(6月某日)

 やたらと忙しく、つい一月も更新しないでいた。何が日記かとお叱りをいただいてしまった。

 北斗旗空道体力別がこどもの日に仙台であり、ミヤギテレビの解説を仰せつかって行って来た。ビジネスマンクラスの上野選手は今年も北斗旗の本舞台で活躍。まったく大したものだ。

 だが、全般的に言って、どう表現していいか分からないものがあった。優勝したのは皆二十歳代で初めて。藤松も超重量級に体重を上げては初である。世界大会後の初年度としては上々と言うべきだろう。けれども、極真で言えばこの時点で数見選手が登場している。あと四年間でどこまで伸びるか伸びしろの想像もつかないような若手が出てきて初めて世界と戦えるはずであろう。その点、どの選手も、どれくらい稽古したのか、どんな稽古をしているのか、おおよそ想像がついてしまう。何を考えているのか全然分からないのは藤松だけだ。自力で想像力を羽ばたかせてとんでもないことを考える時期ではないか。それほど時間を稽古に割けないのかもしれないが、ちょっと心配だ。

 技術的に未開拓なのは、やはり道着を使っての組み技と打撃だろう。小川選手はこちらでも世界大会で新技を披露してくれた。パンチの間合いでさっとつかみ、足払いするあれだ。今回の大会でも、模倣する選手をみかけた。このところ、柔道の方でも、パンチありの総合形式で投げを競う競技や、極真ルールに柔道を組み合わせるものが出てきている。私もこれは面白くて仕方だない。自分の技でいえば背負いなので、いったん空間を作って引き出さねばならない。それを山崎進選手のように頭突きでやるだけでなく、道着を振り回したり前蹴りでやってみたりしている。

 その点では、中量級で優勝した後藤選手は自分と同じ狙いのようだ。パンチは右ストレートと右クロス。組み技は背負い。寝技も対抗できるものがあり、それぞれの局面できっちりした技を持つというやり方だ。今後、アマチュアとして稽古時間に制約のある選手は、このように打撃・組み技・寝技のそれぞれで一つずつキメ技を持つ方向に行くのかもしれない。

 もっとも、小川・加藤・飯村といった独自の領域を切り開くプロ的な選手があまりいないのは寂しいことではあるが。

 ただ、別の意味で感動したことがある。長田賢一さんだ。今回、突如選手とし復活。全身を故障、二回戦であばらも痛めて、準決勝で敗退した。子供の声援が会場にこだました。お弟子さんたちだという。

 長田さんはいわずもがな、八十年代の日本の格闘界を代表する「伝説のヒットマン」。しかしあれだけ強かったのに二十歳代前半で実質上の引退。九二年には加藤・市原に先輩として何か残すため、ということで一度だけ復活して優勝している。しかしそれにしても「他人のため」を公言しての優勝であった。

 考えてみると、長田さんはいつも誰かを必要としていたように思う。九二年は後輩たち。グローブマッチが話題になったときも、誰か他流がケンカを売ってきたならやってもよいというスタンスだった。一時期はグレーシーと対決するために渡航する資金をためていたそうだが、それも選挙 出馬でなくなってしまった。

 長身に丈夫な身体、どう猛な精神、美しい技。天賦の才をこれだけ持ち合わせて、しかし多くの人前で見せる必要も感じないかのごとく長田さんは引退していった。大道塾のファン以外の前に出たのは、第一回のウォーズ、ポータイ・チョーワイクンとの試合だけではないか。それも道場の看板を守るためという名目だった。長田さんは、自分のために闘うということのない人なのだろう。

 そんな彼が「やってやる」と必死の形相をしたと聞いたのはただ一度だけ。西さんがロブ・カーマンとの対戦でKO負けしたときのことだ。ホテルまで行って談判し、スパーしたいと本気で言っていた。スパーじゃないだろう、それは。でも、カーマンはすでに帰国の途についていたのだが。

 その長田さんが、今回は、世界大会を目指すという、他のすべての選手の目標とはまったく別の理由から復活した。なんと、子供たちに指導者としての背中を見せるためだという。これも他人のためではあるが、 今回ばかりは本当に苦しそうだった。しかし終了後、子供達に向けた顔は実にすがすがしかった。長田さんが選挙に立ったのもフリースクールの必要性を訴え、青少年を育成することが公約だった。学校に行く気になれない子供たちに生きる希望を与えたいというのが彼の目標だ。これは掛け値なしなのだろう。

 いままで大道塾が社会体育というとき、選手がプロではないこととか、社会から資金援助を受けることを指すのが多かった。しかしそれだけでは本質的には社会体育とはいえないのではないか。試合に勝つこと、最後に世界大会に出ることよりも、社会に貢献することを目的にする選手が出てきてこそ社会体育だ。試合前にスパーも碌にしなかったというが、それも自分の道場だけで稽古して試合にでるためだという。まだ子供や色帯しか会員がいないので、相手できないのだ。これもはっきりと理屈が通っている。初めて長田さんのやりたいことが分かったような気がした。

 

(6月某日)

  7月17日に、久しぶり、大道塾のWarsが開かれる。第六回だ。これまでグローブ対応とか寝技対応とかで実験を行ったが、今更そうしたことをやったところで、それに専念している団体の選手には勝てないだろう。裸体の総合ではパンクラスの若手と大道塾の一線の選手が同等になったし、キック系ではK−1ジャパンと同列が良いところだ。これは残念ながらまぎれもない事実である。

 けれどもそれは悲観すべきことではない。むしろ遅ればせながら大道塾本来の目指すべき道を邁進するWars大会が開かれることになったのであり、大変なチャンスである。道衣系総合を20年も前から実践してきたということを、満天下に示す大会だからだ。要は、北斗旗ルールで面を取ったらどうなるのか、という実験である。これには裸体のバーリトゥードに近い団体、修闘やシュートボクセ、アマレス、SAWとは別のグループが注目してくれるはずだ。柔道・柔術などである。今後Warsでそれらとの対抗戦ができるなら、広大な領域をカバーするルールになるはずだ。吉田秀彦の去就が噂を呼んでいるが、バーリトゥードではあまりに無茶だ。ほとんど彼の技術は生かせない。その点、道衣ありの異種格闘技戦ならば可能性があるだろう。

 そんなわけで期待がつのるばかり。そんなところにパンフレット作成の要請をいただいたので、さっそく作ってみた。以下の通りである。宣伝のために掲載してみたい。

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@小川英樹 vsドゥロ・ブノワ

◇小川英樹 93〜97、2001北斗旗軽量級優勝、98〜99北斗旗中量級優勝、2001空道世界大会軽量級優勝。軽・中量級では敵なしの鬼才。初期には素早い反射神経でカウンターの突き蹴りに切れを見せつけたが、スープレックスなど投げ技も多用するようになり、さらに電光石火の小川オリジナル・足払いを開発。荒野を独り行くかのような境地に至り、最近では「打撃系の絞め技」「アバラへの頭突き」といった奇想天外な新技を編みだして、天才の呼び名をほしいままにしている。WARSには第四回大会に参戦、修闘ルールで田中健一と引き分け。2000年のグラントロフィー大会では、タックルを仕掛けられ、空中に持ち上げられた体勢で相手を絞め落とした。大道塾中部本部職員。160センチ69キロ、31歳。

◇ドゥロ・ブノワ 打撃・寝技ともにバランスが良く、総合格闘技系の大会に数多く出場、優勝を重ねている。今年はイギリスで総合格闘技の大会UKMMAに出場、ヒールホールドで勝利している。1999年‘BUSHIDO FIGHT NIGHT’優勝、01年パンクラチィオン フランスチャンピオン、同 モナコ大会 65kg級優勝、リュット・コンタクトフランス杯2001優勝、同2002個人戦優勝 通算成績10勝3敗、パンザ・アンドレ所属

◇他選手の想像を遙かに超えた次元の闘いを展開する小川。グラン・トロフィーでは得意の絞め技で快勝した。英仏バーリトゥード界で活躍する巧者・ブノワは万全の小川対策を練ってくる。打撃からタックル、寝技という通常のバーリトゥード戦の文法に小川が巻き込まれるのか、それとも今回もまた、小川マジックが炸裂するのか?全格闘技界注目の一戦だ。


A山崎進vsパトリック・フォートリー

◇山崎進 98〜99北斗旗重量級優勝、99〜2000北斗旗無差別級準優勝。日体大柔道部出身、総合格闘技系の大会常連参加者としてならした後に大道塾に入門。つかみからの頭突きに豪快な背負い投げ、キメで頭角を現す。打撃にも長足の進歩を遂げた。重量級としては小柄ながら激しい気迫で相手を追いかけ回す度胸の良さとパフォーマンスが特徴。北斗旗無差別で稲垣拓一と二大会連続で決勝を争った激闘は記憶に新しい。WARSでは修闘ルールでミドル級の強豪・中尾受太郎に判定勝ち、パンクラスの美濃輪育久と引き分けと、今を時めく選手達とも熱戦を繰り広げた。公務員。172センチ84キロ、30歳。

◇パトリック・フォートリー (名・姓) 柔道出身、サバット、サンボを修得。十代から柔道ではフランスのナショナルチームに選ばれ活躍。1995−97 サンボ大学選手権82kg級優勝。総合競技に方針を転換してからは、グラントロフィーでは85キロトーナメントで99年より三年連続優勝。とくに2000年には修闘ライトヘビー級3位の竹内出と決勝を争い優勝。昨年はリュットコンタクトのワンマッチで同じく修闘現ライトヘビー級王者・須田昇に判定勝ちを飾った。相手の打撃を誘い、タックルもしくは左の払い腰・内股で豪快に投げ、腕関節を狙う。柔道教師、27歳、パンザ・アンドレ所属。

◇道衣あり面着用の空道ルールでは、組んでの頭突きから左背負いという山崎スペシャルで連勝街道を突き進んだ山崎が、世界大会では同じく道着ありの組み技系を得意とする柔道および極真空手イタリア王者、アンドレ・ストッパに腕ひしぎ十字固めで苦杯をなめた。その再起戦となる今大会、柔道では日本に互す実力を誇るフランスでナショナルチームに選ばれ、グラントロフィーでも敵なしのエース、フォートリーと激突する。打撃にはやや難のあるフォートリーだが、組んでからが真骨頂。左の払い腰で強引にねじ伏せ、ねちっこい寝技に移行する。一方の山崎には頭突き禁止はマイナスだが、打撃ではKOのチャンスもある。道衣着用総合ルールを得意とする両者だけに、最高レベルの闘いとなること必至。「道衣あり総合」の真価が問われる一戦といえよう。


B藤松泰通vsデニス・フランソワ

◇藤松泰通 高校時代に柔道とサンボを体得、エスポワールカップ優勝の肩書きをひっさげて大道塾入門。寝技には絶対の自信を誇る。寮生として武道漬けの日々を送り、打撃も着実に進歩、また様々な大会に参戦して実績を残してきた。全日本パンクレーション重量級優勝、散打アジア選手権(ベトナム)75キロ級銀メダル、01北斗旗重量級優勝、同年空道世界大会では重量級初代王者の栄冠に輝く。02北斗旗空道超重量級でも課題とされた打撃に冴えを見せ、優勝。いまやスーパールーキーというよりも、空道の誇る代表選手の一人である。大道塾寮生。178センチ、21歳。

◇デニス・フランソワ キックボクシングに似たフランス独自の打撃系競技であるサバットが誇る王者。1996,01,02フランスチャンピオン、2001世界チャンピオン。スポーツトレーナー。183cm 86kg、32歳。パンザ・アンドレ所属。

◇寝技では数少ないチャンスでも必ず仕留める藤松は、打撃が課題と評されてきた。だが相手の打撃技をかいくぐり、組み技に持ち込む技術はすでに一級品。空道世界大会ではテコンドー世界王者の打撃技を、前進し距離を詰めることで完封した。さらに春の北斗旗体重別では、左フックで稲田からダウンを奪い、進境著しいところを見せた。今回はフランソワの打撃にどこまで藤松が対応するのかが注目される。


C飯村健一vsファド・エズベリ 

◇飯村健一 89,92,94北斗旗中量級優勝、99軽重量級優勝。大道塾きっての打撃技術通。ボクシング・ムエタイにも精通し、現在もラジャダムナンのリングに上がっている。独特のステップからの膝蹴り(テンカオ)、肘打ちは他の追随を許さない。WARS大会では第一回、ロシア選手にKO勝ち。第二回は阿部健一に判定勝ち。久々のWARS大会で組み技に対してどのような打撃で対抗するか、注目される。大道塾吉祥寺支部長。172センチ、33歳。

◇ファド・エズベリ 22歳ながら、ヨーロッパでも最もレベルが高いと言われるフランスのキック界で四度の王座に輝いている新鋭。学生。176cm 70Kg、パンザ・アンドレおよびGary’s team(キックボクシング)所属。

◇組み技全盛の現在にあっても、なお打撃にこだわりを見せる飯村。今回はその打撃ではヨーロッパ中量級で最もレベルが高いフランスから刺客を迎える。大道塾の打撃技術とヨーロッパ・キックの激突が注目される。この試合のみ肘打ちありルールで行われる。


E伊賀泰司郎vs佐藤繁樹

◇伊賀泰司郎 01北斗旗軽量級優勝。パンチ連打には従来から定評があったが、これに相手の勢いを利用する腰投げ、さらには小川英樹直伝の絞め技を加えて見事初優勝を飾ったホープ。会社員。164センチ65.5キロ。25歳。

◇佐藤繁樹 全日本パンクレーション中量級準優勝、01北斗旗軽量級3位。本来は中量級でありながら減量、軽量級の王座を狙う東北の雄。強烈な右のクロスは一撃でKOの威力を秘める。公務員。166.5センチ63.4キロ。29歳。

 


F八隅公平vsディディエ・リュッツ 

◇八隅公平 プロ修闘の最激戦区、ウェルター級の6位に位置するホープ。レスリングを基礎に、着実に勝ち星を挙げてきた。最近では打撃も進境著しく、タイではムエタイの試合にも挑戦している。5勝1敗2分。パレストラ東京所属。23歳。

◇ディディエ・リュッツ 柔術出身ながらハイキックも得意とする。サンボヨーロッパチャンピオン大会準優勝。グラントロフィーでは2000年、準決勝で修闘ミドル級の和田拓也に腕がらみで敗退。01年は後藤龍治に判定勝ち、優勝。柔道教師、178cm 71kg。26歳。パンザ・アンドレ所属。

◇リュッツは道衣着用の寝技出身だけに、組み技と打撃に穴がある。打撃に磨きをかける八隅はこれをどうさばくか。


G稲田卓也vsボナフ・ロラン

◇稲田卓也 00北斗旗重量級優勝、01北斗旗超重量級準優勝。不思議なリズムと何を意味するか分からないトリッキーな動きから、人呼んで「北斗の奇人」。掌底ジャブの意外な重さ、組んでの腰の強さ、寝技での素早い腕ひしぎ十字固めが武器で、トーナメントでは常に上位に勝ち上がる。2000年のグラントロフィーでは、十字固めで逆転の勝利を収めた。公務員。181センチ86キロ。30歳。

◇ボナフ・ロラン パンキドー出身。2000バーリトュード ヨーロッパチャンピオン、2000年パンクラチィオン フランス85kg級優勝、同01年モナコ大会 優勝。パンキドー20012002優勝。2002グラントロフィー 出場、通算戦績8勝2敗。パンザ・アンドレ所属。

◇道衣あり総合系大会で優勝を重ねるロランとオールラウンド・プレイヤーの稲田が相まみえる一戦。稲田はスーパーセーフ面をはずしての初戦、2001年グラントロフィーでは顔面攻撃で出血、苦戦を強いられての逆転勝ちとなった。今回はその経験をどう生かすか。トリッキーな動きが出れば稲田のペースになる。


H八島有美vsデュカステル・ステファニー

◇八島有美 女優、OLを経て現在は女子プロボクサー、女子フライ級チャンビオン(ゴールドジム横浜馬車道所属)。大道塾では横浜支部所属、二段。愛らしい笑顔と華麗なパンチテクニックで下北沢タウンホールを超満員にする人気選手でありながら、大道塾女子部のトーナメントがあれば地方大会までも参戦する試合好き。プロ戦績8戦6勝1敗1分。165センチ、30歳。

◇ステファニー・デュカステル キック、ムエタイ、テコンドー、極真空手、サバットなど様々な打撃系格闘技大会で優勝を重ね、総合格闘技大会でも優勝。勝利にあくなき闘志を見せる。2001サバット・チャンピオン、2001ヨーロッパ・ムエタイ・チャンピオン。2001コンバコンプレー(総合格闘技)ヨーロッパグランプリ優勝。学生。165cm 57kg 22歳。パンザ・アンドレ所属。

◇パンチ技術では女子格闘技界で一頭地抜き出た存在の八島だが、総合系のワンマッチ試合への参戦は初。デュカステルも打撃系であり、華麗な打撃戦が期待される。


I平塚洋二郎vsマシュー・マクレガー 

◇平塚洋二郎 02九州重量・超重量級準優勝。華麗な打撃でめきめき頭角を現した沖縄の星。組み技、寝技にはまだ難があるが、第二回空道世界大会出場が期待されている。学生。178センチ88キロ。20歳

◇マシュー・マクレガー 寝技なしの北斗旗ルールを採用している関西空手界の雄、誠空会所属のオーストラリア人。長身のサウスポー、伸びのある左ストレートに膝蹴りが主武器。

◇ともにスーパーセーフ面ありでの打撃を得意としている。マグレガーはサウスポーとして比較的素直な組み手だが、その左ストレートを平塚はどう攻略するか、それともマグレガーが長身を生かすだろうか。大道塾・誠空会重量級の将来を占う一戦だ。