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北米生まれのファミリーライフエデュケーターという仕事の概要を紹介します。
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カナダのファミリーサポートの特徴 |
ファミリーライフエデュケーションは、これまでの、専門家が子育ての方法をアドバイスするような支援とは、根本的にちがいます。 私の学んだファミリーライフエデュケーションは、カナダのファミリーリソースプログラムという機関の考え方に基礎を置いています。ここでは、その特徴をまとめてみました。 ノーバディズパーフェクト つまり、完璧な親なんかいない。いい親、悪い親なんて考え方はナンセンス。いろいろな親がいて、それぞれいいところ悪いところがあり、完璧はありえない。 親を運転席につける 子どもはどんなに虐待されても、親への愛を手放そうとしない。だから親を否定したり、親を引き離したりするより、親が落ち着いて子育てできるよう支援するべきである。 コミュニティセンタード(市民指向) 今までは何かというと、専門家に頼っていた。しかしほとんどのケースにおいて、彼らは家庭の欠点を探そうとするし、第一、雇用にお金がかかる。それよりも、当事者の気持ちになれる同じ立場を経験した母親などのほうが有効ではないか。 ストレンスベースドアプローチ(長所に注目する) 欠点をさがしたり足りないものを補ったりするよりも、長所を見つけ今持っているリソースに注目してそれを伸ばした方が有効である。 対等で親しい関係 精神医療やカウンセリングのように、お互いをよく知らない間柄、しかも暗黙の上下関係のなかで問題解決するのではなく、まず対等で親しい関係を築き、その関係のなかで支援や教育プログラムを提案する。 |
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家庭・子育て支援の専門職。それがファミリーライフエデュケーターです |
今まで、日本の家庭・子育て支援は、保育士、教師、カウンセラーなど、周辺領域の人々によって担われてきました。しかし彼らは本来、子どもの保育、教育、あるいは一般心理治療の専門家。北米では10〜15年程前から家庭支援の専門職が登場しており、すでにいくつかの大学で資格課程が設置されています。家庭支援職の中でも、特にファミリーライフエデュケーターは、教育的予防的側面を担う職種として認知されています。 カナダ、アメリカのファミリーライフエデュケーションは、子育て支援センターや公民館、教会等を舞台に、少人数、複数回で提供されます。日本での家庭教育講座等は、大人数、一回のみの講演が主ですが、今後、このようなかたちで、しかも公共サービスの一環として、ファミリーライフエデュケーションを提供できたら嬉しいと考えています。 ●周辺領域との違い 1、ファミリーライフエデュケーション(FLE)とセラピーのちがい FLE 予防的成長指向/たいてい週一回 8−10週間/参加者数・10−15人/開始に当たって参加者の公式選考は必要ない/グループディスカッション、講義、ロールプレイ、フィルム上映、その他/「今ここにある」ふるまいを扱う/知識、認識を深めるスキル、成長を促す/専門家の役割・教育リソースパーソン(情報、知識等を供給できる人) セラピー 心理的、社会的問題を扱う/治療を目的とする/セラピーの種類により異なるが、数年かかる/個人、カップル、家族またはグループ/選考と評価が、対処法の構築のために必要/手法は様々。診断とセラピストの手法によって異なる/現在の問題に焦点を当てるかもしれないが、場合によっては、幼少期も含めた過去を掘り下げる/社会的、心理的機能障害を減少させることを目的とする。個人的成長を促すことも。/専門家の役割は癒すこと。感情転移の相手(transference figure) (Methodology in family life education/On family life education for family life educators より) 2、保育と子育てのちがい 保育 集団で行う/分業制(掃除、洗濯、食事作り、施設管理、対外交渉、財政など)/原則として病児保育、重度障害児保育は行わない/就業時間内労働 /子どもに対する最終責任を持たない 子育て 個人で行う/全てを母親(またはそれに代わる人)がマネジメントする/病気、障害もケアする/在宅児の場合24時間/子どもに対する最終責任を持つ 3、保育・子育てと「家庭支援」/家庭(子育て)支援職の成立 現在、日本においては「保育」と「子育て」は混同あるいは同一視されており、日本の「子育て支援」は主に保育士が担う傾向にある。 しかし保育士の専門性は「保育」にあり、「子育て」あるいは「子育て支援」にあるわけではない。よって、保育士が「子育て支援」に当たる場合は、「子育て」に対する十分な認識と「支援」の実践的方法の最新知識の取得、自身の専門性からの劇的なパラダイムシフトが必要である。 では、「子育て」の経験者である在宅児の親なら、保育士よりも「子育て支援」適任者か?(カナダにおいては、彼等が「子育て支援」の主流である) 確かに、共感という点では、保育士に一歩先んじるだろう。しかし、当事者、個人的経験としての「子育て」は、リスクや特殊事情を抱えたケースを含む、幅広い「子育て」に関する認識とは別のものだ。やはり親にも、「子育て」に関する幅広い認識と、当事者ではなく支援者として「子育て支援」に当たる力量が望まれる。 以上の事情をいち早く察知して成立したのが、北米の「ファミリーサポートサティフィケート(家庭・子育て支援専門職)」だ。しかもこれは、実際に子育て支援にあたるスタッフ(親や保育士を含む)の必然性、要望から生まれた、極めて実際的、実践的学問である。なお、北米では、子育て支援ではなく家庭支援と表現する。これは、子育てだけではなく家庭全般をサポートするのが、子どもの豊かな育ちに不可欠と言う考えからだ。 なお、「ファミリーサポートサティフィケート」は、福祉的役割を担う「ファミリーリソースプラクティショナー」と、教育的役割を担う「ファミリーライフエデュケーター」に大別される。最近では、この両方を再統合して「ファミリーサポートワーカー」と表現する方向もある。 (聖和大学専任講師・橋本真紀氏の指摘からの考察) 4、教師と家庭支援職のちがい 現状では、教師が家庭支援の任も負わなくてはならない状況が多々ある。しかし、教師は基礎学問の教授を専門とする職種であり、家庭支援を学んだわけではない。にもかかわらず、心有る教師たちが、実践的経験的に方法論を作りながら、その任をこなしているのが現状である。 理想的には、就学前にすべての家庭への家庭支援が行き届き、そのスタッフが就学後も、教師あるいは地域と連携しながら、その家庭をフォローするのが望ましいと考える。 |
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なぜファミリーライフエデュケーターが必要か? |
ここに面白い文章があります。予防的教育=ファミリーライフエデュケーションの必要性の説明の一例です。 億万長者のアイオワ人 48歳の時、ジョンスミスは億万長者のアイオワ人になった。だが、アイオワ宝くじに当たったわけでも、大金持ちになったわけでもない。ただ、彼のケアと社会の治安のため、アイオワの納税者に百万ドル以上のコストをかけさせているのである。 ジョンスミスは成人してから、トータル約20年を刑務所で暮らしている(不法侵入、強盗、傷害が主な理由)し、少年時代は少なくても3年以上は訓練施設や更生プログラムにお世話になっている。彼の刑務所暮らしのコストは450,000ドル、加えて少年期のプログラムコストは175,000ドル、刑務所にいない時の保護観察コストは40,000ドル、裁判費用は150,000ドル以上にのぼる。この他に、精神障害を予防するための医薬コストが175,000ドル。 ジョンスミスの母親は高卒の資格を持っていなかった。そしてほとんど常に極貧状態で、時々生活保護も受けていた。子どもを産むとき、何の産前ケアも受けられず、彼は早産の低体重児であった。ジョンは異常な活発さと混乱した家庭環境に悩まされ、母親は彼が7歳のときにコントロールしきれなくなって、養父には虐待された。学校ではしつけの面で問題視され、最終的に10年生を修了せずに終わった。刑務所の中のプログラムによる援助で、GED(義務教育終了)はついにとることができたけれど。 ジョンは、納税者に課したコストのほかに、近所の住人から300,000ドルの物品を奪った。また、彼は二人の子どもの父親だが、そのうち一人は訓練施設行きの候補者である。ジョンは、次世代の億万長者のアイオワ人を確保する手助けもしていることになるだろう。 こうしてジョンの例を見ていくと、どうすればジョンや社会にとっていい結果がもたらされたか、指摘することができる。 もし、ジョンの母親が妊娠中に支援、相談、産前ケアが受けられていたら、彼女は健康な出産ができたかもしれない。 もし彼女が、自己を高めるトレーニングや家族を発展させる機会を得ていたら、経済的に安定して家庭をつくれたかもしれない。 もし、ジョンがごく小さい頃に、健康に関する初期的、予防的なケアがなされていたら大人になってからそれほど多くの医療行為は必要なかったかもしれない。 もし、ジョンの家族がペアレンティングプログラム(親教育)やホームビジット(家庭訪問サービス)を受けていたら、ジョンは虐待されず、怒れる少年にならなかったかもしれない。そして最後に、もしジョンが励まされ、勇気づけられていたら、高卒の資格をとって、キャリアを発展させていたかもしれない。 端的にいって、ジョンが小さい頃に、予防的投資(何十万ドルというより何千ドル程度)がなされていたら、彼を、社会の脅威ではなく、社会に寄与する人物にする手助けができただろう。成人してからの期間、もしジョンが彼の世代の平均年収の3/4でも稼いで、アイオワ税を30年以上払ったとしたら、その額は50,000ドルぐらいにはなる。そして一番重要なのは、彼の子どもたちが依存でなく成功への道を歩めただろうということだ。 そうすると、全体として、ジョンは社会に何十万ドル分の寄与をすることになるのだ。同じ額を社会から消耗してしまうのではなく…。 |
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ライアソン大学によるファミリーライフエデュケーターの解説 |
私が修了した、カナダ・ライアソン大学のコース紹介文によると、 ファミリーライフエデュケーションとは… ・家族生活のあらゆる場面に立ち向かう多面的、学際的な分野。アプローチの方法は、治療や診断というよりは教育的予防的な方法である。 ・ファミリーライフエデュケーターは急速に変化する社会にあって、個人や家族が生涯の様々な場面で、その生活の質を高めるようサポートするための知識や技術を身に付ける。 教育課程内容は… ・地域社会でファミリーライフエデュケーションプログラムを提供するために必要なグループリーダーシップとファシリテーター技術を学生に訓練する。 ・文化的差異のあるグループ、女性、経済的に不利な立場の人、障害者などのニーズに気づくセンスを磨く。必要に応じて、これらの人々の擁護者として行動するためのスキルの提供する等、教育的な体験を与える。 ・ファミリーライフエデュケーションの分野で、地域社会のニーズにアクセスしたり、彼らのニーズに合わせてプログラムを計画したり伝えたりするよう教育する。 このような実践的な課程を経て、ファミリーライフエデュケーターが認定されます。 |
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日本のファミリーライフエデュケーションはまだ夜明け前 |
日本では、まだ、北米のような教育プログラムも、家庭支援の専門職の知名度も、全くないといっていいでしょう. ファミリーライフエデュケーターをなのっているのは、ほぼ間違いなく私だけ. それゆえに、なかなか理解を得、認知を得るまでは時間はかかりそうですが、カナダに学んだ全く新しいアプローチの方法を用いて、また、従来日本が豊かに持っている家庭・子育ての知恵を大切にしながら、常識にとらわれない家族の幸せのかたちを提案してゆけたらと考えています。 最近、「当事者主権」という言葉を知りましたが、子育て支援もこの見地に立たなければなりません。どういう支援が必要かは、私たち母親が一番知っている。 ファミリーライフエデュケーションは、カナダの家庭支援の大御所・パット・ファノンの「まず、家族がなにを必要としているかを丁寧に聞くことから始める。」「親のひとりひとりには、最良の判断を下せるだけの内的な力が本来宿っている。それを信じるなら、親を支援するとは、親のニーズを整理し明確にする手助け、そして情報の入手方法の手助けである。支援することで親をエンパワーするのだ。」という支援姿勢にその真髄が良く表されていると思います。 ただ、ファミリーライフエディケーションは、子どものいる家庭だけの、あるいは家庭で子どもを見ている人だけのためのものではありません。 ライアソンで、家族という形態の多様さとその支援をも学んだので、共働き家庭や、子どものいない家庭を含めた幅広い層の皆さんに、ファミリーライフエデュケーションを利用していただけたらとも考えています。 |
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