公園に着く頃には、ちょうど満月が高く上がっていた。公園の中には、街灯はあまり多くはないのだが、月の光のおかげで真昼のように明るい。 「噴水ねえ…どの辺にあるんだ?」 中に入って、昼間来た道を少し歩いたあたりでドールがあたりを見回して呟いた。 「なんか…あっちの方みたいよ。カフェテラスがあって、そこからよく見えるって話だから」 「へえ」 マテリアが指す方を眺めて、ドールはまたぶらぶらと歩き出した。マテリアは、歩調を揃えて歩きながら、すこし言葉に困っていた。 「…今度は、そのカフェテラスにも来てみたいわよね」 「何で?」 ドールが、ちらりと彼女を見上げながら聞く。 「なんか、評判のメニューでもあんのか、そこ?」 「…さ、さあ…それは知らないけど…」 「なんだ」 それきりで、ドールはそのカフェテラスへの興味はなくしてしまったらしい。また、片手をポケットにつっこんでさっきと同じ歩調で歩き出す。マテリアは、ちいさく唇をとがらせてドールを横目で見た。 (…もうっ…なによ、鈍感なんだからっ…) 胸の中でののしりながら、ぷいと視線を横へそらせる。公園の中では、そこここでカップルがそぞろ歩きを楽しんでいる。ベンチで語り合う恋人たちもいる。マテリアなどは、目のやり場にちょっと困ってしまうほどだ。 (…せっかく、二人で歩いてるのに…) 何も、カップルのように振る舞ってほしいというのではないけれど―― (せめて、もうちょっと…優しい言葉…っていうか、何か…女の子扱いしてくれてもいいのに…) ドールの方に視線を戻しかけて、マテリアはふと足を止めた。顔を上げてあたりを見回す。 「どうしたんだ?」 立ち止まった彼女に気づいて、ドールが振り返った。マテリアは、手で静かに、と合図して見せてから答えた。 「…小鳥の声がするの」 「え?」 ドールは一瞬首を傾げてから、自分も耳を澄ませてみた。 「…ホントだ。ひなの声、かな。もう夜なのに――」 「あっちからよ」 マテリアはそう言い切ると、いきなり植え込みをかき分けてまっすぐその奥へ踏み込んでゆく。 「お、おい」 ドールは慌てて後を追った。 「あんま、踏み荒らすなよ。せっかくきれいに手入れしてあんのに――」 「失礼ね、踏み荒らしてなんかないわよ。いいから黙ってて、声が聞こえないじゃない」 肩越しに言い返すと、彼女は少し足をゆるめてあたりを見回した。鳴き声のする方向を見定めると、少し足音を潜めながらそちらへ向かう。ほんの十数歩ばかり歩くと、公園の中では高い方に入るであろう幾本かの木が固まって茂っているあたりに出た。 「――あれだわ」 月の光の中に、一番高い木の根元に転がってぴいぴい鳴いている鳥のひなの姿が浮かび上がっていた。マテリアは急いで歩み寄ると、壊れ物を扱うようにそうっとひなをすくい上げる。 「…木の上の巣から落っこちたんだな」 後からついてきていたドールが、かがんだマテリアの肩越しに掌の中のひなを覗き込んだ。 「…ケガしてるわ。ドール、治したげて」 「ええ?」 ドールは、一瞬きょとんとしてマテリアの顔を見る。 「ヒーリングでか?」 「そうよ。おんなじでしょ、いつもと。ほら」 「しょーがねえなぁ…」 ひなを差し出されて、ドールは苦笑しながら短く呪文を唱えた。目には見えない光が淡くひなの身体を包み、傷ついていた羽を癒してゆく。あっという間に治ってしまった自分の身体に何を感じたのか、ひなは少しの間鳴くのをやめた。 「…小鳥を治すなんて初めてだなー」 しみじみとひなを見下ろしながらドールが言う。マテリアは、くすりと笑って立ち上がった。 「この子、巣に戻してあげなきゃね」 木の上を見上げながら言うマテリアにつられて、ドールも同じ方を見上げる。 「あ、あそこだわ」 言うが早いか、マテリアはドレスの胸元にひょいとひなを滑り込ませて、一番低い枝に身軽に飛びつく。 「お、おい――」 さすがにドールは慌てて彼女を見上げた。 「何考えてんだ、そんな服着てるくせに――」 「関係ないでしょ」 マテリアはあっさりそういうと、逆上がりの要領で反動をつけて枝の上に上半身を乗り出した。そのまま、その枝の上に登ると、手近な枝を足がかりにしてどんどん上へ上がってゆく。 「……ったく…」 ドールは、あきれたようにため息をついて、あっという間に樹上の人になってしまったマテリアを見上げた。 「せっかくあんなドレス着てるくせに、中身はてんでそれとは関係なしなんだからなあ…」 そう呟いてから、くすりと短い笑いを漏らす。 「上、見ないでよねっ!」 怒鳴り声とともに、握り拳の半分ぐらいの大きさの木の実がいきなり飛んできて彼の頭を見事直撃した。うわっ、とぎゃっ、の中間のような叫び声を上げて、頭を抱えてしゃがみ込む。 「頼まれたって誰が見るか、マテリアなんか!」 樹上に向かって怒鳴り返す彼に応えて、また立て続けに数個の実が降り注いできた。 「わわわっ」 慌てて身をかわすが、初めの2個はなんとか間一髪でやり過ごせたものの3つめがまたもや頭のてっぺんに当たる。やはり、運動神経に関してはマテリアの方が一枚上手のようだ。 「…まったく〜…」 しゃがみ込んで唸りながら、ちらりと枝の上を見上げる。もう彼女の姿は、茂った木の葉の間に紛れてしまってちらちらとしか見えない。 「…ほら、あんたの子供でしょ、返したげるから──いたっ!ちょっと、やめなさいってば、こら!」 ぎゃーぎゃーという親鳥の声らしい叫びが、ざわざわいう葉ずれの音と一緒に聞こえてくる。 「痛いったら、こら!なによっ、敵じゃないって言ってるのにっ!」 マテリアが親鳥につつかれながらひなを巣に戻そうとしているらしい。大騒ぎしている声を聞きながら、ドールは苦笑を浮かべた。 (ほんとに、中身は変わんないんだからなぁ……普通の女の子は、あんなきれいなドレス着てる時に、木登りなんてしないよな) そんな風に考えてから、 (…ま、ふつーの男も、ドレスアップした女の子に黙って木に登らせといたりしないかもな) ふとそう思いついて、思わず肩をすくめて笑う。昼間のような、胸の奥の痛みが消えてなくなるわけではけしてないが、そんなふうに笑ってみることで、いくらか呼吸が楽になる気がした。 「じゃね、もう落っこちるんじゃないのよ、おちびさん」 やっとひなを返すのに成功したらしいマテリアの声を聞いて、ドールは立ち上がった。木の真下にいるとまた何を言われるか分からないので、少し離れることにする。がさがさと枝を押しのける音がして、マテリアのピンク色のドレスが木の葉の間から現れた。身軽に枝の上におりてくると、幹に手をついて立つ。 「足、滑らせるなよ」 にやにや笑いながら言うドールに、彼女はちいさくあかんべをしてみせた──と次の瞬間、彼女が足場にしていた枝が、みしりと音を立てて折れかける。 「あっと」 ドールが目を丸くするが、さすがにマテリアは体勢が崩れる前にひょいと手近の枝に飛びつくと、ブランコのように反動をつけてぽんと木から飛び降りた。バネをきかせてふわりと地面に着地する。──と、そこまではよかったが、着地と同時に鈍い音がして、彼女は見事に姿勢を崩してひっくり返ってしまった。 「いっったぁっ」 マテリアの叫び声に、ドールは慌てて彼女に駆け寄る。 「どーしたんだよ、らしくない──」 へたりこんだまま立ち上がらないマテリアが、顔をしかめて足首を押さえているのを見て、ドールはおやという顔をした。 「…ヒール、折れたのか?」 今日は彼女にしては珍しく、ヒールの高いパンプスを履いていたのだが、その右足のかかとが見事に根元でぽっきり折れている。 「…先にけがの心配しなさいよっ!」 マテリアは頬を膨らませながら、情けない声でそう怒鳴った。ドールは苦笑して彼女を見下ろす。 「はいはい、ったく、慣れねー靴はいてるくせにおてんばなことするから…」 そう、いつものように軽口をたたきながらヒーリングをかけようと彼女の方にかがみ込んだ時、彼はふと淡い花の香りをかいで一瞬動きを止めた。 「──あ」 「…え?」 マテリアが、不審げに彼の顔を見上げる。 「…いや─」 ドールは、慌てて彼女の視線から目をそらしながら片膝をつく。すこし、ためらってから、独り言のように呟く。 「…あの、香水…?」 「…え…」 マテリアが、目を見張った。ふわり、と彼女の頬に薔薇色の輝きが灯る。 「……い、今頃気がついたの?…もうっ…」 「…し、仕方ないだろ…んな──匂わなかったんだからっ…」 マテリアは、1、2度瞬きして、ドールの指先に視線を落とした。 (トワレなんてつけたことなかったから……つけるの、少なすぎたのかな…) 足首のひねり具合を見てくれているドールの横顔を見つめて、幾度かためらってからおずおずと、少しだけ耳もとの髪をかきあげる。イヤリングが、ちりんと小さな音を立てた。 「…じ、じゃ、…これも…?」 ドールは顔を上げて、マテリアと視線がぶつかると、慌ててまた下を向いた。 「…それは、分かってた──けど」 「……」 マテリアは、頬が熱くなるのを感じながら、何を言えばいいのかわからなくなって口をつぐんだ。 ドールが、いつもの呪文を唱えると、足首に取りついていた痛みがすぅっと引いてゆく。赤く腫れかけていた足首が、見る間に元の通りに戻ってゆく。すっかり捻挫が治ってしまうと、ドールは掌を軽く広げて、おしまい、といった仕草をしてみせた。 「…ありがと」 いつもの言葉に、いつも以上の想いを込めようと、マテリアは少しゆっくりそう言った。 「どういたしまして」 ドールの返事は、いつもと同じだ。ひざの土を払うと、ひょいと立ち上がる。マテリアもそれを見上げてから、用心深く立ち上がった。ヒーリングのおかげでもう痛みは全くないのだが、靴の高さが全然違ってしまっているので、バランスが取りにくいのだ。ドールは、そのマテリアの足下をちらと見やって苦笑した。 「…しゃーねえな、もう、帰るか?歩けないだろ、それじゃ」 マテリアは一瞬口をつぐんだが、僅かの間をおいてから頬を膨らませて答えた。 「…噴水、見たいんだもの」 どこか、すねたような口調だった。いつもの、強引なものの言い方や、一方的に彼を引きずっていく彼女のやり方とはどこか違う、微かに甘えたような響きに、ドールは戸惑いながら彼女の顔を見上げた。 マテリアは、彼の顔を見ていない。 まだどこか薔薇色に上気した気配を漂わせたまま、ぷいと視線をそらせている。 ドールは、一瞬迷った。靴のことを思えば、まともには歩けそうにないのだからもう帰ろうと言い張った方がいいのだろうけれど―― 「……しゃーねえな」 もう一度、同じ単語を繰り返す。マテリアがちらりと彼を見た。 「んじゃ、ゆっくり行こうか。だけど、おぶってやるわけにはいかないんだから、自分で歩けよ。…手、貸してやるから」 ドールの言葉に、マテリアの顔が、ぱっと輝く。 「…うん」 わざと無造作に差し出した手に、マテリアがそっとつかまる。かかとが折れた右足をつま先立つようにしながら、ひょこひょこと歩き出す彼女を、ドールは左手で支えながら進むのだった。 茂みをひとつ抜けると、そのむこうにいきなり噴水が見えた。小鳥を助けに植え込みの中につっこんだことが、結果的に近道になったらしい。 マテリアは、思いの外噴水が近かったことに一瞬がっかりして──次の瞬間、そんなふうに思った自分にうろたえた。 (…やだ、もうっ──何考えてるのよ) 動揺を振り払うように噴水を見上げて、ふと息をのむ。 夜の闇と月の光の両方を集めて、水しぶきがきらきらと踊っていた。泉水の水面にも、月の影がちらちらと寄っては砕けて、ひとときも静まることのないオブジェを作り出している。 「…わぁ…」 ただそんな声を上げることしかできないまま、ゆっくりと噴水の近くに歩み寄る。 「そこ、ベンチがあるぜ」 ドールがそう言って、彼女の後ろを指して見せた。マテリアは振り返って、素直にベンチに腰を下ろす。ドールはそれを見届けると、自分は座らないでゆっくり噴水を振り返った。月は少し中天を過ぎて、正面から彼の顔を照らしている。マテリアは、影になっているドールの背中を眺めながら、肩越しに見える彼の横顔と噴水とを重ねて見つめた。 少し、風が出てきていた。あたりの木々の葉や、噴水の水しぶきが風に踊らされて音を立てている。ドールの青い髪がその風に揺れるのを見つめながら、マテリアは吹き散らされそうになった自分の髪を押さえた。 ドールは、いつもの帽子を、今日はかぶってきていない。春先のことで、マントもつけていない軽装だ。軽い上着のポケットに片手をつっこんで、黙って噴水を眺めている。 しばらくして、ふと彼が振り向いた。 「…なかなか、いいもんだな」 軽い調子でそう言うドールと視線がぶつかりそうになって、慌ててマテリアは目をそらした。照れ隠しに、ついてもいないほこりを払うかのように、ぱたぱたと袖をはたいてみせる。ドールが、彼女のそんな仕草を見てくすりと笑った。 「どっか破いたんじゃないのか?せっかくの一張羅なのに」 「破いてなんかないわよ──」 言い返しかけて、マテリアは言葉を切るとちょっとスカートの裾を引っ張った。 「……これね、このドレス──エミーとお揃いなの」 「…へえ?」 どう返事していいのかちょっと戸惑って、ドールはとりあえず相づちを打った。 「エミーが結婚する前に、お揃いの服を作りましょうって言い出して──それで、一緒に作ったのよ」 「うん」 ドールのどこか間の抜けた返事に、マテリアはちらりと視線を彼の顔に走らせる。 「形は同じなんだけど、エミーのはうすい紫色なの。──そりゃ、すっごくエミーに似合うのよ」 「そうだろうな、エミーはおしとやかだからこーいう服、似合いそうだよな」 いつものように軽口をたたいて、どうせ私はおしとやかじゃないわよ、と彼女が怒鳴り返してくるのを予測していたドールは、マテリアがちょっと唇を引き結んでうつむくのを見て目をしばたたいた。 マテリアは何か言いかけて、1、2度ためらう。しばらくの後、彼の方を見ないままやっと口を開いた。 「───これ、…やっぱり、似合わないと思う…?」 「……え」 ドールは、一瞬目を見開いて言葉に詰まる。こんな反応が返ってくるとは思っても見なかったのだ。 「…こんな女の子っぽい服──、…変?」 「い、いや──」 ドールは慌てて首を振った。 「んなこと、言ってないじゃん、エミーに似合うだろうって言っただけで──」 いつもなら、そうだな、マテリアにはアーマーが一番似合うんだからな、と笑い飛ばすところだったろうが──つい、それができなかったのは、マテリアの髪を照らす月の光のせいだったろうか。 「…その、…悪くない──と思う、けど」 マテリアが、ほんの一瞬静止してから、ぱっと顔を上げる。今度は、ドールの方が慌てて目をそらせた。 「…嘘」 「べ、べつに――嘘じゃねーよ…なんで急に、んなこと言い出すんだよ」 僅かの間をおいてから、マテリアが息を押し出すような声で言った。 「…だって――ドール、なんか…変じゃない、今日。…つんつんしちゃって」 ドールは、ふと息を止めて彼女の顔を横目で見る。 「…だから、…似合わないから、あきれてるのかなって――思ったんじゃないの」 照れ隠しのためか、語尾が怒ったようにふるえる。ドールは前髪をこすり上げながら、彼女の視線を避けるように俯いた。 (全然逆じゃん──ったく、どこ見て歩いてるんだか…) 町中を歩いている時、周りの人々がどんな表情で自分を見ているのか、彼女は全然気がついていないのだろうか。どこか痛いような、切ない苦笑が浮かびそうになるのを、彼は無理矢理押しとどめて視線を噴水の方に向けた。 マテリアは、ドールがどこか困ったように噴水の方を見やるのを見つめていた。 (…悪くない、って──そう言ったわよね) (じゃあ、どうして、あんなふうに──いつもと違ったの?) しばらく、すこし彼から視線を外したまま黙っていた彼女だったが、ドールが何も言わないのにじれてきて、ちらりと彼の横顔を盗み見た。 「…どうしてよ」 「…え」 ドールが、驚いたように振り向く。 「何よ、聞いてなかったの!?どうしてあんなにつんつんしてたのって言ってるの!」 「…んなこと、してねーよ」 「してたわよ!…妙に、なんだか──よそよそしかったじゃない!」 ムキになっていいつのる彼女に、ドールは困りながらすこし身体を彼女の方に向けた。 「いつもどおりだって。…どこが、どうよそよそしかったってんだ?」 具体的につっこまれて、マテリアは思わず言葉に詰まった。それが言葉にできなくて、さっきから自分でももやもやしていたのだから。それでも、ここで引き下がってしまうわけにはいかない。 「…だから──」 折れたヒールのことをすっかり忘れていた彼女は、彼に詰め寄ろうと思わずベンチから立ち上がる。 「あっ──」 その途端、マテリアはバランスを崩してぐらりと傾きかけた。ドールはとっさに手を伸ばしてその彼女を支える。マテリアは、腕を捕まえてくれた彼の肩に、思わずすがりついていた。 「…かかと折れてるの、忘れんなよ。反対側もひねっても知らねーぞ」 すぐ間近で聞こえた声に思わず顔を上げると、目の前に彼の瞳があった。からかうような、苦笑するような色を浮かべたうすい緑色の瞳。マテリアは、とっさにとびすさって彼から離れると、ベンチに逆戻りした。頬に、音でも立てそうな勢いで血が上るのが分かる。照れ隠しに髪を後ろに払いながら、 「…わ、分かってるわよっ…」 とぶっきらぼうに答える。ドールは、マテリアを支えた方の手をゆっくりポケットに突っ込みながら、もう一度噴水の方に視線を向けた。マテリアが、ためらいながら顔を上げようとした時、ドールが一瞬早く振り返る。 「…あの店の料理のこととかさ、そんなことばっか考えてたから、上の空に見えたのかもな。んな――いつもと違うようなこと、別にないぜ、ほんとに。マテリアの方が、そんないつもと違う服着てるから、なんでもかんでも妙に見えるんじゃないのか?」 「そんなことないわよ!失礼ねっ…」 からかうような口調に、反射的に言い返す。彼女が次の言葉を口にする前に、ドールは声を立てて笑うと軽く伸びをして空を仰いだ。とりたてて何ということのない仕草だったが、マテリアには、ふと彼が会話をうち切ろうとしたかのように感じられた。さっきの言いぐさにしても―― (そんなふうじゃ…それだけじゃ、ないような気がする、けど…) けれど、それを言葉にして彼に問いつめられるほど、彼女も自分が感じていることをはっきり知っているわけではないのだった。 ドールが、今までのやりとりはもうおしまいにしたとでもいった様子で、彼女の方を振り向く。 「そろそろ、帰ろうぜ。もう月があんなとこまで来ちまった」 一瞬彼の顔を見上げてから、言い返す言葉も見つからないまま不承不承に頷く。 ドールは、無造作に近づいてくると、おぼつかなげに立ち上がった彼女に片手を差し出した。 数日後、二人はアレサ城に出かけてきていた。マテリアは武器庫に用があるといってシビルと地下に降りて行ってしまったので、ドールはエミーと一緒に双子の王女の相手をすることになったのだった。 キーナとクルマナはマテリアたちが大好きなのだが、特にドールのことは大のお気に入りで、彼が城に来る時は必ず彼女たちに会いに来なくては承知しないし、来たら来たでまとわりついてなかなか離れようとしない。魔法を教えて、と駄々をこねることもあれば、絵本を読んでもらいたがることもあるし、積み木遊びやままごとの相手までして欲しがって、たまにドールを閉口させるのだった。しかし、おおむねドールは彼女たちの相手をするのを楽しんでいたし、ふたりの成長を楽しみにしてもいた。 「子供って、こんなふうにどんどん大きくなるんだなぁ」 というのが、王女たちの相手をした後の彼の口癖だった。同じことを、シビルの弟、トムの息子の相手をした後にも口にするのをマテリアはちょくちょく聞いていた。ちらりと彼が漏らしたところによると、彼自身はかりそめの命を与えられて目覚めた時、既に今とほとんど変わらない意識を持っていたという。魔法に関する知識や経験、そして、マテリアたちと出会ってから大きく変化してきた感情の面を別にすれば、彼は時とともに成長し、変化してゆくという、人間にはあたりまえすぎる過程をいっさい経てきていないのだった。そんなこともあって、彼は双子の王女との関わりを、もしかしたらマテリア以上に面白がっていたのかもしれない。 今日は珍しく、キーナとクルマナはドールにそれほどまとわりつくことなく、二人で絵本をのぞき込んでゲームに熱中していた。ドールは、二人の傍らにゆったりと座っているエミーと、とりとめのない雑談を交わしながら、キーナたちがたまに話しかけてくるのへ愛想良く相づちを打っていた。 しばらくそんな時間が流れた後、ふと彼は王女たちの様子に目を留めてエミーに話しかけた。 「…キーナたちって、たいていお揃いを着てるんだな」 「ええ、そうね」 エミーがにこにこと頷く。 「エミーも、マテリアとお揃いの服、持ってるんだって?」 「ええ。色違いのね──…あら、よく知ってるのね、ドール。あの服、もうずいぶん着たことがないのに」 「こないだ、マテリアが着てたんだよ、その片割れを」 「まあ」 エミーは、にっこりとドールに笑いかける。 「どう?お姉さんに、とっても似合ってたでしょ?」 「…ああ、まあ──」 ドールは、ちょっと頬をかいて、クルマナたちの方に視線を向けた。 「…馬子にも衣装って言うしな。中身はともかく、あーいうカッコしてれば、元は王女様だって言ってもそんなに笑われないんじゃないか?」 「まあ、ドールったら…ひどいわね、もう」 彼のそんなそっけない言い草にもエミーは慣れたもので、怒るでも咎めるでもなく彼の顔を見てくすりと笑った。 「でも、マテリアも多少は自覚してるみたいだったぜ、そこんとこ。似合わないんじゃないかってずいぶん気にしてたからな」 ドールは、茶化すようにそう言ってから、わざとらしく嘆息してみせる。 「町中じゃ、結構人目引いてたってのに、それもてんで見えてねーんだ。いつもと違う服なんか着てると、平常心までどっかやっちまうんだからなー」 「…あら、あたりまえよ」 エミーは、ドールの言葉を聞くと、胸の前で軽く手のひらを合わせて微笑んだ。 「女の子にとってはね、おしゃれした時、たとえば町のひとみんなが見てくれたって、たった一人のひとがほめてくれなくちゃ意味がないんですもの」 「へー」 ドールは軽く相づちを打つと、キーナがクイズの答えが正しいかどうかを聞いてくるのへ頷いて見せた。 「……」 エミーは、一瞬の後、軽く額を押さえる。 「…あのね、ドール、お姉さんにとってそのたった一人のひとって、ドールのことなのよ」 「…ええ?何で?」 ドールは、心底意外そうに振り向いた。 「僕は一応ほめたぜ、悪かないって。なんで僕がそのひとりとやらなんだよ」 ほんとうに彼女の比喩の意味を分かっていないらしいドールに、エミーは再び額を押さえてため息をついた。 (お姉さんも大変ね…) マテリアの想いを知っている彼女は、片手で頬を押さえながら、娘たちに新しい絵本を渡してやっているドールを眺めた。とはいっても、マテリアが自分の気持ちを彼女に打ち明けたことがあるわけでは、もちろんない。無論、それはドールにしてもそうだ。 世間離れしているとか、姉と違っておっとりしているともっぱら評されてはいるが、エミーは表面にこだわらず真っ直ぐに物事の本質を見抜く聡さに、双子の姉と同じく恵まれていた。その彼女から見れば、彼らの気持ちは言葉になどしなくても、明らかなことだった。俗に言う世間がなんと言おうと、少なくともエミーはそう思っている。 「…それにしても、お姉さんがあのドレスを着るなんて、珍しいのね。前に、私がどんなに誘っても一緒に着てくれなかったのに」 「ああ、こないだリパートンに飯食いに行った時に着てたんだ」 ドールが振り向いて、軽い調子で答える。 「――まあ」 エミーは、少女のように瞳を輝かせると、胸の前で軽く手を打ち合わせた。 「デートね!」 嬉しそうなエミーの一言に、ドールは音でも立てそうな盛大さで前へつんのめる。 「……ちっ…違うよ!ただ、飯食いに行っただけだって!」 「リパートンまで?」 「…だから、おいしい店があるって聞いたから研究しに…」 にこにこしながら聞き返すエミーに、ドールはなぜか防戦気味になる。 「じゃ、お店に行く前は?」 「…ええと、町中ぶらついて、公園をちょっと覗いて…」 「それで、お食事の後は?」 「……噴水見に、また公園に――でも、それはマテリアが見たいって言ったから――」 エミーは、花が咲いたようににっこりと微笑むと、顎の下で指を組み合わせてドールを見た。 「それをね、世間ではデートっていうのよ」 「……ちがうって〜〜…」 ドールは、本格的に床にへたりこんでうめき声を上げる。しかし、エミーはドールの抗議の声など気にもとめずに、嬉しそうに微笑みながら続けた。 「嬉しいわ、やっとあなたたちもちゃんとデートするようになったのね…お姉さん、とっても喜んでたでしょ?」 「…だーかーら〜…」 「きっと、お姉さん、すごくきれいだったでしょうね…分かるわ、ちゃんとデートするなんて、ほんとに今までなかったことですもの」 「…どうしたの?ドール?」 「ドール、おなかいたいの?」 床に突っ伏してしまった彼を、双児たちが不思議そうにのぞき込む。手を振ってなんでもないと合図をすると、ドールはようようのことで身を起こしかけた。その時、ドアが短くノックされたかと思うと、すぐにばたんと開かれる。 「…何やってんのよ、ドール」 いぶかしそうなマテリアの声に、ドールは慌てて跳ね起きた。 「あら、お姉さん!」 嬉しそうな声を上げて立ち上がるエミーを見て、彼はいっそう慌ててマテリアに向き直った。 「マ、マテリア、帰ろーぜ」 「何よ、何言ってるのよ、今ここに来たとこじゃない」 「いーから、帰ろうってば」 「あのね、お姉さん──」 押し問答になりかけた二人の会話に、エミーがにこやかに割って入ろうとした。マテリアを引っぱり出すのは無理だと判断したドールは、急いで方向転換を図る。 「…あ、じゃあ、僕はウルウルのとこに行ってるから!」 言うが早いか、片隅に放り出してあったマントと帽子をひっつかんで脱兎のごとく部屋を走り出てゆく。ドールの後ろ姿を見送って、マテリアはあきれたように首を傾げた。 「……何なのよ、ドールってば」 喜んで飛びついてくるキーナたちに視線を合わせてかがみ込みながら、彼女は双児たちに話しかける。 「変よねー、ドールったら。どうしちゃったのかしらねー」 エミーはドアの方を見やってくすりと笑ってから、傍らのソファに腰を下ろしてマテリアに声をかける。 「お姉さん、もう用事は済んだの?」 「うん、たいしたことじゃなかったんだけど」 マテリアはそう答えると、エミーの横にぽんと座った。 「そう。…ねえ、お姉さん、この間ドールとデートしたんですって?」 「…なっ……」 いきなりのエミーの言葉に、マテリアはあやうくソファから転げ落ちそうになる。 「なっ…な、何言うのよいきなり!してないわよそんなもの!何の話なのよっ」 真っ赤になって否定するマテリアの言葉をにこにこと聞き流してから、エミーはしとやかな──けれど、どこか悪戯っぽい笑顔を姉に向ける。 「あの、私とお揃いのジョーゼットのドレス、着ていったんでしょ?私が一緒に着ましょうよって言っても全然着てくれなかったのに。でも、よかったわね、ドールも、誉めてくれたんですって?」 「だからそんなのじゃないってば!誤解しないでよ、私は別に──」 ますます真っ赤になってエミーの言葉を打ち消そうとしていたマテリアは、ふと言葉を切って息を飲み込んだ。しばらくためらってから、何気なさを装って口を開く。 「……デート、なんて、誰が言ったのよ。……ドール?…が、そんなこと、言ったの?」 不自然な息継ぎが、何気ないどころか看板にして掲げたかのように彼女の心の動揺を現している。エミーは、またくすりと笑ったが、それをからかうのはやめにした。 「いいえ、ドールはそうじゃないって言い張ったけど」 僅かに、姉の肩から力が抜けるのを横目で見ながら、エミーは言葉を続ける。 「でも、誰が見たってデートよね、あれって。ドールったら照れちゃって、素直じゃないんだから、本当に」 そしてお姉さんもね、と悪戯っぽく付け加えようとしたエミーの言葉を遮るように、マテリアはぷいと顎を天井に向けた。 「……違うわよ、ドールはほんとうに──そう思ってないのよ」 そう言ってしまってから、慌ててエミーの方を向き直る。 「…わ、私だって、別にその、デートだとかって思ってたわけじゃないけどっ!…で、でも、なんていうか、その――」 微笑を含んだまま姉の言葉の続きを待っているエミーから、マテリアはまた困ったように視線をそらせる。 「…その、冒険とかじゃなくって、…せっかく、ドレス着た女の子が隣にいるっていうのに、ドールったら失礼なんだからっ…女の子みたいなかっこだな、なんて言うのよ」 「まあ」 エミーは、くすりと笑う。その場の情景が想像できるようだった。 「あっ、ドール!」 「ドールー!」 いつの間にか絵本を放り出して窓から外を見ていた双児の王女たちが、不意に歓声を上げた。にぎやかに笑い声を上げながら、小さな両手を振り回している。 どこか上気した気配のまま天井を睨んでいたマテリアは、王女たちの声に、ふと窓の方に目をやった。子供たちのかん高い笑い声に引き寄せられるようにソファから立ち上がると、窓へと歩み寄る。 この王女たちの子供部屋は、南の塔の半ば近くの階にある。普通の建物でいうと4階くらいの高さだろうか。高い窓枠につかまって、王女たちはやっと顔半分を出して下を覗き込んでいるのだった。 マテリアは、子供たちの後ろから城の中庭を見下ろした。 さっきまでこの部屋にいた、見慣れた緑色の鍔広帽子が、庭の真ん中で立ち止まってこちらを見上げていた。遠いので表情までは帽子の影になって見えないが、王女たちの声に応じて、小さく片手を振ってみせている。 「…なによ、ウルウルのところに行くなんて言ってたのに」 誰にともなく、マテリアは口の中で小さく呟く。 もっとも、今になってみれば彼がなぜあんなに泡を食らってこの部屋から逃げ出していったのかはよく分かる。エミーにからかわれたのでは(もっとも、彼女はからかっているつもりはないとにっこり笑って言うだろうが)、ここに居座る勇気はなかったに違いない。 まあ、もっともマテリアにしてもそれは同じかもしれないが。 照れ笑いめいた苦笑が唇に浮かびかけるのを、慌てて打ち消そうとしていたマテリアは、眼下の光景に動きが生まれたのに気づいてふと視線をそちらへ向けた。 建物の中から、侍女姿の女の子が一人現れて、彼に近づいてゆく。 通り過ぎるのかと見ていると、少女は彼の前で足を止めた。何か話しかけている様子だ。 少女を見上げて答えを返しているらしいドールの仕草に、マテリアはむっと唇を引き締める。 「…エミー、じゃあ、私もそろそろ帰るわ」 彼女はくるりと妹の方を振り向くと、唐突にそう告げた。 「あら、もう?お茶でも一緒にって思ってたのに」 「うん、ありがと、でもまたね」 おっとりと首を傾げるエミーに、せわしくそう告げると、マテリアはソファに立てかけてあった長剣を掴み上げた。 「マテリアお姉ちゃん、帰っちゃうの?」 「今度いつ来るの?」 窓から振り向いて叫ぶ双児に、またくるわね、と微笑みかけると、マテリアはそそくさと子供部屋を後にした。 エミーはそれを見送ると、ゆっくりと娘たちの方に歩み寄っていった。小さなふたつの金色の頭越しに中庭を見下ろす。 「…あら」 そこに見えた光景を瞳に納めると、彼女はくすりと微笑を漏らした。 普段の彼女にしてはかなりの早足で、マテリアは塔の一階のホールに下りてきた。駆け下りるのは何となく癪だったのだけれど、かといってあえて普通の歩調で歩くほどには余裕がなかったと言ったところだろうか。 高い天井に跳ね返る靴音を聞きながらホールを大股で横切ると、彼女は明るい陽の光の降り注ぐ中庭へ歩み出た。 まるで戦いの最中のような素早さで、さっとあたりに視線を走らせる。 探す相手はすぐに見つかった。庭園の中央には美しく整えられた花壇があり、それを囲むように大きな木々が葉を茂らせている。その一本の根元に、ドールは腰を下ろしていた。王宮に来て、後で待ち合わせる時にいつも彼が選ぶのが、この木の根元なのだ。いつからなのかはマテリアも覚えていないが、なんとなくそういう習慣になっていた。 「……ドール!」 あたりには誰の姿も見えないのを見て取って、我知らず少し息をつきながら、マテリアは彼の名を呼んだ。さっきまでの歩調を少し緩めて、殊更に何気ない様子を心がけながらドールに歩み寄ってゆく。 腰を下ろしたばかりだったらしいドールが、おや、と顔を上げるのが彼女の視界に入った。 「なんだ、もういいのか?」 座ったままなので、普段よりも更に開いた身長差を補うべく、大きく彼女を振り仰いでドールが尋ねる。 「う、うん、まあ、挨拶に寄っただけだし」 「へえ?」 あいづちとも疑問ともとれる声を立てながら、彼はひょいと立ち上がった。 「待ってる間、昼寝でもしてようかと思ったんだけどな。まあいーけど」 ばさりとマントをさばく彼を見下ろして、マテリアは金色の髪をふわりと後ろに払った。 「…さっき、誰かと話してなかった?」 「ん?ああ」 ドールは、視線をちらりと王宮の方へ走らせる。 「侍女の子が声かけてきたんだよ。きっと新入りだな」 「…何で分かるのよ」 ドールは、これで結構王宮の侍女たちに人気がある。国王夫妻の親友だというせいももちろんあるのだが、魔法使いであることが面白がられたり、外見のせいで気の置けない話し相手として歓迎されているような所もあった。 けれど、だからといって、まさか王宮中の侍女全員の顔を覚えているわけではないだろうに、どうして新入りだと分かるのだろう―― 不審げに視線を尖らせるマテリアには気づかずに、ドールは短く肩をすくめた。 「だって、僕に『ここで何してるの?迷子なの?』ときたんだぜ」 マテリアは、一瞬目を丸くする。が、次の瞬間、ほっとしたのと憤慨したのを混ぜ合わせたような息をぷっと吐き出した。 「なによ、それ!」 「だから、新入りだろ、多分」 例によって怒るでも気分を害した風でもなく、ドールは軽く笑ってみせる。 「…で?もう帰っていいのか?」 顔を上げてそう聞く彼に、マテリアは頷きかけて――ふと、止める。 視線をちらりと宙に上げる彼女に、ドールが首を傾げた。 「どうしたんだよ?」 「…ねえ、ちょっとモンスター退治して帰らない?」 「はあ?」 いきなりの彼女の言葉に、ドールは思いっきり眉を上げた。 「何だよ、急に」 「いいじゃない、ほら、このショートソード、シビルに借りたの。武器庫の奥にあったのが、こないだ見つかったんだって」 「……試し切りがしたいんだな」 はー、とわざとらしくため息をつく彼に、マテリアは頬を膨らませる。 「けっこういいものらしいから私が使ってみたらどうかって、わざわざシビルが貸してくれたんじゃない!その好意を無駄にしちゃ悪いでしょ!」 「はいはいはいはい、仰せのままに。…んでも、準備してきてないんだから、ほんとにちょっとだけだぜ」 「分かってるわよ」 たちまち上機嫌で頷くマテリアに、ドールはちらりと苦笑を漏らした。ひょいと、いつものように右手を差し出す。 「んじゃ、行くか。どこでもいいんだな?」 「うん」 テレポートするために彼の手につかまりながら、マテリアはまるで今思いついた、といった風に短くドールに囁きかけた。 「…帰り、なんか食べに行かない?」 呪文を唱えようと開いた唇で、ドールはかわりに答えを紡ぐ。 「いーけど、アーマーで寄れるようなとこにしとけよ」 「べーだ」 小さく舌を突き出して唸るマテリアの抗議の声は、ドールの詠唱する呪文の響きに紛れた。 いつも、そんな風に当たり前に隣にいること。 特別じゃない時間の方が、きっとずっと長いのだ。 そして、僅かにあたりの空間が輝き、ふわりと風ではない何かがそよいで通り過ぎ、次の瞬間には二人の姿はそこにはなかった。 王宮の中庭には、柔らかな陽の光が、それまでと少しも変わらず降り注いでいるのだった。 |
