SOSO

西都涼様     



 ふと目が覚めると、すぐ傍に恋人の顔があった。
 出逢ってしばらくして見た寝顔は、とても疲れ切った顔をしていたが、今は安らいだ様子でとても気持ちよさそうに眠っている。
 亜麻色の前髪がわずかに乱れ、額に張り付いている。
 眼鏡も耳朶を飾るイヤーカーフも外した寝顔は、何処か幼い。
 その腕にしっかりと、大切そうに恋人を抱き締め、安らかに眠りを貪る青年の鼻先をメイはそっとつついた。
 だが、熟睡しているのか、彼は目覚めない。
 クスクスと笑った拍子にわずかに身じろいだメイは、強い力に引き寄せられる。
「キール?」
 声をかけてみるが、寝息に乱れはない。
 どうやらまだ眠っているようだ。
 大切な宝物を抱き締めた子供のように、彼は無意識に自分から離れたメイを抱き寄せていたようだ。
 恋人の無防備な寝顔に、クスクスと笑っていたメイは、翠の瞳がぼんやりと開けられたことに気付いた。
「…………ん……」
 何処か虚ろな、定まらない焦点をそれでもメイに向けた青年は、まだ寝惚けているのか、ふわりと微笑む。
「……起きたのか?」
「ん♪」
「まだ早い。もう少し寝てろ」
 ぼやけた声で呟いた青年は、枯葉色の髪の少女をさらに自分の懐深く抱き締めようとする。
 いつもなら、その声に従って再び眠りにつく少女だったが、今日ばかりはそうもいかない。
 大切な用があるのだ。
 わずかばかりの抵抗に、眉をひそめた青年は、不審そうに目を開ける。どうやら目が覚めてしまったようだ。
「………………メイ?」
「ダメ! 起きないと。ディアーナと約束あるんだから」
 遊ぶ約束なら、何を置いても優先させてしまう恋人に、不満げな表情を浮かべたキールは背中に回した手をがっちりと組み、少女を腕の中に閉じ込めてしまう。
「もーっ!! 朝御飯だって、作らないといけないんだからね! ただ出来たものを食べてる人と一緒にしないでよ」
 むうっとむくれて言うメイに諦めたのか、渋々ながらキールは腕を解いた。
「まったく! 私よりも寝起き悪いんだから……」
 もそもそと起き上がった少女は、はらりと落ちたシーツに慌てふためき、大急ぎで胸元を隠すと、赤くなりながら恋人を振り返る。
「み、見た?」
「今更慌てることないだろう?」
 仏頂面で呆れたように告げる青年だが、耳が赤い。
「やだっ! 見ないでよっ!! キールのスケベ!」
「スケベって……昨日散々見ただろうが。あの時、おまえ、何も言わなかったぞ」
「むうぅっ……うっきーぃ!! それとこれとは違ーう! もーっ、今から着替えるんだから、絶対に見るんじゃない!」
 顔から首から、肩まで羞恥で真っ赤に染まった少女は、青年の頭の下にあった枕を引き抜くと、それをばふんと彼の顔の上に乗せ、しっかりと見えないように固定する。
「げっ! い、息が……」
 苦しげに呻く青年を無視し、メイは寝台からするりと抜け出すと、大急ぎで着替える。
「見たら、実家に帰ってもらうからね!」
 びしぃっと指を突きつけ、きっぱりと宣言した少女は、再びいそいそと着替え出す。
 普通、こういう場合には、実家に帰らせてもらいますと宣言するのは女性の方であるが、実家なるものが異世界にある少女は、その言葉を封印し、代わりに恋人を実家に追い返すという脅し文句を使っているのである。
 双子の兄といい、実母といい、血縁者を苦手とする青年には、この言葉は非常に効果的であった。
 ピタリと身動きひとつ取らなくなった青年を横目に、メイは着替えを終えると、朝食を作るためにキッチンへと向かった。


 キールが城下にラボを開いてから、数ヶ月が過ぎた。
 滑り出しは非常に順調で、そこそこに名を売り、いい仕事だけを選んできっちりと仕上げるキールのスケジュールを管理しているのは、異世界人の魔導士であるメイであった。
 つい興味深い依頼を受けると、根を詰め、身体を休めることを忘れてしまう青年を心配して、週二日は休日にし、絶対に仕事をさせないようにしているメイに、青年は大人しく従っている。あの、大きな茶水晶の瞳に涙を潤ませて、今にも泣きそうな表情で訴えられると、彼としては全面降伏するしかない。
 よく、彼女の何処に惹かれたのかと、事ある毎に知り合い達から尋ねられるが、彼としては答えようがなかった。小柄で華奢な体格から信じられないほどの元気良さと、華やかな笑い声。粗雑そうに見えて実は細やかな気配りをする優しい性格や、彼の名を呼ぶ甘い声。
 意地っ張りで一本気で、筋を通す気質も、仔猫のように移り気で、何処か遠くを見つめる眼差しも、その存在総てが愛おしいとしか言えない。
「………………」
 王宮の書庫へと立ち寄った青年は、借りていた本を元の位置に戻しながら、ふと恋人がいる第二王女の部屋あたりに視線を向けた。
 早く帰るとは言っていたが、遅くなるだろう事は確実だ。迎えに行くべきだろうかと、しばし思案する。
「あら、キール? キールですの?」
 聞き慣れた甘い声が彼を呼ぶ。
「げっ! 姫」
 彼がひそかに疫病神のひとりだと思っている少女が近くにいるとわかり、身を固くし、思わず逃げかけた青年だったが、メイが彼女の所にいるはずだと不審に思い、彼女を見た。
「やっぱり、メイの言った通りですわ。うふふふふ……」
 何故か非常に嬉しそうに微笑う薄紅色の髪の少女は、しっかりとキールのローブを握り、彼を見上げる。
「……は、放していただけませんか、姫?」
「嫌ですわ。せっかくお迎えに参りましたのに、逃がしては大変ですもの」
「……は?」
 何だか妙なことを言われ、キールは怪訝そうに首を傾げる。
「今からお茶会しますの。キールもいらしてくださいな」
「ですが、俺は……」
「来てくださらないのなら、今日はメイを帰しませんわよ。よろしくて?」
 強気の発言に亜麻色の髪の青年は言葉に詰まる。
 いわゆる『女の子』同士の友情というものには、常日頃、彼としても割り込んでいけない不条理なものを感じているのだ。帰さないと言われれば、彼としては大人しく従うほかない。
「シオンやお兄様、アイシュも来ますの。キールも来てくださいな」
 ディアーナはそう告げると、キールの腕を引いて歩き出す。
「しかし、姫自らお越しにならなくとも、侍女に言伝ればいいでしょう?」
 最後の抵抗とばかりに、キールはボヤく。
「だって、侍女達ではキールに声をかけきれないと言うんですもの。いっつも難しいお顔してるから、怖がられてるんですわ。少しはにっこりと笑ってみると良いんですわ」
 余計なお世話だと言いたげに、王女の言葉を聞き流し、青年はムスリと黙り込んで少女の後に従う。
 幸いにも、誰にも見られずに、二人は彼女の部屋まで辿り着いた。


「あ、キール!」
 青年の姿が見えるなり、メイがお気楽に手を振る。
 その両脇には怜悧高潔にして完璧な皇太子と、有能迅速にして反面教師な筆頭宮廷魔導士が陣取っている。
「よぉ! キール」
「よく来たね、キール」
 実ににこやかな笑みを浮かべ、年長の青年たちが後からやって来た亜麻色の髪の魔導士に、如才ない言葉をかける。
 だが、彼等の表情がしっかりと物語っている。良いところだったのに、邪魔をするんじゃないと。
「キール! こっち空いてるよ」
 遠慮会釈なくシオンを突き飛ばし、無理矢理席を空けたメイが、無邪気に笑って手招きをする。
「ひでーな、嬢ちゃんは」
 少しばかり恨めしそうに、シオンはメイを見るが、少女は全く堪えた様子もない。
 もちろん、本気で言っていたわけでもないシオンも、肩をすくめただけにとどめ、隣の席に座る。
 メイの所業に少々驚きながらも、陶然隣の席を譲る気持ちは更々ないキールは、シオンとメイの間に座る。
「それで、一体何のお話をなさっていましたの?」
 アイシュに手伝って貰い、お茶を煎れたディアーナが、ティーカップを彼等の前に置きながら、無邪気に問いかける。
「あぁ。もし、ひとつだけ願い事が叶うなら、何にするかって、話してたんだよ」
 兄であるセイリオスが、上品にカップを持ち上げ、その香りを楽しみながら、妹の問い掛けに答える。
「願い事、ですの……?」
「そう。ディアーナは、何を願うのかい?」
 優しい口調で尋ねる皇太子に、王女は可愛らしく小首を傾げる。
「そうですわね……わたくしの大切な人達が、幸福に過ごせるようお願いしますわ」
 本当のお願い事は別にあるのだが、それは口に出すわけにはいかない少女は、優等生の答えを言う。
「優しい子だね、ディアーナは」
「そういうお兄様は、何をお願いいたしますの?」
「おまえ達の幸せだよ。民を導くのが私の使命だが、どうしてもおまえ達のことにかまってやれないからね」
 これまた優等生な答えを返したセイリオスは、笑顔のまま親友を見る。
「おまえは?」
「……んー? 願いなんてねーなぁ。大抵すぐにかなうしなぁ。あ! そうそう! 嬢ちゃんが今すぐキールと別れて、俺の恋人になること♪」
 ふざけた男は、ニヤニヤと笑い、ジョークにもならないことを言う。
「……また、この人は……」
 呆れ果て、ズキズキと痛む頭を抱えたキールとは対照的に、双子の兄が弟に代わって不良魔導士に抗議を申し込む。
「いけません〜! シオン様〜!! 冗談でも、そういうことは仰ってはいけません〜」
「俺は、本気だぜ?」
 ニヤリと笑う男は、不敵な笑みを隣に座る後輩に向ける。
「…………ホントに物好きなんだから……」
 呆れ顔で呟くキール。
「にゃにおうーっ!! うきーっ!」
 自分も相当物好きであることを棚上げした青年に、メイがポコポコと拳を振り上げて叩く。
 もちろん、本気ではないだろうが、キールが顔をしかめる程度には痛かったようだ。
「あはははは……で? 嬢ちゃんのお願い事は、何だ?」
 原因である男は、おかしそうに笑うと、興味深げに少女に問いかける。
 その言葉に、枯葉色の髪の少女は待ってましたとばかりにその瞳を輝かせた。
 彼女がそういう表情をしたときには、ロクな事がないと知っているキールは、少々身構えてしまう。
「よくぞ聞いてくれました! じゃーん! 世の中を震撼させる大魔導士メイちゃん誕生! どー? かっこいいでしょ」
 ウキウキとした表情で尋ねる少女に、一瞬、その場にいた全員が身を強張らせる。
「確かに、震撼するな」
 しみじみとした口調で即座に告げたのは、キールであった。
 別の意味でと、付け加えられ、頷いたのは青年二人。
 おほほほほと、乾いた笑い声を響かせる少女がひとり。
「でもっ! メイらしくて、いいと思いますわ」
 親友が爆発する前にフォローを入れられたのは、さすがと言えよう。
 むうぅっと、唸り声を出していた枯葉色の髪の少女は、王女の言葉にひとまず落ち着きを取り戻す。
「とんでもない! こいつに必要以上の魔力を与えるのは、シオン様を後宮に放つのと一緒ですよ。後始末を押し付けられる身にもなってください。冗談じゃない」
 本気で嫌そうな表情を浮かべ、身も蓋もないことを言う青年に、心当たりがあるのか、セイリオスとアイシュが顔を見合わせ、深々と溜息をつく。
「おいおーい! なぁんで、そこで溜息つくんだよ、おまえら。俺に失礼だろーが!」
「ちょっとぉ!! シオンと一緒にしないでよねっ! まだ私の方が分別あるわよ」
 青年と少女、二人同時に喚き、お互いの顔を見合わせる。
「嬢ちゃん、そりゃ、俺に失礼だろ?」
「女性関係にだらしないシオンの例えと同列に扱って欲しくないと思って、何処が悪いのよ!?」
 口達者な二人が揃ってバトルを始めたのだから堪らない。
 立石に水とばかりに、言葉の奔流が溢れ出す。
 彼等の豊富な語彙に、一同呆気に取られて茫然と眺めるだけである。
 しばらくの間、軽い言い争いをしていた魔導士達は、さすがに疲れたのか、肩で息をしながら、ようやく肝心なことに気付いた。
「……大体、キールが悪いんじゃない!」
「そーそー!! おまえが妙なことを言い出すから、俺達が不必要な体力を消耗することになったんじゃねーか」
 今度は、キールを仮想敵と認め、タッグを組むことにしたらしい。
 亜麻色の髪の魔導士は、これ見よがしに溜息をついた。
「人に散々後始末を押し付けて、迷惑かけまくったという自覚がないんですか、シオン様! メイ?」
「はっ…あはははは……」
 さすがに多少の自覚はあったのか、シオンは笑って誤魔化すと、花の手入れの時間だと嘯きながら、そろりとその場を離れようとする。
 キールがちらりと隣に座る恋人に視線をやると、やはり後ろめたいことが沢山ある少女も逃げの体勢に入っている。
「あはっあははは……えーっと…そうだ! 私、夕食の買い物に行かなきゃ! ごめんね、ディアーナ。また今度遊びに来るわ」
 似たような性格の青年と少女は、やはり対応の仕方も似ているらしい。
 笑って誤魔化すと、その場から逃げ出す。
「メイ!」
「確か、今日はお肉が安かったから、ハンバーグにしよっかなー……あ? わきゃっ」
 視線を宙に泳がせ、何とか誤魔化そうとしていた少女は、椅子の脚に足を取られ、蹌踉めいた。
「……メイッ!!」
 慌てた一同が腰を浮かせる。
 さすがというか、やはりというか、恋人のことに関しては、キールが一番反応が早かった。
 メイが転ける寸前に腕を伸ばし、彼女の身体を支えて自分の方へと抱き寄せる。
 ほうっと溜息をついたのも束の間、魔導士の少女は泣きそうな表情で恋人を見上げた。
「足ひねっちゃったぁ!!」
 痛いようっと、潤んだ瞳で見つめられ、キールは大いに慌てる。
「そんなに痛いのか?」
「立てるけど……歩けない」
 意地っ張りな少女が素直に告げたその言葉に、キールは思わず足許を見つめる。
 短いスカートからすらりと伸びた形良い脚を辿り、足首に視線を這わせると、確かに赤く腫れている。
 ここで今すぐにでも手当をしたいのだが、自分以外の男の目があるため、しかも、その内の一人は、非常に危険な存在であるため、迂闊に彼女の素足を晒すわけにはいかないと、即座に判断する。
「メイ、帰るぞ。おぶってやるから」
「え? それはヤ! おんぶはダメ」
 頬を染め、慌てたように否定する少女に、キールは眉を寄せる。
「は?」
「だって、見えるもん!」
 スカートの中がと、ぼそぼそっと小声で付け加えられ、納得する。
 確かに見せるわけにはいかない。
「……ここで治療するより、お家に帰った方がよろしいのね?」
 兄とその親友の不穏な視線に気付いたディアーナが、冷ややかな眼差しを二人に向けた後、親友の恋人に問いかける。
「えぇ、出来れば。ラボになら、薬草なども置いてますし……」
「だったら、すぐに戻られた方がよろしいですわね。お兄様、馬車の用意をお願いしてくださいまし。シオンも捻挫によく効くお薬をご存知なんでしょう? 今すぐ用意してくださいませ」
 キールの言葉にひとつ頷いた少女は、びしりと兄とシオンにこの場を離れるように命じる。
 親友が一番大切な彼女は、メイを守るためなら、何がなんでもやってのけるだけの行動力を発揮する。自分とメイを分かつ恋人であるキールはあまり気に入らないが、兄やシオンとは違って、決して彼女に無体を働くことがないことも、強引に自分とメイの間に入ってこないところも買っている。ならば、この場は彼に任せた方が得策だと計算した少女は、自ら陣頭指揮を執る。
「キール、このお部屋を出て、左奥にある階段から下りるとよろしいですわ。そちらからの方が、裏門に近いですし、人に見られることはありませんもの」
「ありがとうございます。姫」
 ぼそりと礼を述べた青年は、恋人をそっと抱き上げ、部屋を出ていく。
「キール、メイ〜! 後でお見舞いに伺いますから〜」
 おそらく食事の支度が出来ないであろうメイに代わって、夕食の仕度をしてやろうと、心優しい双子の兄が、弟たちに声をかける。
「ごめんね、アイシュ。ありがと」
 大人しく、キールの腕の中に収まった少女が、気の好い文官に向かって返事する。
「──何をなさっていますの、お兄様方。さっさと動きなさいですわ」
 じっと二人を見送っていた青年たちは、ディアーナの冷ややかな声に、慌てて部屋から出ていったのであった。


 王族兄妹に用意してもらった馬車でラボまで戻ったキールは、早速メイの怪我の手当にはいる。
「どーしてそんなにそそっかしいんだ、おまえは!」
 いつもの如く、叱るような口調になってしまう青年は、腫れ上がった少女の足首を見つめ、自分が痛むかのように整った顔を歪める。
「だぁって! あんなトコに椅子があるとは思わなくってさぁ」
 さすがに反省しているのか、口調に勢いがない少女は、仕方なさそうに肩をすくめる。
「俺が間に合ったから、これだけでよかったけど、例えば崖の上だったりしたら、おまえ、今頃女神様の御許だぞ」
「悪かったわよ。今度から気をつけるってば」
「…………何度目の言葉か、覚えてるか?」
「え?」
「そのセリフ! 毎回毎回、今度から気を付けるって、気を付けたためし、一度もないだろーが!」
 不機嫌そうなのは、自分を心配しているせいだとわかっているため、メイも強くはでられずに、さらに申し訳なさそうに小さくなる。
「ホントに、気を付ける。約束する」
「何日持つか、賭けるか?」
 胡散臭そうな表情で告げる恋人に、ムッとしたメイは大きく頷く。
「よっしゃ! 賭けてやろーじゃないの」
「何を賭けるんだ?」
「んーっと……負けた方が、勝った方の言うこと、一週間、何でも聞くコトっていうのは?」
 売り言葉に買い言葉的要素に弱い少女は、深く考えもせずに適当に思いついたことを口にする。
「何でも、ね。わかった。俺は三日だ。三日保たない。おまえは?」
「一週間! 一週間は保つと思うわ」
 すました表情で笑う青年に、もしかして失敗したのかと、自分の言動に不安を持ちながら、それでもメイは強気な表情できっぱりと言いきる。
「一週間、気を付けろよ」
 やけに嬉しそうな表情で告げたキールが、湿布薬を布に塗りつけ、メイの足首に貼る。
「さてと、一週間、何をしてもらおうかな」
 すでに賭けに勝ったつもりでいるらしい青年が、上機嫌に包帯を巻く姿を眺めた少女は、自分の浅はかさをひそかに呪った。


 その三日後、青年の予告通り、実験中に軽い火傷を負ったメイは、それから一週間の間、人前に姿を現わさなかった。
 ついでに言うと、キールのラボもその一週間は臨時休業となり、やはり魔導士の青年の姿を見たものはいなかった。
 その間のことを、彼女を心配した王女と女騎士がいくら尋ねても、メイは頑として口を割らなかったらしい。
 彼等の空白の一週間を知りたがる者はかなりいたが、真相を突き止められた者は誰一人としていなかった──

− END −


【御崎より】
ひそかに通い詰めている西都さんのページで、4500のキリ番を踏んで、頂いて
しまいました(*^^*)。
西都さんのお書きになった「ラプソディ」の中のキールとメイが大好きで、あんな風
なふたりをぜひ、とお願いしたら、こんなにツボなキルメイを書いていただけました。
メイを中心ににらみ合う男性陣+ディアーナ、そして一向に分かってなくてキールに
らぶらぶなメイ(笑)。もちろんキールはメイにぞっこん。くはーー幸せ!(*^^*)

結びの2行、知りたいのは我々もです!(笑)(←勝手に人称代名詞を複数形に
するし…(^^;)で、でも、きっとみなさま同じお気持ちだと思うわ!ね?ね?!(笑))