ロミオとジュリエット
- Satsuki Renjyou - | 1 | 2 |
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第二章 モンタギュー城の武闘大会
「待たせたな」
リィはテバ川のほとりで親友のイヴン、シャーミアンと合流した。ちなみにイヴンはタウ山脈の国境を守護する独立騎兵隊の隊長、シャーミアンは大貴族の女騎士でイヴンとはいいなづけの間柄である。三人は幼い頃からの遊び友達でもあった。
「姫様、陛下が探しておられたようですがよろしかったのですか」
ドラ王の雷を聞いたのかシャーミアンは幾分心配そうだった。
「平気、平気。それよりイヴン。ちゃーんと手に入れたんだろうな」
尋ねるリィに、イヴンはニヤリと笑って三枚のチケットを扇状に広げた。
「あたぼうよ。苦労したんだぜ、流石にモンタギューの武闘大会だ」
今日は三年に一度開かれるモンタギュー城の武闘大会だった。腕に覚えのある者ならば、血湧き肉踊るイベントである。キャピュレット国の姫として育ったリィだが、並の男よりも剣の腕は確かなものだった。
「でも、姫様。見物ならまだしも本当に参加されるのですか。姫様の身分がモンタギューに知れたらただでは済みません」
シャーミアンの危惧も無理はない。敵対国に堂々乗り込もうというのである。
「シャーミアンは心配性だなぁ。武闘大会は正体を隠して出るし、逃げる算段もつけてある」
「そうそう、重い甲冑を着込んだモンタギューの猪騎士団には捕まらねぇよ」
リィもイヴンも不敵な笑みを浮かべている。前回は流石に背と年が足らなくて見物しているだけだったが、今年は是が非でも参加すると決めていた。三人はテバの国境とは別のルートで極秘にモンタギュー国に侵入した。
「本当に従弟殿は出場しないのか」
ウォル・グリークの念押しにノラ・バルロは大きく肯いた。
「城内の警備もありますし、従兄上の優勝が決まっている大会に今更出る必要性を感じませんな」
一方のモンタギュー城では、国の王太子たるウォル・グリークと、王妹の一人息子であり国境警備の要たるティレドン騎士団長のノラ・バルロの間で本日行われる武闘大会の話題が出ていた。
尊敬する従兄の優勝を疑いもしないバルロの言葉にウォルは苦笑した。
「勝負は蓋を開けてみるまでどうなるかわからん。どのような猛者が出てくるか知れないぞ」
「何をおっしゃいますか。前回・前々回の優勝者たる従兄上にかなうものなどおりません。どこぞの山賊崩れが隠れて参加してくるかも知れませんが、従兄上なら楽勝です」
随分具体的な比喩である。バルロのいうところの山賊崩れに思い当たって、ウォルは苦笑した。
「ときに従兄上、ラティーナ殿へのプロポーズの件はどうなりましたかな」
「うむ。随分前に振られてしまった」
振られたというのにあっさりとした返答である。今、モンタギュー国は王位継承に荒れていた。つい先日、国王であるドゥルーワ王が逝去したのだが、ウォル・グリークは現在二十四歳。成人として認められる二十五歳まであと一つ足らない。モンタギュー国には成人しないと国王に即位できないという条項があった。本来なら一人息子であるウォル・グリークが成人の暁に国王に即位するのが順当なのだが、年が足らないのを理由としてバルロの母である王妹のアエラ姫を女王に付けようという動きがある。年が足らなくとも成人として認められる方法として婚姻という手段があったのだが、ウォルには妻となるべき女性が未だ見つからないのだ。
「脈はあるかと思っていましたが、何と断られたのです」v
「自分にはそのような大任は無理だと泣かれてしまったのだ」
両手にぶら下がるほど女性にもてているウォル王子なのだが、どうも不器用な性格らしく縁談がうまくまとまらない。火遊びの達人たるバルロのアドバイスは、一向に効果を見せる様子も無い。
「宰相・ペールゼンの動きが不穏なようです。早く妻たる方を見つけられて即位なされませ」
従弟の懸念にウォルは首をかしげた。
「そうはいうが結婚などは縁あってのものだからな」
王座の危機だというのに、当の王太子はいたって呑気なものだった。
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