(11月某日)続チケット完売への道

  世界大会まであと一週間強。いよいよ迫ってきた。とはいえ自分の稽古は、そろそろと続けてはいる。柔道は、やっと背負いのコツが飲み込めたところ。相手の出る瞬間に引き手を高く上げるのがポイントと、ようやく分かった。ついで、大外も連続技としてはかかるようになった。面白いのは左の巻き込みの大外。いきなり逆にかけるのだが、左の構えの相手にかけてみたら、以外やちゃんと倒れた。これはパンチを出す状態だと柔道の構えでいえば逆になるだけに、北斗旗ルールでも使える技である。左手でラリアート風に首を刈って投げるのだ。実に気持ちよい。

 とはいえ、やはり世界大会である。私だけで100人も呼んでしまって、それもほとんどが空手の「カ」の字も知らない方々である。阿佐ヶ谷の「世界のビールとカルヴァドス」の店、「ビダー」では、「松原さんがそこまでうれしそうに言うのだから面白いんだろう」という評判で、格闘技には縁もゆかりもない方々に十枚もチケットを買っていただいた。それ以外にも、過去におつき合いのあった編集者の方々、現在担当していただいている編集者の方、など。後者は今週に入れる原稿をいつもより二日早くするからと約束した。まあ、ひどい交換条件ではある。

 とはいえ、コアな北斗旗ファンでない方が2000人も集まると、一体どういう事態になるのだろうか。一説によると、まったく北斗旗を知らない人が試合を観戦すると、宇宙人同士が闘っているように見えるそうな。無理もない、スーパーセーフに道着だもんなあ。それでいて、チケット代金は請求しているのだから、観客は当然K−1やPRIDEと比較するだろう。それはお客様の権利である。あっちの団体は見せ上手だからなあ。当方は社会体育だなんて言ったって、それはこっちの理屈。金をいただく以上、お客様にはそんなことは関係ない。心配だ。

 と思っていたところで、NHKのシンポジウム「ニッポンの朝ごはん」に出演した。場所は銀座のガスホール。司会は国井さんというプロジェクトXの担当の方。パネラーが佐野真一さん、向笠千恵子さん、今井徴さん、といった面々。我々の後ろには大型のプロジェクター。これでシンポジウムの途中にビデオが入るのだ。

 これだ!!と思う。スーパーセーフの中まで覗けるではないか。さっそく、シンポジウム終了後、借りるのにいくらかかるか、担当に聞く。NHKはいつも使っているだけに格安の値を知る。その値を塾長に連絡。塾長、「うーん」と仰ったきり、返事がない。そりゃ当然だ、各国からの交通費だけでも馬鹿にはならない。普通、プロの後楽園ホールの興業でも外人は二人いればいいところ。呼び賃は半端ではすまない。それが四十人も来るのだから・・・そのうえにプロジェクターとは贅沢なのはよく分かる。でも・・・

 というわけで、プロジェクターの効能を何度も申し上げた。もちろん塾長ご自身がそんなことは承知しておられる。でも、ここで引き下がっては・・・。ということで、なんとか実現の見通しが立った。何を映像として流すかも話し合った。それではどんなことになるのか。乞う、ご期待である。広報、牧野さん。頑張って下さい。技術としては、牧野さんに頼りっぱなしなのだ。塾長、有り難うございます。仄聞するところでは、これで総本部の屋根の雨漏りが修復できなくなるのでは、とのこと。支部長様方、あと一息、

チケット完売いたしましょう!!

 

(11月14日)完売宣言

 思えば長い道のりではあったが・・・本日、不肖松原隆一郎、道場の皆様方に宣言致しましたとおり、チケットA席換算で100枚を完売いたしました!!

内訳は、SS5枚、S9枚にA席が57枚。小生の小学校の校歌は、

「河原の砂も積み行けば、末六甲の山となる〜」

というのであるが、振り返るとこの二た月、まさに砂を積むような毎日であった。ある人には資料として大会のビデオと格通のコピーを送り、ある人には飲み屋でくどき、ある人は路上で捕まえて売りつけ、アドレスを知るすべての方々に告知のメールを配送し、来られなくなったビジネスマンクラスの方々に葉書を40枚送り、担当の編集者には今月はいつもより早く原稿を入れるから買ってくれと頼み・・・・と我が事ながら涙ぐましい努力をした結果、今日この日を迎えることになったのであった。このうち、自腹で買って寄贈したのは1枚のみ。関西からわざわざ来て下さるという友人には、その心意気に対しさすがにサービスしたのであるが、およそ金銭は負担していない。負担したとすれば、今後の人生に借りができたかもしれないということだが、なに、なんということはない。素晴らしい大会にすれば、むしろ喜んでもらえるはずである。来てよかったと感謝されるはずである。あとは、大会を成功させるだけだ。

 それにしても今日、チケットの追加分が刷り上がっているはずだというので本部に連絡したところ、あっという間に捌けてしまった由。大変な加速度で売れているそうな。いよいよすり鉢状のあの体育館を満杯にして、上から下までの観客の視線の元で選手に力一杯闘ってもらうという私の夢が実現するのだ。客を見たら、感動するだろうなあ。選手たち、あとは任せたぞ!!

 

(11月某日)世界大会へ

 いよいよ大会も直前である。朝から、手伝いに行く。昨日、アンケートを作ることを思い立ち、さっそく質問用紙を作成する。これだけ観客が来ることはない。我々が世間からどう思われているのか、ありのままに知るよい機会である。出来上がったものを塾長に送ると、「自分の思いを込めたら修正に二時間かかった」という、論文みたいな質問用紙が返ってきた。さっそく某所にて、1000枚を印刷。体育館に運ぶ。よく見たら、通し番号がついていない。これは自分では無理だと思い、塾長の奥さんにお願いする。

 選手のファイティング・ポーズをプラズマビジョンで映し出そうと、滞在先に移動。食堂に次々呼んできて、撮影する。二時間かかった。

 体育館に戻ると、対戦表が大幅に修正になっている。これでは、外人選手やプログラムを買った客から文句が殺到するのは目に見えている。それならばと、事務室でパソコンを借りて、矢倉を打ち込む。それから手書きで選手の名前をすべて書き込む。出来たのを四宮嬢に頼んで、超拡大してもらうことに。これをトイレ前に貼って勝ち上がりを示せば、なんとかなるだろう。

 それから撮影したフィルムの整理。仕方ないので、自宅に帰る。途中、注文を受けたチケット、最後の配達。これでAは62枚。SS6枚、S9枚で、計A席検討で105枚が私の最終売り上げ結果となった。

 デジタルカメラで撮ったのを、細かく入れ替えて、テープに落とす。これに二時間半かかった。でも、誰のシャドーも輝いている。緊張と輝き、ここにあり。皆、美しい。これで、対決の場が出来上がった。お客さん、よく見てくれ!!

 

(11月某日)戦いすんで・・・

  大会は無事終わった。内容については、総本部HPに私も書くのでそちらをどうぞ。私はプラズマビジョンの背後にいたので、裸眼では試合は観戦できなかった。

 それにしても、内容としては加藤さんの両手骨折は不運だったのには落胆し、成田の伊藤さんがデニスのうまさを消して泥仕合に持ち込んだのには感心した。インドネシア国籍、テコンドーのタピラートが蹴りを駆使して勝ったのは世界大会らしくてよかったと思うし、飯村・小野の荻窪コンビのヒザ蹴りがモロに入っているのにロシア人のパンチでふっとばされたのにはびっくりした。日本人同士なら「きいた」となるのがお決まりなのに、決まりが通用しないのが世界を相手にするということなんだな。

 ところで運営については反省する点が多々ある。お客さんにあれだけ来ていただいたのだから、ご不満を出来る限り解消すべく、次回までには大いに反省したい。とはいえ槇山さんが大阪在住というのにあれだけ孤軍奮闘されたのには敬服した。良く言われることはなく批判ばかりされるというのでは、運営委員長はまったく割に合わない。今後、良いマニュアルを作るよう、頑張りましょう。

 で、大会も終わり、恒例の打ち上げ。当日は池袋のサンシャイン・ビルにて盛大に開かれたが、さすがに私は眠くて退散。地下に降りたらセム・シュルトが国際電話を探してうろうろしていたので、連れて行ってやった。道行く人に尋ねたりしたら驚くだろうから。なにしろ身長211センチだからな。

 それで次の日は昼過ぎまで寝ていた。その日に日光江戸村観光は夜の宴会が凄かったらしい私は散打の世界大会にも参加しているので大体ああいった場の雰囲気は分かっているつもりである。選手団がリラックスして和気藹々となり、バッチの交換などしたりして親交を深めるのである。とはいえベトナムでの東アジア大会の際など酒はビール一杯で終わりになり、三十分もすると選手は三々五々いなくなってしまった。大道塾みたいに大声で合唱してパンツの中を見せあったりチャンチャンバラバラしたり、ラーメンを食べにランニングしたりするする宴会というのは、さすがに珍しい。

 大会二日後、つまり日光の翌日、塾長から、第三次宴会をするので、日光に不参加の私は是非出席するようにとの電話があった。月曜のまっ昼間からである。おっとり刀で夕方かけつけると、大勢が空手着を着ている。何の真似かと聞くと、これが海外支部長の審査会だという。半数は先日試合した選手である。土田・ストッパらの顔も見える。セム・シュルトは他流派のはずなのに、ほとんど塾生のような顔をして道場の後ろで幹線している。頭が天井につくくらい背が高いのでどこにいるのかすぐ分かる。

 塾長が英語混じりで基本から説明を始める。最初はかけ声すらバラバラ。それを延々やってから、移動に突入。これもバラバラで、丁寧に修正されるので、延々一時間は続いた。道場は底冷えしていた。

 やっと組み手が始まる。ストッパはアゼルバイジャンの支部長と。これがド迫力。なにしろ195センチ100キロの大男が二人、1メートル前で頭突きしたり全力で殴り合ったりしているのである。カカト落としなど、天井かせ落ちてくる。それでもさすがストッパ、柔道のイタリアチャンピオンだけあって、隅落としから押さえ込むのがうまい。大道塾にしては、実に奇妙な組み手である。なにしろ顔を殴らずにやたらと相手をこかすのだから。頭突きで相手を吹っ飛ばすタイ人とか、50歳なのに奮闘するロシアの伝統派の人とか、興味深い奮戦が続いた。終わると、やはり車座になって、宴会が始まった。宴会、宴会である。セムや海外の支部長たち、実にうれしそう。ファミリーだ、大道塾に惚れた、などと英語で話しかけてくる。試合で凶暴に、宴会で親密に、というコンセプトは、世界にも通用するものらしい。塾長はそれが実証されたと、実にご機嫌であった。

 やがて支部長たち、パンフレットを手に塾長の前に行列を作り始めた。サイン攻めである。「全ロシア大会をやりたいから来てくれ」「いや南米大会だ」「ヨーロッパ大会が先だ」とエキサイトしている。もし先方で段取りをやってくれるなら、当方は行けば良いだけなのだから、こんなに楽なことはない。どうやら世界大会で大道塾が世界に伸びていくというのは、正夢になってきたようだ。選手諸君、頑張ってくれ。闘う場はいくらでも用意されているぞ。