国家犯罪への向き合い方

投稿先: AML
タイトル投稿日
国家犯罪への向き合いかた(Re: 朝鮮反戦運動の前進のために)2003.06.20
Re: 国家犯罪への向き合いかた(Re: 朝鮮反戦運動の前進のために)2003.06.21
Re: 国家犯罪への向き合いかた2003.06.22


Date: Fri, 20 Jun 2003 00:44:38 +0900
Subject: [aml 34616] 国家犯罪への向き合いかた(Re: 朝鮮反戦運動の前進のために)

高橋亨です。

in [aml 34565], 水元さんwrote:
>高橋亨さんへ
>
>国家犯罪である拉致事件で、多くの人が判断を誤ったのは(日本の朝鮮総連の人間で
>すらほとんどそうであったようです。今、在日の間では総連のようなものでなく、き
>ちんと北朝鮮政権を批判できる別種の組織を立ち上げるべきだとの意見が多く出てい
>るようです)、拉致をする本来の意味が違っていたからです。
>たとえば一番よく理由にあげられた「日本語教師にする」「スパイなどの養成におけ
>る日本の習慣作法などの伝授」というのは、いくらでも日本から帰化している人々
>や、また「日本人妻」と呼ばれている人々がいるという現実から考えても整合性の
>まったくないものでした。


 大韓航空機爆破事件やラングーン事件によって北朝鮮政府の犯罪性は誰の
目にも明らかになりましたが、それでも「拉致疑惑」だけは容易に信じがた
いものでした。そんなことをして北朝鮮に何の利益があるのか分からない、
まったく不合理な行為だからです。

>しかし、拉致事件の一端が明らかになってみてみれば、拉致を行った背景には、北朝
>鮮においては民族に他国の血が混じることを「よしとしない」(これは政権が国を統
>制するのに利用する、きわめて政治的なものであるような気がしますが)不文律のよ
>うなものがあったのが大きな動機になっていたことがわかったのです。北朝鮮が政治
>的に利用している人々に「配偶者」を与える理由でも拉致は行われていた、というも
>のです(僕はこの時点で、北朝鮮は国としては破綻していると思います)。


 そんな説があるのですか? 仮にそれが理由の一つだったとしても、それ
ではなぜ日本人の拉致などという不可解な行為を北朝鮮政府が始めたのか、
その根本的理由の説明がつきません。
 私は、在日帰国者やその日本人配偶者がいくらでもいるのにあえて拉致な
どをやったのは、自発的に北朝鮮に渡ってきた人間を、まさに「自発的」に
来たという理由で北朝鮮政府が信用しなかったせいではないかと疑っていま
す。しかし、もちろんこれも憶測に過ぎないので、命令責任者の証言を含め
た真相究明がなされない限り、本当の動機は分からないとしか言いようがあ
りません。

>北朝鮮内のメディアでは、日本国内の拉致事件に関する(核問題もそうですが)批判
>の高まり、怒りを、「反動分子の扇動」というような言い方で報じていて、また信じ
>られないことに実際ほんとにそう考えているようにも見受けられますが、これはまっ
>たく間違った認識であると思われるので、こういうことはきちんと、北朝鮮に伝えら
>れる人が伝えるべきだと思います。


 そもそも北朝鮮のメディアは、拉致を事実と認めて金正日が謝罪したとい
うこと自体、まったく報道していません。前提となる事実を伝えていないの
だから、必然的に日本国内の反応はすべて「反動分子の扇動」で片付けるし
かなくなるわけです。
 また、今の体制が続いている限り、政府の宣伝機関でしかない北朝鮮のメ
ディアが政府に都合の悪い事実を伝えることはないでしょうし、「北朝鮮に
伝えられる人」(って、北朝鮮政府に何らかのパイプを持っている人間とい
うことですか?)が何を言ったところで、それが報道に反映されることなど
ないと思います。
 しかし、飢餓を逃れて中国側に脱出してきた難民のかなりの数が、残して
きた家族の命をつなぐための金と一緒に、中国で韓国のテレビなどから得た
大量の情報を北朝鮮に持ち帰っています。北朝鮮の情報鎖国は恐らくここか
ら崩壊していくことになるでしょう。

>”戦時の日本の北朝鮮に対する行動”と言いますが、北朝鮮が拉致事件で誠意をもっ
>て対処しないのであれば、当時の日本、またその後の北朝鮮に対する日本の政府とそ
>れは同じであり、北朝鮮にはそれをどうこう言う権利も資格もなくなるということを
>きちんと伝えるべきです。ですので、拉致事件や核の問題に関しては、いくらきびし
>い批判をしてもよいと僕は考えます。そのほうが北朝鮮のためになるからです。無論
>それは未来をも考慮した前向きで理性的なものでなければならないと思います。そう
>でなければ今の不幸を助長するだけのものになります。


 そもそも、朝鮮半島の植民地支配以来今日まで行われてきたさまざまな犯
罪行為を、「国家対国家」「体制対体制」の枠組みでとらえてしまうこと自
体が根本的におかしいのではないですか?

 拉致被害者の人権を蹂躙したのは北朝鮮国家です。
 強制連行・強制労働や軍用性奴隷制度によって(より広く言えば植民地支
配それ自体によって)膨大な数の朝鮮人の人権を蹂躙したのは日本国家です。
 在日一世たちを日本に生活の場を求めざるを得ない状況に追い込んだ加害
者は日本国家であり、在日の苦難に満ちた戦後史から言えば日本国家も北朝
鮮国家も韓国国家もすべて加害者です。
 朝鮮戦争で殺人と破壊の限りを尽くした加害者は北朝鮮国家とアメリカ国
家と韓国国家であり、ソ連国家、中国国家、日本国家もその加担者です。
 自国民を日本や西ドイツから拉致して死刑判決によって脅迫し、また民主
化を求める多数の人々を逮捕・拷問・殺害してきたのは韓国国家です。
 自らの失政によって百万人単位の餓死者が出るような事態を招いておいて、
難民の国外脱出を許さず、強制労働キャンプや収容所にぶち込んで虐待して
いるのは北朝鮮国家です。
 すべてが国家犯罪であり、被害者たち個人の人権を国家権力が侵害した重
大人権侵害事件です。

 ならば、どの犯罪行為についても真相究明、被害者の救済と原状復帰、そ
して加害者(実行者と命令責任者)の処罰を求めるという原則に従って対応
していくのが当然ではないでしょうか?
 これは右にも左にも言えることですが、ある特定の国の犯罪行為は口を極
めて糾弾するのに、別の特定の国がやったことだと庇いだてしたり口ごもっ
てあいまいに済ませたりするのはおかしいじゃないですか。

Date: Sat, 21 Jun 2003 00:41:22 +0900
Subject: [aml 34628] Re: 国家犯罪への向き合いかた(Re: 朝鮮反戦運動の前進のために)

高橋亨です。

in [aml 34624], 水元さんwrote:
【中略】
>>そもそも北朝鮮のメディアは、拉致を事実と認めて金正日が
>>謝罪したということ自体、まったく報道していません。前提
>>となる事実を伝えていないのだから、必然的に日本国内の反
>>応はすべて「反動分子の扇動」で片付けるしかなくなるわけ
>>です。
>
>たしか「反動分子の扇動により、もう決着がついた拉致事件を騒ぎ立てている」とい
>うニュースは、北朝鮮の自国内向けのものもあったのではないでしょうか。この
>ニュースは同時に従軍慰安婦などのことに言及しているのですが、日本のNHKなど
>で紹介される時は見事にそれが省略され、「反動分子の扇動により、もう決着がつい
>た拉致事件を騒ぎ立てている」と北朝鮮は報道で言っているとなるのですが。


 今年4月に北朝鮮から中国に渡河してきたばかりの脱北者(30代男性)は、
石丸氏から拉致問題について聞かれて、「拉致? 日本に朝鮮の青年を強制
連行した問題の話ですか?」と聞き返したそうです。昨年9月の小泉訪朝に
ついては、「過去の植民地支配の清算と従軍慰安婦問題で謝るために、小泉
が金正日将軍様をわざわざ平壌まで訪ねてきたと報道していたし、党幹部が
集会などで説明していた」とのこと。
 そして、金正日自らが拉致の事実を認めて謝罪したことについては、「…
初めて聞きました。罪なき人を拉致した事実や、金正日将軍が謝ったなんて
ことが知られると、権威が失墜しますから。人民には教えられないんでしょ
うね…」です。

Date: Sun, 22 Jun 2003 10:14:05 +0900
Subject: [aml 34646] Re: 国家犯罪への向き合いかた

高橋亨です。

in [aml 34633], 水元さんwrote:
>> 朝鮮半島の植民地支配以来今日まで行われてきたさまざま
>> な犯罪行為を、「国家対国家」「体制対体制」の枠組みで
>> とらえてしまうこと自体が根本的におかしいのではないですか?
>
>僕が書いていることは犯罪を「国家対国家」の枠組みにはめるということではな
>く、”国家が被害者のために代わって交渉をする”という意味で「国」という単位を
>使っています。


 枠組みの話は、決して水元さんがそうだ、という意味で書いたのではなく
て、右も左もそういう傾向が強すぎる、という一般論で書いたものです。誤
解を招くような書き方をしてしまってすみませんでした。

>けれど、戦時の日本の行為にしろ、また北朝鮮の拉致にしろ、行為を
>行った側は国や民族の違いを単位として分けて行っており、またその問題を加害者と
>被害者が解決するなかで、国家が果たす役割や義務などを考えますと、「国家対国
>家」の枠組みも実態のないものではないとも思われます。


 もちろんそうなのですが、その枠組みにとらわれていると見えなくなって
しまう被害者や加害者がいます。例えば日本軍性奴隷問題で言えば、日本人
元「慰安婦」たちや、同胞女性を日本軍に売って甘い汁を吸った朝鮮の男た
ちなどです。

>> どの犯罪行為についても真相究明、被害者の救済と原状復帰、
>> そして加害者(実行者と命令責任者)の処罰を求めるという
>> 原則に従って対応していくのが当然ではないでしょうか?
>
>その通りだと思います。
>それからゆくとサンフランシスコ条約などはおかしいということになります(特に首
>相が靖国神社に参拝をするのであれば。というのも、日本の戦争犯罪は一部の指導者
>階級にあったものとされ、それらの者を罰することで日本は賠償などの責を負わない
>ことにする、というのがその条約だったからです)。もっともこの条約は被害国が参
>加しないなかで行われていますが。
>また韓国と日本との間の、経済援助で全てを御破算にするという決着の仕方もおかし
>いということになります(しかし、昨年の平壌宣言などはそれと同じ方式ですね)。


 日韓請求権並びに経済協力協定[1]にはこう書かれています:

| 両締約国は,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益
| 並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が,千九百五十一年
| 九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条
| (a)に規定されたものを含めて,完全かつ最終的に解決されたこととなる
| ことを確認する。


 一方、日朝平壌宣言[2]にはこうあります:

|  双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じ
| た事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄す
| るとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議するこ
| ととした。


 この二つが言っているのは実質的に同じことです。どちらも、日本政府が
相手国の軍事独裁政権に金を与えて、被害者の声を黙らせるということ。

 日朝平壌宣言でまともな謝罪も賠償も放棄した金正日は、朝鮮民族の血の
歴史を金で売り渡した文字通りの売国奴、民族の裏切者だと思うんですが、
なぜかこの大問題を指摘する声はほとんど聞こえてきません。
 かつて同じことをやった朴正煕は口を極めて非難されたのに、どうして金
正日は非難されないんでしょうか? まったく不可解なことです。

[1] http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html
[2] http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html

[ HOME ] [ UP]