(5月某日)北斗旗全日本体力別選手権

 北斗旗体力別が仙台の宮城スポーツセンターで開かれた。私は今年もテレビの解説役を仰せつかった。ベスト4は世界大会の選考資格を得るということで、メンバーも揃いなかなか水準の高い大会だった。

 このところ大道塾のホームページには結果を即日寄稿することにしている。そこで深夜に帰宅し翌朝さっそく書き上げた。早ければヒット数が違うようだ。偉そうなことを書いて選手には申し訳ないが、これも道場の公務。許して下さい。なお内容に疑義があればお知らせ下さい。勉強します。

 なお、高田久嗣選手から私個人にメールが届いた。私信なのでそのまま載せるわけにはいかないが、対加藤戦の思いが切々と綴られていて感動した。試合後高田選手は笑いながら涙していたが、長年手取り足取りして育ててくれた師匠がこれだけ復帰してくれたのがよほどうれしかったのだろう。(僕もうれしかった)。ただし、一部には高田選手らしい寝技の厳しい攻めがなかったのは手加減したからではなかったかとの声があるのも事実である。僕は一回戦終了後に高田本人から「あくまで打撃でいきたい」旨聞いていたのでさほど違和感はなかったし、加藤さんの対応もできていたと思う。「世界大会で当たれば必ず加藤越えをしてみせます」と言う言葉を頼もしく聞いておきたい。  


2001北斗旗全日本体力別選手権大会詳報

 快晴の5月13日、宮城県スポーツセンターで恒例の北斗旗体力別全日本選手権が行われた。今秋の世界大会の最終予選を兼ねており、そのため例年とは違って各選手固めの立ち上がり。世界大会出場の選考の対象となるベスト4(☆)を決める二回戦からは、一転してスタミナ温存を考えない激しい試合が展開された。

(1)軽量級

 前人未踏の5連覇、そして世界大会でも確実に優勝できるのは自分だけだ!と全選手に「喝」を入れる小川英樹がすんなり優勝するのか、それとも台頭する若手が待ったをかけるのか。注目されたが、結果は「やはり小川は強かった」。決勝も足払いからの締めで一本勝ち、そしてバック転から歌舞伎のように大げさに見得を切るパフォーマンス。まだまだ他選手との地力の差は大きいようだ。

@☆中野正康(大阪北同好会)−(判定)−寺田猛(総本部)

 中野が右ストレートを的確に当てて勝ち。

A☆小川英樹(中部本部)−(判定)−高橋腕(新潟支部)

 小川は慎重に勝ちに行く。右ストレート、左フックが強烈に決まる。

B☆榎並博幸(安城同好会)−(判定)−伊藤紀夫(成田支部)

 右対左の対決だが、伊藤の左ストレート、バックハンドブローを冷静にかわし、的確に右ストレートを当てて榎並の勝ち。

C☆佐藤繁樹(東北本部)−(有効3)−寺西登(岩田道場)

 昨年のこの試合で北斗旗を得た寺西は絶好調。ところが中量級から10キロ減量して軽量級にエントリーした佐藤の強烈な右ストレートが顎に入り、ダウン気味に腰が砕ける。寺西は上段の蹴りやアッパーなどで必死に追い上げるものの、さらに佐藤の右ストレートを喰い、有効2を取られる。場内の沸く好試合であった。

D小川英樹−(送り襟締め一本)−中野正康

 中野は打ち合いたいところだが、小川はいきなりの左大外刈りなど格闘空手の幅広い技を繰り出し、打撃戦につきあわない。ときに右上段蹴りも交え、最後は上からの送り襟締め。会心の一本勝ちに小川は見得を切るパフォーマンス。

E榎並博幸−(判定)−佐藤繁樹

 佐藤の右ストレートを警戒する榎並が、左にヘッド・スリップしてのアッパー、右ストレートという得意のコンビネーションで攻める。強い投げも連発して判定勝ち。

F小川英樹−(片羽締め、一本)−榎並博幸

 カウンターの右ストレートで榎並の出足を止めた小川は、足払いで亀に抑え上になるとすでに襟に手を回して絞り上げている。そのまま体重をかけると榎並は「参った」。勝利の喜びで小川は宙返り。堂々と示した王者の格闘空手だった。

(2)中量級

 加藤の復活なるか、そしてストップ・ザ・加藤は誰が果たすか−紙一重の実力差でベテラン・新鋭が集まるこの階級だが、やはりトーナメントは加藤を中心に回った。決勝進出、そして感動の優勝。準優勝はダークホースの佐野で、尻上がりに組み手が向上、判定を受ける際にも前を向いて不動立ちの姿勢を崩さず、武道的な好印象を与えた。

G加藤清尚(総本部)−(判定)−池田一次(関西本部)

 全盛期でも一回戦は不調の試合が多かった加藤。対する池田は気っぷの良い1−2ラッシュでもっとも嫌な相手。やはり加藤は立ち上がり固く、左に構えるものの蹴りが出るわけでもない。池田の1−2,アッパーのラッシュについつき合い、互角の打ち合いとなったがパンチをもらったのは事実。終盤、強烈なミドルが入り判定勝ちとなったが、池田が追いつめた一戦だった。

H☆高田久嗣(浦和同好会)−(判定)−中山康洋(新潟支部)

 中山が前に出ようとするところ、高田は左ストレート、左ミドルでカウンターを合わせて出足をくじく。

I☆加藤清尚−(右ストレート、有効)−中川博之(木町支部)

 一回戦で肩の力の抜けた加藤はカウンターの強烈な右ストレートでダウンを奪う。しかし中川も右ストレートで一瞬加藤のバランスを崩させるなど反撃、マウントから逆十字を仕掛けるが加藤が冷静に防御。そのまま逃げ切る。

J☆佐野教明(新宿支部)−(判定)−飯島進(浦和支部)

 佐野は腰を落とした構えから右ストレート、さらに右上段の蹴り。飯島の反撃をかわし、金星を得た。

K☆ 藤本直樹(浦和支部)−(判定)−長谷川朋彦(総本部)

 寝技に自信のある両者。中量王国・浦和がこのトーナメントに送り込んだ第四の男・藤本はパンチにも新境地を拓く。構えが左と右のため、本戦では長谷川が右ストレートで攻め立てたが延長に。終盤、藤本が左ストレートと右フックをまとめ打ち、試合を決した。

L加藤清尚−(判定)−高田久嗣

 「先輩を止めなければ、この数年の自分たちはなにもしなかったことになる」と強い決意で加藤戦に望んだ高田。しかし試合勘の戻った加藤の壁は厚い。加藤は左上段の蹴りはことごとくスウェーでかわし、左構えに対しては敢えて外から打つフックで反撃。技術とパワーの加藤が帰ってきた、と強い印象を残した一戦だった。試合後の高田の満足そうな笑顔は感動を呼んだ。

M佐野教明−(有効)−藤本直樹

 試合開始直後、すすっと前進しざま佐野が放った強烈な1−2で藤本が尻をついて有効。藤本はアキレス腱固めなど寝技でも反撃を試みたが、佐野が逃げ切った。

N加藤清尚−(判定)−佐野教明

 加藤が二回戦で痛めた右足を引きずりながら試合開始。いきなり上段の蹴りを放つなど、コンビネーションが雑になったが、それでも佐野の上段蹴りをスウェーでかわしてローを返すところは真骨頂。カウンターを重ねて加藤の勝ち。会場に安堵と歓呼の空気が流れた。佐野の堂々たる試合ぶりも好感を呼んだ。

(3)軽重量級

 左足甲を負傷の飯村を大本命、岩木・長野・小野・能登谷が横一線で追いかけるもっとも層の厚い階級。ところが二回戦で波乱が起きる。

O☆寺本正之(九州本部)−(判定)−飯村健一(総本部)

 全日本では実績こそ残していないものの決定的な負けもない実力者の寺本。膝カウンター一本の飯村に、いきなりパンチにいかずつかんで振り回してからのフックが的確に決まり、効果。飯村の膝も入るが委細構わず前進する寺本。雄叫びを上げるほどの気迫に、飯村はパンチも出して反撃するが、そのまま寺本が押し切った。

P☆岩木秀之(新潟支部)−(判定)−後藤一郎(登米支部)

 ざわつく会場。組みからの前蹴り、膝、大外刈りと間断なく攻める岩木に後藤は右ストレートで対抗するが、手数で岩木の勝ち。

Q☆長野常道(総本部)−(判定)−小野亮(総本部)

 一回戦では古豪の石田を完封してみせた小野。すばやい反射神経でカウンターを当てていきたいところだが、先に長野がマウント・パンチで効果を奪う。こうなると長野の打たれ強さが生きる。判定勝ち。

R☆能登谷佳樹(浦和支部)−(判定)−渡辺正明(大阪北同好会)

 いきなり組みに行く印象のある能登谷だが、パンチに冴えを見せた。1−2、左右フックが決まり、奮戦する古豪の渡辺を押し切る。

S岩木秀之−(判定)−寺本正之

 左ストレートから左ミドルで間合いをつめ、組んでの蹴りというのが岩木のパターン。寺本はこれを崩せなかった。飯村戦ほどの研究があればと悔やまれる一戦。 

@長野常道−(延長、判定)−能登谷佳樹

 長野はローをつかんでの右ストレートで能登谷に尻餅をつかせる。能登谷もボディからの右アッパーなどで応戦、全般としては能登谷が押していた印象もあったか、延長に。またもローからのパンチで能登谷が尻餅、長野の勝ち。

A岩木秀之−長野常道

 古豪ながらタイトルに縁のない長野と、再三決勝まで進みながらやはり優勝を逃してきた岩木による決勝。長野は顔面の左右フックを狙うが若干単調。岩木もパンチで応戦しながら、前蹴りを有効につかって距離を取る作戦に。組み技は互角だったが打撃の有効性で岩木がようやく優勝を手にした。

(4)重量級

 超重量級と分かれたために層が薄くなるかと思われたが、清水・藤澤・武山・藤松・村田と横一線に並び、誰が頭一つ抜け出すか興味が持たれた。しかし決着は予想外、藤松の完勝。出るトーナメント、他流試合ごとに結果を残してきた試合勘には感服させられる。世界大会に向け、待望のニューヒーローの誕生だ。

B☆藤澤雄司(横浜支部)−(判定)−清水和麿(佐久道場)

 藤澤はこの大会、蹴りは出さず、相手の突き・蹴りともに驚異的な速さのアッパー・フック連打を合わせるスタイルで臨む。清水はこの戦法に手こずり、突破できず。

C☆武山卓己(東北本部)−(判定)−荒井省司(横浜支部)

 打撃センスの良さとパワーで似た両者だが、武山は肩の力が抜け、反撃も敏速で絶好調。荒井の突き蹴りにすべてカウンターを取り、判定勝ち。

D☆藤松泰通(総本部)−(延長、逆十字一本)−服部宏明(京都教室)

 前へ前へと出るのは藤松。しかし服部も反撃して延長に。藤松は右前蹴りから右ストレート、そのまま得意の逆十字で一本勝ち。寝技で確実に一本を取れる技量を持つ藤松が、打撃技術も備わってきていることをアピールした一戦だった。

E☆村田良成(総本部)−(効果2)−平田誠一(綾瀬支部)

 顔面は始めたばかりの平田だが、柔道は5段。一回戦では亀山に背後から組み付いて締め落とした。だが村田は慎重に打撃の穴をつき、膝のカウンターから首相撲、さらに膝連打。ヒジも使い、効果2。

F武山卓己−(判定)−藤澤雄司

 反撃を喰うとついムキになって打ち合う癖のある武山が、終始冷静にタックル、ロー、パンチと技を散らして無難に判定勝ち。

G藤松泰通−(延長、判定)村田良成

 パンチに膝のカウンターを合わせようとする村田だが、藤松はすべてかわしてパンチを当てる。非凡な才能を感じさせて藤松の勝ち。

H藤松泰通−(延長、逆十字、一本)−武山卓己

 絶好調の武山だが、なぜか手数が少なくなる。藤松は前に出ながら左フック、右前蹴り、右横蹴りと使える技をのびのびと披露。寝技になると、狙っていることが誰にも分かる逆十字を、防御をねじ伏せて決めて見せた。決めの強さに場内が呆気にとられる快勝であった。

(5)超重量級

 世界大会出場権をすでに得ている山崎が、あえて体重不足ながら「王者として出た」この階級。誰が山崎を崩すのかが注目されたが、印象を残したのは山崎の異常なほどの闘争精神だった。

I☆金子哲也(横浜支部)−(判定)−沖見正義(千葉支部)

 いつものように右ローから右ストレートのパターンで前進する沖見に対し、膝のカウンター、右ミドルと右ストレートで突き放す金子。乱戦から上段の蹴りを見舞いたい沖見だが、金子の距離を崩せず。

J☆山崎進(総本部)−(効果2)−品野圭司(岸和田支部)

 普段はにこやかで感情を表に出さない品野が人が変わったかのような気迫で打ち合ったため、盛り上がった一戦。頭突きからの左背負い−キメ、すれ違いざまの右ストレートで山崎が効果を連取したが、品野の頑張りも称えたい。

K☆藤田忠司(豊橋同好会)−(延長、判定)−滝田巌(東北本部)

 大道塾随一の体格を誇り、関西では無敵の藤田だが、全国大会となるとなぜか失速してきた。ところが一回戦では日本拳法の強豪・岡崎(青葉拳友会)をつかみからの右ストレートで下し、気迫を見せる。滝田戦でも右ストレートや、ローに返しのローを入れるなど新境地を見せて判定勝ち。滝田は背負いで見せ場を作ったが、たたき付けるのでなく前に引きずり落とすタイプのものだけにポイントが取れなかった。一工夫欲しいところだ。

L☆稲田卓也(横浜支部)−(逆十字、一本)−浜松新一郎(木町支部)

 稲田の左ジャブの強さを改めて認識させた一戦。ハードパンチャーの浜松を寄せ付けない1−2、そしてマウントからは素早い体の返しで逆十字の一本勝ち。

M山崎進−(延長、効果2)金子哲也

 これまでの対戦では山崎の頭突き−背負いで決着がついてきたが、距離を取り組ませない金子の戦法が功を奏して延長へ。依然として山崎のパンチが空を切る。それでもなんとかしてみせるのが山崎の凄み。つかんでの右フックで効果を奪うと、膝に合わせて背負い・キメで効果を重ねた。

N稲田卓也−(判定)−藤田忠司

 ここまで善戦した藤田だが、スタミナ切れか。稲田が強烈な掌底気味の左右ストレートからマウントで効果を奪い、判定勝ち。

O山崎進−(延長、判定)稲田卓也

 重量級王者同士の対決だが、異様な雰囲気の結末となる。本戦は稲田が左ストレートとローを連続して決め、まったく懐に山崎を入れない。ところが延長になると山崎が「場外際まで下がって戦うな!」と強くアピール。小柄な山崎の言い分はもっともで、稲田が応じると山崎は怒りを爆発させるかのようなラッシュ。背負いからのキメを入れ、炎の気迫で勝利をもぎ取った。たしかに世界大会では、こうした気迫がなければ体力に優る外人選手には勝てないだろう。この点に一石を投じた山崎のアピールだった。

 

(5月某日)加藤選手祝勝会(ビジネスマンクラス編)

 加藤清尚師範代が中量級で復活優勝されたのを受けて、翌週のビジネスマンクラスの稽古後に祝勝会を開いた。

 加藤さんとしては、最初は指導してからという気もおありだったらしい。ところが第一試合で左足スネ、第二試合で右足の甲を痛めたということで、足を引きずる状態。加藤さんらしいがどうやらそんな体勢で声だけかけて指導するのは見合わせたいということで、稽古修了にあわせてわざわざ来て下さった。

 二十人からを収容する宴会場は、あるように思えてなかなかない。インターネットで検索し、無料紹介サイトをみつけてそこで頼んだ。うまい具合に、駅前の居酒屋の個室が予約できた。集まったのは、指導を受けているビジネスマンクラス、それに決勝を加藤さんと闘った新宿の佐野選手(彼はもともと我々のクラスにも参加していたらしい。試合直前にも顔を見せてくれていた)、さらには綾瀬から稽古に来ていた二人のビジネスマンも参加してくれた。

 加藤さんは今回の復活を「奇跡」だと言われている。思い起こせば五年前だかの夏、塾長から突然電話があった。緊迫した口調に何かと思うと、「加藤がアメリカで自動車事故に遭って瀕死の重傷なんだ」と仰る。「それで医者が足を切断したら助かるかもしれんが切らないと命が危ないと言ってる。当人はまったく意識がなくて、誰も決断できないのでこっちに電話がかかってきた。一刻を争うので、空手家として足を切ることだけはなんとしても避けてくれ、手術費は工面するからと答えちゃったよ・・・」とのこと。「僕も賛成です。加藤さんの生命力を信じましょう」と応じはしたものの、とにかく大変なことになったと青ざめたものだ。

 そのときは、なんとか社会復帰できるように塾として体勢を整えねばならない、基金を募るにはどうすればよいのか等ばかり考えていた。なにしろチャリに乗って自動車と正面衝突、ボロ雑巾のような肉塊となって道端に転がっていたというのだ。アメリカの医師は通常なら生命の危機だと言ったが、驚異的な生命力で快復し、顔面など三十針は縫って帰国。東大病院で大腿骨を牽引するという奇想天外な手術を治療を受け、接合面を削ってくっつける作業を5〜6回も繰り返すという苦行に耐えたのである。

 東大病院に入院中、見舞いに行った。暑い夏、加藤さんはお相撲さんと同室だった。「この人、僕らと違って凄い筋力なんですよ」と笑った。その頃からすでに上体だけは筋トレを始めていたので、加藤さん自身ももの凄い体つきではあったのだが。「足はひどく細くなったんで」。それでも、社会復帰ならぬ試合復帰する日が来ようとは、思えなかった。

 そこうこするうちに、一昨年の春、復帰戦を迎えた。緊迫した雰囲気。偉すぎてアドバイスできないからか、誰もセコンドにつこうとしない。つい私がセコンドの位置に座った。相手のF選手は、初めて見たがなかなかの強豪だった。加藤さんはトーナメント初戦はいつも調子が悪い。過去何度も固くなってダウンを喫している。この日も同様に、回り込もうとするところに「チョン」とパンチをもらい、なぜか手をついてしまった。そのまま試合は終了。「あんなの、何もきいてないよ」と憤懣やる方ない様子に、つい僕は本部席に走った。「引き分けが妥当じゃないですか」。効果ポイントだけなら引き分けにできる制度があるからだった。スリップしただけとも思えたのだし。

 それでも判定は覆らなかった。ただ、今振り返ってみて面白かったのは、試合中、ダウンで効果をもらったF選手が、ラッシュの蹴りを仕掛ける加藤さんに背中を見せて走ってかわしたときのこと。「逃げるな!失礼だろう!!」と僕が大声を出すと、F選手は試合中なのに僕の方を振り返り、加藤さんと向き合ったのだ。闘っている選手も加藤さんの復帰には同じ様な気持ちでいるのかと思わず笑ってしまった。

 その加藤さん、普段稽古を付けていただく分にはすっかり回復しておられる。最近拙宅に遊びに来られた折りは、生活や将来を語って飲みやまず、朝7時まで宴会は続いた。胸のうちを少しでも知る者としては、今回の優勝は本当にうれしい。決勝で対戦した佐野選手までがお祝いにかけつけてくれたのだ。この佐野選手、実は昨年の関東予選で、僕が初戦で当たるはずの相手だった。当日になって来なかった選手がいたためにトーナメント表が崩れて対戦はしなかったのだが。ちなみに僕は二回戦を棄権したのだが、この時に当たるはずだったのが浦和の青木選手。両選手とも、昨年と今年、北斗旗の本戦で決勝まで行ったのである。僕と因縁があると決勝進出できるということらしい。

 今年僕は予選出場を断念したが、体調を崩す前は加藤さんに稽古を見ていただいていた。そのときにはいけるところまで行くつもりでいた。加藤さんいわく、「北斗旗にまで出るなら対戦して丁重に潰します」。その目はけっして笑っていなかった。「いえいえ、そんな大それたこと、考えてもいません」と僕。ファイターはどこまでもマジなので困る。

 宴会は参加者が途中から増え、盛況のうちに終了。部屋からはみ出て飲んでいる人もいた。加藤さんは来月からはアメリカで調整するそうである。試合勘も戻ったところで、世界タイトルを奪取していただきたいものだ。