縫い物事始

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3.
どのスタイルブックにも無い襟の形。地味で、当たり前の襟とどこがどう違うの?と聞かれれば、ほら、背中から後ろ襟が続いてるでしょう?前襟をこうやって折れば、変化がつくのよ、と答えられても、見たところ、取り立てて言うところの無い服である。でも、どうしてもこのようなデザインにしたかった。それが素晴らしい形のように私には思えたのだった。 

羽二重に近い絞の浅い縮緬の礼服を手に入れ、丁寧にほどき、洗い、陰干しをし、アイロンを当て、やっと生地にした。テーブルセンターにしたら面白いかもしれないと市のおばさんが言う、何時の時代の物か分からない古い、長さが普通の半分も無い帯の柄面が気に入り、それを裏地に使った。リバーシブルにしたかったのだが布が足りず、別布を袖の裏につけた。今ならばもうすこし工夫して裏も着られる本当のリバーシブルにできたのだろうが、その上着は裏返しては着られなかった。 

これが始めて和布でつくった服だった。それを着て友人と銀座のホテルで食事をしたのだが、誰も私が特別な物を着ているとは思わなかったし、私も気づかれるのを恐れるかのように襟元を閉じ、真っ黒い上下を着ているように見せていた。何か言われるのが恥ずかしかった。その服を作って、結果として、自分が思い描いていたのとは少し違う物が出来てしまった思いがしていたからである。それにはどこか黒衣のような禁欲的で侘しい空気があった。 

とは言え、今になって思えば、この第一作に私の志向が端的に表れていた。ボタンすら隠して装飾性を絶ちながら、裏をも着たいのである。その後自分のために作る物が僧服のように思えるときがしばしばあり、またなぜか私はリバーシブルにこだわるのだった.

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