国光は、歴史のあるりんごです。アメリカ・Virginia州Amherest Countyにある「Caleb Ralls果樹園」起源の品種で、1800(寛政12)年頃には知られていました。
 因みに、1800年は、アメリカでは第2代大統領ジョン・アダムスの時代、日本では、第11代将軍徳川家斉の治世です。
 日本へは1871(明治4)年に開拓使(明治2〜15年の間、北海道開拓を任務として設置された官庁)によって導入されました。
 導入当初の原名Ralls Janetでは普及せず、地区により、四九号晩成子雪の下(青森)、キ印霜潜などいろいろな名称で呼ばれて混乱していましたので、1900(明治33)年に全国共通の名称を国光に統一しました。この名は前年の大正天皇と九条公爵の第四女節子姫との御成婚の慶事にあやかったものであるといわれます。
 国光 は、日本の風土、特に青森県の風土に適していたため、生産者の努力とあいまって、明治、大正、昭和にかけての青森県の基幹品種として、りんご産業を、紅玉とともに100年間にわたって支えてきた記念すべき品種です。
 収穫期は遅く、11月初旬〜中旬です。国光ふじ、の交配親です。また、金星の親でもあるといわれてきましたが、これについては疑問視されています文献

 大きさは200g前後ですが、長期保存が容易で、味も比較的よいので、全国の果物市場では 2月末から 3月にかけて、本県の国光がよろこばれました。このりんごはアメリカ原産ですが、アメリカでは主要品種になったことがありません。また、日本でも北海道・東北に好適したとはいうものの、青森県津軽地方にかなうところはなかったようです。これは青森県の栽培技術によることはもちろんですが、青森県の気候や土壌にも合っていたらしく、栽培面積はどんどん増えて、1940(昭和15)年には47.28%を占めています。
 リンゴが神田の青果問屋に送られるようになる前、問屋は 3月に紀州みかんを売ってしまうと、あとは売るものもなく開店休業の状況でした。国光はこの端境期を独占することができたわけです。この時期、りんごの価格を左右するのは景気を別とするば国光自体の入荷量であったといってよいと思います。前年11月に採収したものを翌年の春から初夏にかけて売るのです。雪巻き冷蔵庫も案出され、多くの移出業者が現れました。彼等は過剰な年は地方の中小都市へと販路を拡張していきました。青森県が、山村の小面積のリンゴづくりでもやっていけたのは、この国光のおかげであったといえます。国光明治時代における青森県のりんご7大品種の一つです。

 りんごといえば、紅玉国光以外は思い浮かばなかった時代があります。しかし、1963(昭和38)年のバナナ自由化と国内りんごの豊作によって、紅玉を中心に価格の暴落がおこり、さらに1968(昭和43)年のみかんの大豊作とその価格下落に連動するように、国光紅玉が暴落を続け、生産者を泣かせました。
 そのため、1969(昭和44)年以降は、国光紅玉からデリシャス系へ、ついでふじへの品種の更新が急ピッチで行われ、やがて国光紅玉の時代は終わりを迎えました。
 紅玉はその個性によってまだ根強い人気がありますが、国光は、ふじに押され、もう経済品種として復活することはないものと考えています。
 現在は、市販品の入手は困難ですが、2002年と2003年の3月に、道の駅「なみおかアップルヒル」で購入できました。このリンゴの果実は収穫直後より冬越ししたものの方がよりおいしいです。
 久しぶりに食べてみました。糖度も14度以上と高く、風味もあり、酸との調和も十分、口当たりもよく、昔懐かしい、しっかりした、すばらしい食味でした。4月11日にふじと食べ比べてみましたが、果汁はやや少ないのですが、甘さと酸っぱさがより強く、味が濃く、いまの新品種と比較しても、決して見劣りしないものです。さすが100年以上も日本のりんご産業を支えてきたりんごだなという感じがしました。

 国光の別名を青森県では雪の下といいます。この品種の収獲時期は晩く、下図のように、樹上のりんごが雪の下になることがあります。雪の下とはいい名前を付けたものです。
雪が来た!
青森県りんご研究所(旧・りんご試験場) 2002年11月14日

 現在では、このりんごの栽培はごく限られているので、食べる機会はもちろん「国光の樹」を見る機会などなかなかないものです。しかし、国道沿いの青森県庁構内りんご園には、大きくて立派な樹があり、秋になると枝もたわわに実をつけます。
 国道4号線バス停「青森県庁前」からすぐに眺めることができるので、青森市においでの際は、ぜひご覧下さい。
 また、黒石市にある青森県りんご研究所(地方独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所:旧・青森県りんご試験場)には、1901(明治34)年に栽植された記録のある樹齢110年を超える古木の集団があり、これは他ではみられない貴重な記念樹です。


<文献> 赤田朝子 遺伝子診断(DNAマーカー)で判るリンゴの親子鑑定・交雑和合性 
     青森県りんご試験場平成15年度試験成果・情報発表会資料2004年2月13日