BGM(フレーム表示)付で見たい方はこちら(既に表示されている方は関係ありません)。
エリザベート皇后

エリザベート皇后
|
私がこのヒロインBOXを作ろうと考えたのは、他でもない、この女性について書きたかったからである。 私がエリザベートの事を知ったのは、大学の時だ。西洋史を専攻していた私は、卒論の題材を探して図書館をブラブラしていた。その時、偶然手にした本の表紙の女性に私の目は釘付けになった。……それがエリザベートとの出会いだった訳である。 高貴な香を漂わせながらも、高飛車な所がない、柔和な女性……それが私の第一印象であった。実際伝記等で彼女の事を調べてみると、皇后でありながら、なるべく権力の座や俗世から逃れたいと願う女性の姿があった。 宮廷のしきたりが大嫌い、政治も大嫌い、その結果旅から旅を重ねた彼女を、当時の人々は「神秘的な女性」とか、「シシィ」即ち小鳩と呼んだ。 エリザベートはドイツのバイエルン州のヴィッテルスバッハ家に産まれた。大自然に囲まれた開放的な環境で育った彼女。しかし、運命の皮肉でよりによって彼女はオーストリア皇后という、名門中の名門の最高位に昇りつめてしまう。 きっかけは、皇帝フランツ・ヨーゼフの母ゾフィーが皇帝とエリザベートの姉ヘレナを見合いさせようとした事から始まる。この時ヘレナは淑女の教育を充分に受けていた。恐らく皇后の任務をこなせるのは彼女の方だっただろう。しかし、皇帝は同席した妹の無邪気さにメロメロに成ってしまった。 こうして、いきなり皇后に成ってしまったエリザベートだが、生来伸び伸びと育ってきた彼女にとって、ハプスブルク家のしきたりは窮屈以外の何ものでもない。しかも彼女が「絶世の美女」という評判を高めるのにつれ、多くの人の好奇の目が注がれる様に成った。エリザベートの旅は元々好きで始まったのではなく、現実逃避だったのである。 旅先でのシシィは専ら乗馬に明け暮れた。英国のトップ・ジョッキーでさえ舌を巻く程の腕前だったという。詩を書くのも彼女の趣味であった。ギリシャ神話やハイネを愛好したからである。こう考えると、ロマンティストだからこそ、余計に宮廷生活に馴染めなかったのだと思われる。 美貌を保つ為のダイエットも有名であった。1日に林檎1個という事も珍しくなかったのだ。これはかなりの効果があったと思われる。彼女の体型は死ぬ迄保たれ、最晩年を除けば顔も信じられない程若かった(写真を見れば判る)。 だが、激動する欧州にあって、国務をないがしろにして旅を続ける皇后の評判は必ずしも芳しいものではなかった。帝国内ではオーストリアよりも寧ろハンガリーやチェコでの人気が高かったと言われる。 そんな彼女だが、死後急速にその名声は高められていく。理由の一つが絶世の美女だった事に間違いはないが、それ以上に彼女をみまった悲劇が共感を呼ぶからであろう。 フランツ・ヨーゼフの弟・マクシミリアンがメキシコで暗殺され、従弟のバイエルン王・ルートヴィヒU世が怪死。煙草の火が着衣に燃え移って焼死した従妹・マティルダ、エリザベートの腕の中で病の苦しみで悶絶しながら死んだ姉・ヘレナ。欧州史上に残る謎の一つとされるマイヤーリンクでの長男にして皇太子・ルドルフの死。エリザベートがとても可愛がっていた妹・ゾフィーのバザー会場での焼死(エリザベートの姉妹兄弟は結構キツイ顔立ちが多いが、エリザベートとゾフィーは柔和な感じ。特にゾフィーの場合は完全なプリティ系。エリザベートはビューティとプリティが同居している。このゾフィーは嘗てルートヴィヒU世と婚約していたが、一方的に破棄され、アランソン公妃と成る。彼女はバザー会場で火災が発生した時に、人々を先に逃がす為に残って誘導を行い、焼死した。混乱した人々にその遺体は踏みつけにされていたという。しかも、祈る様な姿で。)。 これらの身内の信じられない様な不幸で心身共に疲れきったエリザベート。もはや旅すら彼女の心を癒す事は出来ない。しかし、旅をせずにはいられない。 そして、スイスで彼女は遂に自分自身も不幸に見舞われる。ルケーニというイタリア人アナーキストに尖ったヤスリで刺されたのである。先が細かった事もあり、侍女も従者もまさか皇后が刺されていたとは思わなかったらしい。エリザベート自身青年がぶつかってきた程度にしか思わなかった様だ。これが処置の遅れを招いた。絶世の美女と謳われたエリザベート皇后は、安らかな眠りについたのである。永遠に。 この瞬間からエリザベート伝説は幕を開ける。皇后としての責務はあまりはたしていなかったかも知れないが、歴史的ヒロインに相応しいドラマ性を獲得したからである。そして彼女は多くの映画や劇、或いはミュージカルに採り上げられる程の人気キャラクターに成った。皇后・エリザベートではなく、人間・エリザベートが多くの人を魅了するのだろう。私も含めて。 それにしても気の毒なのは彼女の夫・フランツ・ヨーゼフだ。多くの身内をなくし、遂には最愛の妻迄殺されてしまった。しかも、更にこの先にはルドルフ亡き後の皇太子と成ったフェルディナントをサラエボで暗殺されている。誰かに呪われているとしか思えない程の悲劇の連続なのだ。 そのフランツ・ヨーゼフは常々語っていたという。「私がシシィをどれ程愛したか、誰にも判るまい。」と。 |