(8月某日)
本日は講道館で月並み試合。先月も柔道で試合したが、今月もである。大学院生でゼミ生の寺川君と、ともに二段の部に参加。というわけで、先週からは大道塾は夏休みだったこともあり、打撃は休んで組技の稽古に専念してきた。
それでもいろいろ仕事が昨晩まであった。夜半に東洋経済誌に佐伯啓思学兄の新著書評を書き上げてメール送信。これであとは翌日の試合だけである。
ところが朝、予定の7時間寝ないうちに暑くて目が覚めた。仕方ないのでラーメンを食べに外出。本日ばかりは一ファイターであるので、家族は眼中にない。「おい、ラーメンたべに行くかー」と声をかけたものの、息子は道ばたで隣の子たちと簡易プールの水浴びに夢中。私ひとりで荻窪・双葉へ。帰宅して、雨戸を閉め切って、寝た。完全に試合前モードである。
いろいろ、夢を見る。もっぱら、今から試合だが、眠れない、そこに寺川君が現れて「先生、打ち込みをしましょう」などとうるさく起こす。俺は寝たいのになあ、と寝返りを打ったら起きた。まあ、これで万全ではあるか。
講道館で着替えて本道場に上がるともう寺川君は来ている。さっそく打ち込み。なんだか、体が軽い。息も上がらない。先週から高木道場の松本先生に、「6点取って昇段するように」とお達しを受けているが、勝ち抜きなので、まずスタミナがもつはずがない。なんとか誤魔化すことを考えてはみる。
中高生の白帯が終わって、同じ試合場で名を呼ばれる。相手は同年輩か。ちゃんと綺麗に組みにきたので空道風にステップを踏んで目先をかわし、釣り手だけをとってどんどん押す。場外注意を意識させたところで引き手も取り、煽ってから投げに行くという作戦。ところが投げは決まらず。もう一度同じことをしたら倒れた。すかさず覆い被さり、腕に腕をさしこんでひっくり返す。逆十字狙いである。相手は当然指をロックして防御に入るので、私は冷静に自分の襟を持つ。背筋で切る作戦だ。そこに観戦していた木下先生の声で「手首を取れ」と聞こえたので、万全を期してもう片手で相手の手首をひねると切れた。立ち上がろうともがく相手を裏返って極める。一本勝ちだ。
ほっとして試合開始線に戻ると、二人目の方は二十歳代半ばか?あまり強い組み手ではないので、回して大内に。これも作戦だったが、きまらない。なんとか楽な足技で倒そうとしたのだが、甘いかなあ。二度・三度試みたが、ダメ。相手の一本背負いをつぶして、そのまま絞め。極まったかと思ったが、持ち上げられてしまった。うーむ、甘いなあ。
仕方なく背負い。これが有効になった。ところがそこから相手は引き込みにきた。寝技得意の人らしい。つきあうと疲れるので、適当にうつぶせる。
立ち上がると、今度は引き込み返しに来た。完全に寝技狙いだ。だんだん疲れてきたので、時間つぶしにつきあう。息も上がってきた。「待て」で立ち上がると、うまいぐあいに道衣がはだけたので勝手に直すと主審から注意を受けた。時間かせぎなのはばれているな。そのままなんとか時間切れ。と同時にスタミナ切れ。
次は早稲田の学生だが、どうしようもないので、さっさと寝技で抑えられる。抵抗するより、苦しいのでそのまま寝ていた。完敗。この相手に、次に出てきた寺川君が組むなり大外で一本勝ち。偉い、よく敵を討ってくれた。ところがその寺川、次の巨漢に投げられざま肘を顔に入れられた。それで一本負けと同時に、歯の先端が折れてしまった。名誉の負傷である。といっても当人はえらくショックのようで、しょげている。仕方なく歯医者へ同行。神経を抜いたがそれてすんだらしい。まあ、一本勝ちしたんだし、武道家としては喜んでいいんじゃないか、と言えば教官として無責任かしら?
夜はもちろん、美酒に酔ったのだった。