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☆ サイバー犯罪条約:情報ネットワーク法学会がシンポ開催 (by 毎日新聞)
サイバー犯罪条約に対応して刑法等の改正案がでています。真紀奈はこの関係について書いたことがなかったですし、少し取り上げておこうと思います。
今回の改正案の主要なポイントとしては、(1)ウイルス作成罪の新設、(2)わいせつ物概念をインターネットに対応、(3)電磁的記録の差押え方法について、(4)通信記録の保全要請の可能化などがあります。
現在衆議院で審議中のようでして、法案内容はこのようになっています。
▼ ウイルス作成罪
まずはウイルス作成罪から見ておこうと思います。
第百六十八条の二
人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。
ここで、ウイルスの定義は「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録」とされています。ユーザーの意に反する動作をするプログラムのほとんどがウイルスとして定義されるわけですね。この法案では、ウイルスの概念を広くとって、その上で別の形で制限をしようとしています。(ちなみにこのユーザーの意に反するという言葉ですけど、業務用のPCで管理者がセキュリティソフトや監視ソフト等を入れている場合、それは問題なしとされるようです)
制限というのは168条の2の1項にある、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」の部分です。この「人」は「他人」のことを指し、「本人と、本人に同意を得た他人」は含まれないそうです。つまり、研究目的で実行するとか、セキュリティチェックのために実行するというような用途の場合は罪に問われないということになります。
また、168条の2の1項2号にある「不正な指令」というのも限定規定になっているようです。 Windows Updateのようなプログラムは不正ではないからOKなのだとか。どの程度で不正になるのかはいまいちよくわかりませんけど。
現状では、スパイウェアやアドウェアのようなものもこの規定に引っかかることになりそうです。ただし、インストールの際にきちんと説明され同意してDLしていれば、それがウイルスであっても問題はないことになるようです。きちんと納得してDLしているわけだから、意図に沿わない動作ではないということで。それが例え破壊であっても……。(ただし、電子計算機損壊等業務妨害罪の方に当てはまる可能性は否定できません。)
そうそう、もう一つありまして、ウイルスのソースコードを書いた紙もウイルスに含まれます。1項2号で「その他の記録」と書いてあるのは、紙のような物も含むためだったのだそうです。
問題点として、この「人」の定義があります。例えば、同意を得た他人のPCに対してウイルスを使用したところ、その他人のPCを通じて拡散してしまったという場合とか……。そういう場合は電子計算機損壊等業務妨害罪で処理っていうことなんでしょうか……。
▼ わいせつ
この点については、データをわいせつ物に含むという改正です。今までは有体物でなくてはいけなかったので、猥褻画像が入ったハードディスクがわいせつ物であるというような形で運用されていましたからね。これによって、今までよりも対処しやすくなるのでしょう。
またわいせつ物については頒布もしくは送信すること、または、公然と陳列することなどが罪に当たることになります。
頒布もしくは送信という言葉ですけど、これは不特定または多数人に対して公布・送信をした場合に罪になります。特定人もしくは特定少数に対して送信するというのは罪にならないわけですね。
ちなみに児童ポルノの場合は特定人であっても違法になりますし、所持するだけでも今度の改正で違法になります。(ただし、頒布等の目的のない単なる所持の場合、違法ではあっても罰則はありません)
▼ 差押え
刑事訴訟法の改正で差押えについても規定が変わっています。この改正が実は一番影響力があるのかもと思っていたり……。
第二百十八条
検察官、検察事務官または司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付き差押え、捜索または検証をすることができる。この場合において身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
2 差し押さえるべき物が電子計算機である時は、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で処理すべき電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
この規定をはじめとして、いくつか重要な変更点があります。まず一つは「差押え執行方法の新設」です。今までは記録媒体そのものを差押えの対象としていましたが、今回の改正によってログのコピーや印刷したものを差押えの対象とすることができるようになります。今までは、サーバーそのものを差し押さえられて業務ができなくなるということがあったのですが、これからは、印刷したもの等を渡してそのまま業務を続けることが可能だと言うことですね。
ただし、この点については捜査側でどちらを差し押さえるかを決めるため、相変わらずサーバーそのものをもって行かれる可能性は残るわけですけど……。いっそのこと、コピーのみを差し押さえることができるように変えてくれると助かるのかもしれません。
二つ目は「記録命令付き差押え」が認められるようになったことです。これは、プロバイダ等、差し押さえられる側にコピーを命じて、そのコピーを差し押さえることができるようにするというものです。今までは捜査側が全部やらなくてはいけなかったのですけど、それが少し楽になります。業者側にとっても、コピーを渡せばいいわけですから、サーバー渡すよりも手間がかからなくていいということになるでしょう。
三つ目は「遠隔差押え」です。
今まで、差押えというのは令状を取った場所・物に対してのみしか行えませんでした。しかし、この218条2項によって、差押え令状が無くても一部のデータについては差押えが可能になります。
具体的には、差押えの対象となっている人が使っているASPのデータやファイルサーバのデータなどになるでしょうか。こういうデータについて、令状が無くてもコピーを差し押さえることができるようになるわけです。まあ、サーバーそのままもって行かれることがないというだけましかもしれませんけどね。
これの問題点としては、海外にサーバーがあった場合どうするのかとかそういう問題があります……。
▼ ログ保全
第百九十七条
3 捜査については、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、九十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう求めることができる。この場合において、当該電磁的記録について差押え又は記録命令付き差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。
4 前二項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる。
捜査機関がISPなどに対してログを削除しないように求めることができるという物ですね。
この規定については結構誤解があると思います。この規定は捜査機関が、保全要請が来た時点までの情報を、90日以内の間、消さないように要請することができるというものです。その時点までの情報であって、未来の情報は含みません。
保全要請後20日後に実際の差押えが行われたとして、保全要請後のデータについては業務の都合等でプロバイダが消していても問題ないことになりますから、捜査機関が差し押さえられるのは保全要請時以前のログと、差押え時にプロバイダに残っているログになるでしょうか。
また、この規定は令状によらない任意捜査の規定ですので、応じるかどうかはプロバイダ(要請された側)次第ということになるようです。
とまあ、だいたいこういうことが一連の改正法によって変更されることになります。
ウイルス作成罪については高木浩光さんが結構詳しく書いていましたので、そちらも参照してみるといいのではないかと思います。
☆ メモ
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