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蛍光灯の知識
   【 目 次 】
  蛍光灯の構造と点灯の仕組み
  蛍光灯の寿命
  その他
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December 19, 2004
佐田 守弘

白熱電球に比べて、効率が良い(同じ明るさで電気代が安い)ので、蛍光灯は家庭や事務所などでも多用されている。最近の蛍光灯には、インバータ式などが採用されて、スイッチを入れてすぐに点灯するし、調光できるものも売られている。だがひと昔前の蛍光灯のほとんどは、点灯までに数秒かかるのが普通だった。ここでは蛍光灯の点灯の仕組みなどについてお話ししよう。

蛍光灯の構造と点灯の仕組み

手元に蛍光灯管があったら、ちょっと見てみよう。直管状の蛍光灯管なら両端にそれぞれ2本、サークラインではソケットを差し込む場所に4本の電極が出ているのがわかる。
「あれ?電気ってプラスとマイナスの2本の線のはずだけど。」
白熱電球から想像すると、蛍光灯に4本の電極が出ているのが不思議に見えるのではないだろうか。

蛍光灯管の構造

まず蛍光灯管の構造から説明しよう。
蛍光灯の構造

蛍光灯管の両端には、電球と同じ様なフィラメントが入っていて、これが両端に出ている2本の電極につながっている。この部分だけを見れば、白熱電球と似た様な形になっている。
そしてこのガラス管の中を真空にして、少量の水銀蒸気が封じ込まれている。またガラス管の内面には蛍光物質が塗られている。外から見て乳白色に見える部分が塗られている蛍光物質である。

以上の図と説明は直管の場合だが、円形のサークラインでも全く同じ。形の上で直管を丸めて、両端の位置を向かい合わせてあるだけの違いだ。もちろんその両端はCの字の様に向かい合っているだけで、つながっているわけではない。

蛍光灯の発光の仕組み

蛍光灯では両端にフィラメントがあるが、点灯中は白熱電球の様にフィラメントに電流を流すのではなくて、両端のフィラメント管に電流を流す。
離れているフィラメントの間にどうやって電流が流れるかが不思議に思えるが、電流を流す助けをしているのが中に入っている水銀蒸気だ。この水銀蒸気の助けを借りて、両端のフィラメントの間で真空放電をするのである。真空放電とは、真空中を電子が飛ぶ現象である。そしてその電子が水銀蒸気に当たって、紫外線を出す。この紫外線が蛍光物質に当たって、可視光線を発生させて明るく輝くのだ。
蛍光灯管には昼光色、白色、電球色などの種類があるが、蛍光物質の種類によって、これらの発色の色合いが変わる。

なお、蛍光灯管の中で発生するのは強い紫外線であるから、直接目に入れば害になる。だが心配は無用。蛍光灯管に使われているガラスは紫外線を通さないので、紫外線が蛍光灯管の外に出ることはない。
食品工場などで使われている殺菌灯も構造的には蛍光灯と同じだ。しかし真空放電で発生する紫外線をそのまま利用するので、紫外線を透過させるために石英ガラスを使い、蛍光物質は塗ってない。見た目には明るく輝いている様に見えないが、強い紫外線が出ているので、人がいる場所で殺菌灯を点灯してはならない。

昔、バーやディスコなどで、暗い部屋の中で紫外線灯を点灯している場所があった。蛍光染料が含まれているワイシャツなどが紫色に光るので面白がって使ったらしい。それ程強くない紫外線灯なのだろうが、決して目に良いものではない。

蛍光灯の点灯の方法

蛍光灯は両端のフィラメントの間に電圧をかけて真空放電させると言ったが、単に電圧を掛けただけでは、点灯が始まらない。蛍光灯管を点灯させるにはちょっと面倒な仕掛けが必要なのだ。

蛍光灯を点灯させる仕掛けには様々な方法があるが、ここでは昔ながらの時間がかかる点灯のさせ方で説明する。
まず両端に封じられているフィラメントに電流を流して赤熱させる。するとこの熱で水銀蒸気の温度が上がり、放電しやすくなる。頃合を見てフィラメントの電流を切り、両端に瞬間的な高電圧をかけるとフィラメント間に放電が始まって点灯させられる。
ずいぶんと面倒な手順だが、実際の手順は蛍光灯器具に組み込まれている電気部品が行ってくれている。

蛍光灯器具の内部回路

蛍光灯の回路
現在インバータ方式の電子点灯が主流になっているが、ここに示すのは昔ながらの点灯管を使う点灯方式の回路である。
100Vの電源は蛍光灯管の両端にある電極の片方ずつにつながっている。残りの電極どうしは、グローランプと呼ばれる点灯管につながっている。また電源と蛍光灯管の間には、スイッチと安定器と呼ばれるチョークコイルが直列で入っている。蛍光灯の回路はこれだけである。

点灯管(グローランプ)の働き

グローランプは、バイメタルと呼ばれる温度でたわむ金属を電極に取り付け、アルゴンガスを封じ込んだ放電管である。通常はバイメタルの極と、もう一方の極の間は1ミリ程度離れている。

蛍光灯のスイッチを入れると、安定器、蛍光灯管の両端のフィラメントを通って、グローランプに電圧がかかる。グローランプの電極どうしの間で放電が始まる。グローランプが紫色に輝くのはこの放電によるものだ。

放電が始まると、その熱でバイメタルが延びて相手方の電極に接触する。接触するとグローランプの電極管はつながるので、蛍光灯管の両端のフィラメントに電流が流れて、赤熱が始まる。
グローランプの放電が止まることでバイメタルの温度が下がって、接触している電極が離れる。

安定器の働き

安定器のコイルは、電流が流れていない時には、電圧をそのまま伝える。だから、グローランプには最初電源の100Vが掛って放電が起きる。その後グローランプの接点がつながって交流電流が流れると、抵抗として作用し、電圧を下げる働きをする。
そしてグローランプが冷えて接点が離れ、流れている電流が切られた時、そのまま流し続けようとする作用があるので、瞬間的な高電圧が発生する。この高電圧が発生する仕組みは、自動車のイグニッションコイルでも同じだ。この発生した瞬間的な高電圧によって、蛍光灯管の両端のフィラメント管で放電が開始し、点灯が始まる。

点灯が始まれば、安定器によって電圧は70V程度に下がり、そのまま点灯が続く。また蛍光灯管に電流が流れるので、グローランプにはほとんど電圧がかからくなり、グローランプはその後放電しない状態になる。
この様に蛍光灯ではグローランプと安定器の微妙なコンビネーションで点灯を行っているのだ。

電子点灯方式では

最近の蛍光灯の大部分はインバータ方式などと呼ばれる電子点灯方式が使われている。点灯の方法は基本的には同じだが、従来グローランプが行っていた点灯の手順を電子回路で行っている。
電子回路で制御するために、グローランプによる点灯に比べて、速やかに点灯できる。またインバータを使って交流の周波数を上げているので、商用周波数で点灯する方式に比べて、ちらつきが少ない利点がある。また、波形を制御する事で、ある程度の範囲で明るさを変化させる事もできる。

蛍光灯の寿命

蛍光灯管の寿命

蛍光灯は白熱電球に比べて寿命が長いが、それでも寿命はある。種類によっても異なる様だが、6,000〜8,000時間程度と言われている。
フィラメントの断線
蛍光灯にもフィラメントがあるので、これが断線すれば白熱電球の玉切れと同じで、全く点灯しなくなる。ただし、蛍光灯管のフィラメントが断線することはまずない。

点灯不良
長期間使っていると、点灯動作を繰り返すような状態になる。後で述べるが、グローランプが不良になった時にも似た様な状態になる。

光量低下
蛍光灯は時間経過と共に光量が低下して来る。初期の光量に対して、70%に低下した状態が定格寿命とされている。点灯しているが暗くなるので不経済であるから、早目に交換する方が好ましい。
なお蛍光灯管の寿命は、点灯のさせ方によって大幅に変わる。最も寿命を低下させるのが点灯動作である。頻繁に点灯を繰り返すと、著しく寿命が短くなる。だから店舗や事務所の様に連続して点灯している場所では寿命が長いが、家庭の洗面所などで使うと、寿命が短くなる。

また寿命には周囲の温度も影響する。サウナの様な高温の場所で使うと、寿命低下が著しい。蛍光灯器具のカバーの汚れが著しいと、暗くなる。暗くなった分の光はホコリなどに吸収されて熱に変わる。結果として蛍光灯管を温める事になり、多少なりとも寿命に影響するはずである。蛍光灯器具の清掃はこまめに行う様にしよう。

点灯管の寿命

点灯管(グローランプ)にも寿命がある。メーカーでは蛍光灯管を交換する際にグローランプの交換を推奨しているが、筆者の経験で言えば、グローランプの寿命の方が蛍光灯管よりも長い。グローランプが劣化して来ると次の様な状態になる。
グローランプの点灯が長引く
グローランプは紫に輝いているが、蛍光灯管が一向に点灯しない状態。グローランプの放電が始まっても、接点がなかなか閉じない状態である。いくら蛍光灯でも通常は2〜3秒程度で点灯するのが普通。これ以上長引くならばグローランプを換えてみよう。
蛍光灯管の両端が薄赤く光る状態が続く
フィラメントに電流が流れた後も、グローランプの接点が離れない状態。この状態を続けると、新規の蛍光灯管でもすぐに劣化してしまう。この状態でグローランプをはずせば、蛍光灯管は点灯する。

蛍光灯の点灯動作が繰り返される
グローランプが劣化しても蛍光灯の点灯動作が繰り返して点滅する状態になる。
なお蛍光灯管が不良になって点滅する場合には、点灯後に明るさが低下して消える。グローランプが不良の時には明るさが低下しないのに点灯動作を繰り返す。
判別できなかったらグローランプを抜いてみるのが良い。グローランプを抜いて消灯するなら蛍光灯管の不良、点灯が続くならグローランプが不良だ。

蛍光灯器具の寿命

蛍光灯管もグローランプも新品に交換しても、正常に点灯しない場合は、安定器が劣化している。電子点灯方式の場合には電子回路の劣化も考えられる。蛍光灯器具の寿命は8年程度とされている様だが、昔からのグローランプ方式の場合にはもっと寿命が長い様だ。

また蛍光灯器具は、電気回路以外の部分、例えばカバーなどの周辺の部分も経年的に劣化して行く。屋内の器具でも長年の間に樹脂の焼けが発生し、掃除しても汚れが取れなくなって来る場合もある。いずれも蛍光灯器具の寿命とされ、器具全体の交換が必要になる。

その他

蛍光灯は直流で点灯できるか

電気には交流と直流がある事はご存知の事と思う。乾電池や自動車のバッテリーなど電池から出すのは直流、家庭に配電される商用電力は50Hz(富士川より東)ないし60Hz(同西)の交流である。通常、家庭に取り付けられている蛍光灯は商用電力で点灯するので、交流での点灯である。
さて、蛍光灯は直流で点灯させられるだろうか。これは例えば、長時間の停電が続くような場合、自動車のバッテリー(12V)を8個直列につないで96Vとし、これを使って家庭用の蛍光灯を点灯させられるかという意味である。96Vと100Vの誤差は影響しないものとする。

答えは「ノー」だ。
「そんなはずはない。電池で点灯する蛍光灯は売っているではないか。」と思うかも知れない。ここで言うのは、乾電池で点灯させる蛍光灯器具の話ではなくて、通常の蛍光灯器具をバッテリーの直流で点灯させられるかという話である。

まず蛍光灯を通常の方法では直流点灯できない理由を述べる。既に述べた通り、蛍光灯管の内部には水銀蒸気が封じられていて、水銀蒸気を通って放電が起きている。水銀はプラスの電荷を持つので、マイナス極の方に引かれる。
交流で点灯する場合には、50Hzなら20msecでプラスとマイナスが入れ替わるので、水銀は行ったり来たりするが、どちらかの極に集まるという事はない。しかし直流で点灯すると、マイナス極の方に水銀が集まってしまい、点灯が持続しなくなるのだ。
定期的にプラスとマイナスを入れ替えてやれば、点灯は持続させられるが、直流に対しては安定器が機能しないという問題も生じる。

直流電源で蛍光灯を点灯させる必要があるのは、電車の車内灯が代表的な例である。関東地域のJRは、直流1500Vで運転されている。これ以外の電力は供給されていないので、車内灯もこの電力で点灯させる必要がある。

直流で蛍光灯を点灯させるには、直流から交流に変換する必要がある。現在はインバータ技術が進んでいるので、ほとんどはインバータを使って交流を得ているだろうと思う。
電池で点灯するライトも、内部に小型のインバータ回路を内蔵しているはずである。また電池4本程度の電圧では蛍光灯を点灯できないので、昇圧回路も持っていると思われる。

さて最初の設問に戻る。もし停電が長く続く様な場合に自動車のバッテリで蛍光灯を点灯させる方法があるだろうか。最近では自動車電源用の小型のインバータが売られている。小型なのであまり大電流は取り出せないが、蛍光灯の点灯程度は可能である。

では最近のインバータ式の蛍光灯の場合には、バッテリだけで点灯できるだろうか。
筆者は試したことはないが、これは何とも言えない。何とも言えない理由は、回路次第だからだ。もし入力された商用電源を整流回路で直流に整流している回路(おそらくほとんどその様になっていると思うが)であれば、点灯できる可能性がある。

PCBが使われていた安定器

八王子市の小学校で、古い蛍光器具の安定器からPCBが漏洩する事故が報道されたことがあった(関連情報)。
安定器の中身は鉄芯に巻かれたコイルである。この構造はトランスなどとも同じだ。コイルはエナメル線を密に巻き上げた構造であるから、長期間の使用による劣化で絶縁が低下すると、漏電したり発火するおそれがある。このため、トランスやチョークコイルなどの巻き線部分は、層間に絶縁紙を挟んで絶縁性を高めている。そしてその絶縁紙には絶縁を高めるための油を含浸させている他、容器の中に絶縁油を封じ込んである場合もある。電柱の上のトランスなどでは、コイルの冷却を行うために、トランスを納めてある箱の中に油を張ってある。

さて問題はその油である。絶縁保持と発火防止が目的であるから、不燃性の油でなければならない。ところが通常の油は、そのほとんどが燃えやすいのが普通だ。天ぷら油の様な燃性がある油を使ったら、それこそ火に油を注ぐ様な結果になる。
絶縁性が高く、決して燃えることのない安全な油。そういった目的で開発されたのが、ポリ塩化ビフェニルという物質であった。略してPCBである。PCBが作られた当時においては、PCBは電気の絶縁性が高く、不燃性であるという性質だけを見れば、絶縁油としては「最も安全」な物質であると考えられていた。

だが、そのPCBが人体に対して毒性が極めて高い物質である事が分ったのは、PCBが広く使われた後だった。蛍光灯の安定器についても、昭和47年(1972年)に製造が中止されるまで、長い事使われて来た。製造中止から既に30年経った今日であるが、公共施設や、施設用照明器具(街路灯)などでは、PCBが使われている蛍光灯器具が使い続けられている例もあるとの事だ。

冒頭の漏洩事故以来、PCBが使われていた蛍光灯の安定器が大きな話題となった。だがその当時、絶縁油としてPCBを使ったのは蛍光灯用の安定器だけだったのだろうか。PCBの利用目的が不燃性の絶縁油であるとしたら、それ以外の配線部品や電子部品などにも広く使われていた可能性は否定できない様に思える。
身の回りのもので言えば、音響機器やコンピュータなどでも多用されている電界コンデンサがその一例である。もちろん、パーソナルコンピュータが登場するのは、PCBの利用が禁止された後であるから、現在のコンピュータでは問題ないし、家電製品でもここ30年前以降に購入したものなら大丈夫である。
しかし音響機器などを始めとして、今は使われていないとしても、アンティークとしての価値のために、当時の機器が残されている場合も考えられる。それらの古い機器にもしPCBが使われているものが残っているとしたら、管理状態は大丈夫なのであろうか。やや気になる所である。