(3月某日)
あまりにも間が空く日記ではある。友人に『中央線の呪い』三善里沙子さんという方がいて、その方がアクセス杉並というサイトに日記を書いていて半年に一度ほどの更新なので「ずいぶん間が空きますね」と半畳を入れたら「そんなの書いていません」との返事。あまり間を空けると当人すら書いていることを忘れるものか、と
感心した次第。
http://www.ac-suginami.com/culture.asp
というわけで、短い文を書いてホントの日記にしてみようかと思う。それならあまり重荷にならないから。で、格闘技以外のことも書くのをお許し願いたい。
高木道場にて。タイのナショナルチームの選手来る。講道館の「三角絞め」の松村八段もご一緒。さすがナショナルチームは強い。高校生が体さばきだけでコテコテに投げられていた。体幹が強いのだな、と一人合点。私が膝内側靱帯を伸ばして治療していただいていると、松村先生が「稽古すりゃ治りますよ」とのこと。私もレッグエクステンションしようっと。
昼間に『公研』という雑誌で少子化について対談をし、それから朝日に大澤真幸氏の『現実の向こう』の書評。駆け足で柔道と、結構ハード。
そういえばこのところ加圧式のベルトを巻いて毎日ちょこちょこ体幹系のトレーニングをしている。10キロのバーベルでパンプするので便利なり。もうあまり重いもの持ち上げることに興味がなくなった。とはいえ、大学の会議で加圧式の学術応援団である石井直方先生と隣り合ったのでそう喋ると、「でも重いものはやっぱり持ち上げておかないと筋肉が重いものに適応できなくなるんじゃないですか」とのこと。先生は高重量のバーベルも依然として持ち上げておられるそうな。
http://www.phenix.co.jp/kaats/what/video.html
柔道は、左足が曲げられないが、得意でない内股を研究するチャンスと考えている。入り方がうまくないので跳ね腰になっていたのが、やっと今日一回だけ矯正できた。自分から飛び込むと距離がなくなるので、引っ張り込むようにしたらうまくいくような気がする。ということは、入り方が背負いと同じなのだな。
(3月某日)
土曜。午後一時から杉並区主催のシンポジウム『欅並木を考える』に呼ばれる。ところがパネラーのみなさん、思い溢れて持ち時間を大幅超過。三時終わりのはずが四十五分過ぎても終わる気配もないので、しかたなく中座。話しはどの方のものも面白かっただけに、残念。とくに、阿佐ヶ谷駅が一階建てだった写真とか、一番街が原っぱだった写真とかを使った、商店会の会長さんのお話。あれ、いただけないかしら。
私は、格闘技会場でいつもお会いするので面識を得、先日PRIDE鑑賞会でお邪魔したイラストレーターの寺田克也さん宅を「私にとっての阿佐ヶ谷」と題し、写真で紹介したりした。
急いで大道塾へ。体幹系のスタビライゼーションを合間に取り入れてみる。最近はやりのピラティスは、そのリハビリ用らしい。中国拳法のタントウなんかも静止系のトレーニングとしては同類だ。私としては、「自分の体を自由に使えること」を目指したい。外の筋肉はウェイトでつくが、体幹とつなげねばいけないんじゃないだろうか。
スパーでは、テンカオをいろいろ試してみる。右膝はサウスポーの相手には当たるが、相四つだとずれる気がする。どうすればよいのだろうか?
以前のビジネスマンの稽古は、おおよそ一般でやられているメニューをなぞっていた。だから、
1.基本
2.移動
3.組技の型
4.約束組み手
5.スパー
みたいな内容だった。けれども私も長い間稽古していて、自分がやりたいことをいろいろと取り入れている内に、ビジネスマンクラスに来られる皆さんがどう評価して下さっているかは分からないが、原型をとどめないほどメニューが変わってしまった。本日で言うと、
1.基本までは同じだが、
次にボディ・ワーク。ステップができていない気がしたので、「縄跳び」「サークリング」「ダック」「腿挙げ」「頭であ・い・う・え・お」などやり、さらに遠くに足を投げるようにしてミドルを蹴りながら移動。試合でこけて頭を打った方がいたので、前方回転以外の受け身ということで、高木道場で子どもたちがやっている「押されて後方受け身」、さらに膝立ちから「膝車で投げられて横受け身」とやった。
シャドーは「パンチだけ」「蹴りも入れて」「つかみも入れて」そして「左構えで」。逆構えでやると神経系に良いと加藤さんから聞いた。さらに通常なら合間に「拳立て」を入れるところを、スタビライゼーションで「腕立ての姿勢から右手・左足を上げる」「仰向け四つんばいの姿勢で足を上げる」「横向きに片手で支えた姿勢から足上げ」を各十秒。腹筋も、「頭を抱えた肘が膝につくように」。
また、ミットは飯村流で、体軸を定めるように、「左ミドル−右ストレート−左フック−右ロー左フック−右膝−右肘」をひとつひとつ積み増すようにして五本ずつ蹴っている。それから、フリーのミット。
対人稽古では、目慣らしに後手がスウェイなしにするために壁を背負う「壁打ち」、道着のつかみありの「組技」、「蹴りだけスパー」、「パンチだけスパー」とやり、後は1分で7〜8本のフルスパー。
最後にダウンでジョギング、二人組みでストレッチ。初動負荷理論の本に出ていた脇腹と腰のストレッチもやる。
まあ、どこまで変形していくのだろうか。飲み会まで改革しようとしているし。「進化する空手」ではありますね。
(3月某日)
土曜に私が指導するビジネスマンクラスの稽古後、ラウンジで懇親会をすることにかんして、朝から塾長に嘆願書を書く。古参選手から反対があったからだ。心配そのものは分かる。我々は底なしに呑んでふざけるのだから、道場での稽古の差し支えになると懸念されたのだろう。
とはいえ懇親会は情報交換の重要な場。ルールを作り、自制を誓う。
夜は高木道場で柔道。二十人以上の参加。道場をぐるりと門人が取り囲んだ。上は五十三歳の井澤先生から占いの小林さん、早稲田の学生、早実や東亜の高校生。にぎやかなり。ステップで崩すことを試みるがうまくいかぬ。
帰宅後、文春の鼎談に備えて読書。『大仏破壊』、極めてスリリング、イスラムについて無教養なオマルがビンラディンに寄生され、ついに仏像破壊に走るようすが証言を基に生々しく描かれる。オススメ。糸山秋子『逃亡くそたわけ』も好きな作家。博多弁が生きている。笑いとペーソス溢れる躁
鬱文学。深夜にダーントンの『禁じられたベストセラー』読み始める。前にこの作者がメスメリズムを描いた本を読んだが、フランス革命が啓蒙主義の精華だという通説をひっくり返したものだった
。これはどうかな。
(3月某日)
私が二週に一度はお世話になっている、名医「南治療院」が国立に移転する。最後の治療を受ける。ハードな手業、針、ボキボキ、温灸、急冷のフルコースが阿佐ヶ谷からなくなるのは辛い。
ダーントンを完読。赤川学『セクシュアリティの歴史社会学』の方法論を、フランス革命に応用すればこういう作品になるのか、と感心。言説分析が有効である好例。アナール+ボーコックですね。
文春の書評鼎談、福田和也・鹿島茂両氏と。二年続いた最終回。銀座ですっぽんを食べた後、北千住「ハリウッド」に招待される。オーナーの「昭和のキャバレー王」福富太郎さんみずからお出まし。どぶろく「五郎八」、紹興酒、ワイン、カニなどいただき酒池肉林なり。ステージでは野球拳など展開されたが、女性編集者も二人同席していたので、誤解なきよう。私は福富さんから、「克己こそ人生。」とご教示いただいた。胸のはだけた女性が隣にいて、「むむー」。
(3月某日)
火曜日夜に女性超初心者クラス「ひよこ組」を指導している三輪さんから、「ひよこ一号が土曜ビジネスマンクラスに出稽古に行くからよろしく」とのメールあり。今後の格闘技道場経営はいかに初心者の「顧客満足度」を上げるかにかかっているとの信念から、よろこんでお引き受けする。ひよこ嬢に喜んでいただけるよう、一同も心してかかられよ。
というわけで、「ひよこメニュー」作成。土曜に、本隊と同時に稽古しながらこなせるメニューにした。我ながらよくできていると感心して三輪さんに送ったところ、「年間スケジュール」および「ひよこ筋トレメニュー」が返送されてきた。なんじゃこりゃー!!超初心者が、自宅でてきる筋トレメニューが、取るべきサプリメントにまで配慮して書かれている。しかも第二改訂版。いや、素晴らしい。ここまでやるか、三輪組長。
夜、兵庫県知事や著名研究者諸兄姉と研究会。
帰りに、久しぶりに阿佐ヶ谷のブルースバーに寄る。以前、川上弘美さん、野村進さんとともに来て、ハメドのビデオを見せてもらった。そう、川上さんが恐らく唯一見たボクサーは、ナジーム・ハメドなのだ。
本日は「のなか悟空」のデビュー本、『バチ当たり』について喋る。あれは私がゴリ押しして情報センターから出してもらったものだ。右翼に電話し街宣車を借りて宣伝しようとして断られたり、あほらしくも面白い日々であった。こんな本、誰も知らないだろうと思ったら、店主が「自分の回りでは結構有名でした」と言う。「内容は理解できないけど、元気になる本」だったとのこと。
売れなかった在庫を一斉に処分したのが古本屋に流れたのではないか、と店主は言う。
パンクを模倣したり自称する人は沢山いる。だが八十年代の我々は、パンクそのものであった。だって、富士山やキリマンジャロでドラム叩いたり、客を窓なしのバンに乗せてライブ会場に運び、朝まで
監禁して怒濤の演奏を聴かせたりしたのだからね。当時無名の演者は、いまは「渋さ」や「姜泰煥(かんてふぁん)」だったりする。
(3月某日)
高木道場で柔道。東亜高校の一年生、背が私より20センチ近く高い若人に釣り手で背中を持たれて、グリグリと顔をこすられた。おかげで眼の下がすりむける。送り足払いで投げるも、また必死で我が顔を抱きかかえようとする。うるさくなって後ろ腰で持ち上げたら、内側靱帯がまた悲鳴を上げた。
弟子・寺川君を連れて、阿佐ヶ谷『プロレスとブルース』へ。NHKからもらった柔道関連ビデオを大画面で上映してもらう。三船久蔵の自作・型や「球のようになる」というイメージ映像が出てくる。東京オリンピックでスピニング・チョークの原型を極めた岡野功先生が講道館で試合している場面もあった。ソウルオリンピック直前、80年代の韓国の柔道熱は、凄い。ウェイトをがんがんやってる。軍隊式だ。二時過ぎまで盛り上がる。
(3月某日)
ひよこ一号、来る。どうやら喜んでもらえたようで、うれしい。日記にもそう書いてある。
http://www.ichigeki.co.jp/
私の消費論でいえば、供給側が価値観を押しつけられたのは30年前までのこと。格闘技においても、顧客満足を図らなければ、経営は覚束ないはずだ。ひよこ一号さんの喜びは、他の稽古生にも伝わる
だろう。次回までに、メニューをバージョンアップしようっと。
(3月某日)
自分の体重を自由にできるというのが最近の目標なので、逆立ちと懸垂に関心がある。というわけで、縄登りがしたくて町内のスーパーで「綱」を探したが、やはり西友には置いていない。たまたまゼミで使うテキストを買いに新宿紀伊国屋に出向いたので、途中にある東急ハンズを覗く。いや、いい綱がある。3.8メートルに切ってもらい、さっそく帰って自宅玄関の鉄の梁に投げる。両端に結び目を作り、それをつかんでぶら下がるといい感じ。逆立ちは壁相手にやっている。
(3月某日)
世界チャンプ藤松君の出稽古に同伴。一線の組技選手相手に一時間乱取りして五分に戦ったのに、まったく息も切らせない。投げられそうになっても体を反転させて上になっている。帰りにいろいろ喋ると、やはり「体幹」に意識を集中して一日中過ごしているとのこと。身体が「水の袋」に思えれば、疲れなくなるそうな。よく分からないが、驚異的な乱取りだったことは事実。息が切れないのはいいなあ。私はスタビライゼーション運動しかやってこなかったが、もっと全体的にやれということらしい。というわけで、自宅で木刀を振ってみる。達人への道は開かれているのだろうか。
夜、高木道場。さすがに一日二回の稽古はきつい。それにしても左膝靱帯がまだ悪いので、左足は十センチほど曲げることができるだけ、深く曲げられないし捻ると痛い。背負いはできないので、このところ内股を稽古している。高校のころはただ巻き込んでいただけだったので、使い物にはならず最近は捨てていた技だ。内股使いのT君は大学の弟子だが、彼が高木道場では内股のコツをいろいろと教えてくれる先生である。高校の頃はこんな風に技について語ったことはなかったな。ふたりであーでもないこーでもないとやっているうちに、私のは背中をいきなり相手に付けようとするのがダメと判明。また、相手を前傾させてもいない。とすれば背負い方式にこちらに引けばよいのだろうと試している。それにしても相手を回すように踏み込むと膝が痛いので、正面からしか入れない。
(3月某日)
仕事が忙しくて道場稽古ができない。それで家で自主トレをやっている。
加圧式のベルトを巻き、10キロのダンベルを持ち上げたり腕立てをやっているが、見る見る腕は太くなり胸も厚くなって、太股もほぼウェイトをばりばりやっていた時期の太さに戻った。一日十分しかやってないのに。たい
したものではある。
ただ、私のこのところの目標は、その太い筋肉とインナーマッスルをつなぎ、体を自分の思うままに操作できるようにすることにある。それで、逆立ちや、チャンプ藤松
ご推奨の「四股」や「木刀振り」などもやっている。一本足でもっとも軽く立てる立ち方が分かってきたような気がする。といってもまだ四回ほどしかやってないのだがね。
パンチありだと、シウバ=吉田戦のように、組まずに振り回して打撃、という展開になる。柔道の稽古でも組み手争いを取り入れてみたいのだが、講道館流の道場だとそうもいかない。どうしたものか。