近年、日本企業の雇用システムに明らかな変化が生じている。従来の内部労働市場を中心とした雇用慣行から、パートやアルバイトもしくは契約社員などの外部労働市場重視へと方向がシフトしているのである。さらに、外部労働市場においても企業との関係性が複雑さを増してきており、企業の人的資源管理は、各従業員のニーズに即した、または雇用契約内容の相違に応じた個別管理の必要性が叫ばれている。それでは従業員の立場から見れば、今後の日本企業が求める人材とは、いったいどのような用件を具備していなければならないのであろうか。以下では、人材スペックというタームを用いて論じることにする。
通常
スペック(spec)とは、ハイテクなどの技術系労働者の採用などで用いられる言葉で、求める人材について必要なスキルや能力を言語化して形式知化したものである。資格や特定分野における知識などが一般的なスペックとして挙げられよう。しかし、このような言語化が容易なデジタル情報としてのスペックではなく、言語化が困難なアナログ情報としてのそれが現在では求められているという。
こうした観点から守島基博氏は、人材流動化時代に求められる人材スペックとして、
@コンピテンシー(competency)、Aコミットメント(commitment)、B組織文化と価値の共有(sharing of organizational culture and value)、Cメタコンピテンシー(metacompetency)、D異端児性(paganism)、の5点を列挙している。第一は、
戦略から導かれる役割遂行能力を指す。自らの市場価値を企業戦略に合致させて、いかに最大限に貢献できるかという役割を現実レベルにフィードバックする変換プロセスを理解する能力である。実務家が一般的に使用する成果を挙げるための能力という意味とは一線を画す。第二は、
目標達成に向けてのエネルギーの投入を示すものであり、換言すれば組織の目標を達成しようとするモチベーションの高さである。これも忠誠心という意味ではなく、個人が組織に関与する程度として捉えることができる。第三は、
個人の行動がより自律的な判断によってなされるための能力である。マニュアルによる一元的管理を超えるためには、個人の価値の共有度が非常に重要な能力であることは言を待たない。第四は、
変革を牽引したり、組織の変化に対応していくための能力である。このスペックの基本は、論理的な思考能力であり、それを明確に形式知化するためのコミュニケーションスキルであることから曖昧なスペックでもある。第五は、
論理的推測が困難な企業の変革に向けてのスラック(slack)ともいえよう。敢えて異質性を企業内部に取り込むことによって、ブレークスルーが起きる契機を意図的に創出するための能力である。
これからの日本企業は、競争優位を構築するための戦略を策定する際に、どのようなスペックを有する人材を、どのような雇用形態で、どのくらい確保していなければならないかということを見極めることが肝要であろう。
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