自己分析について
登場人物:
田中和夫:キャリアコンサルタント
藤田道夫:大阪の私立浪速大学経済学科3年生、気が弱い
大平晴香:地方の私立大学3年生、頭は良いが大学が元女子短大で就活は苦戦
1.発端
キャリアコンサルタントとして活動中の田中和夫のホームページに、珍しく読者からメールが来た。
「参考になるお話、ありがとうございました。私の大学は、元は女子短大だったので、先輩も少なく、就職活動でも苦労しています。色々な就活で、『自己分析』を行うように指導されていますが、書くことがなくて困っています。ある本では、『自己分析は有害』と書いてありました。どうしたらよいのか、アドヴァイスください。」
田中は珍しく読者からのメールを貰って嬉しくなり、早速返信した。
「著者の田中和夫です
メール頂きありがとうございます。たしかに、『自己分析』は、上手に行えば自分の可能性を引き出す有効な手段です。しかし、やり方を間違えると、『青い鳥症候群』や『自信喪失』で、道を誤ることがあります。私のホームページにも、自己分析に使えるシートを載せていますが、これだけではどう使うのか解からないでしょう。一度『自己分析の方法』について一緒に考えてみませんか。なお、私も作戦を立てないといけないので、宜しければ、あなたの状況を教えてください。」
するとしばらくたってから、返信が来た。
「先生を、信頼して私の現状をお話します。
私の名前は大平晴香です。
滋賀県の甲賀市にある、信楽大学経営学科の3年生です。
大学のキャリア指導では、性格診断を行ったあと、『あなたの天職は、介護の仕事です。』と言われました。
また、個人で参加した別の講習会では、『今までの自分の歴史を書き、その中で感動した体験を中心に検討する』ように、指示されました。
しかし、天職といわれても何か納得できないし、感動した体験と言われても、思い当たるものがなくて困っています。
このような自己分析は本当に効果がるのでしょうか?教えてください。」
田中は、早速返事を書いた。
「大平晴香様
田中和夫です
状況わかりました。確かに、今行われている『自己分析の指導』には、問題のある場合もあります。おっしゃるように、『天職』と言う言葉は、軽々しく使うべきものでは、ありません。また、感動と言うものを探せと言われても、納得しないものがあるでしょう。
しかし、自己分析と言うものは、使い方によってはあなたにとっても、採用側にとっても効果のあるものです。今まで、多くの就職指導で使われてきたのは、それなりに理由があるのです。ただし、昔と状況が変ったり、基礎的な考え方を採用側や指導者が理解していない場合もあるようです。
私が考える、就活で自己分析を行ってもらう目的は、自分の潜在的可能性に気が付いて貰うことです。会社生活においても、今までの自分ができなかったようなことに、チャレンジして解決することが良くあります。そのような時、自分に潜在している力を引き出して、成果を出す人を会社は求めています。また、潜在能力の引き出しは、人に頼らず自分で行うことです。
そう言っても、潜在能力とは何かと思うでしょう。例えば、一寸した訓練であなたの記憶能力を今まで以上に、伸ばすことも可能です。毎日、寝る前に今日一日のことを思い出してみる。しかも時間を逆に回すように遡ってみる。すると結構思い出すものです。一度試してください。
それでは、またメールください。」
晴香は、これを読み今までの指導とは少し違い、自分に合っているように思った。とりあえずメールにあった、夜寝る前の一日の思い出しを行ってみた。すると、今まで思っていなかった、講義内容が部分的に思い出せることを経験した。この経験を、早速メールで報告した。
「田中和夫様
大平晴香です
ご指導ありがとうございました。一日の思い出しを早速行ってみました。完全に思い出すことはできませんが、今まで思いいつかなかった、講義の最中の教官の冗談を思い出すことができました。少し私の記憶力に自信を持ちました。
これからもよろしくお願いします。」
これを読んで、田中は彼女の指導をもう少し進める気になり、もう一歩踏み込んだメールを送った。
「大平晴香様
田中和夫です
早速の対応で成果が出たようですね。嬉しいことです。
さて、思い出すことを求めすぎてはいけません。少しでも良くなれば、自分で褒める。これが大切です。そのために、毎日日記をつけることお勧めします。今日できたことを記述する、そして明日確認すると、昨日よりできたものが増えている。更に一週間先ならもっと増えている。又は微妙な増加が見えてくる。このように、書くことで自分の成長を確認する。これも自分の潜在可能性を引き出した一例です。
なお、日記は手書きで書いてください。自分の手で書いたものは、それだけで力があります。さらに、手書きに慣れていると、入社試験での小論文や記述式試験で楽にかけます。手書きに慣れていないと、漢字を忘れたり、多くの文字を書くと手が疲れて、文字が乱れます。
それでは、1週間後にまた状況を連絡してください。」
晴香は早速実行してみた。メールやパソコンに慣れていたので、手書きには抵抗があったが、毎日書き続けることで、書くことの抵抗も少なくなった。また、記録を読み返すことで、自分が思いだせる項目が増えていくことを確認できた。そこで、1週間後に報告した。
「田中和夫様
大平晴香です
いつもご指導ありがとうございます。前回から思い出せるものが増えました。また、書くことの抵抗も少しなくなったように思います。この次はどうしたらよいでしょうか。教えてください。」
このメールを見て、田中は思い切って、自分の講習会に晴香を誘うことにした。
「大平晴香様
田中和夫です
成果が出たようで嬉しく思います。さて、私が指導する大学3年生向けの就活講習会があります。その話しを聞いていただき、そのあと個別のご相談をいたしたいのですが如何でしょうか。
日時 2009年1月18日 午後1時から3時まで講習、後1時間ほど個別相談
場所 大阪市北区梅田駅前の第6ビル12階、第7会議室
参加者 浪速経済大学3年の学生5名程度
説明内容 『総合職で就職するための自己能力開発法』
参加費 今回は無料です
なお、私にキャリアコンサルタントとして契約いただくならば、着手金として1000円を頂いておきます。その場合私に守秘義務が生じます。もっとも今までの話も他言はしませんが、業務としての契約で筋を通すこともできます。如何でしょうか。」
晴香は、このメールを見て少し迷ったが、一度話を聞いてみようと思って、参加する旨の返事をした。
「田中和夫様
大平晴香です
それでは、参加させていただきます。コンサルタントの契約の件は、お会いしてからお話したいと思いますが如何でしょうか?」
田中はこの答えを予想してたので、直ぐに返答した。
「大平晴香様
田中和夫です
解かりました。それでは18日(日)は、大阪でお待ちしています。宜しければ地図をおくります。」
晴香は、地図ぐらいはネット上で探せると返事した。すると田中から、次のようなメールが来た。
「大平晴香様
田中和夫です
それで正解です。自分で地図を探すぐらいの自主性がないと、就職戦線は生き残れません。就職セミナーと言っても企業主催のものは、事前選考的な要素があります。そこで、『自主性がない、パソコン操作能力もない』という風に見られるのは、あまり良い結果でないでしょう。このような厳しさも知っておいてください。」
晴香は、厳しいとは思うが、それだから効果もあるのだと思いなおした。