ちょっとした宴会料理でも、茶碗蒸しが付く事が多い。あの複雑な味と卵の柔らかさ加減は、作り方が難しそうに思えてならない様だ。だが、実際に作ってみると、茶碗蒸しは案外と簡単にできる料理である。
その基本は、だしの引きかたと、引いただしでつゆを作る事にある。ここさえマスターしてしまえば、茶碗蒸しは糸も簡単にできる料理なのだ。だしの基本を憶えたら、その応用として茶碗蒸しにチャレンジしてみよう。
茶碗蒸しとは
茶碗蒸しは、腕ものの変形として扱われるらしい。このため、茶碗蒸しが付けば腕ものが付かない場合もあるのだが、最近の料理では腕ものとは別に茶碗蒸しが付く事も多い様に見掛ける。
茶碗蒸しは、元来腕ものであるから、出し汁の取りかたは腕ものに準じる。すなわち、腕種を入れた汁を卵で固めたものが茶碗蒸しなのである。
また茶碗蒸しが腕ものである事から考えると、主体はあくまでも固めた卵の部分であり、中に入っている具材(種)はあくまでも添え物になる。一節には、具材を入れないのが本来との説もあるが、あまりゴテゴテと多量の具材を入れるこは好ましくはない様だ。
茶碗蒸しの作り方
使用する道具
器
茶碗蒸しは専用の蓋付の器が使われる。適当なカップに皿を被せてもできない事はないが、やはりちゃんと作るのであれば、専用の器を用意しておきたい。
蒸し器
器に盛り込んだタネと汁を加熱して固めるために蒸し器が必要になる。ただし後で述べる様に、電子レンジ加熱で作るのであれば、蒸し器は要らない。
材料
茶碗蒸しを作るに必要な材料は、出し汁を作る材料と、種にする材料である。
出し汁の材料
出し汁の材料は、昆布、かつお節などのだしの材料と、しょう油、塩、砂糖、味醂などの調味料、および卵である。
種の材料
種にする材料は、必ずしも決まっているものではない。ごく一般的なものを挙げると次の様なものである。
・種となる具材:鶏の笹身肉、蒲鉾など。これらは一口サイズに切っておく。
・添え物の具材:銀杏、干しシイタケ、三つ葉など
・口取り(香りのもの):ユズの皮、木の芽(山椒の若芽)など
これらは全部を入れるのではなく、適当に選んで組み合わせるのが良い。ただし、三つ葉は添え物というよりも口取りの性格が強く、ユズないし木の芽と合わせて使うと味風味が引き立つ。
だしの取り方
茶碗蒸しの出し汁の作り方も、腕ものの作り方に準じる。ただし、茶碗蒸しの場合、卵が入るので、通常の腕ものよりも心持ち味が濃い目でも構わないかも知れない。この出し汁は卵に加えるので、卵が凝固しない温度(概ね60℃以下)に冷ましておく事が必要。
卵の溶き方
材料が揃い出し汁ができたら、いよいよ卵に取り掛かる。卵の量は、大むね一人あたり半量と言われているが、入れる種物の量によっても、多少変わって来る。足りなくなっても困るので、始めは少し余分に作った方が良いかも知れない。
卵ばかりは半分だけ使うという訳に行かないので、人数が少ないと、どうしても余りが出てしまう事は致し方ない。そういった場合には、余分に作っておくのも方法かもしれない。
茶碗蒸しの場合、白身を少し控えて、黄身を少し多めにするのがポイントである。人数が多くて、卵を5つないし6つ使うのであれば、1個分は卵黄だけを入れると良い。
必要分の卵を割ったら、卵を良く溶き、この中に作っておいた出し汁を加えてよく混ぜる。出し汁の量は、卵1個につき、200cc程度が目安になる。始めは「こんなに薄まって大丈夫か?」と思ってしまうが、大丈夫である。濃すぎるよりはやや薄目の方が良いかも知れない。
だしを加えて良く撹拌した後、目の細かいフルイや茶こしなどを使って、この卵汁を一度漉す。これは卵のカラザの部分など、溶けなかった部分を取り除くために必要だ。
盛り付け
卵汁の準備ができたら、茶碗蒸しの器に材料を入れ、ここに卵汁を注ぎ込む。ほとんどの材料は前に入れておいて良いが、口取りに使う木の芽は、最後に上に浮かべる様にした方が良い。
蒸し
器への盛り付けが終わったら、蓋を被せて蒸し器で蒸す。20分近く蒸し続けるので、蒸し器にはたっぷりの水を張っておく必要がある。蒸しはある程度蒸気が立つ様な火の強さが必要。
問題は、蒸し上がったかどうかの判断をどこで行うかである。目安としては、12〜15分程度なのだが、火の強さや蒸し器などによっても多少は違って来る。
15分程度経てば、少なくとも蓋を開けた表面の部分は蒸し上がっているはずだ。肝心なのは内側であるが、これは外観からだけでは見えない。そこで、竹串を使ってそっと刺してみて、竹串に固まっていない卵汁が付いているかどうかで判断する。
多少程度なら蒸しすぎても何とかなるが、余り長時間蒸しすぎると、卵が巣立ってしまい、おいしくなくなってしまう。最初は失敗する事があるかも知れないが、経験を積めば、次第に上手にできて来るだろう。
卵の黄身を多くする方法
茶碗蒸しの卵汁は、黄身を少し多めにするのがポイントと書いた。実際、チルド品などで出回っている茶碗蒸しなどは、黄身を多めにする方法が行われている。と言っても、白身を捨てている訳ではない。
では、どの様にしたら白身よりも黄身が多い卵が得られるのか。その答えはこの頁の末尾に記載する。
電子レンジで茶碗蒸しが作れるか
電子レンジが発達した現在、蒸し器を使わずに電子レンジで茶碗蒸しができるだろうか。これは電子レンジ次第では可能である。ある程度高級な電子レンジで、各種の調理メニューが備わっているものであれば、確実に作れる。
最近の高性能な電子レンジでは、入れた材料の重量を電子レンジが測定して、自動的に出力を調整する機能が備わっているらしく、材料を入れてスイッチを押すだけで、茶碗蒸しができてしまう。
問題は、そういった機能のない普及型の電子レンジの場合である。重量測定や温度測定などの機能が全くなく、単純にマイクロ波を照射するだけの電子レンジで、上手に茶碗蒸しができるかどうかは、保証の限りではない。
できない事はないと思うが、出力を弱めに設定し、加熱の様子を見ながら、適宜スイッチを入れたり切ったりしていないと、過加熱を起こしたり、場合によっては突沸によって爆発の様な現象を起こす恐れもないとは言えない。
絶対に行ってはならない電子レンジでのゆで卵
卵と電子レンジが出たついでに、大事な事を述べておきたい。それは、間違っても電子レンジでゆで卵を作ろうとしてはならない事である。殻を剥いたゆで卵の再加熱も同じで、行ってはならない。
先に理由を述べておく。まずは電子レンジのマイクロ波加熱の特徴だが、丸いものを加熱すると、その中心部に熱が集中して発生する傾向にある。これは、水を含む食品素材一般に対して、電子レンジは強い屈折率を示すためなのだ。どの角度から入って来るマイクロ波も、中心方向に屈折し、結果として中心部付近が強く加熱されるのである。
次に卵の構造だが、ゆで卵の卵白部分は、密閉構造であり、中でに発生した水蒸気が外に逃げにくい。そして更にその外側を卵殻が覆っている構造になっている。言うなれば爆弾と似た様な構造になっている事に注意して欲しい。サイズと言い、ちょうど手榴弾にそっくりである。 では実際に行ったらどうなるのか。卵を手榴弾に置き換えて何が起きるかを想像してもらえば、結果は明白だろう。
卵の黄身を多くする方法(種明かし)
茶碗蒸しに限らず、卵を使う料理は、黄身が多い方が好まれるのは当然の事なのだろう。
ではどうやったら白身を捨てずに黄身の量を多くできるのだろうか。
「Sサイズの卵を使う。」
が答えである。鶏の体内で鶏卵が形成される時、まずほぼ一定サイズの卵黄が作られ、この回りに卵白が作られて、その外側に殻が形成されて鶏卵になる。鶏卵のサイズは様々だが、卵黄のサイズはほぼ一定で、主として卵白の量で鶏卵のサイズが決まる。
実際には、S卵の卵黄は、L卵に比べてやや小さい傾向はあるが、卵白の量ほどの違いはない。
つまり小さい卵ほど、卵黄の比率が高いのである。従って、最もサイズが小さいS卵を使うと、卵黄の比率が上がり、逆にL卵を使うと卵白の比率が上がる。
鶏卵のサイズは、鶏の年齢と関係しているとの事である。若い鶏は、S卵を産む傾向にあり、老鶏ほど、L卵を産む傾向になるそうだ。
また、いわゆる「双子」の鶏卵も、若い鶏ほど比率が高い。最近は出荷前の検査で、双子は不良品として排除してしまうので、市販されている卵で双子を見かける事がほとんど無くなった。
ところで、スーパーなどで売られている鶏卵のほとんどはL卵が中心であり、S卵はまず見掛けない。これはおそらくL卵の方が人気が高く、高値で売れるためであろう。人気がないS卵は工業用に回されているのである。
だが、なぜ主婦の人気がL卵の方にあるのか、筆者には不明である。もし、「卵が大きい方が、黄身も大きいのでは。」と思っているのなら、認識を変えた方が良いかも知れない。確かにL卵の方が卵黄ややや大きい事は確かだが、それ以上に卵白の量が多い。同じお金で卵黄の量を増やそうとしたら、小さい卵を買う方が賢いのだ。