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☆ 生殖医療によって生まれる子供と法
最近、生殖医療によって生まれる子供についてのニュースが相次いででました。ちょっとまとめてみてみようと思います。
まずは代理出産。法務省の判断についてです。
これは、ある日本人夫婦が代理出産として、夫の精子とアジア系アメリカ人の卵子を体外受精させて、別のアメリカ人女性に代理出産してもらったというケースです。
法務省は最初、以下のような判断を下しました。
「子を出産した者が母親であり、日本人夫婦を両親とした出生届は受理できない」
法律上はごく普通の解釈です。卵子の提供者も出産者も違うわけですから、母として表示するのは認めるのは現行民法では無理でしょう。さらに、この時日本人夫が父として認められないと、子供は日本国籍も得られないことになるところでした。
しかしその後、法務省は次のような判断を下します。
「日本人の父親を持つ双子の男児には日本国籍がある」
これは、父を日本人夫、母をアメリカ人女性として申請すれば、アメリカ人女性との間に代理出産契約が結ばれていることを根拠に、胎児のうちに父親がその子について認知をしているものと解して子供に日本国籍を与えるということになります。(ちなみに結婚をしていない状態かつ胎児中に認知をせずに子供が生まれた場合、子供は母の国籍になります)
さらに、日本人妻を母として特別養子縁組を行えば、子供は日本人夫妻の子供として戸籍に表示されるようになる、というような形で法務省は解決策を提示したわけです。
代理出産を認めて欲しい人はなんて迂遠な手続きなんだろうって思うのではないかと思います。法を改正するときには、是非とも認めて欲しいという人もいるでしょう。
実際のところ、生命倫理法というジャンルで代理出産などについては議論が行われています。去年の日本私法学会にテーマがあったくらいですし、家族法の先生方の間でも大きなテーマとなっているみたいです。
しかし、そこでは代理出産は認めないという方向に議論が進んでいるみたいです。日本私法学会で生命倫理法研究会が提示した「生命倫理法案」では、以下のように書いてありました。
生命倫理法案 (生命倫理法研究会)
第一〇条
生殖補助医療によって生まれた子については、分娩した女性をその母とする。
第一四条
夫の精子を用いて、又は夫の精子若しくは妻の卵子から生成した胚を用いて、生殖補助医療により妻でない女性に出産させる契約は無効とする。
第一五条
何人も、前条第一項に定める契約のあっせんをしてはならない。……
また、厚生労働省の生殖補助医療部会の報告書(「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」)でも、代理出産については禁止というようにされています。
代理懐胎(代理母・借り腹)は禁止する。
禁止される理由としては、代理出産は子宮のリースやレンタルに近く人身売買への道を開きかねないということ、「人を専ら生殖の手段として扱ってはならない」という基本的考え方に反するものであるということ、生みの母と遺伝子上の母が争うという可能性があり、子供の利益や福祉に反するということ、などが理由としてあげられています。
代理出産が日本の法律できちんと認められるようになるのは難しいようです。報告書でも、代理出産を認めるのは少数派に止まってしまったみたいですしね……。
次に、配偶者の死後に行われる生殖医療について。
これは松山地裁で行われた裁判で、妻が夫の死後に夫の凍結精子を用いて子供を出産したというケースです。
これについては以下のような判断が下されています。
社会的通念からして、今回のように生まれた子と、夫との間に親子関係を認めるという認識は乏しい。さらに、精子提供者である父が、死後体外受精が行なわれることに同意していたとは認められない
これで体外受精が死後に行われることについても夫が同意していたのであれば判断が難しくなったと思いますけど、今回のケースの場合、夫が死後は精子を廃棄するという意思を示していたということがあります。この辺りも考え合わせたら、この判決は妥当のように思われますね。
ちなみに先に挙げた生命倫理法案ではこのことについての禁止規定はないみたいです。逆に認められるとも書いてないので、この法律があったとしても民法の規定がそのまま準用されることになりますね。
民法
七七二条
@ 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
A 婚姻成立の日から二百日後又は婚姻の解消若しくは取消の日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
七八七条
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴を提起することができる。但し、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りではない。
夫が死亡してから300日以内に子供が生まれないと、当然に嫡出子となるということはできません。(逆に言うと直後に行っていれば、300日以内に生まれて嫡出子として通った可能性がありますね)
そのため民法七八七条に基づいて訴訟を起こすしかないわけです。しかし松山地裁はそれを認めてくれなかった、と。夫の同意があったらどうなったかわかりませんけど……。
さて生殖補助医療部会の報告書では、基本的に夫婦以外の人から精子又は卵子を提供される場合のことを想定しているため、このケースについて直接的には述べられていません。ただ、精子等の保存について次のような記述があります。
提供された精子・卵子・胚の保存期間について、精子・卵子については2年間とし、胚及び提供された精子・卵子より得られた胚については、10年間とする。
ただし、精子・卵子・胚の提供者の死亡が確認されたときには、提供された精子・卵子・胚は廃棄する。
実質的に、夫の死後に体外受精を行うなどということはできないということになります。また、第26回の議事録(TXT)にも少々記述があります。
死亡した配偶者の精子・卵子及び死亡した配偶者の精子・卵子を用いて作成した胚を用いた生殖補助医療について、国における議論としましては、精子・卵子・胚の提供者の死亡が確認されたときには、提供された精子・卵子・胚は廃棄することとする、という内容で御議論いただいております。
基本的にはこれも認めない方向で行くということのようですね……。これは夫の同意の問題と、最初から父がいない状態で生まれてくる子供という問題が主な根拠となっているようです。
これから遺伝子の問題も含めてさらに生命倫理関係の議論が高まることが予想されます。
現在のところ、生まれてくる子供のことを考えたら慎重にすぎるということはない、というのが厚生省の考え方みたいですね……。
☆ 500kヒット
50万ヒット。更新ペースが落ちていて、多分質も落ちていると思いますけど、来ていただいている方には本当に感謝しています。
掲示板等の返信も遅れがちで本当に申し訳ありません。
本当はサイトでやりたいことが色々とあるのですけど、また立て込んでまして(苦笑) なんとか見捨てられないようにがんばろうと思っています……。
☆ ニュースクリップ
▽ 環境評価書は開示請求権より著作権が優先…最高裁判断 (読売新聞)
判決についての情報を掲示板でSouさんからいただきました。H10. 3.24 前橋地裁 平成08(行ウ)8 行政処分取消請求事件がこの判決の下級審のようです。
著作権法42条の2が適用されなかったのは、法の施行前の事件だったためのようです。現在とは状況が違うため、この最高裁判例の通りに今後の判断が出るかというと、出ないのではないでしょうか。
▽ 指導要録:本人開示巡る訴訟で一部を認める初判断 最高裁 (毎日新聞)
▽ 検察審査会:起訴相当2回で公判に 制度見直しで座長案 (毎日新聞)
▽ 著作権法違反:出会い系サイトに無断で画像使用 千葉 (毎日新聞)
▽ 著作権:イラストを無断改変 武富士などに賠償命令 東京地裁 (毎日新聞)
▽ バークリー音楽大学が80種類の教材音楽ファイルを無料公開、共有可能に (HOTWIRED)
▽ プラグイン特許訴訟--米特許商標庁、W3Cの要請を受けて再審査へ (CNET)
▽ ブラウザプラグイン特許、再審査が決定 (ZDNET)
▽ ソニーミュージック、新しいCDコピープロテクトを導入 (ZDNET)
▽ SCO訴訟がもたらしたもう一つの影 (ITPro)
▽ ファイル交換に「実刑3年」--米有力議員が起案 (CNET)
▽ Linux訴訟、さらにエスカレート--米SCOと米IBMの闘いが、召喚状の応酬へ発展
(CNET)
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