「エナメル上皮腫をX線診断できるか?」より抜粋

A(関東)障害者歯科を専門とし医療事故・訴訟にも関心を持つ 

 判例誌に、掲載された事例を紹介いたします。「中学1年生女子のエナメル上皮腫注1)を開業歯科医が見逃してしまい、約9ヵ月後に病院で摘出術を受けたが予後が良くなかった」という事例です。この判決で、開業歯科医の診断 義務違反、転医指示義務違反があるとされましたが、予後との関係を否定し、患者の要求を退けました。
どのようなエナメル上皮腫であれば、開業歯科医でも診断すべき義務があるといえるのでしょうか? ご意見をお聞かせ下さい。

 

 

B(甲信越)大学病院口腔外科勤務、睡眠時無呼吸の外来診療も担当

 開業医といえども,口腔疾患については臨床症状があるもの全てを診て頂きたいと思います.ある症状に対して自信がなければ転医させるのは当然で、患者の訴える症状に対して対応しないことも誤診の一種と考えます.
 では,患者の訴えがない場合については、偶然レントゲンで見つけた歯胚、濾胞性歯嚢胞とエナメル上皮腫とが鑑別できるかどうかということに的をしぼってみましょう。少なくとも顎骨が腫れて羊皮紙音が認められれば誤診は許されないでしょうし、明らかな嚢胞性病変があったら積極的に鑑別診断すべきでしょう。患者の初診時の主訴は何だったのでしょうか?開業医での診察時には、どのような自覚・他覚症状があったかわからないので、はっきりとしたことは言えないですね。また、今時エナメル上皮腫の予後が悪いなんてことがあるのでしょうか?


 患者の初診時の主訴や診察時の症状については、圧痛と腫脹とだけしか書かれていませんでした。「予後が悪い」というのは、始めの手術で摘出できなかったので、3年後に再手術したということを指しています。まだ、取り残しているようでいつ再 発するかわからないということです。手術が遅れたことが原因で、大きくなりすぎて取り切らなかったと思い、歯科医を訴えたようです。


 本日、たまたま15歳のエナメル上皮腫の開窓術を経験しましました。挿管時に偶発的骨折を回避すべくファイバー挿管注2を行いましたが、よくぞこれまで発育させたものだなあとの思 いに駆られました。手術の時間は120分程度で、近年まれにみる 症例でした。私は口腔外科経験も長いのですが、よくぞこれまで放っておいたなと思います。患者には永久歯の数本のインレー装着がありましたので、前医にも問題がないとは言えないと思いました。

C(関西)大学病院口腔外科に所属した後に病院歯科口腔外科勤務

 中学1年生といえばC病名が主体となるでしょう。 臼歯部3ブロック以上の病名があれば健康保険でパノラマは算定できるのですが、そうで ない限りパノラマを撮るのは難しいです。デンタルX-Pのみで済ませてしまうことがほ とんどではないでしょうか。そのような状況でデンタルX-Pのみでエナメル上皮腫を見逃すなと言っても、余程大きなものでない限り無理と思います。 経過をお知らせください。

 

(続きは本書で...)

 

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