メッセージで僕は映画を作りませんから。
ただ、この映画が現代に共通する点があるとしたら、それは自然と人間の関わ
り合いだと思います。
僕らは、「自然に優しい」とか、「宇宙船地球号」などと一言も言った事はな
いんです。「自然に優しい映画を作るジブリ」というブランドが勝手に横行す
るようになって、それが嫌なのですよ。

そう誤解されても、しょうがないと思わざるを得ないのですけれど、この十数
年、とにかく色々と作品を作ってきて、この大きな転換点にきているのに、「
自然に優しいジブリ」で終りたくなかったのです。
だから、自然と人間との関わり合いをもっと突き詰めて追求して行く。すると
、人間のやってきた事の業というか、文明の本質にある攻撃性とかが見えてく
る。散々、相手を痛めつけて、おとなしくさせてしまってから、「周りに残っ
た者に優しくしよう」と言っているに過ぎないんです。
文明の本質みたいなことをちゃんと描かないで、「優しくする人、よい人」「
優しくない人、悪い人」という考え方で切り捨てていくのは、間違いだと思い
ます。
優しかろうが、優しくなかろうが、人間は自然に対して極めて凶暴に振る舞っ
てきたんです。
それで、自分達が選ばれた者であるとか、この人類が一番高等な生き物である
とか言い出す。ある時には、人類の中のある部分が、一番高等だと順番をつけ
たがる。今また、「優しくする人、よい人」「優しくない人、悪い人」という
判断の単純化が進んでいる。そんなものではないんです。よいとか悪いとかで
はなくて。

こういう人間の本質みたいなものを据えた、自然と人間との関わり合いを描く
映画を作りたいと思っています。それはメッセージというものでもなく、自分
自身に回答が出ていないから、甚だ迷走しながら映画を作ったんです。
この映画は、「悪い人間が森を焼き払うから正しい人がそれを止めた」という
映画ではないのです。
よい人間が森を焼き払う。それをどう受けとめるかなんです。
ハイチのように、実際にそういう状況があります。自分の横にいる子供を飢え
させないために、木を伐るのですよ。貧乏で石油ストーブもないし、電熱器も
ないから、炭がいるのです。
そのために、木を伐って全土が丸坊主になり、さらに漁業もだめになる。何と
かしないとハイチは滅びます。軍事独裁政権が悪いとか民主主義がいいとか言
ってもだめなんです。
(『「もののけ姫」を読み解く』より)



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もののけ姫QA6:もののけ姫という作品のメッセージは何か