論文・レポートの書き方
論文・レポートのように研究的色彩が強いものでも、仕事として作成する場合には、QCD(品質、コスト、納期)の最適化を考慮しながら作成する必要がある。
まず、品質については、間違ったことを言わないあたりまえ品質に加えて、読者である顧客が本当に要求している内容を記述している、顧客満足が重要である。
次のコストと納期は表裏一体の関係が有り、目的に合わせた効率的な検討を、効率的に行うことで納期を確保することが可能になる。また、顧客の要求に応じて資源を重点投入すべきであり、要求精度に応じた調査をする発想も必要である。遅れた報告は、機会損失を伴うので、品質面でも低下している。
以下では、業務としての論文・レポート作成について、必要と考える項目を記述する。
1. 目的の明確化
まず確認すべきことは、“読者は誰で、なぜ何を知りたがっているのか?”である。例えば、以下のような項目を知りたい場合に、どのような情報を提供すれば、満足してもらえるであろうか?判定基準は、読者の立場で有効と判断してもらえるかである。また、何時までに必要かも、十分考慮する必要がある。
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要求項目 |
必要情報 |
精度 |
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将来の見通し |
現状の規則性・予測等、過去事例 |
低 |
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現在の状況説明(法則性の発見) |
因果規則、概略モデル |
中 |
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トラブル等の原因究明(再発防止策) |
因果関係、詳細モデル |
高 |
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改善提案又はヒント |
法則性、新規構成 |
中〜高 |
2.計画
何事をする場合にも、計画が大切であるが、研究のように形になりにくいものでは、何をするかを明確にしないと話が進まない。お金を貰って研究する場合には、研究プロセスまでも顧客の納得を得る必要がある。通常、顧客の依頼で研究する場合には、以下の6要素を明記した企画書で納得を得る。個人の研究でも、4),6)以外は明確にして方向を決めればよい。
1) 目的・狙いどころ
2) 研究範囲・内容
3) 方法・手順
4) 担当者・業績
5) 期間費用、
6) 添付資料(研究機関の歴史など)
3.情報収集
情報の収集は大別すると、日常の収集と、必要に応じた収集、の2通りがある。
日常の収集は、新聞、テレビ、雑誌などで興味を引いたものを蓄えておくもので、メモ帳、ルーズリーフ(A5,B5)、パソコンのファイルなどがある。これらは一長一短があるが、自分に適し、手軽に蓄積でき、有効に検索できる方法を使えばよい。特に注意すべき点は、収集時に出典を明記すると伴に、事実と意見の区別、事実は直接的な事実か、伝聞かを明確にすることである。これらが曖昧であると引用できない。なお、スクラップを多用する場合は、ルーズリーフが有効である。
目的に応じた情報収集は、インターネットの利用、新聞、本等の情報も重要であるが、現場・現物の確認がそれ以上に重要である。自然科学以外では、自己の体験を加えると文章に一段と迫力が出る。この場合でも事実と意見の区別が重要である。特にインターネット上での情報は、玉石混交であり、取捨選択が重要である。
また情報蓄積は事実だけでなく、日頃の自分の思いつきも、メモなどで蓄積すべきである。発想は、資料が揃った後で始めると言うものではなく、常に材料となる小さなアイデアを蓄積しておいて、目的に応じてまとめるほうが良い発想になる。
4.検討の方法論(目的に合わせた検討)
事実の集まりだけでは、論文レポートとはいえない。オリジナリティが必要である。オリジナリティとは、入手した情報に加えて、以下の付加情報を含むことである。
現在発生している現象の説明:因果関係、ルール化
将来の予測: 精度の高い予測、概略の予測、危険範囲の設定
良い説明: 既存の説明より解りやすく、納得性のある説明
そのためには以下の条件を満たす必要がある。
4-1 論理的な文章の進め方
論理的な話の展開と一言で言うが、実際は以下の2段階に分かれる。
1)数学や物理学のようなきちんとした理論での展開
2)一般的会話での説得力のある議論
まず、1)の場合は定義を明確にして、明白な公理からトップダウンに演繹的な展開を行う事が多い。また事例をボトムアップ的に多く積み上げて、一般化する帰納法も使う。この場合には、類似例での類推やたとえ話は、禁物である。
演繹法の一例として、憲法前文から各種条文、実行規則までの法律体系がある。法律は、一般原則から、具体化を体系的に記述している、優れたシステムである。機会があれば、体系的に勉強することをお勧めする。特にどのような法律を読む場合も、必ず第1条の目的は、飛ばしていけない。目的を明確にし、その上で概要から個別を書くのが、演繹的な展開である。
一方、一般的会話などでは、原因―結果の関係を明確にしておけば、たとえ話を多く使い、イメージで理解してもらうことも有効である。厳密な一本線で攻めるより、多数の根拠を示し説得する。関係ありそうな事例を多く並べて、類推で説明する。これらが通常の説得文で使う手法である。理科系でない場合はこの論理展開を使うことが多い。
4-2 実例による裏付け
理論的な話は、一般論で終わりやすく、読み手に感銘を与える力が弱い。このため実験データや自分の経験、いままでに該当理論で説明できる事例を示すことは、文章に力を与える。例えば、“手書き文章と比べてパソコン上で作成する文章は、漢字が多くなりやすい。”と言う一般論に、“本説明でも、‘該当理論’や‘厳密な一本線’等の表現がある。”と書いたり、“このページの漢字利用比率は、約40%であるが手書き文章では30%代になることが多い。”と数値で示すことで、説得力が出る。
なお、理論と現実は乖離することが多い。その時なぜ乖離したかを説明できると、一段と説得力が増える。
4-3 定性的説明と定量的説明
数値などの定量的なデータは、現実性と説得力がある。しかし、数値の意味を定性的に説明できないと単にそれだけで終わる可能性がある。最低限以下の問いの答える必要がある。
1)その数値が増えるとどうなる、減るとどうなる
あるいは、増える(減る)と言うことは何を意味しているのか?
2)その数値の変化は一様か?急激に変わる点はあればどこか?
3)その値の精度と、外乱条件にはどのようなものがあるか
4-4 反論を含めた検討
科学と信仰の違いは、反対意見を許し、しかもそれを論破する点である。自分の言っていることだけが正しいのではなくて、広く反論の可能性を考えて、しかも再反論する姿勢が重要である。民主主義の条件が、反対勢力・意見を認めると言うこと同じである。
5.論文としてのまとめ
5-1形式の理解
通常の論文やレポートは以下の形式で記述する。
(1)基本形
1. 表紙 要約と目次まで含む場合もある
2. 要約 数行(全体が数ページ)〜1,2枚(全体が数十ページ)
3. 目次 章と節まで記述
4. 緒言 研究の目的、内容、過去の文献紹介
5. 研究方法 実験方法、調査方法、モデル形式など
6. 研究調査結果 実験結果、データ、解説
7. 分析・検討 成果の分析、多角的検討
8. 結語 結論のまとめ、今後の課題
9. 参考文献
副次構成要素
1. 付録 詳細な証明などは付録にする
2. 添付資料 調査の詳細データ等
この中でも、オリジナリティを示すのは『7.の分析・検討』であるが、読者にそこまで読む気にさせるためにも、『2.要約』、『4.緒言』が重要である。なお、作成時には、1.から順に書くのではなく、4.〜7.の書けるところから始めるのが良い。
なお用紙、書式は指示内容を守ること、レポート用紙と言う指定に対し、ルーズリーフでの提出などは論外である。
(2)社内文書などでA3 1枚にまとめた場合の形式
これは、上記の応用であるが、上記2.と4.〜8.の内容を、それぞれ1つ又は複数のボックスに記述し、左上から右下に視線が自然に流れるように配置する。
5-2議論の進め方
主要部分の要点は、以下のとおりである。
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部分 |
読者の着目点 |
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4.緒言 |
研究目的を明示する。特に過去の文献を示すことで、著者は何処まで理解した上で、研究したかを示す。*1 |
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5.研究方法 |
研究方法では、どのような前提で研究したかが重要である。現実の複雑さに勘銭対応することは、不可能なので、どのようなモデルで何処まで考えたかを示す。 |
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6.研究調査結果 |
ここでは、事実の記述をできるだけ客観的に述べる。またデータの信憑性に関しても、冷静かつ客観的に評価しておく。 |
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7.分析・検討 |
ここでは自分の考えを打ち出す。6.で得た結果に対し、命を与えるのがこの部分である。なお、反論も含めた多角的検討を付加しておく。 |
*1:良くある例で、“フェルマーの定理の証明”と言って投稿が在ったが、“楕円関数の特異点”等の先端研究を示す参考文献を引用していれば、新発見が期待できるが、そのような文献がない場合は、誤りの可能性が多い。
5-3 文体
文章表現の細部は、他に良い資料があるので参考にして欲しいが、最低以下の条件は守って欲しい。
(1)段落分けをきちんと行う
言うべきことを、まとめて段落にする。段落まとめを考慮した、文章は読みやすくなる。
(2)個別文章表現
以下の条項は守って欲しい。
・レポートの基本は、“である調”で表現する
・主語のはっきりしない、受身表現は避け、自分の主体性、責任を明確に表現する
思う× → 考える ○
5-4 プレゼンテーション技法
現在は電子化した情報を、マイクロソフト社のパワーポイントを活用して、発表することが多い。パワーポイントには色々な機能があるが、全て使う必要はない。凝り過ぎた発表は見難いと言う意見も多い。見る人の立場での検討が重要である。