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4WD車は冬道に最適か?

北海道には車種を問わず4WD車が多い。
理由は冬季の道路条件が厳しいことに他ならない。

圧雪・アイスバーンに代表されるいわゆる冬道。
スタッドレスタイヤが普及した近年では、ミラーバーンと呼ばれるまるで鏡のように磨かれた
非常に摩擦係数の低い(=非常に滑りやすい)路面状況が発生することもある。

歩行者が歩くのもままならない程のテカテカの道路を車が走るのである。

では、そのような道路を走るとき何故4WD車がいいのか?
絶対確実な点では「発進が容易であるから」だ。

4つの車輪全てに動力が分配されるということは、通常2つの車輪でしか駆動しない車に比べて
発進のときにタイヤが空転しにくいのだ。

滑りやすい路面で発進しようとするとき、誰しもアクセルをゆっくり踏むだろう。
路面に伝わる力を抑えて滑り始める限界の力を超えないように制御するはずだ。

例えば、路面に30馬力以上の力をかけるとタイヤが空転を始める状況を想定する。
100馬力の車があるとして、前輪駆動の場合は前輪の左右に50馬力づつかかることになり、
4WD車では4つの車輪に25馬力づつかかることになる。(前後均等配分の4WD場合)

つまり、この例の場合だと、前輪駆動車は発進できないが4WD車は発進できることになる。
(エンジン、ギア比、アクセル踏み込み量等が同等の場合)

つまり、4WD車では1輪にかかる力を分散させる為に滑りにくいわけだ。
同様の理由で、多少凹凸のある場合でもまっすぐ走るという点でも有利なのだ。


だがコーナーではどうだろう?

やはり、コーナーでも4WDは滑り出すまでの余裕は他の駆動方式より優れている。
しかし、滑り始めたら大変だ。

一般に、FF車は滑りやすいコーナーでは、外側に膨らんでしまい(これをアンダーステアと呼ぶ)
FR車は内側に曲がりすぎてスピンしてしまう傾向(これをオーバーステアと呼ぶ)が強い。

理由はあまり詳しく触れないが、自ら回転している車輪は滑りやすいのだ。

FF車は方向を決める操舵輪も動力を伝える駆動輪も前方の2輪だけだ。
つまりハンドルを切っても、その方向を伝える車輪が動いているので滑って曲がりにくくなる。
その結果、ハンドルを切っても膨らんでしまう。

FR車は方向を決める操舵輪は前方の2輪だが、駆動輪は後方の2輪だ。
前方の2輪は自ら回転しないので後ろよりは滑りにくく、方向はしっかり伝えるが
後方の2輪が滑りやすいので、結果として後方が流れてスピンしてしまうことになる。

では4WD車はどうかというと、滑り出すまでの余裕はあるが、一旦滑り出すと最悪だ。

全部の車輪が駆動すると言うことは、場合によっては
FFの悪いところとFRの悪いところを両方持つということだ。



一言に4WDといっても、4WDにも種類がある。4WDなら何でも同じわけではないのだ。
実際、4WD車に乗っている人でも自分の乗っている車の4WDシステムがどのようなものなのか
知らない人が多いような気がする。

はっきり言ってしまうと、FF車ベースの乗用車の4WDシステムは殆ど「なんちゃって4WD」だ。

俺は「発進補助機能付きFF車」と呼んでいる(笑)

「前輪が滑ってから(あるいは滑りそうになってから)後輪を駆動する」ものだ。

そして、滑る状況が収まれば再び、ほぼ前輪駆動状態で走るわけだ。
このタイプの4WDでは発進時は4WDの恩恵に与れるが、滑りやすい路面での直進時の安定性は
常に4輪に駆動力が行っているタイプの4WDシステムには全く及ばない。

それどころか、システムが簡易に出来ており、常に4WDで走ることは想定していない為、
一定速度以上になると4WDにならない
らしい。

しかも、前輪が滑ってから後輪を駆動するというのは、カーブでもしそれが作動すると
場合によっては危険だと思うのだが・・・。



メリットは、システムが簡易で軽量で済み、殆どFF状態なので4WDでも燃費が良いことだ。
たとえ北海道であっても夏場のことを考えると家計に優しく、冬場においても滑りやすい坂道で
止まってしまっても楽チンで発進できる
と言う合理的なものだ。

基本はFF車であることを理解して適切な運転をするなら何ら問題無い
非常に合理的なシステムだと思う。
(ちなみに普段俺が運転している車はこのタイプだ。)

しかし、この種の4WD車に乗って、冬道を「4WD車だから大丈夫だぜ〜♪」と言わんばかりに
飛ばしている人も北海道には多いのも現実である・・・。


頼むから近づかないでくれ!


他の4WDシステムとしては、俺の言葉で言えば「切り替え式4WD」「インテリジェント制御4WD」「本格4WD」等だ。

「切り替え式4WD」とは、その名の通りスイッチで2WDと4WDを切り替えるもの。
普段は2WDにしておいて、ハマった時や滑りやすい路面では4WDにするというもの。
最近では軽トラックくらいでしか見かけない気がする。

「インテリジェント制御4WD」は、スポーツタイプや高級車に多く、通常は前輪:後輪を30:70等の
比率で走り、各種のセンサーで滑りを検出し最大50:50まで駆動比率を変えることが出来るもの
である。
「インテリジェント制御4WD」とは俺がそう呼ぶだけであって、メーカーによって呼び方は様々だ。
冬道で、安定して走りたいのであれば、この種の4WDが最もオススメだ。
常識的な安全運転を心がければ、他の駆動方式に比べて安心感が持てるだろう。
スバルがお得意の技術で、スバル車には多く取り入れられている。

「本格的4WD」とはいわゆるSUVやクロスカントリー四駆といわれるような車種である。
はっきり言って、林業関係者や山岳調査を仕事にしている人以外は不必要と思われる程の走破性を持つ車種もある。
高級車種では高度なインテリジェント制御や副変速機まで備えているものもあり4WDの中でも最強だ。
もちろん冬道の走破性も相当に高い・・・はずなのだが・・・

何故か路外に落っこちてるのをよく見かけるタイプ。

結局、勘違いしている人が多いんですね。
どんなに走破性が高くても、タイヤが路面と摩擦しなきゃ意味が無いのに・・・。

「北海道といえばスキー、スキーといえば山!俺は冬道もバリバリ行きたいぜ〜!」
と言ってこういう車種に乗り、スキーを滑りに行く前に、車で滑って逝ってしまう人もいるとか・・・。

俺に言わせれば、この種の車はどちらかと言えば冬道には向いていないと思う。

向いていないと思う理由@ 〜だって車高が高いじゃん?〜

この種の車は、車高が高い。
車高が高いと言うことは、重心が高いということ。
重心が高いとバランスが悪く、滑りやすい路面では特に危険だ。

向いていないと思う理由A 〜だって車重が重いじゃん?〜

重いというのは、まっすぐ走るには良い事。重い方が滑りにくい。
だけど、止まる時と曲がる時は軽い方がいい。
「運動する物体は運動を継続しようとする。」これを「慣性」という。
カーブに差し掛かったとき、減速しなければ直進しようとする力が強くなり曲がれない。
そして、慣性は運動エネルギーに比例する

運動エネルギーって何さね?
車が走ってるときのエネルギーは「重さ×速さ×速さ÷2」って言う式で求めるんだ。
高校で物理習った人は
     


っていう式覚えてるかな?それだよ。

「どうして?」って話は無しね。理屈はとりあえず置いておいて、こういう式で求められるって覚えてね。

エネルギーは「J(ジュール)」って単位で表すんだ。
で、注意して欲しいのは単位ね。重さの単位はkgでいいんだけど、速さはkm/hじゃなくm/sね。

じゃあ、ちょっと計算してみようか。
例に出す車は、最近売れてるホンダの小型車フィットと、でっかい4WD車の代表として三菱のパジェロを比べてみよう!

メーカー 車種 グレード 排気量 重量
ホンダ フィット W 4WD 1,300cc 1,080kg
三菱 パジェロ ショート EXCEED I 3,500cc 1,920kg

じゃあ、この2台が、時速30kmでカーブに進入するときのエネルギーを求めるよ。

まず、30km/hをm/sに直すと、約8.33m/s。
大体、1時間で30km進む速さは、1秒で8m進むってことだな。
だから計算すると、

 フィット  1080[kg] × 8.33[m/s] × 8.33[m/s] ÷ 2 = 37470[J]
 パジェロ 1920[kg] × 8.33[m/s] × 8.33[m/s] ÷ 2 = 66613[J]

となるわけだ。
式を見ると後半部分が同じだから結局、同じ速度なら重さが倍になれば、エネルギーが倍になるって解るね。

眠くなるので、算数はこの辺にしよう・・・。


つまり、同じ速度でコーナーに入ったとしても、重量が重い車だったら
運動エネルギーが強い=慣性が強い=曲がりにくい
ということだ。

大きい車はそれなりにグリップ力の高いタイヤとかブレーキを積んでいるから一概には比較できないだろう!!
って怒られそうなんだけど、

地面との摩擦が少ない冬道ではタイヤやブレーキの性能の差は小さくなり、
単純な物理の法則に従う傾向が強くなる。


つまり、重い車、速い車は曲がれないし、止まれないってこと。

ブレーキかけたってすぐにロックしちゃうでしょ。


で、最悪なのがいわゆる「四駆過信」。
先ほども少し書いたが、まっすぐに走る分には重い車が有利というのは真実だ。
冬道で意外と飛ばしているのが荷物満載のトラックだったりもする。
(そしてトラックの路外逸脱もよく見かけるのだが・・・。)

北海道には見通しがよく直線区間が多い道路がたくさんある。
だが必ず直線の次にはカーブがあるのだ。

重量もあり、高度な4WDをもつSUV車、直線区間で雪煙を上げながら快調に飛ばしていく・・・。
そしてカーブが見えてきた。
もちろん馬鹿ではないから、カーブに備えて減速する。

だが、スピードに乗っていて、さらに摩擦が少ない路面の為、あまりスピードは落ちない。

しかし、発進からして楽々で、直線区間でもぶっちぎり、そんな車だからまず大丈夫だろうという気がする。

それに前を行く小型車はさほど減速もせずに、抜けていった。大したことは無いだろう・・・。

が、しか-----し!!



・・・となるのである。

直線区間で滑らないからと言って飛ばすと、カーブで減速が間に合わなくなるのだ。
何度も言うが、重い車は減速には不利だ
さらに発進と直進性が良い為にコーナリング性能もいいと勘違いする傾向もあるようだ。

ちなみに先ほどのパジェロとフィットの例を使って、前方を走るフィットが40km/hで余裕でカーブを
曲がっていくのを見て安心したパジェロが、「あんな車よりはるかに高性能だ」と高をくくって50km/hでコーナーに
進入したとすると・・・

40km/h = 11.11m/s 50km/h = 13.89m/sであるから、

 フィット  1080[kg] × 11.11[m/s] × 11.11[m/s] ÷ 2 = 66653[J]
 パジェロ 1920[kg] × 13.89[m/s] × 13.89[m/s] ÷ 2 = 185215[J]


フィットは約66,653Jの運動エネルギーでコーナーに進入したのに対し、パジェロは約185,215J
運動エネルギーでコーナーに進入したことになる。

こうして数字で計算してみると、かなりの違いに驚くのでしょ?

パジェロはたった10km/hフィットより速い速度で進入しても、
約2.8倍も多い運動エネルギーを持って進入したことになる。



車で走っている時の安全の指標は速度に他ならないが、重量も重要な要素であり、
最も重要なのは運動エネルギーなのだ。

運動エネルギーは重量に比例し、速度の2乗に比例する。

噛み砕いて言えば、2倍重い車は同じ速度でも2倍運動エネルギーが大きく、
同じ車でも、速度が2倍になれば運動エネルギーは4倍になるということだ。

補足:ちなみに賢明な読者の方はカーブのとき働くのは「遠心力」ではないか?
    という指摘を受けそうだが、遠心力も重量に比例し速度の2乗に比例するので
    ここでは角速度などの概念を説明する手間の簡略のためにも、あくまで「カーブ進入時の運動エネルギーの比較」
    ということで説明させていただいた。




注:ここでは重量と速度という点にのみ焦点を当て、イメージしやすいように実際に存在する車、
  フィット・パジェロを例にしただけで、これらの車が特段滑りやすい或いは滑りにくいということは全く有りません。




俺の結論としては、冬道においてはFR車よりFF車、FF車より4WD車が有力ということになります。

ちなみにFRが不利な点としては、滑りやすい路面で発進が苦手であることと、お尻を振ることに尽きます。
重いエンジンが前にあり、軽いお尻に駆動輪があるのですから当然です。
僅かな傾斜地でも停止すると動けなくなることもあります。
FF車は重いエンジンの下に駆動輪があるので、多少の傾斜地でも発進可能です。


「得意」とか「最適」ではなく、「有力」という表現をあえて使いました。
ここまで書いてきたように、必ずしも4WD車が冬道に「最適」とは言えない側面もあるからです。
しかしながら、路面状況に応じた適切な運転をすることを前提にすれば、間違いなく4WD車のほうが
安心感は高い
と思います。




でも忘れないでください

  ・4WDでなければ恐ろしくて冬道は運転できないという人もいます。

  ・下手な4WD車よりもFF車のほうが扱いが楽だという人もいます。

  ・FRでも何とかなるという人もいます。


北海道でもFRに乗っている人はいますし、真冬にバリバリFR車に乗っていても事故らない人は事故りません。

ハイテク制御の4WD車に乗っていても事故る人は事故ります。

路外逸脱ぐらいならまだマシな方で、転覆して屋根が地面についている状態の車も
ひと冬に1〜2度見かけます。(^^;


結局はその車を運転する人次第です。

事故を起こして警察に事情を聞かれたとき「俺は悪くない!車が悪いんだ!」なんて言う奴は相当イカレているでしょう。
(ちなみに本当に車が悪いとしても、結局は所有者の整備不良であることが大半です。)

自分の車に合った運転を出来る人は、大抵冬場も大丈夫です。
大切なのは自分の車を良く知り、感覚ではなく最低限の知識を身につけ、身の程を知り過信しないことだ思います。

但し、冬道は自分が全く悪くなくても対向車がスリップして突っ込んできて事故になる危険性が夏よりも格段に高くなります。
そうなれば避けようが有りません。
理不尽ではあるけれど、自分が100点満点の運転していても事故に巻き込まれる可能性はあるのです。


身も蓋もないけれど、「冬は必要以外は車に乗らない」というのが一番の事故防止策かもしれません・・・。(^^;



まとめ

・自分の車の駆動方式と特性について知っておこう。
・4WD車は全て同じではない。
・4WD車は万能ではない。
・車の速度だけではなく重量なども意識しよう。
・冬道は必要以外は乗らないのが一番!



     車は感覚や思い込みや宗教で走っているのではなく、物理で走っているのだ。


(2002年11月16〜17日執筆 11月17日公開)


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