<今月の言葉:2003年6月>

「英国は各員がそれぞれの義務を果たすことを期待する」
               ホレーショ・ネルソン

<意味も無く(^^;)今月の花:バラ>

このページは当HPの管理者が月々徒然なるままに
他愛も無いことを書き連ねるページです。とはいっても、
どーしようもないことは普段掲示板に書き散らしているので、
古(いにしえ)の識者・賢人のお言葉を借用しながら、
少しはもっともらしいことを書くことになっとります。

さて、今月はコナミマスターズがあります。
今回うちのチームの参加メンバー数は
実にざっと10名で過去最大、
しかも全員がリレーに出場します。
そんな今月はこの言葉を選びました。
トラファルガー海戦において
英国艦隊の総帥ネルソン提督が旗艦ビクトリー号の
マストに掲げた有名な信号です。
世界史に残る名セリフ中の名セリフとして
知られています。原文は
England expects that everyman will do his duty.




1.トラファルガー海戦


まずはいつもどおり世界史のおさらいからです。
18世紀のヨーロッパに起こった大事件といえばフランス革命。
この革命の混乱を見事にまとめあげ、革命の波及を恐れて
フランスに攻めかかっていたプロシア、オーストリアなど周辺各国を蹴散らし、
ついには欧州全土を蹂躙する勢いを示したのが有名な天才ナポレオン・ボナパルト。
例の「不可能」って単語の載っていない辞書を自慢している御仁です。
で、そのナポレオンの台頭を恐れフランス封じを画策したのが
仏国の歴史的ライバル・英国でした。フランスの周辺国と
同盟を結んで締め上げにかかります。
そこでナポレオンは英国侵攻を考え英仏海峡沿岸に大軍を集めました。

当時のフランス陸軍は世界最強。
なにしろ指揮官は陸戦の天才・ナポレオンですし、将兵も歴戦の強者ばかりです。
一方の英国は陸軍が伝統的に弱いんですね〜。
しかし、海軍はスペインの無敵艦隊を破って以来、世界最強。
したがって、フランス軍が海を渡ればフランスの勝ち、
海を渡れなければ英国の勝ち、となります。
そこでナポレオンはフランス海軍のヴィルヌーブ提督に命令しました。
24時間だけで良いから制海権を確保せよ、と。
この命をうけてフランス艦隊が仲良しのスペイン艦隊と一緒に出動。40隻。
迎え撃つイギリス艦隊も直ちに出動。こちらはちょっと劣勢の33隻。
こうして世界史に残る大海戦・トラファルガー海戦が始まりました。
時は1805年10月21日、日本では老中・松平定信による”寛政の改革”の時代、
”隠密同心”(大江戸捜査網)や”鬼の平蔵”(鬼平犯科帳)が
活躍していたとされている頃です
(もうしばらくすると必殺仕事人・中村主水も現われます)。


2.ネルソン提督


ホレーショ・ネルソン(1758〜1805)。
英国海軍屈指の名将であり、世界三大提督のひとりとして
ほとんど神様的な存在になっている名提督です。
(ちなみに他のふたりは米国のジョン・ポール・ジョーンズと
 日本の東郷平八郎。東郷元帥はすでにこのコーナーに登場して
 おりますが、ジョン・ポール・ジョーンズもそのうち出てくるでしょう)。

ネルソンは天性の勘と豪胆で緻密な戦術に裏打ちされた果断な戦い方によって
常に英国艦隊を勝利に導いていた名将・猛将でした。
その激しい戦いぶりのため、コルシカ島での戦いで片目を失っています。
また、デンマーク艦隊との間に起こったコペンハーゲン海戦という戦いでは
副将として現地で攻撃の指揮をとったのですが、
敵側優勢でたいへんやばい状況に陥りました。
それで上官である司令長官より「撤収せよ」という信号が発せられたのですが、
ネルソンは見えない方の目に望遠鏡をあてて 「余にはその信号は見えない!」。
そんで攻撃を続行し、とうとう勝ってしまったんだそうです。
#ほとんど軍令違反ですが、ネルソンがやるとなんでもOKになります(笑)

でも人間的には魅力的な紳士だったそうで、地中海艦隊司令長官のときに
たまたま寄港したナポリ王国で同国駐在英国公使子爵の夫人と恋仲になり
終生その恋を貫いたとのことです。
#これは完璧に不倫なんですがネルソンがやると不倫も魅力のひとつにされます(笑)。

そのネルソン提督が、英国の存亡をかけたトラファルガー海戦では
今月の言葉にとりあげた信号を掲げた後、
数で優勢なフランス・スペイン艦隊の縦列に向かって
陣頭に立って全軍突撃、寸断された敵艦隊の船を片っ端から包囲・撃破し
とうとう勝利をつかんだのでありました。

がしかし、英国艦隊の勝利がほぼ見えた頃にネルソンは仏国の狙撃兵の
銃弾に倒れもう助からない身となります。
海戦がほぼ終息するころ、彼は旗艦ビクトリー号艦長ハーディ大佐に
「余は自分の義務を果たした」 "I have done my duty."
という言葉を残して息をひきとりました。

んで結局、この海戦でフランス海軍の海峡横断は「不可能」となり
ナポレオンは英国侵攻をあきらめざるをえなくなりました。
「不可能」って単語が使えない人ですからさぞ困ったことでしょうね。



3.「義務」を果たすことを「期待する」


さて、それでは今月の言葉そのものの話に移りましょう。
上記のネルソン提督の信号に良く似たものが日本にもありました。
例の東郷提督が日本海海戦で掲げたZ旗、すなわち
「皇国の興廃之の一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」

です。

この東郷提督の信号に比べるとネルソン提督の言葉の方が
編集者(のんぶれす)個人としてはちょっと好きですね。

東郷さんのは「各員一層奮励努力せよ」。これは軍隊の上官が部下に命令している形です。
これに対してネルソン提督の方は「義務を果たすことを期待する」
これはひらたい表現にすれば「みんなしっかりやってくれるよね〜!」です。

またネルソン提督の方には「英国は」という主語がつきます。
「余は」ではありません。そしてこの場合の「英国」は議会制民主主義国家になっている英国、
つまり英国国民の参加している共同体としての「英国」です。


実は英国は、フランス革命よりもずっと前に名誉革命で議会制民主主義国家に
生まれ変わっていました。民主主義国家というのは王様や貴族の持ち物の国家ではありません。
民主主義国家というのは国民自身が作ったものであり、参加しているメンバー(国民)が
ひとりひとり役割を果たすことで成り立つ共同体です。
(そういう意味では我々のチーム・MACS YOKOHAMA と本質的には同じです)

「義務」という言葉は、日本では小学校の社会科で「義務教育」とか「納税の義務」
というような話題で教えてしまうので非常にネガティブなイメージですが、
民主主義における「義務」とは本来は参加メンバーが自分たちの共同体のために
それぞれの役割を自主的に果たすという意味であり、もっとずっとカッコイイ言葉
なのではないかと思います。

そういった視点で今月の言葉、
「英国は各員がその義務を果たすことを期待する」

を解釈すれば、
「俺たちのチーム(英国)はみんながそれぞれの役割をしっかりやってくれると
 期待してるぜ〜!」

という意味になります。
また「余は自分の義務を果たした」というのは
「オレはチームのためにやるべきことはやったぜ〜!」ということになります。
ということで、今回の言葉は単なる軍人さんの名セリフではないレベルの「カッコよさ」を
もっていると思いませんか。

#したがって、リレーのスタート前に観客席から
#「MACS YOKOHAMA は各員がその義務を果たすことを期待する」という
#信号を発してもまったく違和感はありません。
#参加者各自が担当する25mを精一杯がんばれば、きっと良い結果がでるでしょう。



最後に余談です。
今回この言葉を少し調べていて知ったのですが、ネルソン提督は
最初は「各員がその義務を果たすことを信じる」としようとしていたようです。
が、当時の英国艦隊の信号表に「信じる」という言葉が無かったので
代わりに「期待する」を使ったんだそうです。
いずれにせよ、英国の存亡をかけた大海戦の口火を切るにあたって
ネルソン提督はリーダーとして仲間たちに向かって
「みんなしっかりやってくれるよね〜、信じてるよ〜!」という
メッセージを送ったわけです。そしてその言葉どおり英国側は将校も水兵も
一丸となって頑張り、とうとう歴史的な大勝利をつかんだのでした。


ということで、今月の言葉は以上です。
みなさん、リレーがんばりましょうね!。


今回は手元の本に手ごろな肖像画があったので掲載しました。
この人がネルソン提督です。
(NHK編
『人間は何をつくってきたか−「交通博物館の世界」第3巻』
より引用)
そしてこれが
トラファルガー海戦を描いた油絵。
帆走軍艦時代の海戦の中でも
最も有名なものでしょうね。
(出典は上記に同じ)


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