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デルフィニア戦記私的未来編 最良の日        菜月 みか


その1】  【その2】  【その3

その1

 風の音が変わった。  耳を立てようとして、それが出来ないことに笑みが浮かぶ。
 今の私には黒い毛皮も、戦うための牙もない。
 育て親と同じ、二本足になっている。
 目を閉じていても花の香は分かった。
 ここは違う、ボンジュイじゃない。
 では、どこだろう?
 不意に育て親の言葉を思い出した。
「そこには、俺の同盟者が居る」
 深く輝く翡翠の瞳に浮かぶのは、狂おしいまでの想い。
 無意識に柔らかな草を掴んでいた。
 確かな感触と共に、目を開ける。  青い空と花畑、視界に映るのはそれだけだった。  耳はもっと多くのものを知らせてくれる。
 その中に無視できないものがあった。
「本当にくるんだろうな?」
「ああ、ティレドン騎士団が護衛に付いている」
 ざわめきが広がる。
「まさかユーリー・ウルディス様が御一緒なのか」
「当然だろう。だが、手は打ってある」
 どうやら、待ちぶせらしい。
 草を握る手と、地面に投げ出された足を見る。この至近距離では、気付かれずに移動することは無理だろう。戦いは避けられない。
 敵に姿が見えてしまうので、身は起こさずに育て親の友達からもらった短剣を静かに抜いた。


 ティレドン騎士団長は、国王からの呼び出しを受けて本宮へと向かっていた。内政の最高責任者である国王に休日はない。会見を終えたらしいサヴォア公爵が執務室から出てきた。軽く頭を下げるティレドン騎士団長を目にして、サヴォア公爵は足を止めた。
「ユーリー、騎士団長の椅子の座り心地はどうだ?」
「悪くありませんよ」
 サヴォア公爵は笑いながら、ユーリーの頭を乱暴に撫でる。
「たまには母上の所にも顔を出してやれ、お前がマレバに入りびたりなものだから寂しがっていた」
 ユーリーは苦労して父親の手から逃れた。
「ええ、そのうちに。ところで、エミールがポリシア平原の領主になるという噂は本当ですか?」
「ああ、父親の往生際が悪くてそうなったらしいな」
 独立騎兵隊長の奥方がロアの領主になった折にも、ザヴォア公爵は似たような言葉を口にしたという。
「陛下の呼び出しの理由は、そのことと関係があるのでしょうか」
「どうだろうな」
 意味ありげな表情で、サヴォア公爵は息子から視線を外した。無視できない様子だったが、問いただす前に立ち去られてしまった。ユーリーは複雑な気持ちを抱えたまま執務室へと入る。
 国王は一人、政務をこなしていた。手を止めると、親しみのこもった笑顔をユーリーへと向ける。
「元気そうで何よりだ。突然で済まんが、折り入って頼みがあってな」
 ティレドン騎士団長の地位にあるとはいえ、ユーリーの力は父親の足元にも及ばない。
 そのことはユーリー自身も十分にわきまえている。
 国王の頼みごとの想像がつかなくて、ユーリーは困惑を隠せなかった。
「何でしょうか」
「俺に何かあったときには、ユーリーに王座を受け取ってもらいたいのだ」
 他の国であれば、このような話が持ちかけられることすらあり得ない。だが、ユーリーは国王が紛れもなく本気で頼んでいると分かった。
「駄目かな?」
 腹が立ったが、国王を怒鳴るわけにはいかない。懸命に、拳を握り締めて耐える。
「話す相手を間違えております」
「アルクスも、国王になる気はないそうだ」
 国王の前だったが、ユーリーは思わず舌打ちしてしまった。
 アルクス・リーゼ・ロウ・デルフィンは庶子である。しかし国王の唯一の直系でもあった。
 中央から戦火を絶やした稀代の英雄は、まさに生きながら伝説の人となっている。その英雄の息子であり、誕生からデルフィニアの人々に祝福を受けて来たアルクスはとにかく知名度が高い。庶子であることを問題視するのは、血統しかとりえのない無能者ぐらいであろう。
「ところで、エミールがポリシア平原を相続する話は聞いているな?」
 こんな時に何を言い出すのかと思ったが、国王の顔は真剣だった。
「国王の名代として、アルクスを行かせようと思う」
 ユーリーの顔に挑戦的な笑顔が浮かぶ。容貌はどちらかと言えば母親に似ているのに、その表情は父親とそっくりだった。
「護衛は決まっておりますか?」
 国王は笑顔を浮かべる。
「行ってもらえると助かる」
「勿論、お引き受け致します」
 王宮で顔をあわせる機会は少ないが、護衛ともなればずっと一緒だ。絶対に口説き落としてみせると、ユーリーは固く心に誓った。
 二人の会話を見計らったようにノックが響き、サヴォア公爵と国王の庶子アルクスが入ってきた。
「ユーリーはどうやら従弟殿似であるらしい」
 困ったような国王の口調に、サヴォア公爵は息子が王座を受け取らなかったと分かった。予想通り、当然の結果である。そもそも、受け取ると思う方が間違っている。過去の経緯を思い出しながら、サヴォア公爵は意地の悪い笑みを返す。
「サヴォア公爵家の唯一の跡取りを、従兄上にお渡しするわけにはいきませんな」
 国王の方は、息子に向き直り表情を改めた。
「アルクス、お前に用事を頼みたいのだが、かまわないだろうか?」
 国王によく似た少年は、表情を厳しく引き締めた。
「陛下、王は臣下に命じるものです」
 サヴォア公爵は額を押さえて、左右に首を振る。国王は苦笑していた。
「実は、ポリシア平原まで行ってもらいたいのだ」
「承知いたしました」
 膝を折って、深く頭を下げる。臣下として扱うように、アルクスは言葉ではなく態度で示しているのだ。
 今までに誰も何も言わなかったとは考えられない。だが、けして自らの考えを曲げようとはしなかったのだろう。普段は穏やかなくせに、一度決めた事には非情な厳しさで徹する奴なのだ。
 ユーリーが批判的な目を向けても、アルクスは正面からその視線を受けとめて平然としている。
 怒りに震えるユーリーに向かって、国王は肩をすくめてみせた。


 背の高い草むらは少女の姿を完全に隠していた。しかし中腰になっただけでも、見通しの良い平原では見つかってしまう。
 草を踏み締める足音が少女の耳に聞こえてきた。
「来たぞ」  意識が完全に待ちぶせていた相手へ向いている。
 少女は素早く身を起こして、眼で敵の数が15人であると確認した。
 喉を狙って、2人を一気にしとめる。突然現れた敵の正体に、男達が驚いているのが分かった。
 場違いにも少女は裾の短い金色のドレスを着ている。豊かな黒い髪はそのまま後ろに流してあった。
 賞賛に値する美しい少女である。しかし驚きが殺気に変わるまでに時間はかから なかった。
 5本の長剣は迷いなく少女に向いている。後は待ちぶせていた少年へと向けられていた。視界の端で、少女はそのことを確認する。助けてやる義理はない。その少年が死んだ所で心が痛むとも思えなかった。
「逃げるんだ!」
 叫んだ内容を理解するのに時間を要するほど、少女の人間に対する期待感は薄かった。
「どこに?」
 問い返す声には、笑いが含まれている。少年は言葉ではなく、行動で答えた。呆れるほどの強さで、8人を相手に圧倒している。視線は少女と相対する5人に向いていた。威圧されて、男達の顔色が変わる。これで目撃者を気にしている場合ではなくなった。全力でかからなければ、少年を殺すという目的を果たすことは出来ない。少女に注意を向ける者はいなくなった。今なら逃げても追ってこないだろう。
 完全に囲まれていたが、少年の剣は正確に男達の命を奪っていく。
 それでも、少年が勝てないことを少女は確信していた。
 少年の黒い瞳が戦いの最中に、少女を認めて優しく和む。
「何という、馬鹿だ」
 毒付きながらも少女は動いていた。
 人間を助けたいと思ったのは、生まれて初めてのことだ。そのために手段を選ぶことが出来なかった。本来の姿でなくても、本来の戦い方はできる。慣れていない剣よりも、遥かに有効に思えた。少年を狙っていた男の喉ぶえに、少女は噛みつく。
 錯乱状態になって暴れる男の顔に、手にしていた短剣を突き刺した。少女は男の喉ぶえに噛みついたまま、新たな標的に視線を向ける。
 悲鳴が上がった。
 改めて少年を見たのは、敵を全て殺した後のことだ。人間に関心を持ったことを認めたくはなかったが、無視することは出来なかった。
 少年は返り血を浴びて、全身を赤く染めている。手にしていた剣も同様だった。しかし顔は青ざめている。黒い瞳には口元を血に染める、人の形をした獣が映されていた。
 少女は口元に微笑みを浮かべる。胸が痛む理由は考えなかった。
「余計なことをしたらしい」
 少年は答えを返すことすらできずに、少女から視線を反らした。


 エミールは大変忙しい身だったが、領地の視察に出たついでに王子一行を迎えに行くと決めてしまう。王子がティレドン騎士団の護衛付きでポリシア平原まで来ることは、早馬で知っていた。
 領主を単身で行かせる訳には行かないので、当然のようにお目付役の男達も一緒である。うんざりしながらも、エミールは男達が追い付けるようにのんびりと馬を進めていた。
 この辺りは平原地帯なので、遠くまで見通しがきく。
「なんてこった。おい、俺は先に行ってるぞ」
 エミールは男達に言い捨てると、馬を急がせた。
 ロア出身の領主に突然スピードを上げられて、誰も着いてこれなくなる。
 エミールが見たのは、激しい戦いの様子だった。
 しかし駆け付けてきた時には、既に決着はついている。
 ティレドン騎士団によって、曲者達は残らず戦闘不能になっていた。
 しかしユーリーは必死の形相で、エミールに叫ぶ。
「馬をよこせ」
「何があった?」
「話している暇などあるか。王子が危ないんだ」
 エミールの決断は早かった。馬から飛び降りて手綱を手渡す。代わりにユーリーが馬上の人となり、すさまじい勢いで走り去っていく。それを見送りながら、負傷して倒れているティレドン騎士団員の応急手当を始める。
「じきに他の奴等が追い着いて来るからな」
「団長には、手加減していました。それで助かったようなものです」
 酷い状況だったが、幸いなことに死者はいなかった。
 しかし馬はすべてやられている。
 外傷が無いということは、毒にやられたのだろう。
 エミールは駆け付けてきた男達に手当の続きを命じると、馬に飛び乗った。
 途中で泡を吹いて倒れている馬を見つける。鞍の装飾からアルクスのだと分かる。思わずうめき声を上げた。
 一頭だけわざと効き目の遅い毒をつかった理由は、護衛から引き放すためとしか思えない。間違いなく待ちぶせにあっているだろう。祈るような気持ちで馬を急がせた。
 まず、無数に転がる死体に息を飲んだ。そして、生きている二人の姿に安堵する。
 ユーリーはちらりとエミールの方を見たが、アルクスは顔も上げなかった。
「怪我はないのか?」
 何の反応も無い。
「おい、アルクス!」
 驚いたように顔を上げて、エミールを見る。
「怪我はしていないな?」
「ああ、何ともない」
 アルクスは正気に戻ると、周囲を見回しはじめた。
「誰か、居なかったか?」
「待ちぶせは、こいつらだけだ。別に省略しても一向に構わねえが、これで祝宴どころじゃなくなっちまったぜ」
 ユーリーは周囲に転がる刺客の数に感心した。
「よく、生き残ったな」
 アルクスは単純に喜ぶことができない様子だった。
「人数が多すぎて手加減できなかった」
 ユーリーは肩をすくめる。
「試合でもこの強さを見せて欲しいものだ。そうすればお前を馬鹿にする奴等は居なくなるというのに」
「全く同感だな」
 エミールは馬から下りて、死体の検分を始める。アルクスはユーリーの乗ってきた馬に目を向けた。
「借りてもいいか?」
 言葉よりも先に、手綱を引いている。
「何を気にしているのかは知らんが、駄目に決まっている」
「大事なことなんだ」
 ユーリーは強引に行こうとするアルクスの腕を掴んだ。
 その間にエミールが割りこむ。腕には死体を抱えていた。
 二人の注目を集めたエミールは恐ろしく真剣な顔をしている。
 持って来た死体を仰向けに転がすと、噛みきられた喉ぶえを示してみせた。ユーリーの顔色が変わる。
「で、何があったんだ?」
 アルクスは力無く、笑う。左右に首を振って、泣きそうな顔になった。
「頼むから、聞かないで欲しい。こんなに自分を情けなく思ったことはないんだ」
 二人は顔を見合わせる。堅く口を閉ざしたアルクスから事情を聞き出すことは不可能だった。


その2

 重症で動かせない者たちはポリシア平原へ残り、ユーリーはエミールから人を借りて、一時コーラルへ戻ることになった。アルクスが狙われたことを国王に報告する為だ。
「王子を頼む」
「言われるまでも無いぜ」
 お互いに何をするべきかは分かっている。
 ユーリーはコーラルに戻ると即座に、国王へ会見を求めた。
「どうやら主犯格の男は、王子の手にかかってしまったようです」
 ユーリー自身に敵は温情を残しており、証拠はまだ皆無だが、サヴォア一門の何者かが裏に潜む可能性をユーリーは隠さず告げた。
「表沙汰にするのは得策ではないな」
 戦争がなくなったとはいえ、策謀や陰謀の類がなくなった訳ではなかった。
 だが、それよりもユーリーには気になる事がある。獣にやられたような、奇妙な死体の件だ。
 詳細を聞いた国王の顔色が変わった。それだけではない。握り締められた拳ははっきりと震えていたのだ。
 ユーリーは言葉をかけることすら忘れて、国王の様子に見入ってしまう。
 翌日になってユーリーは執務室に再び呼び出されたが、そこに国王は居なかった。代わりに居たのは、サヴォア公爵である。
「ユーリー、さっさと白状してもらおう」
 困惑する息子に、激しい剣幕で掴みかかる。
「従兄上の行き先に、心当たりがあるはずだ」
 事態をのみ込めない息子に突き付けたのは、国王の置き手紙であった。ユーリーは渡された手紙に目を通して、愕然となる。
「こんな馬鹿なことがあっていいんですか!」
「反則技は従兄上の得意とする所だ」
 ユーリーはうめいた。
「それで、何を知っている」
 昨日、父の元に報告に行かなかったのが悔やまれた。父には国王から事情の説明があるものと思っていたのだ。
「陛下が気に掛けていらっしゃるのは、その時に王子を助けた存在でしょう。俺は見ていないのですが、多分人間ではないと思うのです」
 バルロの見せた反応は国王と違ってはいたが、ユーリーが驚くのに十分なものだった。
「ほう、死体が挽肉にでもなっていたか?」
「いいえ、父上がそのように考える理由を伺いたいものですが、死体は喉ぶえを噛み切られていたのです」
 バルロは両手を上げた。
「従兄上が政務を投げ出してでも会おうとする存在には心当たりは有るが、喉ぶえを噛み切るという話は聞いたことが無いな」
「分かるように説明して下さい」
 バルロは多くを語ろうとはしなかった。
「グリンディエタ・ラーデン」
 それはデルフィニア王妃の名前である。
 伝説の戦女神の名が何故ここに出てくるのか。
 ユーリーは詳しく聞こうとしたが、物騒な笑顔を浮かべる父親に圧倒されて言葉を失う。一方ポリシア平原でも、似たような事態にエミールが頭を抱えていた。
 王子の失踪である。


 接近する気配は森に慣れた足音だった。
 少女は仕留めたウサギを地面に置いて、木の上に身を隠す。
 男は旅姿だった。
 豊かな長身を覆っているのは、そっけないほど実用的な衣服である。剣を帯びていたが、殺気は感じられない。少女の獲物を手にして、首を傾げている。
「置いていけ、それはわたしの食い物だ」
 男の顔が少女の方へ向けられた。優しい黒の瞳から、少女は出会ったばかりの少年を思い出す。
「名は何というのだ?」
 やけに親しげな声だった。
「なんだ、お前」
「これは失礼した。俺はウォル・グリーグ・ロウ・デルフィンという」
 少女は木から飛び降りると、長身の男を見上げた。
「お前が?」
 少女は驚きを消すと、物騒な笑みを浮かべる。
「それは都合がいい。私はお前に用があったんだ」
 問い返す余裕はなかった。少女は男に襲いかかる。むき出しの喉を狙ったが、読まれていたのか防がれた。少女は短剣を抜いて構える。しかし、男は長剣を抜こうとはしなかった。
「死にたいのか?」
「そうではないが、一つ聞いても良いかな?」
 少女は不快さを隠そうともしない。
「聞くのは勝手だが、答えは期待するなよ」
「グリンディエタ・ラーデンを知っているな?」
 確信する口調の男に向けて、少女は短剣を投げ付けた。噛み締めた唇から、血が流れている。すると驚くべきことに、少女の姿は黒い毛皮の狼へと変わった。
「アマロック殿と同族なのだな」
 驚いてはいるようだが、男の口調はのんびりしたものだった。隙を作り襲おうと考えていた少女の当ては外れた。だが、今更退く訳にはいかない。少女は男の喉笛目掛けて飛びかかった。
 男は既に、腰を落として防御の構えを取っていた。密集した森の中では、人間の動きはどうしても制限されてしまう。獣の俊敏な動きに着いてくるのは、男が並外れた戦士だからだった。ことごとく攻撃を避けられて、狼は狂暴なうなり声を上げる。
 口から除く鋭い牙には、短剣以上の凄みがあった。それでも国王は剣を抜こうとはしない。
「陛下、退いて下さい!」
 鋭い声が上がったのは、別の場所からだった。言葉と共に放たれた矢を黒い狼は見事に避ける。しかも素早い身のこなしで、新手との距離を一気に詰めた。
「エミール、殺してはいかんぞ」
 剣を抜いたエミールは、国王に怒鳴り付ける。
「無理に決まってるでしょう!」
 エミールと黒い狼との戦闘を仲裁するため、国王は自らの剣を抜いて、エミールの剣を受けとめた。
 その瞬間、無防備になった背後から、黒い狼は国王に鋭い牙を立てる。
 脇腹に噛みつかれた国王はそれを振り払うために、勢いよく狼を木に叩き付けた。
 離れはしたが、狼は再び襲いかかってくる。瞳が赤く充血しているのを、国王は見て取った。
「いかん、正気を失っているらしい」
「俺には最初からそうだったように思えますよ」
 エミールは剣を構えたが、国王に手を押さえつけられる。
「この狼はアルクスの恩人なのだぞ」
 エミールは驚かなかった。
「アルクスに怨まれようが、ここで陛下を殺させたら親父にどやされる」
「俺は死なん。だからここは引いてくれ」
 深いため息がエミールの口から漏れる。剣を下げて、狼をにらみ付けた。
「陛下に何かあったら、アルクスが何といおうと俺はお前を殺しに来るぜ」
 狼に伝わると思って言った訳ではない。それは国王に当て付けた、捨て台詞だった。
「アルクスというのは、あの馬鹿な人間のことか」
 エミールはあまりのことに息を飲む。
「あの馬鹿と知り合いか?」
 狼から殺気が消えているので、エミールは肩から力を抜く。
「親友だ。俺も質問したいんだけどよ。何で狼なのにしゃべってるんだ?」
「そういう生き物だからに決まっている」
「それだけじゃ、分からねえよ」
 エミールはガシガシと頭をかいた。
「何故ここにいる?」
「抜け出した馬鹿を探しに来たんだよ」
 狼は驚いているようだった。国王は呑気に笑っている。
「それは何とも、無謀だな」
 エミールは意味ありげな視線を国王に向けたが、不遜な言葉は口にしなかった。
「私に会いに来るというのか?」
「あの責任感の堅物が、他に抜け出す理由はねえな」
 狼はエミールが止める暇も無く、森の中に姿を消してしまった。
「アルクスに会いに行ったのだろう」
 あっけに取られているエミールに国王は声を掛ける。
「アルクスに惚れてるように思えるのは、俺の気のせいですかね」
「そうだな、ある意味ではそうかもしれん。ところで、イヴンもここに来ているのか?」
 エミールは肩をすくめてみせる。顔だちも性格も父親似のエミールを見るたびに、国王は懐かしい思いに捕われる。この時もそうだった。
「何故、ポリシア平原を受け取る気になったのか、教えて貰えぬかな」
「唐突過ぎます。誤魔化し切れないじゃないですか」
 エミールは顔をしかめた。
「押し付けて済まんと謝るべきかな。ここだけの話にしてもらいたいのだが、今回のことには元ベルミンスター公爵が関わっていてな」
 国王はジルの出生と、イヴンとの関りを簡単に話した。
「真実を明かすことは出来んが、けじめをつけるべきだと思ったのだ。まわりくどくなってしまったが、肩の荷が下りたとはこういう時に言うのだろう」
「確かにタウの方が俺の性には合ってますが、ここで逃げるとアレクスに王様になれと言えなくなるんでね」
「意外なことを言う」
「俺は親父よりも正直なんですよ。ユーリーが王様になるなら、俺はとっくに姿を消してます」
 どうやらエミールは年の近いアルクスよりも、ユーリーの方に対抗意識を燃やしているらしい。
「そのことなら、安心していい。きっぱりと断られてしまったからな」
 目を剥いたエミールに国王は笑みを浮かべる。目がゆっくりと閉じられた。額には汗が浮かんでいる。
 エミールは慌てて、国王の側に駆け寄った。風上に居たせいで、むせかえるような血の匂いに気付けなかったのだ。
「どうして、言ってくれなかったんですか!」
 悲鳴を上げたエミールに、国王は静かな瞳を向ける。
「イヴンを呼んできてくれ、エミール一人で俺は運べないだろう?」
 外套でよく見えなかったが、側で見ると出血は酷いものだった。平然と話していたので、大した傷ではないと思っていたのだ。迷っている暇はなかった。手早く止血して、エミールは父親が居る辺りへ慌てて走り出した。


 注意して抜け出した筈なのに、探索は驚くべき早さで始められた。
 見つかりかけては息を潜めて隠れているせいか、アルクスはなかなか森の奥へ進むことが出来ない。
 今日中に戻らなければ、明日には倍以上の人数を投入してくるだろう。そうなれば、探し人を見つけるのは不可能に近くなる。
 かなり必死になって歩いていたアルクスに、木の実がぶつけられた。
 周囲を見渡して、誰も居ないことを確認したアルクスは首を傾げて再び歩き出す。
「どこへ行くつもりだ。私を探しているんだろう」
 振り返ったが、誰も居ない。
 それでも近くにいることは確かである。
「今更、都合が良いかもしれないけれど、謝りたいんだ」
目の前で影が動いた。
 しかし現れたのは、予想に反して黒い狼である。アルクスは驚いたが、不思議と恐怖は感じなかった。自分を見上げる気高い瞳には見覚えが有る。
「助けてもらったのに、お礼も言えなくてすまない。自己紹介もまだしていなかった。僕の名はアルクス・リーゼ」
「呆れた奴だな」
 アルクスは笑顔を浮かべた。間違えなかった自分に、誇りを感じる。
「シアでいい。長い名前も有るけど、私には不要だから」
 シアが側に来たので、アルクスは膝を折った。シアはアルクスの頬を舐める。見事な黒い毛皮をアルクスはそっと撫でた。水浴びでもしていたのか、冷たく濡れている。
「ありがとう、シア。君は僕の命を救ってくれただけでなく、戦い方まで教えてくれた」
「まさかと思ったが、人を殺したのは初めてか?」
「実は勝ったのも初めてなんだ。試合に出ても連敗続きで、幼なじみによく怒鳴られていた」
「わざと負けていたのか?」
 アルクスは答えに困ってしまう。
「本気になれなかったんだ」
「試合だからか?」
「優劣を図られていたからだよ」
 言葉は続いていたので、シアは口を挟まない。
「僕の正式の名は、アルクス・リーゼ・ロウ・デルフィン」
 シアはあまりのことに呆然となった。
「国王の直系は僕一人だけど、血筋はユーリー・ウルディスの方が勝っている。しかし僕はどうしてもユーリーに勝ちたいと思えなかった」
 それはアルクスを待ちぶせしていた男達が、敬意を込めて口にしていた名前と同じである。
「ユーリー・ウルディスというのは、敵の名ではないのか?」
「大切な幼なじみだよ。本人ではなく、周りが王冠を乗せたがっているんだ」
「アルクスもだろう?」
 そう言われる事を予想していたらしく、アルクスは苦笑混じりで首を左右に振った。
「陛下は妃殿下が戻ってこられると信じている。だから僕も信じようと思った」
 シアはアルクスから目を反らす。
「口にすると馬鹿だと言われるのは明白だから黙っているんだ」
「それで父親を敬称で呼ぶのか?」
 それはシアの言葉ではない。シアは警戒を解いていたせいで、新たな人間の気配に気付けなかった。
「ユーリー、いつからそこに?」
「質問に答えて貰おう」
 アルクスはシアをさり気無く背後にかばいながら答える。
「違う、けじめの問題だ。今までどうしても言えなかったけど、みんなが僕を王子として扱うのにも問題がある」
 ユーリーは額を押さえる。
「ドラ将軍が言っていた通りだな?」
「何?」
 ユーリーは険悪なまなざしを向ける。
「頑固なのも、いい加減にしろ!」
 凄い怒鳴り声に、アルクスは耳を押さえる。
「一体、誰の為にセーラーが行き遅れていると思っているんだ」
「酷い事を言うなよ。セーラーはまだ18歳だろう」
「双子の俺が年を忘れてたまるか。プロポーズしたのなら、どうしてとっとと迎えにこない。どうせ権力闘争に巻きこみたくないなどと考えているのだろう。セーラーは返事をした時にそれくらいとうに覚悟を決めている。存在する筈のない王子の事を気にする前に、王座を継ぐことを考えろ」
 アルクスは一言も返す事が出来なかった。
 ユーリーが言葉を止めたのは、言いたい事をすべて言ったからではない。アルクスが背中にかばっていた狼が、突然に姿を変えたからである。
 息を飲むユーリーの前で、美しい少女は背後からアルクスを強く抱きしめた。
 しなやかな腕が見えるだけのアルクスに動揺は少なかったが、全裸の少女を前にしてしまったユーリーの動揺は大きい。
 赤面するほど純情ではなかったが、自分の外套を脱いで少女に投げ渡した。少女は頭からそれを被って、顔だけを二人の前に覗かせる。
「セーラーというのは、アルクスの連れ添いの名か?」
 アルクスは何故か言葉に詰まって、肯く事しか出来ない。少女は外套で完全に自分の顔を隠してしまった。
「国王は私が連れていく」
 少女の唐突とも言える言葉に、アルクスは困惑する。
「陛下の居場所を知っているのか?」
 ユーリーの問いに肯くと、少女は森の奥を示した。
「もう、手遅れだ。あの男は助からない」
「貴様、どういう意味だ」
「生きたままでは連れていけないから殺した」
 ユーリーとアルクスは肯定される内容の恐ろしさから、確認する言葉さえ失う。周りに気を配る余裕など当然なくなっていた。シアだけが複数の新たな気配に気付く。
「誰だ!」
 鋭い声を上げた少女に対して、男の反応は落ち着いたものだった。
「名乗ってもいいが、その前に聞きたい事がある。ウォルに何をした?」
 少女は男の後ろにいる少年に目を向ける。
「そいつが知っているさ」
 エミールは少女の言葉よりも、その姿に驚かされた。
「狼じゃなかったのか?」
「どちらも私だ」
 エミールは森の奥を指した。それは先程シアの示した方向と同じである。
「親父、陛下はこの奥にいる」
「陛下は生きているんだろうな?」
 ユーリーの言葉にエミールは顔をしかめた。
「もし死んでいたら、俺はすぐにでもこいつを殺してるだろうぜ」
「既に手遅れだ。あきらめろ」
 少女はアルクスの方を見て視線を反らしたが、外套に包まれた体ははっきり震えている。
「謝りたいのなら、素直にそうしたほうがいいぜ」
少女はイヴンの方を見た。外套がずれて、少女の顔があらわになる。涙こそ流していなかったが、悲痛な顔こそ少女の本心であった。
 アルクスは認めたくなかった現実を受け入れる。心の痛みは耐えがたいほどであった。
「アルクスが悲しむと分かっていたら、いや、それでも私は同じ事をしたかもしれない。わたしは大好きなあの人の願いを叶えたかった。二つの太陽が同じ世界に存在する事は出来ない。だから他に方法がなかったんだ」
 少女の目から涙が落ちる。
「嫌われて当然だと思う。だけど、わたしは」
「シアを嫌いになんてなれないよ。ただ悔しいんだ。父上を守る事が出来なかった自分が情けない」
 イヴンはため息を付いた。
「アルクス、俺にはウォルが死んだという実感が湧かない。最悪の結果が待っているかもしれないのに、何をいっているのかと思われるかもしれないけどな。お前の親父は生きていると思うぜ」
 アルクスは無理矢理に笑った。
「奇跡を起こせるような特別な方を、僕は一人しか知りません」
 全員が同じ姿を頭に描いていた。
 その存在は純金の輝きにあふれた髪、そして宝石を思わせる深い緑の瞳を持っているデルフィニア王だけの戦女神。

その3

 国王は遠くで鳥が鳴くのを聞いた。
 風に揺られて草が、木の葉が心地好い音を立てている。
 先程までは血の匂いしかしなかったのに、土の匂いを嗅ぐ事も出来た。どんなに時がたっても色あせない記憶がある。
『明日になったら、おれは帰る』
 戻ってくるつもりがないと分かった。しかし互いに生きていれば、二度と会えなくなるわけがない。
 今でも会えると信じている。
 視界が歪んでいるせいで、近づいてくる者の顔が分からなかった。
 息苦しくて声を上げる事も出来ない。
「いま、治してやる」
 唇に暖かいものが触れた。
 混濁した意識がはっきりし、視界が明瞭になっても、現実と認識するのに時間がかかってしまう。
「リィ、だな?」
「他の誰に見える?」
 からかうような口調には覚えが有る。
「会えたな」
 ウォルは噛み締めるように、その言葉を口にした。
 リィは肯いて、ウォルの顔をしきりに触っている。
「あまり驚かすな。何事かと思った」
「凄いな。分かったのか?」
 死に掛けたくせに呑気に笑っている夫を、妻は殴る事にした。
「二度とやるな」
「おい、わざとではないんだぞ。本当にやられてしまったのだ」
「威張って言うことか。どうせ、剣も抜かなかったんだろう」
 正確には抜いて、エミールの剣を受けとめた。しかし無防備に背を向けたと言ったら、それこそ雷を落とされそうである。
「ラヴィー殿は一緒ではないのか?」
「監視が付いていたからな。気付かれずに二人で来るのは、さすがに無理だった」
 リィは答えながらも、熱心にウォルの顔を眺めていた。
「今、いくつだ?」
「うむ、46歳になった」
「そのわりに、変わっていないな」
「老けたと思うがな。リィの方が変わっていない」
「俺は13歳から、やり直したからな」
 言葉が途切れても、ひたすら見つめ合う。
 二人は声を上げて笑った。
「ずっと、会いたかった」
「俺もだ」
 王妃は国王の隣に腰を下ろした。
 聞きたい事、話したい事がたくさんある。
 だから話題が尽きる事はなかった。
 王妃が狼少女の育て親になっていると聞いて、国王は嬉しそうに笑う。しかし自分の子供の話になると、何故か苦々しい表情になった。
「じつは息子が、俺を陛下と呼ぶのだ」
「心辺りはあるのか?」
 国王は首を傾げる。
「恐らく、王妃の子供こそ国王になるべきだと考えているのではないかな」
「たちの悪い冗談だ」
 国王は心から同感する。
「そういえば、聞き忘れていたな。あの狼の父親はリィとして、母親は誰なのだ?」
「シェラだけど?」
 冗談である事は王妃の目が笑っているので分かった。それでも国王は笑いを収めるのに、苦労してしまう。
 そして国王を心配して駆けつけた者達は、長閑な二人の光景を目にして思いきり脱力したのだった。
「久しぶりだな」
 リィの言葉にイヴンは頭を抱える。
「くそっ、分かっちゃいたんだ」
 リィは目を丸くしている三人の少年に向かって、にやりと笑っていった。
「自己紹介してやろうか?」
 最初に口を開いたのは、アルクスだった。
「王妃様、ですね」
 見かけで明らかに男と分かるが、何故かアルクスには確信できた。
「へえ、男でも俺が王妃だと認めるのか?」
 アルクスは不思議そうに首を傾げる。
「それ以外の方には、見えません」
 真顔で答えるのだから、さすがウォルの息子である。
「父上を助けて下さって、ありがとうございました」
「ウォルを陛下と呼ぶのは、止めたのか?」
 アルクスは顔を赤くした。
「心ではいつも父上と呼んでいました。妃殿下に嘘は申し上げられないでしょう?」
 アルクスと視線を交わした王妃は、笑いながら国王を見る。
「良かったな」
「ああ、今日は最良の日になった」
「死にかけたくせに、何を言っている」
 その一言で国王への風辺りが一気にきつくなる。特にエミールが国王に向けた視線には、痛いものがたっぷりと含まれていた。
 リィは少女を見ている。少女は身をすくめて、その視線を受けとめていた。
「怒ってる?」
 子供は叱られる前に、親の許しを得ておこうとした。保護欲に訴えるその姿を目にすれば、甘いだけの親は頭を撫でて許していただろう。
「リィ、子供のやった事だ。許してやって欲しい」
 国王の言葉にリィは顔をしかめる。
 少女が見た目通りの年でない事を、国王は見抜いているようだった。
 二人の少年は口を出す雰囲気ではないものの、納得できない顔をしている。
「それ、本来は親が被害者に対していう台詞じゃないのか?」
「だが、俺としては感謝したい気分もあるからなぁ」
 とても殺されかけた人物の台詞ではないと誰もが思った。だが、リィは顔を顰めた。
「それじゃあ、しつけにならない」
 リィは厳しい眼差しを少女に向けた。
「謝るんだ」
「だって、私は間違っていない」
 リィは首を横に振る少女の側まで来ると、腰を屈めて視線を合わせた。
「俺がシアの大切な存在を傷付けても、同じ事が言えるか?」
 少女は、慌てて叫ぶ。
「駄目!」
「だったら、謝れるな?」
 シアは肩を落とす。
「ごめんなさい」
 隣に立っていたアルクスが少女の頭を優しく撫でた。国王と王妃を見て、アルクスは代わりに説明する。
「お二人を再会させたかったという気持ちから起こした事です。僕も妃殿下に対して同じ気持ちでしたから、よく分かります。僕の身勝手な気持ちですが、どうして父上の側に居てくれないのかと腹を立てておりました」
 国王と王妃は顔を見合わせる。シアはあせって、アルクスの腕を掴んだ。アルクスは少女を優しいまなざしで見つめた。
「今は違う。お互いが大切だから、一緒にいることをあきらめた事が分かっている。それに僕が敵でない相手には剣を向けられないと、シアは知っているだろう?」
 シアは涙を浮かべながら笑った。ウォルはさり気無くみんなを手招いて、こっそりと耳うちした。
「邪魔者は消えよう」
 国王の一言にユーリーは眉をつり上げる。
「それが勅命でも聞く訳には行きませんな」
 事情を知っているエミールだけが、懸命に笑いを堪えていた。


 セーラー・グウィネスはアルクスの失踪と入れ違うように、ポリシア平原へと来ていた。忙しい母親の代わりに、ポリシア平原が正当な持ち主に返還されたことを見届ける為である。
 アルクス王子に会える楽しみもあった。
 ところが来てみれば、祝いどころではなくなっている。
 事情を聞こうにも、当主のエミールも飛び出して行ったきり戻って来ていない。心配は尽きないのだが、セーラーよりも周りの方がよほど混乱しているので、なだめ役になっていた。
 そこでコーラルにいる筈のユーリーに、突然呼び出されたのだから、困惑して当然だろう。
「兄上、何事ですか?」
「コーラルへ行ってもらいたい」
「それは出来ないと兄上は御存じの筈です」
「母上には俺から説明する。妹想いの兄に感謝するんだな」
 セーラーは兄に厳しいまなざしを向ける。
「どういう意味ですか」
「目にしなければ、現実とは思えないだろう」
 意味不明な言葉に首を傾げつつ、旅の用意を整えて、セーラーは兄に指示された場所へ行く。  同行者達を目にして、セーラーは兄の言葉に納得した。
 ここに居てはならない国王が手を振っている。
 国王の隣には印象的な少年が居て、二人が並ぶ姿には不思議と感動を覚えた。  連れ戻されると警戒しているのか、ポリシア平原の当主とその父親は深く外套を被っている。
 アルクス王子に寄り添っている少女が、兄の心配の種だと分かった。
 セーラーは兄に感謝して、笑顔を浮かべる。
 とりあえずは挨拶する順番から考える事にした。

〜THE END〜


(c) 菜月 みか, 2000 禁転載 Updated:April 18th,30th, May 13th 2000
原作:茅田砂胡『デルフィニア戦記』(中央公論新社/Cノベルズ★ファンタジア)
運営:デルフィニア戦記を語ろう
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