| 水縹遊糸様 |
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『Eye love you.』 聞いてよ。 あいつったら、一度も言ってくれないの。 ひどいと思わない? ・・・・・え?何を言ってくれないのかって? あぁ、ごめん、言わなかった? あのね、一度も『好きだ』とか『付き合おう』とか、そういったこと、言ってくれてないの。 ひどいでしょ? 「ねぇ、キール?」 「んー?」 最近長老達から押しつけられたプロジェクトの為の魔法理論を組みながら、クライン王国で魔導士の最高位に最年少でなった秀才、緋色の魔導士《キール=セリアン》は、一年半前に、自分達の失敗によってクラインに召喚してしまった異世界人の少女《メイ=フジワラ》の言葉に生返事を返した。 「ねぇったら」 「何だよ?」 多少マシな返事を返すが、視線はそのままのキール 「キールたらっ」 「ぅわっ」 耳元で叫ばれ、キールは顔をしかめて立っているメイの顔を見上げる。 「何だよ、いったい?」 「ねぇ」 ペタンと床に座り込むと、メイは頼りな気な瞳で青年を見上げた。 「あのね、キール」 「だから何だ?」 苛立った声で先を促す。 「キールは、私のこと、好き?」 たっぷり一分経過 「・・・・・」 更に一分経過 「キールったらっ」 焦れたようにギュゥッとメイはキールの緋色に染め上げられた肩掛けを握って、苛立った声で答えを迫った。 「・・・・・あ」 「『あ』?」 やっと唇を動かしたキールに、メイはジッと視線を揺るがさない。 「あ」 パクパクと陸に上げられた鯉のように口を開閉したキールは、やっとのことで一つの言葉を言う。 曰く、 「阿呆」 「キールのぶわかぁっ!」 バッターンッ 天を裂く叫びと魔法研究院内に轟く音が静まった頃、一人黄昏る亜麻色の髪の青年がいたという。 「俺にそういうこと、求めるなよな」 怒鳴りつけた勢いで部屋に戻ったメイは、ベッドにダイビングするとバタバタと子供が駄々をこねるように手足でシーツを打ちつけた。 「ばかばかっ!」 悪態を思いつくだけつく。 「魔法おたくの鈍感男っ!!」 最後にバシンとベッドが軋む程に叩いて、メイは仰向けに転がり呟いた。 「キールの、ばかぁ」 ウルリと潤んだ瞳に、冷たい石の天井が映る。 「私を何だと思ってんのよ」 本当は、分かっている。 口べたで、そのくせ魔法の呪文と皮肉だけはスラスラと口に出す彼に、甘い囁きなんて夢のまた夢だってことくらい。 だけど、私だって、 「何にも言ってくれなきゃ、不安だよ」 たった一言でいいから、『好きだ』って言ってくれたら、きっとこんな気持ち、すぐに無くなる。 何時もの、普通の、元気なメイさんに、台風娘のメイさんに、戻れるの。 「・・・・・じゃ、ないよね?」 ポロリと零れた涙に気づかず、少女は言う。 「両想いだって思ったのが、勘違いなんかじゃ、ないんだよね?」 夢のような時間だった。 星と月と、噴水から流れる水が輝いていた、あの時 決定的な一言なんてなかったけれど、初めて見せてくれた笑顔が、和んだ優しい瞳が、言葉でなく言ってくれた。 そう、思ったけれど、 「デートもないどころか、かまってもくれない」 口を開けば、『課題はどうした?』とばかり。 「ねぇ、私、キールの側にいてもいいの?」 冷たい冷たい仮の宿 呟かれた言葉に返事を返す者などいなかった 近々行われる魔導士試験の為の特別授業を受講した帰り、肩掛けを持った魔導士達用の研究館の一角で亜麻色の髪の青年を見かけたメイは、パッと表情を明るくさせるとそちらに向かって駆け出し、 「あ」 思わず止まった足 勢いに倒れそうになった身体を青年の視界から隠して、そっと少女は柱の影から恋人の後ろ姿を見る。 「キール」 秀麗な容貌の前には一人の女性魔導士 肩掛けの色は緋色に準ずるもので、キールと共にプロジェクトの中核を構成する人だと、メイは教えられていた。 そして、知っている。 その女性魔導士が、何時も見つめている先に、亜麻色の髪と緋色の肩掛けが揺れていることを。 『分かってたけど』 腕のなかの教材を抱き締めて、メイは踵を返した。何時までもここにいることは、自分を苦しめることにしかならないと、彼女は痛み増すばかりの自らの胸に教えられたのだ。 『私はただの魔導士見習いで、キールの役に立たない』 にじむ涙は、俯くことで隠す。 『側にいたくたって、いられないっ』 泣き出す前に駆け出した。 コンコン 「メイ?」 授業が終わってしばらく、何時ものように訪れるとばかり思っていた少女がこないことに不審感でも抱いたのか、青年の方が珍しく少女の扉を叩く。 コンコン 「メイ?」 軽く眉をしかめてドアノブに手をかけると鍵はかかっていないようで、意を決してキールはその中に自らの身体を滑り込ませた。 薄暗い部屋 「メイ?」 衝立の向こうに視線を向けると、この部屋の現在の主である少女が眠っていて、 「・・・・・」 何時もの服のままで寝入り込んでいるメイの姿に、微かに口元を緩めかけたキールは、しかし次の瞬間その唇を噛む。 「メイ」 低く押し殺したその声に、小さく少女が呻いた。 「んー?」 ゴシゴシとまぶたを擦りながらメイは腕をついて身体を起こし、ベッドの側に人が立っていることに思わず身を引く。 「・・・・・何だ、キール」 誰かを認識すると、ホォッと安堵のため息をついて、メイは笑った。 「誰だ?」 「へ?」 「誰が、お前を泣かした?」 「ぁっ」 指先が触れた場所には、涙の跡 「・・・・・か?」 「?」 俯いた青年の顔を覗き込むと、翠の双眸が揺るがず彼女を見ていて、 「俺か?」 「・・・・・」 「どうすればいい?」 「どうして、キールだって」 揺るがない瞳が怖くて、視線を反らせながらの言葉を、キールは途中で切った。 「お前、逃げたじゃないか」 「気がついてたの?」 視線は手元で、何処か熱を含んだ女性魔導士の視線にも気がつかない様子だったキール 「・・・・・それは、お前だしな」 思わずドキンとしたのは、恋心 「言って、ちゃんと。安心させて」 ベッドの上で、膝を覆うか覆わないかといった短さのスカートの裾を握り締めた少女が言う。 「私は、キールが好きだから、ここに残ったの」 ポタリと握り締めた手の甲に、水滴が落ちた。 「だから、キールにとってわたしがいらないものだったら、どうしていいのか、わからないのが、こわいの」 唇を噛み締めて肩を震わせる少女に、キールはしばらく何も言わずただ立ち尽くして、やっと動く。 「うーっ」 力いっぱい抱き締めた身体が押し殺した泣き声を零して、尚更青年は小さな身体を抱く手を強めた。 「きぃるぅ」 泣き声が辛くて、そっと栗色の髪に唇を寄せる。 「俺がお前をいらないわけ、ないだろう?」 「知らないよ、そんなの。言ってくれないじゃない」 反論の声の切なさに、心が痛い。 「・・・・・る」 無垢で無邪気な瞳を見返しながらなどは無理だから、きつく抱き締めて、 「・・・・いる」 身じろぐことも許さぬ程に抱き締めて、我がことながら掠れる声に内心何処かで苦笑しながら、 「・・している」 それでも、これは言わなくてはいけない言葉だから、 「あいしている」 耳元で密やかに、だけれど身を焦がす程の熱の籠もったその言葉の繰り返しに、きつく閉じた瞳から幾つもの涙が零れて、何時も青年の肩で揺れている緋色の中に消えていく。 「愛してる」 嬉しくて、嬉しくて嬉しくて、嬉しくて、縋りつくように抱き返す腕 「ねぇ」 「愛している」 「キスして」 「メイ」 「ね、キール」 薄く開かれた唇に、躊躇うようなバードキス 「ん、キール」 誘うような唇に、今度はきつく自分のそれを重ねる。 「愛してる、お前以外、いらない」 そっと身体を離したメイは、すまなさそうにキールを見上げた。 「ごめんね、肩掛け、汚しちゃった」 「かまわない。予備くらいある」 そう言って、涙の分だけ緋の深くなった場所に口づける。 その仕草が何だか恥ずかしくて視線を逸らせるメイの細い肩に、キールは緋色の肩掛けをかけて、驚く瞳から逃れるように耳元に唇を近づけた。 「これはやる。ただ、この肩掛けの緋色は特殊な方法で染められた魔導士の位を示すものだから、部屋以外では着るなよ」 「うんっ」 ギュッと肩掛けを握り締めるメイ 微笑む姿が愛しくて、離れた身体を再び重ねると、キールは囁く。 「お前も早くちゃんと肩掛けを貰え。そうしたら、一緒にここを出よう」 「え?」 「魔導士見習いのうちは、お前は魔法研究院から籍を外すことは出来ないからな。魔導士の資格を取れば、一緒にいける」 「キールの、ラボ?」 それはキールの追い続けた夢の一つの終着点 「だいたいの準備は終わっている。後はお前が魔導士資格をとるだけなんだ」 「私、一緒に行っていいの?」 「そう言ってるだろうが」 「うんっ」 「ね、もっと、言って?」 ねだる声に、彼は言う。 『I Love you.』 END 【御崎より】 いつもチャットで遊んで下さっているキルメイ仲間(笑)、水縹遊糸さんにおねだりして書いて頂きました。 もう、メイが可愛いのなんのって!(*^^*)キールの果報者!(爆)。不安になって涙ぐんじゃう所なんて、しまい込んじゃいたいくらい愛らしいです(*^^*)。 キールも、口べたなくせにそこはかとなく攻めなところが、遊糸さんのキールらしくてとっても素敵…(笑)。あああ、幸せですわーーー!(*^^*)チャットでごーいんに泣き落とした甲斐がありました…(笑)。 遊糸さん、本当にありがとうございました!(^_^)。 |
