<今月の言葉:2004年6月>

失敗はなお無為にまさる
             大杉栄

<意味も無く(^^;)今月の画像:西洋アジサイ>


このページは当HPの管理者が月々徒然なるままに
他愛も無いことを書き連ねるページです。とはいっても、
どーしようもないことは普段掲示板に書き散らしているので、
古(いにしえ)の識者・賢人のお言葉を借用しながら、
少しはもっともらしいことを書くことになっとります。

さて、今月はコナミマスターズがありますなあ。
4月に海老名でデビューしたばかりの方々も
参加されるわけですが、今回の会場は
国際大会可能な立派なプール(当然、足が届きません)。
そんなところで失敗したらどーしよー、と
心配になるかもしれませんが、な〜に大丈夫。
そういう意味で今月選んだのがこの言葉です。


1.無政府主義者・大杉栄について


ということでまずは言葉の背景のおはなし。
大杉栄(おおすぎさかえ)は明治から大正時代に活躍した無政府主義者です。
いちおー日本史の教科書にも必ず出てくる名前ですが、覚えている人はほとんど
いないだろーなぁ・・・(^^;;)。

ちなみに、前回5月は英雄ナポレオンを扱ったばっかりに1500mレースなみの長大な内容になり、
書くほうも読むほうも溺れる寸前の地獄(?)になりましたが今回は手短にすむ内容です。

といっても、大杉栄があまり書くほどの内容が無いネタだから、というわけではありません。
なんのことはない、実は小生(のんぶれす)もこの人のことよく知らないんですわ(笑)。
戦前の社会主義とか無政府主義とか労働運動とかってどうも苦手なんですよね〜。
だいたい、この系列の人たちの文章ってなんだかムズカシいんだもん。
たとえば大杉栄の以下の言葉、

   「生の拡充の中に生の至上の美を見る僕は、この反逆とこの破壊との中にのみ、
    今日の生の至上の美を見る。征服の事実がその頂上に達した今日においては、
    諧調はもはや美ではない。美はただ乱調にある。諧調は偽りである。
    真はただ乱調にある」。

なんなんですかね、これは(笑)。不勉強の身にはなにを言いたいのかさっぱりわからん。
こんな文章が延々と続く本を一冊読むくらいなら1500mレースに出るほうがマシかもしれません。
#でもやっぱりボクは出ないけど(笑)。

まあそんな事情なんで、今回は大杉栄の半生を歴史記録としてざっくりたどるだけに
すませますね(^^;;)。

大杉栄、1885年に軍人の子として香川県丸亀に生まれました。
最初は陸軍幼年学校に入学しますが、いろいろ問題を起こして退学。
そのあと東京外国語学校(現東京外国語大学)の学生になるわけですが、
明治33年ごろに無政府主義(アナーキズム)に目覚め、
クロポトキンの『或る革命家の思い出』やバクーニンの『神と国家』に傾倒、ということらしい。

クロポトキン?、バクーニン?、これはさすがに知らない名前ですねぇ〜。
ちょっとここでアナーキズムについて解説。

アナーキズム Anarchism 。
「無政府主義」と訳されているけど、ほんとうは「無国家主義」というのが原意に近いらしい。
「政府なんか無いほうがマシ〜」という思想じゃないかと誤解されているフシもありますが、
本当の意味は、国家の過剰を排しそれによって社会と個人の活性化をはかる思想、ということらしい。
前回5月に取り上げたナポレオンの頃に「国民国家」というものが成立するわけですが、
19世紀末から20世紀初頭のこの時期になると国家は巨大な「超過剰国家」となり
個人の自由な活動を押し潰すような存在となってきます。
それはちょっとなぁ〜、というのがアナーキズムのざっくりとした考え方らしい。

このアナーキズム、個人主義の傾向の強いグループと共産主義の傾向をもったグループの
2つが大きな流れとなり、後者の代表が先ほど出てきたバクーニンとかクロポトキン
といった面々らしい。共産主義の傾向をもっているとはいっても、そもそも国家への権力集中を
嫌っているからマルクス→レーニンという”正統派”(?)社会主義グループとも仲が悪い。
もちろん、反国家権力だから当時の政府の弾圧のターゲット。
この系列のお話は必然的に血なまぐさい内容になっていきます。。。。

さて、大杉栄に戻りますが、無政府主義に目覚めた彼は当時問題になっていた
足尾鉱毒事件(田中正造が直訴したお話)に関心をもち、平民社の研究会に参加するようになります。

平民社・・・この名前も創設者の堺利彦と幸徳秋水の名前とともに日本史の教科書に出てきます。
#ワタシは期末試験かなにかで解答できなかったことで覚えておりますが・・・(笑)。

平民社というのは日露戦争の直前に戦争反対!、という立場で結成された社会主義結社。
社会主義者の堺利彦と幸徳秋水が中心となって平民主義・社会主義・平和主義を唱えて
「平民新聞」を創刊、この中でマルクスの『共産党宣言』の訳文を掲載して発禁処分に
されたりするグループです。

大杉栄はこのグループの活動家のひとりとして頑張るわけですが、
頑張れば必然的に官憲のご厄介となり牢屋にぶち込まれる羽目になります。
1906年(明治39年)、東京市電値上げ反対運動で入獄。その後も新聞紙条例違反、
金曜会屋上演説事件、赤旗事件で入獄をくりかえします。
ちなみに彼には「一犯一語」というモットがあったらしく
一度入獄するごとに外国語一カ国語をあらかたマスターらしい。
また、牢屋の中でのいろんな話題を「牢獄エピソード」、
じゃなかった、『獄中記』として発表しています。
ちなみに彼が入獄している間に大逆事件(1910)が発生し幸徳秋水などは処刑されますが
大杉は牢屋の中にいたため難を逃れます。

んで、その後も大杉の活動は続き、労働組合至上主義と直接行動の立場を鮮明にしていきます。

ところで、
この時代の社会主義者・無政府主義者というと色白なインテリを連想してしまったり
しますが、大杉栄はどうだったか。

行動を共にすることの多かった和田久太郎という人物によると、
大杉栄は「革命家」であり、革命家の条件とは「強情と我儘」ということらしい。
そしてたしかに大杉は「傲岸」また「不遜」でもあり、
たとえば15歳年上の堺利彦には友達扱いしたのみならず、
たえずおちょくり、ほとんど一度も尊敬の姿勢をあらわさなかったということらしい。
こうでもないとこういう活動なんて出来ないのかもしれませんが、
イマイチ友達にしたくない奴ではないですなあ〜。

また、倣岸不遜な大杉栄の性格は自由恋愛にも表れ、
堀保子と結婚→神近市子と恋愛→伊藤野枝に転向、という感じで
どんどん相手を変える三角四角関係を構築していき、神近市子に刺されるというような
事件まで起こしております。最終的には堀保子と離婚して伊藤野枝と結婚、
そして1923年(大正12年)運命の関東大震災となります。

9月11日、首都東京を襲った直下型地震はご存知のとおり東京・横浜地区を地獄と化します。
地震による倒壊で命を落とした人も結構いたようですが、一番悲惨だったのはそのあとの大火災、
しかしもっとこの大災害を陰惨なものにするのは震災の後の混乱の中で生じた
朝鮮人暴動のデマに起因するもろもろの騒動でした。東京には戒厳令がしかれます。
戒厳令というのは、臨時に軍が治安にあたる状態です。

んで、このドサクサの中で、「暴動を起こしているのは労働運動をしている連中で中心は大杉栄」という
まったく根拠のない理由のもとで東京憲兵隊の一部隊が外出中の大杉栄、伊藤野枝、そして甥の橘宗一を
拘引連行。めった打ちにしたのち古井戸に投げこみ、上から煉瓦を次々に落として虐殺します。
大杉栄38歳、伊藤野枝28歳、宗一はまだわずか6歳。酷いことをするもんです。

いくら戒厳令下の混乱収拾局面とはいえ、ろくな証拠も無くいきなり連行、
そして裁判も経ずにむごい方法で殺してしまうのはなんぼなんでも無茶だろう、ということで
さすがに問題になり軍法会議となります。被告はこの事件の指令を下した甘粕正彦憲兵大尉。
実際には甘粕大尉よりもっと上の方から指示が出ていたんじゃないかというのが当時も
もっぱらの噂だったようですが、甘粕は一切しゃべらず結局彼の犯行ということで懲役10年となります。
しかも実際には3年後に仮出獄となり陸軍からの資金援助で渡仏します。

子供も含めて3人殺してたった10年(実際は3年)、短いですね。
間違いなくなんらかの力が働いていたと見るべきでしょう。
事実、戦後もずいぶんたった昭和51年、
この事件(甘粕事件)は軍上層部の命令であったことが明らかになります。

ちなみに、この甘粕正彦、その後は満州に渡り関東軍の上層部とともに満州国で暗躍します。
有名な映画『ラストエンペラー』の中で坂本龍一が怪演している”甘粕”が
かつて大杉栄を惨殺した甘粕大尉の後半生の姿です。戦前の暗いストーリーの代表的な登場人物ですね。
日本が降伏した直後の昭和20年8月20日、新京(現在の長春)でピストル自殺しました。

・・・・・・というわけで、

今回の『今月の言葉』はシェイクスピアの悲劇じゃないけど
登場人物がほとんど全員ひどい死にかたをしてしまいました。
戦前の社会主義者・無政府主義者をネタにすればこうならざるを得ないのですが、
さすがに調べているときも書いているときも気が滅入りましたね〜。
読んでいる方もさぞシンドかったでしょう。
次回はもっと明るいネタにしよっと。


2.失敗はなお無為にまさる


では、言葉そのものに話題を移しますが、今回は特に口語訳も解説も不要ですね。
大杉栄自身は、社会運動で何度投獄されてもこの活動には意味があるんだ、ってなことを
言いたかったんでしょうが、この言葉はそのまま単独でも有効ですし味わいがあると思います。

反政府運動に比べればマスターズの大会での失敗なんてお笑いネタですみます。
誰かさんじゃないけど「別にいいじゃん、罰金とられるわけでないしー」というところです。
若葉マークの方々も気楽にチャレンジするつもりで大会に臨んでくださいね。

じゃ、手短にすませる約束だった今月はこれでおしまい(^^;;)。
みなさん、大会がんばりましょう!

今月の言葉は以上です。



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