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(八月某日)頭突き ・浴衣ナイト やっと大学の仕事が夏休み。授業他で忙殺されていたので、これから本業にとりかかれる。だがそれにしても、暑い。 と、稽古の土曜日前日になってひよこ一号からメール来る。「せんせい、明日、組長が新宿三人娘で浴衣着てさくらに行くそうです〜」。 「さくら」というのは、池袋の人生横町脇にあって、最近稽古後に十人ほどで貸し切りにしていただいている小料理飲み屋さんである。この店では枝豆がちゃんと茹で立て出てきて、うれしいことこの上ない。 だがそれにしても、我々はすでに先週から送別会で貸し切りにしてあるのだ。そこに無理無理に乱入してくるらしい。なして浴衣で?新手のストーカーか? そういえば先日、組長から「私は松原せんせいに○○」という謎のメールが来たのだが、何か関係があるのだろうか? 「で、一号はどうすんの?」と尋ねると、「私は甚平です〜」とのこと。なんだかよく分からんが、先月の試合以来、ひよこ組からは稽古での指導などいろいろ頼まれ事をしている延長らしい。ならば、私も一号とデュエットで甚平を着て行こう。 稽古そのものは、金子さんがニューヨーク大学に戻る(私の学問上の弟子のH北大助教授の関係の講座らしい)というので、送別の三人組み手をやったり、8ミリ撮影をしたりとなかなか盛況であった。その後、8ミリ撮影会を道場のラウンジで開く。そういえば稽古 前にひよこ組長に電話したら、「ビジネスマンが来る前には帰りますぅ〜」とか仰る。なんか、怪しい。待ち伏せして脅かそうというのか? だが一方で、組長はおみやげも用意してくれている。自宅で丹精込めて育てたゴーヤ(名前もつけてあったらしい)のチャンプルー。苦さが夏らしくて、ビールにぴったりであった。 いざ「さくら」に行ってみると、なんだかえらい空気である。組長はもともと可愛い系なのに、今回は京都の老舗旅館の若女将みたいな艶やかさ。髪飾りまでしてらっしゃる。黒ひよこはいつもの超ミニではなく黒浴衣で、貿易実務の話をしてくれる。元切り上げの話題が浴衣とミスマッチで美しい。それに新妻アケボノさんまで浴衣でハッピーのお裾分けである。なんだいったいこれは。ついさっきまで私は仲田二段と頭突き合戦をやっていたというのに。それがこれとは、空道家の飲み会とは思えんじゃないか。 どうやら組長に説得されたようで、一号まで浴衣である。口紅なんぞ初めて見たではないか。格闘技界のお父さんである仲田さんも目を細める展開だ。 仲田さんから「有刺鉄線バット」が一号に贈呈される。プロレス会場で入手したものらしい。さっそく甚平・浴衣で撮影してもらう。二号も浴衣で超かわいい。って、なんなんだ、私のこの物言いは。二号は、浴衣と道衣をセットでカバンに詰めてきたという。 我々は二階で飲んでいたのだが、途中、組長が「チラ見せ」に上がってくる。引き留めようとしたが、引き留め部隊が餌付けされて逃す。色香だけが通路に残った。 なんだかなあ。 よく分からない一夜ではあった(組長は組員には「ヒミツでやりたかったのに〜」と言っているらしいが、我々の送別会の貸し切り宴会場に押し入ってヒミツの飲み会とは、謎である)。だが、これまで我々は、十五年も一日のごとく稽古後には焼きトンを食し、生ビールをお代わりしてきたのである。それが隅田川花火かなんだか知らないが、浴衣や甚平を着てこうした季節感のある飲み会ができたのも、ひよこたちが稽古に参加してくれたおかげだ。これぞ社会を反映した武道ではないか。 そういえば、組長も艶やかさはすでに黒帯、空道の方もそろそろ黒帯にチャレンジされてはいかがであろうか。 弟子ひよこも着々とスパーをこなして日に日に強くなっている。組長は新宿支部。我々が呼ばれればお手伝いもするが、ときどき出稽古に来られる佐野選手あたりが中心となって「黒帯を目指す会」のチームを組まれてはいかがだろう?最近聞いた話では、新潟で62歳の方が入門され、ただちに「黒帯にさせる会」が誕生したそうである。一日も早 く黒帯組長の艶姿を拝見したいものではある。
(八月某日)夏の稽古 夏休みに打撃を鍛え直そうと、吉祥寺に出稽古、久しぷりに茶帯二人、黒帯一人、飯村支部長とグローブスパー。 防御についていろいろ稽古法を教えていただく。総本部ビジネスマンクラスでもやってみよう。 翌週は、半年ぶり(!)のスネーク・ジムの稽古。大道塾三部では夜遅くなって家で食事ができなくなるので、夕方のプロ練に参加させていただく。 しっかし。ミット4分2ラウンド、スパー(大江先生、キックプロM選手、パンクラスI選手)と3分6ラウンド、2分3ラウンド。汗が、これ以上でるものか、というくらい出た。2周目からは息が切れてほとんどカウンターしか出なくなる。3周目はへろへろで組技ばかり。それでもなんとか最後まで立っていられた。もうすぐ49になるが、なんかスタミナは前より付いた気がするなあ。
(八月某日)わかどり一・二号とビデオ このところ、ビジネスマンクラスでの稽古に8ミリ撮影を取り入れている。基本やミット、スパーを、希望者についてはみっちりと集中撮影するのである。 稽古終了後に二階のラウンジで懇親会を開いているが、ここでテレビで上映会をすると、これが盛り上がること!!自分のスパーしている姿を見るのは、本当に新鮮に違いない。思ったよりガードが上がっていないとか、案外興奮していないとか、主観とは違った発見があるのだろう、皆で講評し合って楽しいことこの上ない。 これまではK−1だのを見ながらビールを飲んでいたのだが、自分の姿の方が俄然盛り上がるのだ。 いつも「基本を映して下さい!!」とひよこ一号・二号が手を挙げるので、毎回集中的に基本を撮っている。翌週に組長の講評をもらっているのだそうな。 ところが面白いことに、三週連続して撮ったのをそのまま流したら、二人とも白帯から青帯に変わり、パンチの軸がしっかりしてきて、見ていた人たちから「おー、どんどん進歩している!!」と驚嘆の声が上がった。二人とも、帯が腰の左右にペチペチ当たっていて、よく体が切れているのに軸がぶれていない。ムエタイ風のアップライトとボクサー風のクラウチングといった違いが出てはいるようだが、最近では前屈みでも前蹴りを出す技術などがあるから、修正するようなことではない。トントンと三週で進化している様子があまりに歴然としていたので面白かった。こんなことってあるものなのだな。二人とも、よく精進している。 親友で極真関西の宮崎龍支部長から北斗旗のビデオを見たいという希望があったので、どう見てもらえるかと我々の稽古風景も一緒にして送ってみた。そうしたところ、早速に電話とメールを下さった。 宮崎さんは型の指導では大阪近辺でも随一という方で、私も以前に指導を受けたことがある。流れるように説明が続き、三十年近く練り込んだ技の重みを体感させていただいたものだ。 その宮崎さん曰く。「みなさん、よく動いてるね。ひよこの二人が『フリーズしないで!』のアドバイスですぐに反応しているなど、指導にもよく耳を傾けているし」。さらに、「基本の数の多さには驚きました」とのこと。パンチだけで140本は連続して打っているのは、 当たり前に思っていたが相当に多いそうだ。女性でもなんとかついて行っているのはスタミナがあるということらしい。 また、「基本が三週でどんどんよくなっている」とも褒めていただいた。型指導の第一人者に褒められたのが、うれしいではないか。たまたまピンポイントで同じ人物を撮ったので、違いが如実に出るという効果があったのだ。 さらに続いてメールでは、こんなご指摘が。「ところでひよこ達ですが、もはやひよこにあらず、これからは「わかどり」1号2号と呼ばれてはいかがでしょう?」 うむむー。これは素晴らしい。組長クラスでは「ひよこ」でも、親父クラスでは「わかどり」。いろいろ呼び名があって楽しいではないか。さっそく、当人たちに言ってやろう。 また、ニューヨーク支部に戻るKさんにも、お餞別で45秒三人組み手などを行い、撮影したビデオを贈呈する。特別に申し出たSさんにも、ミット打ちを集中的に撮影してみた。ミドルの腰のしなりが見事である。みんな、やる気が出ておもしろいなあ。 ただ、柔道の一線ではもっと面白いことが行われている。懇意にさせていただいている学芸大の射手矢先生が解説をしておられる番組に出てくる。 http://sc-smn.jst.go.jp/8/bangumi.asp?i_series_code=B033401&i_renban_code=007 ビデオフィードバック・システムというものが開発されており、撮影すると十秒遅れでその内容が見られるのだ。したがって稽古後にラウンジや家で見るのではなく、稽古中に身体が憶えている内に見ることができるのだ。道場に大型スクリーンを置き、脇で打ち込みをし、十秒後に自分の姿勢を確認しながら修正するのである。それによって、中学生が野村のお手本にそっくりの背負いを一月でマスターしてゆくのである。 我々も、いろいろと活用法を考えみたいものだ。 (八月某日)打撃週間 八月は、もっぱらスネークピットで練習させていただいた。ここの稽古は7時過ぎには終わるので、帰宅して家族と食事できてありがたい。私はこのところ空道とはムエタイ+柔道なのだと考えている ため、蹴りなど一からやり直している。 実際、やり直さないと、グローブ・スパーではほとんどローしか出せない。腰の硬い私ではあるが、それでも指導していただくままに蹴り方を変えたら、なんとかミドルが出るようになってきた。 それで家族で高知に旅行した間も、ホテルでは壁を蹴り、谷川では駐車場の柱を蹴っていた。その結果分かったのだが、これまで股関節が硬いとミドル以上の蹴りは諦めていたのは間違いだったようだ。「顔面なし空手」風に蹴ろうとすると股関節の柔軟さが必要だが、「顔面あり」の蹴りはまったく別物であるらしい。 4分4ラウンドとかのスパーを何度かこなしているうちに、なんとか反撃らしきものもできるようになってきた。もちろんやればやるだけ相手は倍返しにして下さるので、きつくなるだけなのだが。 そのスパーで、ともに地獄を見ている井上学選手が、本業の総合ルールでパンクラスのネオブラッド・トーナメントを制覇された。いつも顔を合わせ、何度もグローブを交えた選手が優勝したというのは本当にうれしい。おめでとうございます。
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