呪い

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 Kが温泉場の劇場へロングの旅に出て数日後のことである。

突然腰が痛み出した。最初はそれほどでもなかったが徐々に痛みが増してきた。

数時間後には一人で立ち上がることもできなくなった。

こんな経験は生まれて初めてのことである。


 翌日会社を休んで家内の車で病院へ連れて行ってもらった。

診察の結果、「ヘルニアの可能性がある」と言われ、

コルセットで腰を固定し、痛み止めの注射を打った。

 Kもいないことだし、そろそろ近場の劇場にでも顔を出してみようと

考えていたときだけに残念であった。


 Kに電話でこのことを伝えると、

「やっぱり・・・」と意味ありげにこたえた。

そして

「わたしが呪いをかけたの、浮気できないように」と言った。

Kが藁人形の腰のあたりに釘を打ち付けているところを想像してぞっとした。

からかわれてるのだと思うが彼女の言い回しからすると完全否定はできなかった。


「勘弁してくれよぉー、 浮気なんてするわけないだろう、呪いをといてくれよぉ」と

私も話を合わせると、

「ダメ・・」とあっさり言われてしまった。

「どーしてだよ、そんなに信用できないのか?」

「あんたのこと信用していないわけじゃないの、わたしは男を信用していないだけ。だからダメ!!」

彼女は難しいことを言う。

「信用してよ、すんごい痛いんだよ」

私が少し泣き声をだすと、

「本当? そんなに痛いの? ちょっとやりすぎちゃったかなぁ?

 約束する? じゃぁ、勘弁してあげる」と彼女は笑った。



 それから数時間でみるみる痛みが消えていった。

冗談のつもりで話していたが思い返してみると本当に恐ろしい体験であった。


 だいたいがKとの関係自体世間一般でいう浮気である。

「浮気できないように」って言われても変な感じである。

Kの解釈によると

「わたしとのことは本気、あったりまえじゃん。

 だから奥さんとわたし以外の人とすることを浮気って言うの」とのことだ。


 不思議な娘だKって。


[舞太郎](1999.4.1)


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