(8月1日)サンドバッグに習う

 今年も合宿には参加できなかった。息子の誕生前は、家内を実家に帰して阿字ヶ浦まで出かけたものだが、さすがに一日の格闘技時間が二時間強しか取れない現在では、一日中空手三昧とはいかない。

 それでも土曜日のビジネスマン・クラスはなんとか出ている。こないだの加藤クラスには稲垣現北斗旗チャンプも参加して下さり、容赦してくれてるのかくれてないのか、スパーの相手も務めてくれた。

 その帰り。池袋でもなんとか飲み屋の落ち着き先を探そうと言うことで、今回は道場と駅の間の「清龍」に。クーラーがあまりきいてなくて暑いのだが、といって当方の体温が高すぎることもあり、あまり文句は言えない。炭火焼きチャーシューなどなかなか美味。小生は今後もここでいいや。

 それにしても、平和台の養老はいったいどんな様子なのだろうか。毎週十人以上で寄っていた。五万近く使っていた(養老で一人5000円使ったことがあるって、どんな集団やネン!)のだから、ひゃょっとして月額二十万行った月があったのでは?それがぱったり来なくなったのだから、先方も困ってるのではないか。

 それでも、十年前にはあそこしか居酒屋がなく、同じフロア向かいの中華にもしばしば出入りした。ところが五年ほど前からか、大店法の規制緩和の関係だろう、ダイクマやライフができると一気に居酒屋が駅周辺に林立し始める。庄屋が開店した日に行ってみると満杯だったが、翌週から養老のおばちゃんが妙に親しげに話しかけてくるようになったような気がしたものだ。気のせいか値段も下がったようだ。養老も満杯のことがあり、天狗やファミレス風のイタ飯屋も利用したが、結局養老に舞い戻っていた。それが完全な河岸変えである。さらば、養老!

 で、結局は空手談義。上野正君はビジネスマンにして一般関東チャンプという金字塔選手だが、彼の調整は基本的にサンドバッグだという。これは自分もまったく同じ。パンチのフォームは基本形がありはするのだろうが、筋肉の付き方には個人差があり、また体内の感触を伝えることは難しく、結局良いフォームはサンドバッグを叩き続けて自分で修得するしかないと思う。私はそうしてきたし、とくに良いサンドバッグは小一時間もうち続けるとどんどんフォームを修正してくれる。ボクシングもキックも、ジムではみなそうしている。

 「相手に持ってもらって、数歩後ろからステップして、思い切り殴ることを繰り返す」。上野君のやり方である。私も距離を変えて同じパンチを嫌になるくらいうち続ける。何千回打って、やっと一つのパンチが身につくのではないか。右ストレートに左フックだけでも、ちゃんと打てれば大したものだと思う。

 というわけで、ビジネスマン一同で移転祝いにサンドバッグの良い奴を道場に寄付することにした。それと自分の稽古場として、大学の体育館も使える目処が立ったので、そちらにも買おうと思う。 

 

(8月10日)みなみ治療院にて

八月に入り、柔道場が休みで柔道の稽古も一時休止。というわけでサンドバッグを多めにやっている。このところ蹴りは比較的調子が良く、脱力した状態からムチをサンドバッグに投げつけるイメージで蹴ると一番よく力が伝わっているように感じる。パンチも右ストレートは同様。

 ところが、左フックの調子が悪い。これも左に引き絞ってから脇腹の筋肉で腕を引いてたたき付けるようにするのだが、インナーマッスルにひっかかりがあるというか、なんとなく痛いのだ。どうやら、ストレッチこそかなり十分にやってはいるものの、自主トレではその後に体を温めるだけのことをせず、いきなりサンドバッグを叩いてしまうのが良くないようだ。ストレッチ、シャドーとちゃんと時間を取ってやらないといけない。空手では集団での基本稽古が無意味じゃないかとしばしば言われるが、こうしてみると皆で声をかけあって体を温めるというのは合理的だと分かる。

 で、また腰に疲れがたまったこともあり、みなみ治療院に。最初に若い女性の助手さんのマッサージ、次いで先生の鍼・電気・灸・アイシング。仕上げはバキバキと首と腰を鳴らす。なんといってもしっかり脱力できて、気持ちいいんだ、これが。

 その助手さんは、筋肉がついている男の治療はまったく苦にしない、と仰る。よくホテルや宿屋で頼むマッサージさんには「トラックの運転でもしてるんですか、これじゃ筋肉が多すぎてなかなか揉みほぐせませんよ」と言われる。ところが彼女、「筋肉が多い方がツボが簡単に分かるから楽」と涼しい顔をしている。ツボさえわかればヒジを当てて体重をかけるのだから、体力もいらないし、これがよくきくのだ。南先生はつねづね「普通のマッサージって、慰安にすぎないですよ」と仰るが、さもありなん。ビジネスマンのN氏も腰を痛めて以来わざわざ通っているらしいが、この言葉、分かるよな。

 ところで彼女、小生の体について毎度驚くような指摘をなさる。前回は、前にも書いたように「体が変わってきましたね」と言われたのに、今回は「乳酸がたまってません。以前の体に戻ってきている」とのこと。これは図星。このところ柔道をやってきていないのでウェイトと打撃の筋肉に戻ってきている、ということだ。さわっただけで分かってもらえるというのは、妙齢の愛らしい女性だけにうれしいというかなんというか。「毎日ウチにいてやってほしいって選手からプロポーズされたりしないの」、とオヤジ臭い質問をしたら、「母からはよく言われます」とかわされたが。

 自覚的にはパンチをかなり打ったので背中が痛くてしょうがないのだが、その痛さ自体は体が自力で回復することをずっとやってきている。一方、柔道の疲れにはまだ体が驚いて、筋肉がこわばったようになってしまうのだ。異種の競技をすることの難しさはここにある。脱力・弛緩からぶつけるような緊張へ、といった筋肉の使い方を柔道でもできるようになれば良いのだろうが。

 それにしても、筋肉は難物だ。プロ・ビルダーのマッスル北村さんが世界大会でのヘビー級で優勝を目指して無理しすぎて急死されたというし、ウェイトひとつとっても未知のことだらけだ。 

 

(8月17日)世界チャンプ・新田明臣選手に思う

  このところお盆でウェイト以外はできなくなっている。というわけでインターネットなど覗いていると、キックの新田明臣選手が「WKA世界ムエタイ・スーパーウェルター級王者,全日本ミドル級王者」の肩書きで報道されていた。彼はまだ空手をやっていた自分、大道塾に属していたことがある。私がまだ黄帯の頃だろうか。白帯で極真ルールの交流戦に出て、ほとんどローだけで一本勝ち。関東で優勝したのは印象的だった。

 当時、何度かスパーしたことがある。こちらがあらかじめ「強く蹴んなよ」と制しておいたためそんなにひどくやられた覚えはないし、技が切れるという風でもなかった。あえていうと、どちらかといえば不器用な部類の選手かもしれない。それでも、他流派の試合にも出ていって、優勝を重ねていた。見た目よりもずっと重くて破壊力のある蹴りということなのだろう。それはそれで得ではある。キックには蹴りの軽い選手が多いが、断然例外だ。

 ただし、平直行さんもそうだが、こういう選手は始からどこかに属するといったタイプではないのかもしれない。そもそもが空手的ではない、ということだ。

 けれども新田選手の美点は、なんといっても礼儀正しく、人なつこいところ。いまやタトゥーも金髪にもなっているが、ある場所ですれ違った折り、向こうから「先輩!」と声をかけてくれた。彼はすでにキックでは日本チャンプを張っていたのではないか。それでも覚えていて話しかけてくるのだから、人柄がいいというかなんというか。彼はキック界にあって最大の観客動員を誇るというが、出会った人間をひきつける天性があるということなのだろう。こうした性格はなるほどプロ向きだ。

 のちにシンサック・ビクトリー・ジムでプロ・デビューし、今では押しも押されもせぬチャンピオンである。道場からは風のように去っていったという印象があるが、プロ向きの人はやはりそちらの道に進むべきだろう。荻窪のルミネで大道塾に並んで読売文化センターのキック教室をやっている由。覗いてみるかな。

 

(8月23日)日常の稽古

 家族旅行を挟んで、稽古再開。佐渡の海ではクラゲにやられて、10cmほど幅1cmのみみずばれになり、泳ぐこともできなかった。

 自分の基本的な調整は荻窪でやっている。茶帯・緑帯に将来性ある若手が多数いて(予選参加選手も多い)、稽古にはちょうど良い。あまり頻繁には顔を出していないが、水曜はなるべく参加したいものだ。

 なにしろ、本部ビジネスマンにはブル・ファイターが多いので、たとえばこちらが右ストレートで牽制して左フックを打とうとしても、右の牽制そのものを無視してつっこんでくる人などにはそうしたコンビネーションは通用しない。その点、「普通の」スタイルの選手が多くてやりやすいのだ。もっとも、本部は、月曜・火曜の三部に行くには(家庭があるので夜をばっちり空けるわけにもいかないこともあるが)つらいのも事実ではある。北斗旗本選の上位組ばかりのスパーには、あまり出る気がしない。

 荻窪は飯村師範代による技の稽古も絶品で、自分としては実に身になるのである。

 だが一時間半の稽古時間なので、まずは下井草レヴァンでウェイト。そういえばこないだ北斗旗Tシャツを着ていたらなかなかかわいい女性に声をかけられた。ちょっとうれしかったが良く聞くと本部Oさんの奥さんと判明。女性に話しかけられるなんて滅多にないのにねえ。

 最近では上半身の日と下半身の日に分け、それぞれ45分ほどで終わるようにしている。今日は上半身。最近、左フックを肩を入れ巻き込むようにして打つようにしているが、それでインナーマッスルを痛めた。ベンチプレスばかりやって、サイド・レイズが足りないせいなのだろう。というわけて、インナーマッスルの補強、ベンチ、カール(二種)、腹筋(マシン)、サイド・レイズ、シュラッグを一気にやる。で、喫茶室にてクエン酸を飲んで、駆け足で荻窪ルミネへ。

 荻窪では大きめのグローブをつけて、ミット代わりに使う稽古を行っている。オランダのチャクリキでやっているやつだ。これで互いにジャブ、ジャブ−ロー、1−2,1−2−ローなどを反復するのだが、相手の1−2−フックに対し、とくに最後のフックに左フックもしくはヒジを合わせる反復練習というのが面白かった。カウンターのヒジなどは、こうした地味な反復からしか身につかないのだろうな。

 スパーは8本ほど。久しぶりだったが、体は比較的よく動いた。前に出気味にしてプレッシャーをかけ、相手のローやパンチを誘い、カウンターで右ストレートもしくは膝を入れることをやってみた。最近はサンドバッグで左ミドルの調子が良いので、パンチを打った後左構えに着地し、左ミドルを強くけってみる。これだと相手が右の場合、ケンカ四つなのでミドル勝負の体勢になるのだ。右構えのままでスイッチして左ミドルを蹴るよりも良い感じ。

 家を出てから三時間で帰宅。なかなか充実した一日であった。(今日のはいかにも空手家日記だなあ。)