このりんごの品種名はこうとくですが、青森県津軽石川農協で扱う一定レベル以上の果実の登録商標名はこみつです。
 南津軽郡柏木町(現 平川市柏木)木村甚彌氏が青森県試験場長を定年退職後、自園において、1971(昭和46)年に、東光の種子を播種し、73本を育成、1975(昭和50)年に初結果、1979(昭和54)年に選抜し、その後、原木・苗木・高接樹について特性調査を進めていました。
 1982(昭和57)年2月育成者が死亡しましたので、同年4月から弘前市工藤末次・工藤清一・工藤練一、黒石市今喜代治の各氏が高接樹各1本の試作を行い、特性の確認調査を行ったと記録されていますが、近年、遺伝子型解析から、片親はふじ、もう片方の親はロム16であると推定されています文献
 登録年は1985(昭和60)年で、品種登録者は木村喬久氏、出願時の名称は向陽です。成熟期は10月下旬〜11月上旬で、普通貯蔵で2月頃まで、冷蔵で5月頃まで貯蔵可能とのことですが、工藤末次氏によると、このリンゴの本当の味を楽しめるのは、12月いっぱいだとのことです。果実は円形、ふじよりやや小玉で200〜300g程度です。果皮は黄緑地に淡褐紅の縞が明瞭に入り、果皮にやや光沢があり、果面は滑らかです。果肉は黄色でやや硬く、きめは中位で、蜜がとても多く見られます。果汁も極めて多く、甘く(糖度14%前後)、酸味が適度で香気の高い小粒で整った味のりんごです。
 
 ただし、津軽石川農協を経由しないで、こうとくとして農産物直売所などで売られているものの中には、蜜のみられないもの、少し未熟なものなど、ばらつきが多く、消費者の期待に応えられないものもあるかも知れません。
 一番上の写真右下に、蜜の多い果実と、あまり多くない果実の断面写真を掲載しましたが、こうとくの場合なら、蜜の多い・少ないを、果実を割らなくても容易に判別できます。下の写真のように、電気スタンドの電球などの強い光源の直前に果実をかざしてみると、蜜が多い果実は中が明るく、蜜が少ないものは明るくなりませんから簡単にわかります。しかし、この方法は店先でやるわけにはいきませんね…。試してみるのは購入してからですね。


 この品種は、弘前市石川地区で細々と栽培されるだけで消滅の危機にありましたが、青森県津軽石川農業協同組合が粘り強く販路の拡大を図って復活を遂げたものです。
 消費者に好まれる“蜜”が、多い時は全体の7、8割を占め、小形で、しかも味のよいのが特徴的なこの品種の果実を、同農協は「こみつ」と命名、同農協の登録商標としました。
 生産量は最も減少した時の4倍近くにまで回復し、希少価値の高い高級な蜜入りリンゴとして首都圏や関西地方で、1個数百円で売られるなどの大人気となっています。
 この品種は、甘みが強く、蜜もたっぷり入りますが、ふじなどに比べて小玉なことで、市場で高値が付かず、生産者から敬遠され、苗木が配布された同市石川、大沢地区でもほとんどが別の品種に変えられました。
 こうした中、十数年前に同農協に、地元でわずか2軒残ったこうとくの生産者からの販売依頼があり、同農協は市場関係者に売り込みを図りましたが、食味では高い評価を得たものの、小玉であることや蜜の入り具合が時期によってばらつくことなどがネックとなり、数年は販売も不振で、同農協への出荷量も20kg原箱で約100箱まで落ち込んでしましました。しかし、同農協の地道な努力で、東京の大手仲卸業者の目に留まり、高島屋や近鉄百貨店に青果店を出す京都府の企業からも注文を受けるなど、人気が次第に高まってきました。
 同農協はこれを受けて、若手や品種更新に意欲のある生産者に呼び掛け、2002(平成14)年に農協内にりんご部会を組織。苗木を配布し増産に対応、技術指導も行って品質管理に努めています。
 こうとく人気の高まりに他産地でも栽培の動きが出たことから、蜜入りリンゴの特性を前面に打ち出し、他産地との差別化を図るため、前述のように、「こみつ」という商品名を「同農協産の一定規格以上のこうとくの果実」の名称とすることを決め、登録商標を出願、2007(平成19)年8月に認められました。

 青森県ではりんご関係者の間で、小粒のりんごの積極的な利用法について議論が高まっています。小粒のりんごは食べやすく、買いやすいという利点があります。このように小粒で保存がきき、いい味のりんごについてもっと消費者に宣伝してもよいのではないかと思います。また、ヨーロッパでは小形のりんごが好まれるので、輸出すればあちらの消費者から好まれるのではないでしょうか。

<文献> SSR遺伝子型を用いた青森県内で育種されたリンゴ品種の交配親確認
                               2006年園芸学会研究発表資料
  阿部佳枝・五十嵐惠・初山慶道・上田高則・鈴木正彦(青森農林総研グリーンバイオセンター)
  今智之・深澤(赤田)朝子・工藤剛(青森農林総研りんご試験場)