Date: Wed, 17 Mar 1999 18:33:26 +0900
To: aml-stove@jca.ax.apc.org
From: ykaoru@tku.ac.jp (Kaoru Yamasaki)
Subject: [aml-stove 163] 西岡さんの本

 なぜか西岡さんの『アウシュウィッツ「ガス室」の真実』が、私のところに送られ
てきました。
 私は否定派のものは、絶対に買わない主義ですので(彼らにわずかでも印税が入る
のはがまんできません)、助かりました。木村さんの本は図書館のものを利用してい
ます。
 ざっと読んでみたのですが、使っている資料が共通しているため、あまり面白くな
かったというのが感想です。それでも頂いたので、Webページで基本的な点について
はでたらめを指摘するつもりです。
 欧米の否定派がホロコーストをイスラエル建国と西ドイツ戦後賠償につなげて攻撃
する手口を木村さんは実に忠実になぞっているのに、西岡さんはイスラエルによるパ
レスチナ民衆抑圧とずっと強く結びつけていることが、かなり違いとして眼につきま
した。戦後補償の問題はあまり出てきません。
 でも、そんなにパレスチナ民衆に肩入れするなら、こんなでたらめ本を書かないで、
イスラエルによるパレスチナ民衆の抑圧の歴史について書けばよいのに・・・

 そろそろ個別の事実についてだけでなく、日本でなぜこの時点で否定派が登場して
きたのかを、考える時期になっていると思います。
 そのさい、欧米の否定派がラシニエ以来、つねに反ユダヤ主義を反シオニズムだと
系統的に偽装し、それによってイスラエル国家へのさまざまな立場からの批判を、み
ずからの陣営に吸収してきたことが、まず考慮されるべきだと思いますが、同時に、
日本の事情としては、アジアの民衆への民衆への戦時補償の問題との関連も重視しな
ければならないのではないでしょうか。
 特に木村さんに顕著なことですが、犠牲者=ユダヤ人への補償を攻撃するなかに、
彼の主観とは独立して、日本が抱えている戦時補償、したがって戦争そのものの重荷
から解き放たれたいという願望が、透けて見えます。
 この点で、小林よしのりや「自由主義史観」が、敗戦と戦後という歴史から逃れた
いと希求することと、否定派は土台を共有していると思います。もちろん、戦後民主
主義のすべてを肯定するつもりはないし、むしろそれに部分的にではあっても反逆し
てきた個人史がありますが、議論に賭けられているのは、戦後という時代区分そのも
のです。このことは、もう少し考えてみます。

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Kaoru Yamasaki(山崎カヲル)
Faculty of Communication Studies
Tokyo Keizai University
ykaoru@tku.ac.jp


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