| - 特報 - |
The Stag-beetles from "Miyagi" - Lucanus maculifemoratus maculifemoratus - gynandromorph ミヤマクワガタ雌雄モザイク |
平成21年8月23日夜、当ホームページ経由で一通のEメールが届いた。 話の概要としては、奇形のミヤマクワガタを採集したということと、周囲に詳しい人が居ないので個体を見てほしいというものだった。話の詳細では、どうやら右半分が♂、左半分が♀という状況らしいので、雌雄モザイクであろう想像はできた。 私自身、生きている雌雄モザイク個体は見たことがない。大変興味深い。拝見させていただくため、ご報告をいただいたO.T氏にお返事メールを送りつつ、お互いの都合などの調整に入った。 O.T氏は幸い、私の職場からも赴きやすい所にお住まいであったため、数日後にはお会いできることとなった。仕事を終える時間が私のほうが遅いため、私からまず電話をし、待ち合わせ場所に向かうこととなった。 現地で待つこと数分、O.T氏のクルマが私のクルマの隣の駐車枠へ滑り込んだ。自己紹介を済ませ、早速ながら、例の個体を拝見する。 |
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| おぉ、これは正しくギナンドロモルフ!O.T氏が持参した飼育ケース内では、明らかに雌雄モザイクと判るミヤマクワガタが歩き回っていた。 採集地は宮城県中央部某所の樹液(8月23日)とのことで、私も樹液やら灯下やらでミヤマクワガタを採集したことがある地域。その木は今年見つけたポイントで、多少ヤブを掻き分けた先に立つ木とのこと。木を見つけた日にはコクワガタが居り、次の採集時にはアカアシが居り、次いで大型ノコギリ♂が付いていて、その木での都合4回目の採集で今回のミヤマクワガタ雌雄モザイクが付いていたそうである。しかもなんと、O.Tさん自身初採集となったミヤマクワガタが雌雄モザイク個体だったというオマケが付いた。 最初は、ケンカ負けした♂なのかなと思ったそうである。実際手にしてみると異様で、♂と♀が混ざったような形態。採集直後はTシャツなどに掴まらせようとしても掴まってくれなかったということであった。 雌雄モザイク個体(gynandromorph)は、性染色体異常によるものと推測されている。卵細胞からの細胞分裂、個体としての形が形成されていく体細胞分裂の過程で異常が生じ、異常の起きた部分やそれ以降に分裂形成された部分などが、元の性とは異なる特徴で発現し、形作られると言われている。 実際にお会いしたO.T氏は、子供のためにカブト・クワガタ採集を始めて2年目ということだが、たまたま周囲にクワガタに詳しい人が居なかっただけで、その他のアウトドア関係の趣味などにも広く見識を持つ方だった。年代もほぼ同じく、地元出身の方でもあるため話題は楽しく、そして尽きず、3時間近くも立ち話をしてしまうことになった(笑)。 O.T氏のご厚意により、本個体は当方が預かり、標本としてお戻しすることとなりました。貴重な個体を存分に観察できる機会を与えていただいたO.T氏に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。 |
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| 左半分は完全な♀、右半分はおおよそ♂の発現を見せている。仰向けで見ると、脚部のほとんどは♀特徴だが、僅かなアンバランスがあり、多少は♂の形質が混じっているようである。また、歩行中に右前脚と右中脚の爪先が絡まってしまうことが観察された。形成異常による障害なのか、神経的異常であるのかは判らないが、明らかに爪先の機能障害が認められた。 |
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| 頭部は、♂側の所々に♀特徴が点在している。このため、アゴの形成も素直にはならなかったようで、下側へ大きく湾曲したものとなっている。 |
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| 前胸部背面。♂側にやや多めに♀形質が斑状に発現している。 |
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| 小楯板から上翅会合線付近は綺麗に♂♀が分かれている。♂側の上翅は、外側部分で再び♀形質に分かれていて、尾部先端まで分かれ目は続いている。上翅は♂♀の形質形状の差で長さも異なっている。 |
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| ♂側の様子としては、♂形質が強い部分、♂と♀の中間形質のように斑状に形作られた部分、♀形質が強めに出ている部分などが各所に見受けられる。アゴはかなり下方へ湾曲してしまっている。 |
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| ●2010.1.16追加 |
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| 標本作製協力 : Weaponshouwa氏 |
| 生体は撮影後ほどなくして死亡してしまっていた。摂食行動に積極性が見られなかったことが一因していると思われた。私の標本作製力でこの個体を残すのは無謀とも考え、以前ブログにコメントを頂戴し、以後も定期的に他ブログなどで接点を持ち続けていたWeaponshouwa氏に託すこととした。なお、この個体は生存時に右前脚に機能障害が認められていたが、死亡後に呆気なくその右前脚のフセツが脱落してしまい、その修復技術等も勘案すれば結果的にW氏に託すことは今の私にとって最善の選択となったのである。 2010年となって早々に、Weaponshouwa氏と再会し、完成した標本を拝見する。見事なまでに整えられた個体を見、やはり脚部は左右で微妙ながら異なっていたことを再認識。あらためて偶然がもたらしたとは言え奇跡の一個体なんだなぁとしみじみ思う。おまけの標本もいろいろと詰め込まれた標本箱を眺め、きっと採集したO.T氏のお子さんも喜ぶだろうと感じつつも、その時一番楽しんでいたのは紛れもなく私だった。Weaponshouwa氏との2009年総括的な話やら昔話をマクドナルドで閉店まで続け、今年は実践のアウトフィールドでお会いする約束をし別れた。 そして、採集者O.T氏に標本となった本個体をご披露目する日が訪れた。この時もマクドナルドを利用してのブツの受け渡しとなり、席を確保してすぐ標本に見入った。簡単に経過説明などをしていると、偶然か何なのか?O.T氏自身も予測していなかった奥様&お子様たちとの店内鉢合わせという珍事も起こった。とても元気で明るいお子様たち。どうぞこれからもクワガタライフを楽しんでいってもらいたい。 本個体と引き合わせていただいたO.T氏、修復を伴う標本化にご協力いただいたWeaponshouwa氏に、心より御礼申し上げます。 |
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