(8月某日)

  高木道場、夏の朝練。二日目に出た。朝六時過ぎに起き、ぼーっとしたままチャリをこいで行く。

 結構な人数が集まっている。大人と高校生六人が子供に稽古をつけ、それでも余った大人が壁際にびっしり立っている。

 軽く柔軟をして、打ち込み。そのまま元立ち。高校生三人、あと大学の弟子であるフランス人女性。高校生の柔道部員には、いずれも最近開発した背負いがかかった。釣り手の方向に崩す、もしくは二本取ったら走って崩す、腰に力を入れて相手の技には抜重。このやり方をマスターするのが柔道三段での課題ということにしたい。

 

 

(8月某日)

 大道塾の合宿。息子ができてから、ずっと子守りで行けなかった(息子が行きたいと言ってくれなかった)。だから実に十一年ぶりである。

 その息子が塾のテストだったので、終わって帰ってきたのを待ちかまえて出発。東京駅からは那須塩原行きは一時間に一本しか新幹線が出ていないが、二時過ぎのを逃してしまう。四時過ぎにやった到着。稽古は見学だけ。

 夜は食事後、ビールを飲みつつ子供の花火を見物。そのまま黒帯懇親会へ。

 翌朝、六時前起床、ランニング。自分は五十代なので二往復、四キロ。同年代では二位か?息子は後半歩いていた。

 朝練は二時間。暑い中、基本をやり、審査組を分けて、残りが三つに分かれて古参黒帯が得意技を指導。自分は寝技グループだったので、稲田卓也選手の「マウントから抵抗にあって十字」に続き、「足を外からかけてパスを防ぐ」「二重絡み」をお教えする。そのままスパーへ。二分半、10本。半分は技研、半分のみスパー。先日のクンタップVS大輝戦でジャブが重要だと再認識したので、やってみる。それから寝技スパーも二本。

 汗だくで終了、そのまま体育館で解散。上野君に駅まで車で送ってもらう。息子と黒磯に向かう。ここにはかの有名なカフェ「SHOZO CAFE」があるのだ。

 商店街はほぼシャッター通りと化しているが、その中でこのカフェだけが全国からお客を集めている。ゆったりした店内に、個々の卓の空間を周りから仕切るような工夫がなされている。自分たちは廊下の片隅、大きな扇風機のある卓。鏡もうまく使っていて、広々と感じる。

 息子と二人旅。良い思い出になった。

 

(8月某日)

 東大柔道部、オフ明けである。朝九時には間に合わず、十時に行ったらちょうど柏崎先生の講義が始まる。

・相手の体型、組み手別に何の技をかけるべきかノートせよ

という話には感銘を受けた。私など、まさにそれができていない。頭が極めてクリアな方だ。

 実技のすくい投げ、足をスイングして入る横巴、浮き技に、何とも言えない感動が胸に押し寄せてきた。恐るべき技の切れ。下世話な言い方だが、カネを払っても見たい講義ってあるもんだ。話は一時間ほど続いた。ここに参加していた部員は、ほんとうに幸せだ。

 

(8月某日)

 パラエストラ、昼柔術。私なんかが出入りする場ではないのだが、誘われたもので。しかし、黒・紫と白しかいない、という奇妙な組み合わせ。こてんぱんだったが、やはり学ぶものはある。

 夜、不破君の招待を受け、渋谷クアトロ。渋さ知らズ公演。二時間強、ぶっ続けで演奏。客はオールスタンディングで踊っている。ダンサーの一人が、肩胛骨を高速でゆらしたり、身体を意のままに操って、セクシー。これは、まさに日本人にしか作り出せない総合文化だ。私は、こんな思想や武道を作りたいものだ思う。ヨーロッパで最高度に評価されているのもよく分かる。不破君が舞台でビール飲み、タバコをふかしているのもかっこいい。しようがない奴だ。

 

(8月某日)

   スネークのプロ練。縄跳び、サンドバッグでアップをしていたら、大江先生がおいでおいでをしておられる。何かと思えば、「今日は選手が少ないから、ミットやりますか?」と。

 どひゃー。ありがたいことではあるが、自分は身体が堅くてミドルを蹴れないしなあ。何より、相手のペースで息上げできるだけのスタミナに自信がない・・でも大変ありがたいお話なので、四分二ラウンドお願いする。

 ううーむ。前蹴りから、先生がロープに飛んで戻ってくるところに右ストレートを合わせるのが難しい。よれよれで二ラウンド終わったら、腹痛になった。そのまま大江先生、望月選手とスパー、6ラウンド。終了後、腿上げ300、前後ステップのパンチ220、重りでパンチを6セット、首押し20を3セット、腹筋50。Tシャツ二枚はとうに濡れぞうきん状態、裸になっても濃い汗がしたたり落ちている。ジムは室温35度。体液が出るだけ出た感じ。その後望月選手のパンチをミット持ちさせていただいが、一発一発で汗が霧状に吹き飛んでくる。

生茶を飲んで、涼むしかないな。 

 

(8月某日)

   今夏でも一番暑い日。ビジネスマンクラス。道場は34度、風もあまり動かない。最初は15人ほど、途中から増えていって、最終的には25人ほど。蹴り中心の週。

・ アップ、ストレッチ
・ スリップ、ダック、スウェイ、基本
・ シャドー
・ スタビライゼーション、ケンケン
・ 腿上げ、踵上げ・膝のばし100
・ 投げ出すミドルの基本
・ 打ち込み20
・ 遠いミドル左右10
・ 近いミドル左右10
・ 背中で受けてつかむ、空かす
・ 捕まれて逃げる
・ 体重をかける前蹴り
・ ミット
ジャブ・ストレート・ミドル・ワンツーミドル・ストレートフックミドル
 ストレートフックミドル・前蹴り・右ストレート・膝・肘
・ 対人 グローブ 蹴りで防御
・ 右vs左
・ グローブスパー
・ スパー3本
・ ダウン

 終了後、東大柔道部監督の楠和久氏、主将河野太郎君に来ていただき、二階で講演会「柔道技の構造とコツ」を行う。10名以上の参加者があり、盛況だった。公演は二時間におよんだが、監督は息が切れた様子。ご苦労様。

 内容は、以下の通り。空道ではムエタイ式の首相撲と柔道の組みの二つの組み技がありえる。しかし柔道と空道の関係については、いまだ厳密には解明されておらず、研究の余地は相当にあると思われる。

 しかし柔道の技術には、実は大きな問題がある。柔道人口が20万人として、そのうち10%未満ほどしか運用の仕方を知らないのだ。柔道部に属しても、ほんの一割ほどの学校でしか技の使い方を教えないし、それを知らないといくら「背負い投げ」とか「大外刈り」とか本で読んだり習ったりしても、ぜんぜんかからないのだ。18万人ほどの愛好家は、いまだに技の「使い方」を知らず、技をかけることができずにいる。しかもこの使い方は、活字にはなっていない。

 「使い方」とは、「組み方」と「動かし方」。それをせずにいくら技をかけようとしてもまったくかからない。逆に言えば、全日本選手権などは、「組み方」と「動かし方」の闘いが九割くらいになっているので、みていてもほとんどの観客は何が行われているのか理解できていない。

 今回は、「組み方」として、

・道衣の切り方→あまり空道には使えそうにない
・クロスグリップからの帯取り→小川スペシャルの応用として使える。ここから、「隅返し」「浮き技」へ移行。寝技に持ち込む。
・両手で襟をつかみ、体重をかけ上下に揺さぶりながら回り込んで相手を座り込ませる(日下部スペシャル)→十分に使える
・釣り手を深く首もしくは背中まで取って、組み勝つ→パンチの防御にもなるので使える
・支えつり込み足として、相手の曲がった肘(右)の関節部に左手のひらを当て、自分の膝(左)を相手膝(右)の内側に入れて、半身をロックして右回転して投げる

「動かし方」として、

・引き手の方向に回る。右組みなら時計回り。これによって相手と「T」字形のポジションになり、しかも相手は崩れているので、ここからは技(背負い・内股など)に入れる。
・隅返しも帯を取ったら引き手の方向に回ると相手はころがる。
・横巴も、この方向に回りつつ、動く方向の先の足を相手の腰内側に当て、横転させてニーオンザベリーにつく

といったことを習った。

 懇親会はさくらにて。楠監督、河野主将にも参加していただく。河野君は9月2日に日本武道館にて東京学生大会個人戦で、81キロ一回戦、学生寝技最強の国士舘・加藤博剛と当たるという。お疲れ様。

 

 

(8月某日)

 朝八時に家を出て、東大柔道部。九時から十二時までの稽古。暑い、暑い。

 朝は体調が悪く、打ち込みをやっただけでだるくなってしまう。それでも乱取りを5分2本、寝技を一本。水分が抜けて、2リットルは補給した。

 終了後、二年生の渡辺君(大)の復帰を祝って同学年を伴いインド料理屋で昼食。うまかった。

 

(8月某日)

 スネーク。歌川選手は来週の試合に向け、とんでもない量のミット。うつろになるまでしごかれている。大道塾から末廣智明君が出稽古に来る。

 サンドバッグ、シャドー。35度だけにすでにTシャツ一枚がずぶ濡れ。

 スパーは、大江先生、望月・歌川・末廣各選手と。なんと12本である。

 末廣君は真面目なので、一回目から飛ばしてくる。ミドル・前蹴りと連発され、距離を支配される。しかし二回目は前蹴りを掴んだりしてみる。先日クンタップがジャブを有効に使っていたので、それを真似ているが、一気には詰められなくなり反撃できるようになった。それでも全員がスタミナ切れ。選手はミットでくたくたの後なのに、よくやるなあ。

 

(8月某日)

   ビジネスマンクラス。一週間、中国を旅行してきた。博士号を私の指導で取得した中国人弟子が三名、現地で成功していて、招待してくれた。マイレージでチケットはタダだったので、二万円しか使わずに家族三人で昼夜とクルクル系中華の宴会を楽しんだ。

 しかしそのせいでまったく体を動かすことが出来なかった。

 暑い中、当初は10名ほどだったがいつものように増えていき、20名強で稽古。組み技中心の週です。

 前回に東大柔道部監督から指導いただいた技にヒントを得たので、それを組み込んでみた。今後は首相撲の週と道衣の週とを隔月で回そうと思う。中でも真壁のやった「襟の煽り」は、首相撲対策で使える。新技なので、うまくいけばパテント取得希望@空道、だ。

・ストレッチ
・スリップ・ダック・スウェイ・基本
・シャドー/腕立て・腹筋・ケンケン
・受け身 後ろ/横
・打ち込み
・ミドル
・オガワ
・オガワからの煽り、首相撲からの煽り
・支えつり込み足三種
・スパー3本
・対人 パンチからの膝 立ち肩固めからの支えつり込み足
・グローブスパー
・スパー3本

 懇親会では、中国でもらってきた最高級マオタイを持参。隠し模様を見る眼鏡なるものが怪しい。味は濃すぎてあまり好評ではない模様。二号には眼鏡が受けた様子ではあったが。二号には、プライベートに花茶をおみやげ

 

(8月某日)

 最近、「柔道部長日記」というのをつけている。といっても稽古日誌ではなく、もっぱら部内の規律にかんして、私と異なる考えをどう処理するのかについてだ。考えることの多い部ではある。

 朝九時から稽古。柏崎先生もご来臨下さり、一同張り切っている。

 しかし自分は、乱取り中に足払いを受けた瞬間に「@/?!!」左足の中指と薬指の間に相手の足先がささったのだ。見ると、中指が逆に折れ曲がり、しかもあっちの方向を向いている。すぐに氷をもってきてもらい冷やす。柏崎先生は「はずれてずれちゃってますねー、汗がひかない内に整復した方がいいですよ」と指を引っ張ってくださるのだが、これが激痛もの。なんともならなくなり、タクシーを呼んでもらって西荻の名医・井澤先生@名倉治療院に向かう。

 先生は待ちかまえて下さり、嬉しそうに新兵器のカメラで患部をぱちぱち撮影。それから、折れてたら丸が出るという不思議な器具をパソコンにつなぎ、患部にジェルとともに当てる。見事に丸が浮かび上がった。

 そこで「とりあえず入れましょう」とひっぱられたのだが、これが痛いのなんの。それからレントゲンも撮ろうということで、近所の外科医院へ移動。

 レントゲンは見事な画像である。ヤクザの指先みたいに、中指の先の骨が欠損し、それが横にずれて位置しているではないか。凹凸のはめ込んであった奴がはずれて横並びになったというか。

 ここで台に横たわり、二人の先生がはずれた患部をひっぱり、くぼみにでっぱりをはめ込む作業開始。横には透視画面がライブで上映中。「よいしょっ!!!」という先生のかけ声に、「くわー!!い、痛いー」と絶叫する私。これを10回やってもまだ入らないのだ。冷や汗でびしょびしょになったので、私はシャツを脱ぐ。「今、勝負所だから。一気に行かなきゃ」と、委細構わず井澤先生はひっぱるが、患部が小さくて滑るのでなかなか牽引できない。私は腕をひっかいたりして痛みをごまかそうとするが、なんともならぬ。次第に意識も遠ざかってきた。

「ひっかかった!」と井澤先生。縁だけが乗りかかったらしい。しかし靱帯が切れているので、筋肉ですぐにはずれてしまう。ここで外科の先生と二人かがり、綱引きの要領でひっぱることに。「おわわわわわわーーーーー」

 そうこうして、すーっと痛みが遠のいていった。どうやらはまったらしい。すかさず副え木で支える。こうしないとすぐにはずれようとするだ。このまま包帯でぐるぐる巻きに。痛みは引いたので、歩いて飯を食いに行き、そのまま帰宅。

 

(8月某日)

   井澤先生の治療院へ。息子連れである。息子は「足が折れたらとーちゃんは武道を生きられなくなるんじゃないの?」と分かったような誤解をしている。足の指を脱臼する経験こそが武道を生きることなんだ、と説得。

 「脱臼して治療後にスタスタ歩いて帰った人は初めてですよ」と先生。脱臼した後にひっぱって入れるのが難しい難治性脱臼の症例として、学校の講義として使って良いか、と聞かれるので、もちろんお使い下さい、と答える。すかさず自作のアニメをみせていただく。