<第一使徒の発見から光の巨人まで>
アダムとは、旧約聖書では神により作られた最初の人間です。なお、アダムの肋骨よりエヴァが作られます。このことからわかるように、アダムは最初の人類・男性であると同時に、両性具有的な、自分からも生み出すことが出来る存在です。また、カバラでは、全てを生み出すと同時に回帰の対象ともなる原人アダムが記されています。
セカンドインパクト時、科学者達は巨人を、「アダム」と呼んでいます。同様に、ナオコも光の巨人について、「あの巨人は我々の組織「ゲヒルン」では、アダム、と呼んでいる〜」と言っています。つまり、単純に言えば、光の巨人=アダムです。
しかしながら、セカンドインパクト時に何が行われたのでしょうか?
DEATH冒頭のセリフより、人間の遺伝子を第一使徒に対して融合させていたことがわかります。この方法として、ロンギヌスの槍を用い、提供者の遺伝子を光の巨人にたいしてダイブさせます。これにより予期された事態、セカンドインパクトが発生したのです。
つまり、セカンドインパクトとは、ヒトとシトの融合だったのです。
ここで二つの段階があったことになります。最初の段階は、発見された巨人(シト)であり、次の段階は、人間(ヒト)の遺伝子をダイブさせた存在(光の巨人)です。

この二つの段階は、結局は同じ生命体ではありますが、厳密にわければ別の生命体ともいえます。
もし、「第一使徒」という言葉を適用するならば、最初の段階です。
DEATHのセリフより、シトの発見からセカンドインパクトを起こしたヒト遺伝子融合実験までは、一定期間が存在し、その間、様々な実験が第一使徒に行われていたようです。
リツコには「人は神様を拾ったので喜んで手にいれようとした、だからバチがあたった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまったわ。でも、今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それが、アダム。そして、アダムから神様に似せてヒトを作った。それがエヴァ。」というセリフがあります。
リツコはセカンドインパクトの当事者ではなく、また、エヴァそのものについてもよくわかっていなかったと思われますが、このセリフの意味しているのは、第一使徒(全ての源であるアダムでもある)=神であり、ただし、動くことはなかった(バチがあたったという以上、S2機関の実験の失敗でしょう。葛城博士の存在およびセリフより、S2機関の実例として当初注目されていたことがわかります)。
その次の月に行われたロンギヌスの槍によるヒト遺伝子のダイブは、光の巨人を歩かせることに成功、ただし、これはセカンドインパクトを引き起こし、爆発。この時の破片をもとに復元されたのがベークライトアダムであり、このコピーから作られたのがエヴァ弐号機以降です(これについては後論)。
要するに、アダムと言う場合、二つの意味がこめられており、
1.最初の原人アダム(第一使徒アダム)
カヲル「アダム。我らの母たる存在。アダムに生まれしものは、アダムに還らねばならないのか。」
つまり、旧約でいう、自らの体から生命体を生み出すことのできる、そしてカバラでいう、全ての始まりであり、還るべき存在として描かれているアダム(=神)です。
2.光の巨人アダム(ヒトとの融合体としてのアダム)
ゲンドウ「そうだ。最初の人間アダムだ」
つまり、最初の、新たなるヒトとしてのアダムです。
[アダムとリリスとリリン]
ひとつ確認しますと、アダムとリリスは別物です。加持が最後までリリスという単語を用いなかったことから、加持はリリスの存在を理解していなかったことがわかります。だからベークライトで固められたアダムが復元されて地下の巨人になったと考えたのです。
ミサト「私達、人間もね、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた18番目の使徒なのよ。」
つまり、アダムとリリスはそれぞれ別の生命体であり、それぞれが生命体の源です。
伝承によると、人類の創生において、リリスはアダムの妻になるはずでした。しかし、リリスはアダムから逃げだしました。その後、天使達がリリスを捕らえ、脅しをかけるもののリリスは心を変えず、アダムの元へ戻ることはありませんでした。後にはリリスはルシファーと婚姻し、リリン(悪魔)と呼ばれる子を作ったのです。
また、別の伝承によれば、エヴァに知恵の実を食べるようそそのかした蛇こそ、リリスであったとも言います。その時、神は怒り、罰として腹這いで生き続けなくてはいけないように、足を奪います。
また別の伝承によれば、リリスは月の女神(魔女)であり、月の化け物を率いています。
しかし、どの伝承をみても、アダムとリリスの同一性はうかびません。エヴァと違い、リリスはアダムから生まれたわけでもないですし、逆にリリスがアダムを生んだわけでもありません。
さて、これらの伝承の中に、はりつけられ、足を奪われた、ルシファーの妻であり月の女神(魔女)リリスの像が浮かび上がります。そして、ルシファーとの間にはリリンと呼ばれる子供ら(悪魔)がおります。
カヲル「君たちリリン・・」
ミサト「人間もね、アダムと同じリリスと呼ばれる生命体の源から生まれた〜」
つまり、人間=リリスとルシファーの子=悪魔です。
これは、一方ではオープニングのシンジの影、映画予告編の鏡文字など象徴されます。
また、一方では、旧約における、神に逆らい知恵を手に入れ、エデン(楽園)を追放されるイメージとも重なります。なお、球状のジオフロントこそ、リリスの卵であるとともに、伝説のエデンであると思われます。
ゲンドウ「かつて楽園を追い出され、死と隣り合わせの地上という世界に逃げるしかなかった人類。その最も弱い生物が弱さゆえに手にいれた知恵で〜(17話)」この言葉は、かつては地下の楽園(リリスの卵)にいた、原罪を受ける前の、そしてATフィールドを発生させる前の人類を説明しています。
冬月「10数年後に必ずここでサードインパクトが起こる」のも、ジオフロントがリリスの卵であることを念頭においています。
以上のような、人間=悪魔である悲しみから、以下のような結論が導かれます。
ゼーレ「ヒトは愚かさを忘れ、同じ過ちを繰り返す。」
ゼーレ「自ら贖罪を行わねばヒトは変わらぬ。」
ゼーレ「これは通過儀礼なのだ。閉塞した人類が再生するための。」
ゼーレ「滅びの宿命は新生の喜びでもある」
ゼーレ「神もヒトも全ての生命が死をもってやがて一つになるために。」
碇「違う。虚無へ還るわけではない。全てを始まりへともどすに過ぎない」
碇「この世界に失われている、母へと還るだけだ」
碇「すべての心が一つとなり、永遠の安らぎを得る、ただそれだけの事にすぎない。」
・・ゲンドウの発言はゼーレの補完計画の説明であり、自身の計画とは違います。
以上より、贖罪を行い、母(リリス)の卵に還り、全てを始まりへ戻した上で、再生しようというゼーレの人類補完計画が生まれます。今度はルシファーの子としてではなく、神に認可されたアダムの子として。そのために、必要なのがロンギヌスの槍です。
[ロンギヌスの槍]
そもそもロンギヌスの槍とは何であったのか。世界を支配できるとか、力をもたらすとかいわれていわれますが、それらの伝承には意味はありません。ロンギヌスの槍とは、キリストを刺した槍です。その槍を持った隊長が、持病がなくなったことから神聖化されました。つまり、槍についたキリストの血により癒やされたのです。ところが、逆に、ロンギヌスの槍で刺されたために、永遠に直らない傷を受け、死ぬまで血を流し続けた伝承や、ロンギヌスの槍は常に血を垂らしていたという伝承もあります。つまり、この槍は、死と新生の両方を司る力を備えているわけです。
このような槍でアダムを刺したことは、何を意味するのでしょうか。
これを考える上で大事なもう一つの点は、15年後に南極からロンギヌスの槍を持ち帰り、セントラルドグマの地下に眠るリリスにつきさしたことです。これは、レイにより遂行されます。この後、槍を引き抜くさいにリリスの腹部が大きくなります。
つまり、最初の巨人アダムをロンギヌスの槍(死と新生を司る槍)でさし、ATフィールドを破ってヒトの遺伝子を融合させると共に、槍をアダム(ヒトとシトの融合体)の血でぬらし、今度はリリスを刺したのです。その結果、アダムの血がリリスに混じり、リリスは受胎します(ここでいう血がDNAでもあることは、ロンギヌスの槍が飛ぶとき螺旋を描いていることに象徴されます)。
なお、ロンギヌスの槍にはもうひとつの役割、人類の贖罪のため生命の木の上で生け贄を処刑する役割も、もちろんあります。
[リリス受胎の意味]
リリスは受胎します。これが、ジオフロントが黒き月=リリスの卵へと変貌するための条件です。これに、贖罪し、ATフィールドを解かれた人間達が融合し、ゼーレの人類補完計画はなされます。
つまり、罪をもつ生物人間が、罪を許されもう一度(今度は不完全な姿ではなく、ヒトとシトの融合として)生まれ直すためのよりしろがリリスであり、そのために彼女をヒトとシトの融合体アダムの遺伝子で受胎させ、そこに還る必要があったのです。
[エヴァンゲリオンとは]
聖書では、アダムより生まれし者がエヴァです。カヲルが弐号機に向い、「アダムの分身、リリスのしもべ」「エヴァは僕と同じ体でできている。僕もアダムより生まれしものだからね。」といっているのもこれを裏付けます。
そして、弐号機をドイツから運ぶ時、同時に加持はベークライトで固められたアダムを運んでいます。これらのことより、エヴァ弐号機がドイツにおいて、アダムより作られたことは間違いないと思われます。
ところが、アダムがネルフ(日本)に運ばれる以前から、零号機及び初号機は完成していました。
ゲンドウは冬月に「我々のアダム再生計画、通称E計画のひな型たる、エヴァ零号機だよ」と21話で言います。なぜ、「ひな型」なのでしょうか。アダムより作られし正規のエヴァではなく、リリスより作られたものだからではないでしょうか。弐号機は日本で設計されましたが完成はドイツです。なぜドイツで作られたかと言えば、アダムがドイツにあったからでしょう。
また、アスカは来日のさい、弐号機が「実戦用に作られた、世界初の、本物のエヴァンゲリオン」と言っています。
そして、キールは映画25話で、「唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」と言っています(この時点でエヴァ零号機は大破)。
カヲルは「エヴァシリーズ。アダムより生まれし、人間にとって忌むべき存在。それを利用してまで生きようとするリリン。僕にはわからないよ。」と言っています。
何がカヲルを悩ませたのかと言えば、リリン(人間)は、アダムの元から逃げたリリスと、ルシファーの子であり、アダムより生まれアダムの妻となったエヴァとは良い関係のはずがないからです。
ところが、カヲルはセントラルドグマにいるのがリリスであるのをみて「違う。これはリリス。そうかそういうことか、リリン。」と言って納得しました。これは、人間が、アダムより生まれし忌むべき存在であるエヴァを使って生きようとしているのではなく、人間自身の母であるリリス(及びそこから作られたエヴァ)を使って再生しようと考えていることが明らかになったからです。
しかし、エヴァとはアダムより生まれたからこそ、エヴァではないのか。ここにひとつのトリックがあります。エヴァはエヴァンゲリオン(evangelion・福音)の略であり、必ずしもアダムより生まれしエヴァ(eve)という意味で使われているのではないのです。

つまり、弐号機及びその後の期待は海外でアダムのコピーより作られたが、零号機及び初号機はジオフロントにおいてリリスのコピーより作られたのです。この両者よりエヴァシリーズは成っていたのでした。
<コアとは?14才とは?シトの行動パターンは?>
シトにおいてはコアが確認されます。ほとんど情報のないコアですが、脚本版22話において、覚醒したエヴァがシンジを取り込んだ後の脚本版22話において、リツコはこう言います。
リツコ「そしてコアの発生。エヴァ初号機に意志が、自我が目覚めつつあるんだわ。」
リツコ「やはりシンジ君は、彼女に取り込まれたのね。」
つまり、コアとは自我であったのです。だからこそ、コアを破壊されたシトは動けなくなったのです。心臓が破壊されたというより、自我の崩壊でしょう。
さて、では何故パイロットは14才なのか。14才はいわゆる反抗期であり、自我が目覚め、親と対立します。これは、キャラクター上ではシンジとゲンドウに見られますが、人間(ゲンドウ)が神に刃向かって戦いを挑むということにそのまま通じています。つまり、人類の精神史においては、父(神)に反抗する14才であるということがかけられていると思います。なお、ゼーレは逆に母の胎内への回帰を望みます。これは、実はシトと同じ行動です(人類は18番目のシト)。全てのシトは母を求めてリリス・もしくはアダムに近づいていきます。
カヲル「アダム。我らの母たる存在。アダムに生まれしものは、アダムに還らねばならないのか?人を滅ぼしてまで。」
これも胎内回帰願望でしょう。なお、シトは生命の実を喰らったヒトですが、親は、アダム単体から生まれたシト、アダムとリリスから生まれたシト、アダムとかつてのエヴァから生まれたシトの3種の可能性があり、その行動パターンの違いはここからきています。
この項の詳細は<精神分析におけるエヴァンゲリオン>参照。今は工事中。
[カヲルについて]
カヲルは、セカンドインパクトと同じ日に生まれました。
では、セカンドインパクトとは何が起きた日でしょうか。それは、人間の遺伝子を最初の使徒にダイブさせる実験です。つまり、人間の遺伝子をアダムにダイブさせる実験により生まれた成果のひとつがカヲルであり、「アダムより生まれしもの」であるわけです。
では、誰の遺伝子をダイブさせたのでしょうか。
カヲルはレイに向かい、「君は僕と同じだね」と言っております(24話)。
また、シンジは、「僕に似てたんだ。綾波にも。」と言っております(24話)。
また、ゲンドウ最後の場面で4人の人物が彼の周りを囲みます(26話)。ユイと、レイと、シンジ(エヴァ)と、カヲルです。全て、ゲンドウにとっての近親であることがわかります。
つまり、カヲルはユイの遺伝子をアダムにダイブさせることにより作られたのです。

ゼーレがカヲルをシンジのもとに送りこみ、「初号機による遂行を願うぞ」と言ったのも偶然ではありません。カヲルは、自分の出生の秘密を知っていましたと思われます。だからこそ、「君と同じ仕組まれた子供」と言ったのです。つまり、ヒト−ヒトにより、シンジ。ヒト−アダムによりカヲル。ヒトーリリスによりレイです。ユイを基準にして、様々な結合が実験されたことがわかります。ゼーレがエヴァ搭乗の被験者にユイを指名したのも以上のような事情があるからです。実験のため同じヒト遺伝子を使いたかったのでしょう。
また、カヲルがシンジに興味と好意を抱いたのもわかります。たとえ、シンジがそのことに気づいてないとしても、自分の、ある意味で兄弟でもあり、自分に好意を抱いてくれるカヲルを、使徒として殺すことによりシンジの自我が決定的なショックを受けることが予測されます。これにより、ゼーレは「初号機パイロットの欠けた心によって人類の補完を」というセリフからわかるように、シンジ抹殺に失敗し、彼が神に等しい力を手に入れた場合でも、自我が崩壊した彼の心で補完計画を遂行できるようにしたのです。
[ゲンドウの補完計画]
冬月「ヒトは、エヴァを生み出す為にその存在があったのです。」
ゲンドウ「人は、新たな世界へと進むべきなのです。そのためのエヴァシリーズです。」
ミサト「できそこないの群体としてすでに行き詰まった人類を完全な単体としての生物へと人工進化させる補完計画」
アダムとヒトの融合実験のほか、もうひとつの実験が行われていました。
リリスとヒトとの遺伝子融合実験です。これによりレイが生まれます。ゲンドウはレイを、ゼーレとは別の、自分がリリス・エヴァと融合するための計画のよりしろとして使おうと計画します。彼は「かつて誰もがなしえなかった神への道。人類補完計画」を追求し、人類を単体としての神にしようとします。
そのため、神をも殺す力をもつロンギヌスの槍を放出します。
また、レイの試験管の周囲を魔法陣でかこみ、伝承によれば、アダムからリリスを奪ったルシファーの接近をはばもうとします。
[終局]
しかしながら、最終的には、ゼーレの考えていた、人類をアダムとリリスの子として新生させる考えも、ゲンドウの考えていた自分がアダムとして、リリスと融合する考えも成功せず、ルシファー的存在(12枚の羽根をもつエヴァ)であるシンジをリリス(レイ)は選びます。
「私はあなたの人形じゃない。私はあなたじゃないもの。」「碇君が呼んでいる。」
人類の起源においてアダムとリリスの間に交わされたのと同じ会話が人類の終局(そして新たなる始まり)において繰り返されているわけです。