……)
 もう恥ずかしい!

 入場後の位置合わせなどして、結局は3回ほど入場練習を繰り返しました。
 ああ、めんどくさかった……
 やっと終りだ!
 本番のときには、アイサツとかがあるのよね〜。まあこんなんで1時間目の授業がつぶれるんだから、ありがたい!
 体操部もこれで今日は解散となりましたが、早川さんに当日の連絡をもらいました。
「当日の朝、クラス会が終ったら、また部室に集合ね! 今度は制服のままでいいからね〜」
 わーい! よかった。今度は一人だけブルマで裸足なんて、みっともない姿にならないぞ!
 しかし、今日は恥ずかしかったわ。
 いつもはまだ皆と一緒だから、まだましなものの、今日はホントーに一人きりだったから恥ずかしかった。一人レオタード姿で土手をランニングしたときよりはマシだけど……。

 さてさて、ついに月曜日になり、壮行会本番です。
 朝のホームクラスでは、さっそく今から行う壮行会の事を話してます。ホームクラス終了後、出場予定のない生徒はいつも通りの朝礼場所に集合。出場予定の生徒は、各クラブごとの集合場所へと向かうことになります。
 ホームクラスが終わり、私は急いで体操部の部室へと向かいました。今日は制服姿のままだし、きちんと靴もはいてます。
 ああ、英語の授業がつぶれて最高!
 そして部室へ到着。
「おはようございます!」
 とアイサツしながら、部室の扉を開けると……
 あれれ!
 ウッソー!
 マジで……
 なんかイヤな予感がする……
 先についた先輩たちが、みな制服を脱いでレオタードに着替えていたのです!!
 みなお揃いのレオタード。ボディが薄い紺色で、胸や腕に赤を中心としたラインの入ったレオタードでした。
「あ、室井さん。室井さんも着替えて。はい、これ!」
 きょとんとしている私の手の上に、安田先輩が私の手の上にレオタードを乗せました。
「レ、レオタードになるんですか……?」
「そうだよ。みなユニフォームになるんだよ」
 ウソ! イヤな予感的中!!
「あ、そうなんですか」
 とソッケなく返事しながらも、心中穏やかならず!!
 めっちゃ恥ずかしいじゃん! 全校生徒の目の前でレオタード姿になるんだよ〜。
 信じられません!
 まあ、今回は先輩も一緒だしな〜。それにレオタード、着るの2度目で恥ずかしいんだけど、ちょっとウレシかったりもする……。ウレシ恥ずかしであるよ。
「じゃあ、部室上がって着替えてね」
「はい」
 う、う、うう……
 不思議な感じであります。
 めちゃ恥ずかしくてイヤなんだけど、その反面ウレシくてドキドキしてる。
 手にもったレオタードを見つめてる私。
 また、レオタード着れるのね。
 緊張しながら、私は制服を脱いで下着姿になりました。
 そしてゆっくりと、息を飲みながらレオタードを着はじめます。
 レオタードを足から履いていって、腰まで入りました。ピタっと腰にフィットします。
 う〜ん、このフィット感がたまりません。
 それから、胸の部分までフィットさせていき、最後に腕を通していきます。
 はじめて着るときは、なかなか着れなかったのに、2度目ともなるとスイスイと腕が通りました。
 最後に肩の部分をきちんとフィットさせて、お尻もパンツはみださないように(!)、クイクイとやって!
 出来上がり!
 ああ、なんと気持ちいい〜。でも恥ずかしい!
 またレオタード姿になってしまいました。
 先輩たちも、やっぱりたまにしか着ないから恥ずかしがってるみたいです。慣れちゃって何とも思ってない先輩もいますが。
「レオタード、恥ずかしいですよね」
「早苗ちゃん、けっこう似合ってるよー」
 と一人の先輩が声をかけてくれます。
「あ、ありがとうございます。でも恥ずかし!」
 赤面してしまいました。
 恥ずかしいけど、これだけ多くの人と一緒なら何とかなりそうです。
 鏡で自分の姿を見てみました。
 わ! やっぱり恥ずかしい。私のレオタード姿!
 これ、私の姿なんだわね。本当に自分なんだよね……。
 ちなみに、こんな感じのレオタードです。

 先輩たちが全員レオタードに着替えおわるまで、私はレオタードを堪能してました。
 スベスベとした触感は心地よく、私はあらゆる個所を手で触れまわりました。とっても気持ちよい……。
 光沢を放つ質感が「普通でない服」という感覚を増長させ、またその光沢ゆえに目立ち、恥ずかしさが増長します。
 触感と恥ずかしさにより、私は自制心をやや失って快楽にふけっていました。
 そして全員が着替え終わりました。
 これから入場行進の開始場所である校舎裏に向かいます。私はプラカードを手に持っていきます。
「じゃあ、いくよー」
 と早川さん。
 それから先輩たちが部室から外へ出ていきます。
 あ、やっぱり……
 先輩たちは裸足のままで、外へ出ました。
 私も同じく裸足で、プレハブの部室からコンクリート敷きに降りました。
 いつもは、1年生だけが外でも廊下でも裸足ですが、今日はみな一緒! 体育館での練習は先輩たちも裸足ですが、外や廊下の練習では私たち1年だけが裸足でした。
 今日は、先輩たちもなんかイヤな思いをしてる……という感じがしてちょっとウレシかったりして……。私の妄想だけど。
 10人前後のレオタード集団が歩いている姿は異様でしょう!
 そりゃもう目立ちます。
 他の運動部の生徒もユニフォーム姿なのですが、思いっきり視線を感じます。男子生徒のみならず、女子生徒までも珍しがって見ていますから……。
 恥ずかしいんだけど、ある意味快感……。
 今日は、一人きりじゃないから、快感を感じられるほど余裕があるよ〜。
 集合場所の校舎裏は、もういろんなユニフォーム姿の運動部員たちでいっぱいでした。
 その集合の中にレオタード姿で入っていくのは、やっぱり恥ずかしいわ。
「お、新井。かっこいいじゃん!」
 と、新井先輩に声をかけているバスケ部の男子の先輩がいました。
「ちょっとー、エッチな目でみてんでしょ〜」
「そうかもね!」
 なんて会話が聞こえました。
 やっぱハズカシいわ〜。
 めちゃ注目されてるんだよね。新井さんなんかは、あまり気にしてない感じでしたが。
 バレーボール部は、シャツでブルマ隠してた。
 バレー部は、そりゃそういう事できるけどね。私らなんか、その隠すためのシャツもないんだよ〜。ましてや下半身だけでなく上半身までもピタっとしたユニフォームなのよ!
 ズル〜イ! と思いながらも、冷静に考えてみると仕方がないことかもね。
 剣道部も裸足でした。
 やった! お友達!
 なんだか同じイヤな思いをしている親近感があります。
 ビックリしたのは水泳部です。
 なんと!
 水泳部はクラブ用のジャージ姿なのです!!
 ズルイぞ!! なんで私らはレオタードで裸足なのに!
 水泳部も水着姿で裸足だと思ってたのに……。
 やっぱり、私らほど恥ずかしい思いをするクラブは他にないようです!

 ついに入場が始まりました。
 先頭は野球部から次々に入場していきます。
 なんか、緊張してきたな……。
 そして私たちの前の順番の男子体操部が入場を開始して、校舎の裏から校庭へと行進していきます。
 男子体操部もユニフォーム姿で、白いランニングシャツとロングパンツ姿です。しかし圧倒的に私たちと違うのは……
 なんで男子はシューズを履いてるのに、女子だけが裸足なんじゃ〜!!
 同じ部活なのに、どうしてこんな不公平なのよ〜!
 しかも圧倒的にレオタードの方が恥ずかしいじゃないか〜!
 ズルいぞ!
 その男子体操部が靴で歩いていった跡の冷たい土を、私たちは裸足で歩いていくのです。
 うう、なんか哀しいのだ……。
 女子体操部、哀れ…… そしてこんな体験できる体操部、大好き……
 そして校舎裏の角を曲がって、いよいよ校庭へと行進していきます。
 そして、目の前に広がる校庭の光景は!
 ゲゲ!
 ヤバイっすよ。全校生徒の群れが、マジマジと行進を見守っているのです!
 超はずかしいです!
「次は女子体操部の皆さんです!」
 と放送部の生徒のアナウンスが聞こえました。
 私はプラカードを掲げて、シャキシャキと行進してます。裸足で。
 ちょー、恥ずかしい〜!
 レオタード姿の私たちへの視線を思いきり感じながら……
 私は、こちらを見ているであろう生徒の視線を気にしないように、気にしないように……と、ただひたすら自分の前を行進している男子体操部の行進の背中だけを見ていました。
 でも絶対、みんな私たちのこと、見てると思う……。
 しかも先頭だから私、目立ってるよ……。
 穴があったら、入りたい! こんな大勢の前でレオタード姿なんて!

 そして行進から、女子体操部の所定の立ち位置まで来ると、一般生徒たちの対面に向かうように一列に並びのです。
 私の目の前には、ちょうど2年生が並んでいる真ん前です。
 思いっきり制服姿の2年生と対面しちゃうのです!
 うぉー! なんてこった!
 私の目前にズラーっと並んだ、制服の群れ、群れ、そのまた群れ!!
 今、行進を終えて並んだばかりの私たち体操部には一際、みんなの注目の的!
 そうでなくても、この光沢を放ち、上下つながりで袖のある身体にフィットする不思議な形状の衣服「レオタード」姿は、みんなに「見てくれ!」と言っているようなもの。
 みんな、制服姿なのに、私たちだけ、こんな恥ずかしいカッコでいろっていうのか〜!
 そして、みんな靴をはいているのに、私たちだけグラウンドで裸足でいるのか〜!
 なんと哀れなのだ〜。
 あ、2年生の男子の先輩と目があってしまった!
 私はうつむいて赤面してしまいました。
 見ないで〜。
 下をうつむくと、私のかわいい素足がありました。その裏は土埃で汚れているのです。ブツブツと細かい砂が私の足の裏を刺激してます。
 もう〜、早く終ってよ〜。
 それから、ずーーっと私は、下をうつむいて誰とも視線を合わせないようにしていました。それでも、誰かの視線を感じぜずにはいられませんでした。
 私までが、うつむいて視界に入った、自分自身の着たレオタードを見て、
「あの室井さんって子、レオタード着てるよ! 恥ずかしくないのかなあ。しかも、あの子たちは裸足だね。かわいそ」
 とか自分自身で、自分のことをそう思ってました。
 恥ずかしくて顔から火が出そうでした……。
 頭ん中がクラクラして、目の前の光景が倒れるように感じていました。

 極度の恥ずかしさでクラクラしているうちに、いつのまにか挨拶だとか選手宣誓などが終わっていて、退場の時間になりました。
 あれ、いつのまに終ったんだろうか。
 ボーっとしているあいだに終ったんですが、それでもこの時間は私にとっては、かなり長く感じられました。
 退場のあいだも、常に制服の生徒たちからの視線を感じていました。
 心の中では、思いっきり早歩きで退場してました。
 そして、元の校舎裏に戻って、ホっと一息。
 体操部の先輩たちも、
「やっと終ったよ〜。ああ恥ずかしかったね」
「うんうん。ほんと、やだよね〜」
 なんて会話してました。
 自分だけでなく、そう感じている人がいてウレシかったです。
 私たちは、そそくさと走って部室へと戻りました。
 だって、制服の生徒たちだけでなく、他の運動部の生徒たちだって、私たちのレオタード姿見てるもん!
 でもレオタード脱いで、制服に着替えるの、なんだかちょっと勿体なかったけど。もっと着ていたかったな……。
 すごく恥ずかしくてイヤだったけど、それでも快感だった……。

 こうして壮行会は終わりました。
 もうすぐ地区予選大会があります。私たち1年生は参加しませんけどね。
 予選大会も、どんな感じなのか楽しみです。
 

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