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調査研究の過程で、大変見事な黄色いリンゴとして有名になりましたが、同様に見事な黄色いリンゴが福島県の「ある個人」が育成しているということがわかり、全国的に有名になりました。この黄色いリンゴを育成したとされる「ある個人」には国豊の名で品種登録しようという動きがありました。 しかし、「国豊」と「ゴールデンデリシャス× 印度」 があまりにもよく似ていましたので問題になりました。 関係者の努力で、国豊の原木として圃場に育成されている樹の土壌に隠された部分に接ぎ木の痕があること、実生から生育させた樹木特有の棘状短枝が見られないことが判明し、追求された結果、昭和16年ごろ、青森県苹果試験場に来ていた研修生によりゴールデンデリシャス× 印度の穂木が県外に持ち出されたものとわかり、国豊とゴールデンデリシャス× 印度 は同一のものであることが判明しました。一時、裁判沙汰にまでなりかかったこの事件は、国豊側の「ある個人」の全面的謝罪で解決しています。 この事件をきっかけにして青森県では予定を早め、正式名称を「陸奥」と命名することにしましたが、梅沢村(現青森県五所川原市梅田)の前田顯三氏が独自に育成した品種に同じ名前のものがあることがわかりましたので、前田氏の了解を得て、1948(昭和23)年に園芸学会で「陸奥」として発表し、登録の手続きをとり、翌年、農産種苗法による第一号として名称登録された経緯があります。 果重420〜440g で、ときには1kg を越すものもあり、果汁が多く、穏やかなよい香がするうまいりんごで、病気に強く、保存がきくりんごです。陸奥は10月下旬〜11月上旬に成熟しますが、保存性が高く、翌春の4月でも市販されています。工夫すれば7月頃まで鮮度が保持されるということです。 イギリス品評会で King of apples と呼ばれ、Crispin の別名がつけられています。青森県りんご研究所(旧・りんご試験場)職員がイギリスのりんご研究機関を訪問した際に、「日本のCrispin を育成した機関の者だ」というと「そうか、そうか」と了解してくれるほど、このリンゴは有名だそうです。しかし、イギリスからは陸奥の果実は大きすぎるという苦情をいただくそうですが…。
この着色技術は偶然に発見されたものです。デリシャス系などに多発する斑点落葉病予防対策のため、青森県りんご試験場で、1962(昭和37)年から実施された二重袋 (内袋に薬をしみ込ませてある) 活用の研究過程で、病気に強くて二重袋を必要としない陸奥に試験的に袋をかぶせて見たところ、ルビー色の果実ができたことが評判を呼び、りんごの着色技術として一般に普及し、改良されてきたものです。今では着色のために三重袋も使われます。 りんごの赤い色は、紅葉の色素と類似した色素で、低温と強い光で生じます。暖かくて明るいと、若い細胞に存在する無色の色素体内に、葉緑素 (青緑色) とカロテン (黄色) という水に溶けない色素が作られて葉緑体が形成されます。 袋をまったくかけず、最初から十分に光を当てて葉緑体を十分に発達させたのが緑色のサン陸奥です。赤い色素は殆どありません。 6月初旬に二重袋または三重袋をかぶせて遮光し、葉緑素もカロテンもない白い果実をつくり、収穫の30日程前(9月下旬〜10月上旬)に除袋して強い直射日光にさらすと赤い色素を合成してきれいなルビー色に着色します。これがおなじみの赤い陸奥です。ただし、除袋後に曇りや雨が続くときれいな赤にはなりません。
また無袋のサン陸奥は最初は緑色ですが、熟してくると葉緑素だけが次第に分解しますので、少し緑がかった黄色になります。 これら三種類の陸奥は別品種に見えますが、栽培方法が違うだけなのです。 サン陸奥は甘味も酸味も適度で香もよく、一番うまいと思います。それに比べて淡紅色の陸奥はやや酸味が勝り、甘さが少ないようですが、それぞれがおいしいりんごです。 昔はルビー色の陸奥だけが高価で取引され、緑色のサン陸奥は商品価値があまりありませんでした。ルビー色の陸奥一個の値段が、緑色のサン陸奥一箱に相当したそうです。上物のルビー色の陸奥が一袋あれば、弘前市の繁華街で飲み歩るくことができたそうです。 味よりも見かけだけでりんごが売買されるという状態が続いていたわけですが、このような異常な状態を憂えている関係者が県内にいました。 弘前市の片山りんご有限会社の先を見通した計画・進取の気性・懸命な努力と、りんご試験場、地元生産者の方々の協力などによって、サン陸奥の本当のおいしさを消費者に理解してもらうように努めた結果、この取り組みが最初は関西の消費者を中心に取り上げられ、サン陸奥の名前は次第に広まっていきました。 東京の市場で片山りんご有限会社が出荷した黄緑色のサン陸奥を偶然に見て、新しい品種だと思った「暮らしの手帖」編集担当者が数回にわたり、弘前市に取材に訪れ、1981(昭和56)年に、サン陸奥やこの運動が「暮らしの手帖」でも紹介されました。そして幸いなことに、生協運動発祥の地である神戸市で、全国最大規模の灘神戸生協(現・コープこうべ)がサン陸奥に飛びついてくれました。 「安くて・うまくて・安全な」という運動は、全国的にも広がりを見せていますが、青森県でもこのような健全化の努力が、いろいろと行われています。しかし、これと逆行する流れが生ずることも皆無ではありません。これには消費者側にも責任があると思います。私たち消費者自身がもっと勉強し、賢い行動をとることが必要なのです。〈文献2、3〉 県内の道の駅や農産物直売所などには、たくさんの黄緑色のおいしいサン陸奥とルビー色のきれいな陸奥が同時に姿を見せるようになりました。一度食べ比べてみてはいかがですか。この品種は、花も美しく、見ごたえがあり、文字通り、花も実もあるりんごです。 |
| 〈文献〉 1. リンゴ果実の着色並びに果皮障害に関する研究 野呂昭司 青森県りんご試験場報告 第31号(2000) 2. 青森ひと山脈 エッセイスト片山良子さんB 朝日新聞(2004年1月31日) 3. 赤いりんごと青いりんご 暮らしの手帖 1981年 1〜2月号 4. 農業技術協会 果樹品種名雑考 昭和58年4月1日 第1刷 |