| (12月某日)現れた、格闘空手の全体像 GAORAの北斗旗ゲスト解説というのをなぜか私が指名されてもう四回ほどになる。諸先輩がおられ私の役柄でもないと思いはするのだが、塾長のご指名であり、広報係りという役柄もあってお引き受けしている。
さらに機関誌『大道無門』への寄稿もせねばならず、ビデオを何度も見直した。確かに今年の北斗旗は、観客数は寂しいものがあった。けれどもこのベスト4はどうだろう。飯村選手のテンカオや投げに対する肘打ち。山崎選手の飛び上がっての頭突き。稲垣選手のつかみからのアッパー。コノネンコもバランスが良かった。どこにもない技術ばかりである。
これまでは打撃から組んで支えつり込み足、キメというのが大道塾というイメージがあった。それはそれなりの水準のものであったし、個性もあったのだが、それでもキックや柔術、バーリトゥード、修斗など裸の総合格闘技はもとより、シュートボクシングや散打など投げ有り裸の打撃競技との違いは分かりにくいといえば分かりにくかった。
ところがここへきて、つかみに対する打撃でのさばき、さらにそれに対する投げ・頭突きというシーンが定着してきて、はっきりと大道塾らしさが表れてきた。稲垣・山崎の二年連続の決勝はそれは内容としても素晴らしく、また誰が見てもたまげるようなものだったと思う。つかんで殴り合い、頭突きをかまして投げるという競技がこれまでこの世にあっただろうか。This is 喧嘩、である。喧嘩を様式化し武道としたのが格闘空手なのだということを満天下に示した試合であった。これなら観客がいなくとも、かえって「レアだ」と安心して威張れそうだ。
ちなみに、この試合への私の解説文はこうしたものである。
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稲垣拓一(総本部)−山崎進(総本部) このところ無差別では稲垣の二連勝。昨年の決勝の再現だ。稲垣は試合前に首と腰を負傷、出場も危ぶまれたが、打撃で互角だと寝技、寝技で不利だとつかみからのアッパーと、一見ラフに見えて冷静に引き出しの多さでカバーしてきた。対する山崎は飯村戦でスタミナを温存。稲垣の体力が試合を左右するかに思えたのだが・・・。
本戦では稲垣がやはりカウンター狙いで様子見。ローを山崎がつかみ、膝十字に入るのをこらえる。山崎もなんとか間合いをつめてフックを放つが、当たりが浅い。そのまま互角で延長へ。ここからヒートアップ。
稲垣はジャブ、アッパーを繰り出すが、むしろ山崎が圧力をかけ、距離をつめる。稲垣のアッパーに頭突き、左フックで応戦。ここで山崎の背負いを稲垣が切り、直後にいきなり飛び込んで膝を突き立てると、これがクリーンヒット。しかし山崎も負けずに頭突き、ローをつかんで倒しマウントになるが稲垣がひっくり返す。上から十字、下から三角締めと目まぐるしい展開に。ここで終了。副審3−0も、副主審・主審の裁定で再延長に。山崎には一気に幸運が舞い込んだかに思えたが・・。
稲垣はスタミナがまったく衰えない。左ハイから右膝のカウンターで責め立てる。だがここで起死回生の右ハイを返すのが、山崎のただ者でないところ。場内、大歓声。しかし柔道稽古の成果か、背負いをまたしても稲垣がつぶす。投げで効果を奪えないと山崎は手詰まりになる。それでもハイからアッパーで応戦するが、互角の打ち合いで試合終了。両選手が分かれ、死力を尽くしたという表情で宙を見上げたところで、判定は5−0で稲垣に。無差別連覇を果たし、岩崎・長田・山田・セムと続いた北斗旗名チャンピオンに肩を並べることとなった。
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それにしても、「着衣の打撃系総合」が大道塾なのだということがよく分かる試合だった。東塾長が作りたかったのは、こういう試合だったのだ。これならば明らかにキックとは異なる。修斗とも柔術とも違う。というより、この試合を見てもっとも驚くのは、柔道関係者ではないだろうか。つかみに行くと肘が来る。頭突きもくる。それでも投げるにはどうするのか、考え込まざるをえないのではないか。
これで来年は世界大会を迎えることとなるのだ。 |