消費者金融が最近身近になっている。
テレビを見ていれば、必ず消費者金融のCMの一つや二つは見かけるし、無人のキャッシングマシーンも増えた。
銀行との提携も出来たし、大手消費者金融がなんと経団連に入会するらしい。
借金をカジュアルに仕立てているあのCM、見るたびに腹が立ち、いつもテレビに向かって毒づいている私だ。
実は私は「自転車操業」というのをやったことがある。
どんな風にキャッシングから離れられなくなっていくか、だから身をもって知っている。
本当に、普通の人でも、というか普通の人が借金地獄に陥っていくのだ。
どんな仕組みで抜け出せなくなるのかを私の体験を元にして紹介しよう。
はまりかけたのは20代前半の頃、脱出したのは26歳くらいの頃である。
私は20代前半で就職してすぐ実家を出て一人暮らしを始めた。
そのときの手取りは16万円くらい。家賃は7万円くらい。
バブル真っ只中だったくせにそのとき勤めていた会社は給料が安かった。
その会社にちょうど勤めていたばかりに、私はバブルを享受できなかったのだ。
と、今でもその頃のことを考えると腹が立ってくる。
その会社はヒラの営業マンが20代前半、25歳くらいでマネージャー、30代は取締役、という若いのりの良い会社で、
30代独身のマネージャーが朝礼の挨拶で、「今、水道が止まっておりまして・・。」というような会社だった。
それでも毎晩みんなで飲み歩くような会社。周りの人間の多くが「セゾンカードでキャッシングしようとしたら食べられてしまった。」経験を持つ。
「食べられる」とは、機械にカードを入れてキャッシングを申し込むと、「このカードではキャッシングができません。カードはお預かりさせていただきます。」という表示が現れ、機械にカードを取られてしまうことである。
これは、おそらくそれまでの返済成績が悪かったから起こる現象なのだろう。
私も一度食べられたので、その後、別のカードでキャッシングをするたびに、スリルと恐怖感を味わい、そのトラウマは10年以上たった今でも抜けない。
当時は消費者金融は、今よりもずっと「借金」という暗いイメージがあり、主に遊興費のためにお金を借りていた私たちは、さすがにそこまで行く勇気はなかった。
カードによるキャッシングは、小額なら無人で借りられるので、何かというとキャッシングを利用していた。
ここで、人間がキャッシングをするきっかけとして、「借りやすい。恥ずかしくない。当たり前の行為。」というのがあると思う。
近くにあるかどうか、なんていうのはこの際二の次となる。
お金を借りるためなら、困っている人は距離的な多少の不便はクリアするのである。
重要なことは、キャッシングをするときの後ろめたさの軽減。
当時は、キャッシングは専用マシーンでのみ行えたので、そのマシーンのボックスに入るときと出るときが問題であった。
その後、銀行のATMでもキャッシングが出来るようになったときには、自分の口座からお金をおろすように見せかけて手続きができるものだから、ものすごく銀行に感謝したものである。
もしも消費者金融が、今のように明るいイメージかつ無人で借りられたならば、間違いなく手を出していただろう。
ただし、イメージの違いだけで、消費者金融とカードキャッシングの利息は大体同じくらいで、中にはカードキャッシングの方が高い場合もある。
当時私は丸井とセゾンとライフカードを持っていた。
大体、大学時代の海外旅行を機として人はカードを所有するようになるのではないか。
学生がカードを持つというのも本来は不思議なことのはずであるが。
大学時代、学費を払うために丸井のキャッシング受けたもん。
高額だから窓口に行って理由を書くんだけど、「学費」って書いたら、担当の男の人は「えらいですね。」とほめてくれてすぐに貸してくれた。
この三種類はたしかそれぞれの特徴があったと思う。
セゾンは食べられたのであまり記憶していないが、ライフカードは比較的限度額が高く、リボ払いがあった。
丸井はキャッシングのたびに分割の回数を指定できた。
これをうまく回していたのだ。
さらにその時持っていたあさひ(当時は協和埼玉)銀行のキャッシュカードは一定額の借金ができる仕組みだったので、一番大切なカードとしてそれを使用した。
一人暮らしのためには、家賃、光熱費、電話代が発生する。
その他に引き落とされるのは、月々のカードの返済や、買い物やスポーツクラブの費用である。
これに私は返済優先順位をつけた。
家賃が最優先。
食べられたくないのでカードも優先。
そしてあろうことか、楽しみを失いたくないため買い物やスポーツクラブが三番目の優先だった。
光熱費はすべて止められる寸前まで最大期間引っ張るが、電気・ガス・水道の順に厳しかったのでその順番。
間違えて水道代などが先に引き落とされてしまおうものなら、すべてが狂ってしまう。
電話は光熱費よりもすぐに止まるのだが、電話がなくても死なない。だが、あるとき電話が止まっていることに気づかず、1週間後に親からの手紙で知る、という経験をしたため途中で優先順位をあげた。
私は親が怖く、また、親にはいいかっこをしていたのだ。泣きついて返済を肩代わりしてもらう、なんていうことは選択肢の範囲外であった。
すべての引き落とし日を把握し、前日までにお金を都合する。
キャッシングも限度額ぎりぎりだから、どのカードがどのくらい借りられるか、きちんと把握していた。
これで上手に回すと、カード会社にはばれないのだ。
きちんと返済する優良顧客になってしまう。
限度額引き上げのお知らせなんかがくると、お祝いをしたものだ。
まさに生活必需品の上位ランクにクレジットカードがくる。
結局この自転車操業から私が抜け出せたのは、転職して年収が一気に150万くらい増えたためである。
返済のため、という気持ちの転職ではなかったが、たまたま当たったという種類であろう。
知らず知らずに「生活の建て直し」をやったのである。
本当は、そもそもキャッシング込みで生活費を考えていた部分がいけない。
私が貧乏になった理由は、給料の低さや一人暮らしもさることながら、カード返済の利息が膨らんでいったのではないか。
ライフカードのリボ払いが最終的に終わるまでその後3、4年かかったような記憶がある。
現在の自己破産希望者の借金額の平均は300万〜400万だという。
このうち、25%くらいが利息なのだから、元手はたいした金額ではないのだ。
しかも長期にわたり、このような生活を送っていれば。
利用しないことが一番である。
といっても、利用する方だって、他のもっと良心的な利率のローンが与信されないから泣く泣く高い利息の手軽なキャッシングに走るのだ。
だから、消費者金融やキャッシングがカジュアルであってはならない。
CMを見ると、あいかわらず海外旅行や飲食費で気軽に使ってもらおうとしているようなものが多い。
優しそうな女性スタッフを売りにしているのもある。
あるとき払いのカードで家計管理、なんてけしからん広告もある。いつも「ない」場合はどうすればいいのだ。
騙されてはいけない。
「羞恥心」や「後ろめたさ」を取り除こうという広告戦略である。
みんながやっていると思えばヒトは勇気百倍になるものだ。
一度使い始めると、いつのまにか感覚も麻痺してしまう。
簡単に機械から札束を引き出せるのだ。誘惑に負けない方が珍しい。
キャッシングという選択肢をひとまず捨ててください。
私のように、せっかく稼いだお給料の大半を利息で持っていかれないように・・・。

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