(10月某日)「暴力論」の意外な反響

  相変わらず忙しい日が続いて日記更新もままならない。忙しい理由の一つは消費不況にかんする私の主張がいくらかは関心をもっていただいているからで、講演の話が結構ある。ILOの幹部の方が来日されたのでヒアリングに応じたり、フォーリン・プレスセンターで外人プレス40社ほどを相手に講演させていただいたりした。もっとも、ほそぼそと稽古だけは続けている。土曜のビジネスマンクラスと火曜の柔道である。10月8日は柔道の中野区大会。初段の部でまた出るが、とても試合できるような調子ではない。それでもこれ以上稽古できる環境になる予定もないので、恥ずかしながら出させていただく。

 もう一つ忙しい理由は、8月末に朝日新聞に掲載された連続インタビュー「暴力論」の私の回がもの凄い反響だったから。本を出版しないかという話だけで4件ほど、関連する取材もいろいろやってきて、私のこれまでの新聞記事としては異例のことだ。内容としてはいつも言っているようなことなのだが。

 打撃系で顔面有りでやっていると「キレる」ことが実感できるとか、それゆえにこそルールが必要で礼をすると我にかえるのだとか、池田小学校事件では先生方が机を盾に集団で追い込んだりしなかったがそれは教員資格として打撃系格闘技が組み込まれていないため暴力に対する想像力が働かなかったせいだろうとかいった主張にリアリティがあると思われたかららしい。

 それでも反響の中でもっとも驚き、ちょっとうれしかったことがある。とあるテレビ番組のプロデューサーの方が電話を下さり、面談したいと仰る。彼は同時に映画監督でもあって、家族について描いているという。昨年の初監督作品では、海外で賞をもらった。その第二作が神戸のA少年事件を扱い、家族における暴力とルールを考える作品になる予定で、主演が桃井かおりさん、岸部一徳さん。信じられないことだが、私にその助演に出てくれないかというのだ。拘束期間は12月の三週間で、撮影は種子島。上映は日本では一カ所のみだがカンヌに出品するという。

 もちろん私は演技するようなタマではないし、モノを書いて生きることに専念することにしており、何より12月では講義期間中である。丁寧にお断り申し上げた。先方は、私の朝日のインタビューを見て、殺人事件を起こした少年にルールというものを説く叔父役には私しか思いつかなくなったのだという。有り難いことではあるが。

 ところで「少年にルールを説く熊のような叔父」役というなら、私には適任として思い当たる方がおられる。この方を推薦して、お断りさせていただくことにした。推薦が通れば、その方が出演されるのだが。誰かって?まあ、楽しみにしておいて下さい。

 

(10月某日)試合は棄権の巻

  上で柔道の試合に出ると書いたので、何人もの方から「頑張って」と励ましのメールを頂戴した。ところがそう書いた直後から仕事が山積みとなり、まったく稽古できなくなってしまった。仕事後に稽古しようと駅のコインロッカーに柔道着を入れておいたのだが それもかなわず、入れておいたこと自体を忘れてしまって2100円も払うという間抜けなことになってしまった。それでさすがに棄権となってしまった。高木道場の先生方、どうもすみませんでした。

 ただ、試合後に道場に顔を出したところ、高校一年にして140KGのW君がなにやらうれしそうにしている。聞くと、初段で三位に入ったのだとか。私は彼には前回の稽古中、「準決勝で当たるから楽しみですねぇー」などとニヤニヤ笑って言われたので、歳が1/3の奴に挑戦されて只ですませるわけにはいかんと思っていたのだが、いろいろ聞いて事情が分かった。高木道場は正しい柔道をモットーとしているので巻き込みをしようものならみんなからケツを叩いて叱られるのだが、高校の柔道部で巻き込みだけを教わったらしく、試合で使ったところ袖さえつかめばゴロリと転がって簡単に押さえ込みで一本勝ちとなったらしい。それで連戦連勝だったという。普段は私にはいいようにいじめられているので、巻き込みが解禁となる試合で本領発揮して鼻を明かせてやろうと思っていたようだ。

 私は彼とやるときは釣り手でぶら下がり、前に出るときに背負うのを常としている。それを巻き込んでやろうということらしいが、確かに内股や払い腰系が得意の先生方もW君を転がすのは至難の業となっている。腰は重いのなんの。それでもタイミングをつかめば転がるから柔道は面白い。

 それにしても歳が1/3の子供に試合相手として指名されるとは、私も「若い」というかなんというか。相手が二十歳くらいなら「若い」と言ってもらえるのだろうが。15じゃねえ。

 ところがいろいろ聞いてみると、今年の中野区大会初段の部は、明大中野や高千穂商大なんかが中心だったらしい。二段の部は強いのがいるから初段が良いかと思っていたのだが、それにしても高校生と試合するのはちょっと・・・

追記。今年のノーベル化学賞は野衣さんという方が受賞されたが、あの方は私の母校の灘の柔道部出身だそうだ。私も同部のキャプテンをしていた。まったくの先輩である。おめでとうございます。

 

(10月某日)

  このところ、少しでも時間があると世界大会のチケット販促に打ち込んでいる。なにしろ今回は初めての世界大会。選手には「死ぬ気で稽古しろー」と励ましている手前、ガラガラの会場では示しがつかないし、何よりこれだけ素晴らしい武道を多くの人に見ていただかないのはもったいない。そこで、自信を持って大勢に見ていただけるよう、塾生に友達などを勧誘するよう強く求めることにした。私は勝手に応援団長を買って出て、塾生に声をかける役である。春先から道場の飲み会などあると立ち上がって演説などした。あまりに血相をかえて騒ぐので、塾長から「テンション上がりすぎじゃないか」と冷やかされた。違いますよ、私がテンション上げないで、誰が上げるんですか!!皆人ごとだと思ってしまうんだから。

 というわけで、夏合宿でも数百人の塾生がメシを食っている場所にわざわざ出かけて(風邪をひいていたし所用で稽古はできなかった)マイクを持って演説し、最後はシュプレヒコールを上げた。「世界大会を成功させるぞー、会場を満杯にするぞー、みんな声が小さいぞ」といった具合である。その時言い忘れたが、「東孝を男にするぞー」も言うべきだったかな。とにかく私と新宿の高橋師範は、これで満杯にならなかったら、すべての役職を辞するつもりである。それに私はチケット100枚を負担(といっても自腹で買うというのではない、売るということだが)すると大見得を切っている。

 そこで初夏から各支部の塾生にお願いの手紙を出したりしてきたのだがまずまず塾内では目標値に近づいてきている。手紙も追加分を何度か出した。ポスターの掲示もお願いした。十月からは、いよいよ自分のチケットを売る番である。そこでまず、メールアドレスが分かっていて大丈夫そうな人に一斉に同報メールした。そうしたところ、川上弘美さんの谷崎賞授賞式の会場で、見知らぬ編集者に四枚売れた。メールを差し上げた方が紹介してくれたのである。それからはよく行く飲み屋で10枚、知人に10枚、といった具合で着々と捌けてきている。神戸の極真会の宮崎さんまで買い求めて下さった。有り難くて涙が出る。最近顔を見ないビジネスマンクラスの方30人には私の名前ではがきを出した。阿佐ヶ谷の飲み屋「ビター」や「プロレスとブルース」にはポスターを貼らせていただいた。春の予選のテレビ放送を何本かダビングして、格闘技好きの方や他人に推薦してくれそうな人にあげた。二週間でチケットは約半数売れた、もう一頑張りしなくちゃ。

 総本部ビジネスマンクラスはもちろんのこと、横浜や新宿からもポスター貼りやチラシ配りでチケット販促に協力したいとの申し出があった。八島さんのボクシングのタイトルマッチ、終わった後に女子部が試合場の出口でチラシ配りをしてくれた。他の選手にまで配っていた。それも、世界大会当日に八島さんと闘う岡さんまでもが。こういうの、うれしいねえ。まさに、社会体育だ。学生同好会も、毎週一枚二枚と注文してくれている。どんどん輪が広がってきて、いよいよ世界大会だという気分がしてきた。

 あとは一般客である。さて、どれくらい入ってもらえるものだろうか。

 

(10月某日)

 引き続き、チケット営業。稽古も土曜のビジネスマンでは無差別チャンプの稲垣拓一選手とどつきあいのスパーをしたり、柔道も140キロのW君と激戦したりしているのだが、心はなんといってもチケットである。全体としてはまずまずの調子らしく、私は夜な夜な飲み屋などを回って個別に手売りしている。やっと現時点で70枚まで捌けた。個人としては目一杯のところではある。あと最低、30枚。

 ところでとっておきの方法と考えていたのが、休会・退会しているビジネスマンに売ること。大会の内容が分かっているのだから、売れるに違いない!!と、葉書に挨拶と宣伝文を詳細に書き、先々週、50枚ほど一斉に郵送した。しめしめ、これでチケット完売だ!とほくそえんでいたところ、このところ毎日のようにどかっと葉書が返送されてきいてる。転居先不明ということらしい。

 そうだったのかあッ!彼らは何も空手がいやでやめていったのではない、たんに転居しなければならないために稽古に来なくなっただけなのだ。これにはうれしいやらチケットを買ってもらえないで悲しいやら。おーい、休会中のあなた。このページをご覧になっているなら、私にメール下さい。世界大会に来て下さい。かつての仲間もビジネスマンもお手伝いしていますよ。会場で再会しましょう!! 

とにかく小生、チケット完売しなければ、すべての役職を辞任いたします。

そして、一選手として次の世界大会を目指すのだ。