レコア・ロンド エッセイ・・転職あるいはレコアの正体

最近、Zガンダムを見ていて、とても気になったのがレコア・ロンドでした。
とくに、エゥーゴにいても、どことなく気がそぞろになり、

「わかることは何もかも捨てて、どこかに行ってしまいたいってことよ」
という時のレコアの雰囲気。

この表情は、どこかで見たような・・?

そうだ!会社で何年も一緒にやってきた女の人たちが、退職を心に決めつつあるとき、みんな、あれと全く同じ雰囲気と表情をかもし出していたのです!

そして、あの雰囲気をかもし出したら、もうダメです。いくら説得しても、最後は見えている。転職です。

シャアが、中途半端に気にしていましたが、あの表情を見せた段階になっては、仮に、シャアがもっと熱心に対応してもダメだったでしょう。
では、なぜ、そのような表情を見せたのでしょうか?

よく言われるのが、地球に降りたときに、兵士に辱めを受けたという点ですが、それがポイントではないと思います。

なぜなら、その後も、喜んで宇宙に帰っています。

そうではなくて、自分が、そこまで身を犠牲にして働くことの意義を、考え始めたのです。

そこは、それほど自分にとって、帰属意識が湧く場所なのか?と。

自分の苦労は、本当に意味があるのだろうか?と。

私の知っている、退職(転職)していった女性たち、レコアと同じ表情で、さばさばした感じをかもし出してしまった女性たちも、皆そうでした。

かなり、無理して働いて、それで、ある瞬間、ふと立ち止まり、自分がそのように働き続けることに疑問を感じ、やめていったのです。

それまで、こっちは、当然のこととして、皆ずっと同じ感じで働いてくれると思っていました。ところが、ああいう表情をし、心の迷いを一言、二言だけいい、数ヶ月後には唐突にお別れとなります。
カミーユのショックもわかります。だけど、本当は、皆、変化に気づいていたはずなのです。いや、気づかなくてはいけなかったのです。

もっとも、年取った幹部社員には、そのへんの動きは、何も見えません。

どれだけ、その人が苦労して、貢献していたかに対する気遣いも全くありません。

頑張った後ほど、彼女にとっては、その無力感が、組織への幻滅を強くします。

そして、様々な心理的変遷の後、周囲からは、唐突にみえるかたちでいなくなります。

ただし、愚痴はいっさい言わないので、残った方からは、よく事情がわかりません。



レコアがいなくなった事情は、そういうわけです。

よくいわれるように(富野監督もたしかにいっているが)、「女」であることのこだわりや、シロッコの存在以上に。

なぜ、そう言いきれるかというと、私自身(男だが)、その後、似たような状況で職場を離れることになったからです。(レコアのような表情や雰囲気をかもし出していたかはわからない。おそらく、違うでしょう)

しかし、男の転職の話は、また別途としましょう(レコアではなく、ギジェを例に・・・・そっちの方が・・近い)

さて、普通の、会社員数十年という平凡な管理職には、そういう事態は全く見えていません。
見えているとすれば、それは、ものすごく優秀な幹部社員だと思います(シロッコは、もちろん見えていた)。

シャアにも見えていたはずだが、彼は何も(?)しなかった・・

では、何故、会社員数十年という人たちがわからない機敏を、富野監督は、描くことができたのでしょうか?

それは、富野監督自身が、そういう人生だったからです。

虫プロに入り、鉄腕アトムを誰よりも多く作り、自信もあったのに、結局それ以上には認められず、会社をやめて、転職。

しかも、気にいっている女性からの誘いで、相手のいる会社に転職。

まさに、レコアの男版であることがわかります。

つまり、レコアが美人だから誰も気づきませんが、レコアの正体は、監督自身です。

だからこそ、通常の会社の幹部社員以上に、その、辞めるものの気持ち、転職するものの機敏と挫折感、悲哀がわかっているのです。

ついでに言うと、その後、富野監督は、仕事がなくなり、土下座して虫プロに戻ります。

この、いどころなく、あっちにいったり、こっちにいったりする感じ。

これこそ、富野作品のほとんど全ての作品に共通するメインのイメージです。

ザンボット3のような家族物語でも、あっちにいっても、こっちにいっても、居場所がなく、認めらませんでした。

勝平「なんでなんだよー!こんなに頑張っているのに!!」

ホワイトベースでも、ソロシップでも、その後の作品でも同じです。

どんな巨大な戦争の場合でも、ただの小規模な争いでも、主役は、いつも、ふらふらしている船に乗り、いくらがんばっても、周囲の共感には認められません。


富野作品では、帰属場所を求めてさすらう軍隊や個人が多数登場しますが、それは富野監督本人の経験をある反映しているものであり、レコア・ロンドはその代表格の一人といえるでしょう。



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