(7月某日)欠席理由は・・
このところ先週は北上市で講演およびシンポジウム、今週は法事で、三週連続で土曜のビジネスマンクラスの稽古に参加できなかった。みなさん良い汗をかいているのだろうなあ。北上のシンポジウムは景観条例の策定をする一環だとかで、拙著『失われた景観』がらみでお呼びいただいた。建築家の池上修一さんと同席。よく考えたら拙著には、池上さんらの神奈川・真鶴町景観条例の実践に対する批判になっている部分があり、私はすっかりそのことを失念いていたのだが、シンポジウム終了後飲み会の席上で当の池上さんから「松原さんからの批判は活字では初めてのもので、重く受け止めた」と言われ、恐縮した。しかし批判に笑って応えるなど、豪傑のなせるわざであろう。すがすがしい思いがした。
で、その前の土曜は、実は講道館で柔道の試合があり、杉並区から出場するため、休ませていただいたのである。
大会は柔道整復師会のもので、団体戦には了徳寺学園というプロ集団が出ていて、豪快に優勝した。なにしろ全日本出場選手がメンバーなのだから、勝って当然ではある。それ以外に、個人トーナメントと段別個人戦があり、私は後者に出させていただいた。一昨年から三年連続で参加しており、昨年とともに今年も元大道塾、元プロボクシング・ミドル級一位の荒井秀顕さんとともに二段の部である。ただ、荒井さんは現在はどう見ても90キロ台後半くらいの体重があり、それで組み合わせを作る方が私との対戦ははずしてくださっているのか、名前は隣り合わせに書かれているがまだ当たっていない。
また、大道塾の青木伊之・町田支部長とも出会った。整復師学校の引率で来られたのだそうな。いろいろな方に会うものだ。
なにしろ私くらいの年齢になると、相手は同年齢ではいないものだが、今年は外見上は四十台に見える方と当たった。十二時から待って、三時近くだろうか、名前を呼ばれる。中央に進み出て、釣り手から取る。いつもの稽古ではすんなり組み合うが、試合ということで、とるなら煽りを入れ、そのまま引き手もとって、回す。相手の人は凄い力で組み付いてくる。そこから相手に釣り手をとらせないまま、背負い。入りきれないので立って、もう一度背負い。そこで場外となった。
もういちど自分から先に取る。相手はずいぶん力が入っているようにみえたので、そのまま煽りつつ回して、回した方向に大内刈りをかけたら激しく倒れた。すぐに上をとろうとしたところに「待て」。何があったのかいぶかしく思ったが立つと、審判が集まって協議。次は体落としから入ってみようなどと考えていると、「一本」が宣せられた。完全には裏返しにはならなかったので有効止まりかと思っていたのだが。見ていた井澤先生ら諸先生によると、勢いが激しかったので、そうしたときには一本を取る場合があるとのこと。
その井澤先生の五段マッチは見物だった。いつものとおり両襟を取ったまま相手にプレッシャーをかけ、相手が焦って右内股に入ろうとして足を上げる直前に、待ってましたとばかり腰を寄せて両腕を強烈に回すと、見事に一回転。一本である。ふつうこうした場合は内股すかしになるのだが、内股に入る前にすでに投げてしまっている。これは伝説の神業、「浮き落とし」ではないか!!なにしろ、形でしか見たことのない技である。それが講道館の実戦で決まったのだ。見物しておられた高段者の人々も「あれは力業ではないのか」とか驚きの声が上がっていた。まあ、痛快な夏の一日ではあった。
(7月某日)家族教室開講
先日、八王子支部主催の大道塾の試合があった。大人は色帯のみの大会とあって、私は不参加。代わりに息子が出る。これまで三回の参加では私が教えてきたので他流派、「流派名非公開」だったが、今回は飯村師範代の吉祥寺支部少年部から7〜8歳の三人組が出ることになったのである。
例によって朝から急いで駅へ。こんなにしっかりと電車に乗るなど、仕事ではありえない。家内など、毎週稽古の送り迎えしているだけに、弁当を作ったりして力入りまくりである。いざ、八王子市民体育館へ。
飯村師範代の指導で、なんとか三人組は十級にはなれたものの、毎週稽古はてんやわんやである。
「構えて!」というと、左右の足が逆を向いている。それを直していると、あとの二人がへらへら笑っている。「だめだ、罰ゲームで走れ」というと、走る間にズボンが脱げてしまう。それを直しているとあとのふたりが道場から消えてしまう・・・という具合であるから、かの教え上手の飯村師範代も力無く笑うしかないのであった。
それでもなんとか試合できるところまでこぎつけた。息子は習ったのは相手のパンチに合わせて前足を払う足払いとか言っており、そんな難しいことができるものかと半信半疑であった。それでも前回まではたんにトロフィーが欲しいとか体育館の裏の公園で遊びたいといった具合、自分の試合が終わったらさっさと外に出てしまったので、これでも進歩かと思う。
だが、試合は残念ながら一回戦負け。相手はかつて総本部でよく私がスパーさせていただいた加藤さんの息子さん。そうか、息子は同じ歳なんだなあ、としみじみしたりする。
いきなり後ろ回しをやったり相手の突進に左横蹴りでストッピングしたのはよいものの、左でのみ蹴るものだから体が完全に半身になってしまっている。ポイントになりそうな蹴りはあったものの、押されまくり。前回は右回し蹴りしか出せなかったのに、今回は正反対だ。父親とは違い、下がってばかりなのが響いて、判定は2−3であった。
ところが驚きはそのあとにやってきた。前回はトコトコ帰ってきて、「トロフィーは?」なんて聞いていたのが、今回はいきなり母親に駆け寄って「ふえーん」と号泣し始めたのである。そうか、これでも勝ちたいという気持ちが芽生えていたのか。当人の頭の中では勝つことしかなかったらしく、その図が壊れたものだから、混乱したらしい。家内は、「今回は直前に相手してあげなか
ったあんたが悪い」とおかんむりだ。
そうはいっても、支部長に指導を任せている以上、私がそんなに勝手に教えてよいものではなかろう。それで今回は様子を見ることにしたのである。まあ、流派が変わった(?)のではあるし。だが、そうも言ってはおれなくなった。
で、毎週日曜に、児童館で、家内と息子相手に家庭サービスを兼ねて「とーちゃん教室」を開くことにした。一回、一時間半。これで、平日は毎日のように午前様なのを許してもらえるとなれば、一石二鳥ではある。私としては、あまり難しい技は教えず、前に出ることや蹴りの威力をつけること、移動稽古や柔軟など基本を中心にやることにした。
それで二回ほどやってみたのだが、感想を尋ねると、日頃「酒飲みとーちゃんの馬鹿」と繰り返す息子曰く、「相撲で負けてくれたところ見ると結構良いヒトかもと思った」。まあこれで信頼回復につながるのなら、お安いご用ではある。
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