業界でも評判の高いM姐さんの誕生日会に参加した。 M姐さんの追っかけさんや彼女を慕う後輩の踊り子さんなど30名ほどが集まった。 私はたまたま劇場にいて誘われてついてきちゃったというのが本当のところだった。 宴も盛り上がったところでM姐さんのところにお酌に行った。 「お誕生日おめでとうございます」 「よぉっ、舞ちゃん、ありがとさん」 以前から挨拶程度の付き合いはあったのでこんなやり取りがあったと思う。 そしてなにかの拍子にステージの話題が出た。 「舞ちゃん、私のステージをみてどう思う?」 「はぁ・・」と答えながら困った。実はあまり好きではなかったのだ。 こんな席だし、という気持ちもあったが、 私は嘘がつけない性格なので思いきって本当のことを言ってしまった。 「すみません。じつはあまり好きじゃないんです。 なんだか何を表現したいのか私には理解できません。 空回りしているように感じるんです」 一瞬、場が凍りついてしまった。(やっぱり、まずかったなぁ)と反省した。 取り巻き達は心配そうにM姐さんを見て、その後もの凄い形相で私を見た。 (お前如きがなんて口をきくんだ。) そんな風に言いたげであった。ごもっともである。 しかし、誰も口を開かなかった。誰も口を開けなかった。 しばらくたってM姐さんはため息の後、おもむろに言った。 「腹のたつ奴だなぁ。まったくぅ・・・・。 悔しいよ。 でもなぁ、誰にでも誉められるってことは、 誰にも誉められないってことと同じなんだよな。 舞ちゃんみたいに嫌いだという人もいるから、 こいつらみたいに好きだと言ってくれる人のことがありがたく思えるわけだ。 うん、うん」 言っていることは冷静だがその声は上ずっていた。 かなり怒らせてしまったようだ。 私は土下座して謝った。 「おめでたい場を壊してしまって申し訳ありませんでした。 でも、ごまかしてお世辞を言うのだけは主義に反するんです。 本当にすみませんでした。私はこれで失礼します」 立ち上がって逃げ出そうとする私にM姐さんは言った。 「ちょっと待ちな。 あんたはさぁー、絶対に私の客にはならないだろうな。うん。 でもなんだか、良い友達にはなれそうな気がする。 びっくりしたよ、本当にぃー。こんなこという奴いなかったもんなぁ。 まわりから、ちやほやされていたから、ちょっと天狗になりかけてた。 まったくなんて奴だ。 まあいい。 いいからいいからもうちょっと飲んでいってよ。 今度ゆっくりステージの感想をきかせて」 声は上ずったままだったが無理に作り笑いをしていた。 恐かった。でも私はM姐さんのことが好きになった。 2年後、そうあれから2年後・・・・、 結局、M姐さんが言ったような良い友達にもなれなかった。 もちろん、客になることもできなかった。 しかし、しかし、 本日、M姐さんと私は拍手の中、スポットライトを浴びてケーキを切った。 M姐さんは怒っていなかった。 M姐さんは笑っていた。 M姐さんは泣いていた。 運命って不思議だ。おもしろい。だから人生やめられない。
[舞太郎](1997.11.26)