そっとJAZZ
Jazzが好きなのです。青年期から、今に至るまで、自分の趣味の根っこのような気がします。その気持ちを十年ほど前に小さな連載にしました。先日ふと気がついて、その文章をここに載せることにしました。幼稚な表現ばかりですが、今でも感じていることは変わりません。なお、一部加筆修正をしました。
Charlie Parker
店のドアを開けると、すばらしく太いSaxの音が聞こえてきました。一瞬、tenorかと思ったのですが、まぎれもなくBirdの "Confirmation"「Now the Time(Verve)」 です。Birdのaltoがこんなに厚いとは知らなかった。
BirdはDial盤やSavoy盤が有名で名演と言われ、Verve盤の評価はやや低いように思われます。しかし、正直言って私には前者の良さがどれほど際立っているのか分かりません。演奏全体がわずかに2〜3分で、Birdが吹いているのは、その中の一部、2〜3コーラスです。すごいフレーズの連続なのだろうとは感じるのですが、その素晴らしさが本当に分かっている人の1/3も分かってないのでしょう。
学生時代にはJazzを聴く「ミエ」だけで、Birdのレコードを集め、フレーズを覚えていました。そんな私に、一関の「BASIE」の音は、初めてBirdを身近にしてくれました。感謝!
自分の身の丈にあった聴き方をしようと、今ではVerve盤が中心です。
John Coltrane
薄暗いジャズ喫茶で、クッションのバカになったイスにすわり、コーヒーの香りとタバコの煙にとりまかれ、首を右前方32度15分程にかたむけ、眉間にしわを作り、求道者の如き面持ちで「Transition」に感性を、精神をゆだねている。そんな昔かたぎの聴き方が主流派的「正しい」Coltraneの鑑賞法であるとすると、住みなれた自分の部屋で、座椅子に座わり、「いいちこ」の水わりを片手に、足を投げ出し、ニヤッとしながら「Ballads」を小耳にはさんでいる。こんな聴き方もいいですね。年とともに後者が増えてくるようです。時には「A Love Supreme」や「in Tokyo」まで、そうやって聴いてしまいます。
もしもColtraneとつき合ってみようとされるならノスタルジックな方は、「Blue Trane」あたりから、若い方はMiles時代の「So What」などを、そしてハードにせまる方は「Cresent」以後がどうでしょうか。
ところで、今までに一番良く聴いたのは、「Selflessness Featuring My Favorite Things」の "My Favorite Things" です。特にMcCoy TynerのピアノソロのあとのColtraneは、何度聴いてもいいものです。
Bill Evans
高校3年の時、初めてJazzのレコードを買いました。難しそうなものを身近かに置くことで、ちょっとした優越感を持ちたかったのです。しかし、聞きかじり程度でしかJazzを知らない田舎育ちの私は何を買っていいのかわからず、本屋で見つけた「Swing Journal」誌で「Gold Disc」として推薦されていた「Portrait in Jazz(Riverside)」を貴重なこづかいをはたいて‥‥ではなくて、祖母からお年玉を前借りして買ってきたのでした。そうそう、「Gold Disc」のシールをわざわざジャケットに貼って、よろこんでいました。かわいいもんですね。
そんなにレコードも買えないので、何回も何回も聴くことになって、初めはチンプンカンプンだった演奏にも”慣れ”てきて、”いいもんだなあ”と感じ始めました。
最初の出会いが大きな理由でしょうが、彼のレコードはRiverside盤、それもScott LaFaroとの演奏が一番好きです。「Waltz for Debby」「Exploration」「Sunday at the Village Vanguard」そして、「Portrait in Jazz」です。同じRiverside盤でも「Interplay」とか「Everybody Digs B.Evans」はどうも針を下ろす回数が少なくなります。ましてやVerve盤や70年代の演奏は”エイッ”と気合いを入れないと聴けなくなってしまいました。
B.EvansとS.LaFaroの演奏への思い入れは、高校3年生の生活への気恥ずかしさを混えた甘い郷愁と無縁のものではないでしょう。「Waltz for Debby」などで聞こえるVillage Vanguardのお客さんのマナーは評判が悪いようですが、あのナイフやフォークの音、それに高笑いさえ、私の耳には心地良く響いてくる程なのです。
Chick Corea
あのカモメのジャケットと、エレピの音。そしてかわいたベース。クールなフルート。彼には、いつまでも「Return to forever」のイメージがついて回ってしまうのは、1970年頃からJazzを聴くようになった人の何人かに共通ではないでしょうか。
大学の頃はバイト代をすべてレコード購入にあて、生協のレコード売場に日参しました。今から思うと、Jazzのレコードを集めるコレクターマニアの面もかなりあったようです。レコードケースが増えていくことに、喜びを感じたみたいです。そんなお金と暇があるのなら、当時はまだ多かったJazz喫茶に行って、もっともっと多くの演奏を聴いて、耳を良くすべきだったと思います。
当時Coreaの「カモメ」を気に入った私は、すべてのCoreaのレコードを集めようとしました。しかし何も分からないので、雑誌の記事だけで、聴かずに買いあさりました。おかげで評論家という方々が良く理解できたように思います。
それらの多くは今でもちょくちょく聴きますが…、あの「Circle」のレコードは、ケースの中でまさにほこりをかぶっています。さて初期の演奏では「Now He Sings Now He Sobs」が好きですし、Return to forever時代のものでは「Light as a Feather」が良いです。良し悪しはあるかもしれませんが、今のCoreaもちょっとは聴いているのは、カモメのせいかなぁ?
Count Basie
Roulette盤の「Basie」が最初でした。よく聴きました。たぶんJazzの「Swing」を少しは分かるようになったのはこのレコードのおかげかな?と思います。岩手県の盛岡市に「DANTE」という店があります。マスターのTさんは友人の友人の友人として知りあった時は、東京に住んでいました。
大学生であった私はレコードを買いに夜行列車にゆられて東京まで何度も足を運びました。その度に狭いアパートで、JBLのD130から様々な演奏を聴きました。頭でっかちであった私は、難解であることが第一との思い込みがありました。そんな私に四畳半に流れるBasieの音はJazzの世界をとても広くしてくれました。
Jazzを聴くなら、まずは他人の意見は意見として、広く浅く、いろいろな演奏に接するべきだと思います。それから好きなプレーヤーに向かえば良いのです。大切なことは先入観なく聴くことが出来るかということでしょう。
東京では数多くのレコードを手に入れたのですが、本当の財産となったのは、それらの手に入れた「もの」ではなく、耳に残ったBasieのSwingでした。
「DANTE」も中心となってBasieを盛岡に呼んだ時、最前列で聴いた彼のシングルトーン、そして F.Green。終わってからのレセプションでの話。そして一枚のちょっとオーバー気味のBasieとの写真。それらは想い出となって残っています。
SwingしJumpする彼のレコードで、ぜひ聴いてほしいのは、「The Best Collection of C.Basie(Decca)」「Basie(Roulette)」「Kansas City Seven(Impulse)」「Basie Big Band(Pablo)」などです。
Miles Davis
チャーリー・バーカーのバンドで、たどたどしいバップフレーズを吹いていたトランペッターが、それ以後ジャズの中心部分を歩き続けることを予想した人は、いなかったのではないかと思います。現在まで何回もスタイルを変え、話題を提供し続けることができたという彼の才能は何なのか。
ひとつはサイドメンを発掘し、その能力を引き出すことです。Prestigeの「〜in'」シリーズでのレット・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズの名リズムセクションとコルトレーン。
彼らはほとんどテイク1で仕上げたと言われていますが、日頃Milesの考えていることがきちんと伝わり、理解しているからこそ可能なことです。その上一人ひとりに自由なプレイをさせながら、全体の構成がくずれていない。この点はモード奏法による「Kind of Blue(CBS)」でも見られます。
また60年代に吹き込まれた多くのライブ盤でも同じです。きっとステージの上でメンバーみんなが、Milesに注目し、フレーズや動きの一つ一つをきっかけとして応えているのでしょう。例えば「At Plugged Nickel(CBS)」や「Four And More(CBS)」などを聴いてみて下さい。
さて、もうひとつは演奏全体を組み立てる力です。キャノンボール・アダレイ名義の「Somethin' EIse(Blue Note)」や先程の「Relaxin'(Presige)」そして、「Milestone(CBS)」「Bitches Breu(CBS)」と初期の演奏から現在まで変わりません。
ところで、ある時は大きく、ある時は小さく常にスタイルを変えてきたMilesが、けっして変えなかったものがあるとすれば、それは彼のトランペットの音です。それこそ誰もまねることのできない天分ではないかと思います。
Bud Powell
かつて村上龍が司会をしていたテレビ番組のテーマソングに、"クレオパトラの夢(Cleopatra's Dream)"が使われていました。バップの演奏がこのような使われ方をするのは珍しいと思い、記憶に残っています。
これは、「The Amazing Bud Powell」シリーズの最後になる vol.5 で、副題が「TheScene Changes(Blue Note)」に含まれています。印象的なテーマのメロディーラインは一度聴けば、まず忘れることがありません。また、ポソポソとしたアドリブも、そのちょっと後ろぎみなノリとともに、日本人好みの演奏ではないかと思います。
彼はバップ・ピアニストとして、ホーン奏者のようにソロラインを右手一本のシングルトーンで表現した最初のピアニストの中の一人です。その意欲に満ちたプレイは、Roost盤の「The Bud Powell Trio」や「Jazz Giants(Verve)」、それに「The Amazing Bud Powell vo1.1&2(Blue Note)」で聴かれます。特に「Jazz Giants」は、即興演奏でのソロー発にかけるバッバーたちの迫力に圧倒されます。
その彼が、病気や薬などでさしもの天才のテクニックが下降気味になった頃、この「The Scene Changes」が吹き込まれています。しかし、何かが私たちに訴えかけてきます。一度聴いてみて下さい。なお、ジャケットに写っている彼の息子に捧げた曲「Borderick」は、単にメロディーをくり返しているだけですが、A面の最後にあり、このレコードを聴いて、Jazz喫茶から出た時には必ず口ずさんでいた事を思い出します。
Bllie Holiday
彼女の歌を初めて聴いたのは学生の頃の友だちの下宿でした。そのレコードは「Lady in Satin(CBS)」で、特にA面の最初にある "I'm a fool to want you" は、彼女の歌の中で最も多く聴いたのではないかと思います。録音は晩年で、声はざらつき、声域も狭くなっています。
しかし、それらのハンディを乗り越えて彼女の歌は追ってきます。それはRay Ellisのストリングス・コーラスを大胆に使った編曲も効果的ですが、彼女自身の魅力が十分に表現されているからでしょう。楽器的なスキャットは一切使わずに独特な節回し、リズムへの乗り、そして歌詞をフレーズの材料とするのでなく、その歌詞を歌っているのです。
一方、声に艶があり、奔放なフレージングで歌っていた初期の歌は「Lady Day(CBS)」で聴くことが出来ます。さすがにキュートな声ですが、もう早くも彼女の歌になっています。その後独立してからの円熟期の歌は、一躍有名にした「Strange fruit」を含むcommodore盤やdecca原盤の「Lover man」で聴かれます。
彼女は伝説的とまでなっている苦難に満ちた人生を過ごしました。それは彼女の歌に大きな影響を与えたでしょう。しかし、それと被女の歌とをあまりに結び付け過ぎやしないかと思います。やや「文学的」な理解に陥るような気がします。
なお、最近好きなレコードはstoryville原盤の「B.Hollday at Storyville」です。
Keith Jarrett
彼の演奏は「Solo Concert」が最初でした。LP3枚にも及ぶ即興演奏は、とても聴いてて疲れるものでしたが、演奏の進行や流れを覚えているだけで、何となくjazzを聴く友人たちに対してちょっとした優越感を感じたものでした。しかしながら、結局は2枚目ばかりを聴いていたように思います。
その後、知り合いの家で「Somewhere before」を聴き、trioでの演奏もいいものだと感じたことを覚えています。本来ならば、順番が逆のはずですが…。
彼はsolo、trio、quartetなどとそれぞれ魅力的な演奏をしていますが、私が最も気に入っているものは「Death & Flower」です。Charlie Hadenのbaseの昔が良いです。Keithのロマンチズムというかセンチメンタリズムというか、ちょっと暗い雰囲気で感情に流されるところがぎりぎりで踏みとどまっている、そんな演奏のように感じられます。
Soloでは「ケルン コンサート」が良いようです。しかし、jazzを聴いたという点では最初の演奏の「Facing you」の方が上のような気がします。割と新しいのではtrioでの「Standards Live」が好きです。彼はテーマの部分で他のピアニストでは聴かれない独特のノリで原曲を崩します。好き嫌いはあるかと思いますが、一度聴いてみて下さい。
クラシックの演奏もありますが、そちらの方はどうもわかりません。悪しからず。
Eric Dolphy
一聴前衝的な演奏ですが、実は、C.Parkerを源としたカチッとしたフレーズなのです。特に、Chalie Mingusとのセッションは、Mingnsの要求を受けとめ、さらにふくらませるとてもすばらしいplayです。
その当時のものは、どれも一聴の価値があります。しかし、やはり「Last Date」それも "You don't know What Love is" です。私は、1日中でも聴いていたい曲です。ぜひ…。
さて、長々とお付き合いいただき、ありがとうございます。
高校の頃にミエで聞き始め、大学にはいって田舎者が「文化」に接して、のめり込み、年をとるとともに熱が冷め、しかし、今でもこだわっている、というところです。最近はステレオを鳴らす機会もほとんどなく、日常にただただ埋もれていますが、頭の中ではいつも誰かが演奏してくれています。では、では。
トップページに戻る