1年ぶりにYのステージを観た。 「あんたがちょこちょこ劇場に現れているのは噂できいてるけど、 たまにはわたしんとこにも顔だしてよ。 別に追っかけになれって言ってるわけじゃないからさ」 Yからの電話でしばらくご無沙汰していることに気がついた。 仕事が忙しくなって劇場に行く回数自体もかなり減ったが、 それにしても1年も観ていなかったとは知らなかった。 さっそく遠方の劇場にのっているYの元へ向かった。 Yは数年前、AV界から鳴り物入りでストリップデビューし、 キツイ言い方をすると客寄せパンダとして大活躍した。 しかし、そんな派手な時期もあっという間に終わった。 ストリップデビューして3年ほどたった頃、Yは突然名前を変えた。 AVアイドルという看板を降ろしたかったからだ。 ストリップの本当の魅力に触れ、あらためて真剣に取り組みたかったからである。 その後、努力家のYは着実に力を伸ばしていった。 今回観た久しぶりのステージはその努力が見事に開花していた。 (ついにここまできたんだね。)感無量であった。 心の中でいろんな思いが込み上げてきた。 Yのやさしさが自然に客席を包む。 技術も大事だし、心も大事、そして経験からの悟りも大事。 そしてそしてその人なりのそれらのバランスがもっとも大事。 肩肘張って力んでいたYが嘘のようである。 その日はちょうど楽日だったので東京まで一緒に帰ることになった。 助手席ですやすや眠るYの横顔を見ていると、なんだか複雑な気分になってきた。 Yと知り合ったのは8年前、Yはまだ十代であった。 (いろんなことあったな、本当に。) 都内に入ったので車を停め、Yを起こそうとした。 Yの肩に手をかけ、ゆすっていると、 朝日を浴びたYの頭にきらりと光るものがあった。 「おい起きろよ、良いもの見っけた、ここ、ここ」 「なによー、もう着いたの? んーなに? なに見つけたの? どれ、えっ、白髪?」 いつもYから年寄り扱いされている腹いせもあって、 正直な話、ちょっと意地悪な気持ちになっていた。 「やだなー白髪だよ、抜いてやろうか?」 「うん」Yはうなずいた。 私はプチッと抜いた後、右手の親指と人差し指に挟まれたYの白髪を見つめた。 しばらくたってYの方に目をやると、その表情にハッとした。 照れているわけでもなく、悲しんでいるわけでもなく、怒っているわけでもない、 なんとも言えない表情で私の右手を見つめていた。 右手が急に重くなった。私はとんでもないものを手にしてしまったようだ。 こんな重いものは今までに持ったことがない。 一本の白髪は昨夜、私が楽しんだ素晴らしいステージの代償だったのである。
[舞太郎](1998.07.21)