| (2月5日) 本日から加藤さんの指導がビジネスマン・クラスで再開。打撃系で日本最高峰の指導を受けるチャンスをお見逃しなく。 ところが小生はというと、『大道無門』の「支部紹介」取材で浦和同好会へ向かう(残念)。けれどもここは、まだ同好会というのに、高田選手が中量級決勝へ(準優勝)、飯島選手が関東中量級優勝、能登谷選手が北斗旗入賞と、まさに怒濤の勢いで新星を輩出している注目株の支部。いったいどんな稽古模様なのか気になり、取材ということで伊東さんと訪ねることにしたのだ。もちろん私はスーパーセーフ持参。一線の選手の組み手がどんなものなのか、身をもって味わおうという算段である。 場所は北浦和。京浜東北線に赤羽で乗り換え、七駅。渡辺師範代が愛車でお迎えに。ありがとうございます。「駒場」体育館の柔道場は底冷えがする。しかしクッションもはいった畳で、なかなか使い勝手はよい。5〜6人はジャージの参加者がいる。新入門者らしい。繁盛しているではないか! 以下、倉敷掲示板への私の投稿。 「渡辺慎二師範代、飯島選手、高田選手、能登谷選手、以下稽古生の皆さん、昨日は『大道無門』の取材でお世話になりました。支部(正確には同好会)の運営方針がなかなかに特徴的で、おおいに刺激的な記事になりそうです。 伊東さん、タイトルはやっぱり「笑顔の陰の野望」でしょう?この言葉、フェミニスト・能登谷選手のあの笑顔は、実は大道塾の女性塾生をみんなかっさらおうという野望の表れなんだと、ご本人が語る中で飛び出したフレーズですが、考えてみると支部の特徴をよく表しているように思います。 1.なにより、渡辺師範代が支部経営に貪欲であること。道場は塾生がおのれの心身を磨く場だというと聞こえがいいけれど、塾生はそうした目標を自分で実行できるようになるまではやはり「お客さん」であって、ケアが必要です。新入門者は他流派や他のスポーツと比較して、気に入らなければじきにやめていくでしょう。それは決して「ケツを割る」といったことではなく、消費者としての「選択」です。その点、全員でやる基本で細やかに指導が入り、最後に新入門生に自己紹介させるなどの工夫は入門生にやる気を起こさせる「消費者サービス」だと思いました。入門生を増やすことは支部を繁栄させ、ひいては塾全体をも繁栄させるものと思います。支部経営で身を立てるといった支部長の「野望」は繁栄の礎です。 2.飯島・高田・能登谷各選手がライバル心をもちながら切磋琢磨していること。週に一度のスパーで、前回のミスを修復する工夫を持ち寄ってリベンジを心がけるような稽古を互いに心がけている様子とお見受けしました。今回は高田選手の左ストレートにカウンターを合わせる工夫を他の二人がしてきたようで、高田選手は「合わせられた」としきりに悔しがっていました。次回は高田選手がそのカウンターを防ぐ工夫をしてくるでしょう。このまま互いの進歩が続けば、同好会のまま全国制覇する選手が出るかもしれません。これも「野望」ですね。 3.しかも次世代が続いていること。私は目慣らしと顔面スパーで二回り(十数本)、柔道と寝技の五本の対人稽古をさせていただきましたが、緑帯や茶帯の選手もなかなかの癖者揃いという印象でした。藤本君に決められた足首がまだ痛いぞ。後輩が先輩に追いつけ追い越せという気持ちでいるのも「野望」です。それは支部を関東圏一円で無視できぬ存在に押し上げることでしょう。 稽古後、みなさんに居酒屋で飲み会を開いていただきました。和気藹々とした雰囲気で、終電まで楽しませていただきました(自宅の阿佐ヶ谷までなんとか電車でたどり着きました)。まさに笑顔の陰に野望あり、の感を深くした取材でした。若手注目選手の好試合を広報で取り上げるように、とのご注文もいただきました。伊東さんと相談します。どうもありがとう。」 * * さてお目当てのスパーは、実に楽しかった。目慣らしは高田・飯島・能登谷各選手、茶帯、緑帯三人と次々に当たる。一巡したところで面をかぶってスパー。高田選手はミドルを蹴ってきたので、さばいて足を払った。案の定、直後に左ストレートできついお返しを一発くらう。これは必ず来ると分かっていたのでむしろ誘う気持ちだったのだが、左肩の返しがもの凄く小さくて、出だしがまったく見えなかった。奥の手からのストレートであれだけ見えないのは初めてだ。さすが対日本人無敗の真武館・久原選手から勝ちをもぎとったパンチである。 飯島選手は、豆タンクといった体型なので飛び込んでラッシュするか、もしくは北海道の(かつての軽量級チャンプ)蛸島さんのように足捌きの軽快な組み手かと予想していたらまったく違った。背の高い選手がやるように左手を触手のようにぶらぶらさせて、右をかぶせたり逆に軌道を小さく内側から打ち抜いてきたりする変型スタイル。その左も見せ技ではなく、強烈にアッパーを突き上げてきて、それに内側から軌道の小さな右ストレートをつないでくる。このつなぎが瞬時で、対応できなかった。 能登谷選手は開始とともににこやかに拳を合わせてくれる。しかしパンチに膝を合わせたり、組むと押してきたり、こちらの攻撃と異なる種類の攻め手でくるところがおもしろかった。むきになってパンチにはパンチ、蹴りには蹴りで返してくる若手とは引き出しが違う感じ。 総じて、一線の選手は反応が早い、というのが強い印象として残った。一発パンチを入れたとしても、引きが遅いと何倍かにして返されるだろう。茶帯・緑帯の諸君もなかなか強豪揃いだったが、黒帯は全員が反応の早さで頭抜けている。 |
| (2月某日)毎年恒例の大道塾・全国支部長会議。支部長さん方が遠路はるばるやってこられ、終日かけて議論する。今年は来秋の世界大会に向けて、今から決めておかねばならないことが山積みだったが、次々に可決されてよかった。ご苦労様でした。
この会議、皆さん一泊されるので、前日は高段者の昇段審査になる。私は組み手の相手として毎年参加させていただいており、自分の力が古豪である支部長にどのくらい通用するのか測る機会として楽しみにしている。中には五十代も後半の方もおられて、今年は千駄ヶ谷の某所で行われたが、土曜の午後から緊張した雰囲気だった。 私は四人の相手をさせていただく。相手を見てびっくり。幹部支部長で極真時代にも活躍されたK支部長(極真ルール)、現役北斗旗選手のTさん(極真ルールおよび寝技)そしてこちらも今回から参加してこられた現役選手のHさん(顔面ルール)である。 塾長が「やれ」とおっしゃるのだからやりますが、本当に大丈夫なのか、という感じ。潰されないかな。心配なので、着替えの最中から探りを入れておく。「Tさん、若手は年輩相手に怪我させない組み手も審査の対象になるそうですよ。激しそうに見えて実は痛くない組み手も評価が高いとか」等々。K先生も、私の顔を見るといや〜今更ガチンコやりたくないねー」と牽制してこられる。 まず、基本、移動とこなしてから、いざ私の組み手はK支部長の極真ルールから。いきなりローをがつーんといれてみる。「おい、やるのかよ」といった表情。K先生、私の頭を引きつけつつ膝をどーんと入れてくる。こうなったらどかどかの殴り合いだ。ここで支部長のハイが柔らかな軌道を描いて襲ってくる。年配でもあたりのきつさとハイの柔らかさはさすが古参ならではだ。危うくスウェイでよけてローで返すと、横から「ガードしろ」、の声。また強引に引き回すような膝を受ける。もちろんそれに合わせてパンチとローを返す。押し合いのうちに、時間。結構腕がしびれ、息が切れた。判定は先生の勝ち。 結構足にきて、ぜーぜーいいながら水を飲む。一分を思い切りダッシュするというのは、ペースを守って何人かの組み手をする側とは別の疲れが残る。しかしじきに呼ばれて次はTさんと極真。こちらは大型だけに右の蹴りがぶーんとうなりをあげて飛んでくる。さばいて入り込み、パンチと左ロー。押し合いへしあいしながらロー合戦。離れると膝とハイが。さらに入ってパンチ。そうこうするうちに時間。ぜはーぜはーいいながら、引き分け。 次はTさんと寝技。上なので足を捌いて横につく。腕がらみの体制からまたいで馬乗りに。そのまま縦四方の格好で車締め。ギロチン・チョークの要領でしかけるとTさん、タップ。私の方は腕がつってしまった。そのまま下になる。今度もガードポジションに。そのまま相手が三角を狙ってくるのに合わせて足を引き上げてそのまま腕をぬいて横についたところで時間。 部屋の脇にどくとめまいがする。まだ三人と四ラウンドだけではないか。水を飲むが立ちくらみがする。気持ち悪い。しかし次のHさんとは顔面。覚悟して面をつけようとした矢先、Hさん、相手の膝をもらってうずくまり、悶絶している。KO負けだ。支部長が現役をKOするのだからたまらんなあ。それでも私は苦しい。結局、立っているだけでライトスパーみたいになって引き分けた。 こんな調子だったのでかなり悩んだのだが、ま、気にしないことにしよう。というわけで小生、2/19には昇段審査を受けます。四三歳だから、五人組み手だ。後一週間、なんとか節制するつもりだが・・・。 |
| (2月某日) この一週間、(月)修士論文審査・面接、(火)博士入試論文審査・面接、(水)修士入試論文審査・面接、(金)卒論判定会ということで、朝から夕方まで大学につめている。私は今年は面接の司会なので部屋をはずせない。しかし昇段審査が目前ということで、月曜は夜にサンドバッグで息上げ、火曜は昼食時間に階段を一階から五回まで駆け上がり、腕立て40回というのを5セット、これを二度やった。ところが水曜に予定していた荻窪支部での調整が、面接後の会議が八時まで続いたためにできなくなってしまった。そこで月曜に突然O君という人から届いたメールを思い出した。こんな内容だ(匿名にするので掲示可能と考えるのだが。公開不可ならお知らせ下さい、O君)。 * * Subject: HPを拝見しました。メールをさせていただきます。 初めまして。HPページを拝見してメールを出させていただく次第です。 自分は東京大学文科三類一年の、Oと申します。 ご存知の様に今は試験中、課題の資料集めにネットの中を奔走していたところ、なぜか「近代化*マス・メディア」で先生のページが出てきました。インフォシークで、「道場訓」です。 先ほど初めましてと申し上げましたが先生のことは前から存じ上げておりました、というのも雑誌「TARZAN」7・28日号で先生が「東京大学教養学部助教授」と取り上げられておられるのを拝見して、「なんで東大の助教授が!?」と興奮し手当たり次第に「松原教官って知ってる?」に尋ねた結果先生のことを知ったわけなのでした。 自分は格闘技が好きで仕方ないので大道塾のことは以前より知っていましたが、このHPを読んで少しく知識が深まりました。「空手道ビジネスマン〜」は自分も読みました。確か去年の夏にモンゴルにいった帰り、関西空港からの車内で本を読もうと思って大阪の古本売り場でたまたま手に取ったんでした。いいですね、あのストーリー、あの登場人物。思わず通いたくなるほど(!)でした。 ところで今自分は大学内の極真空手同好会に所属して空手道に励んでいます。入学以来続けてきた少林寺拳法部からの転進なんですが、これがまたどうして、なかなか良い選択でもありました。仲間達との別れは寂しかったですがフルコンタクトの組手にはそれを補い余りある魅力が存在しています。と、これは釈迦に説法でした。 一度相手に向かい合うとそこにあるのは只純粋な自分の意識と完全にコントロールされた肉体のみ。頭ではなく体が判断する駆け引きや、息詰まる緊張感。まだまだ始めたばかりですがもう虜となっております。 指導してくださるのは第七回世界大会七位入賞の野地先生です。一言でいうと素敵な人です。 なんだか自分の話ばかりですが先生のHPから伝わってくる雰囲気が非常に素晴らしかったのでペンを取った(?)次第です。 自分は教育学部、おそらくは身体教育か教育行政に進学希望ですので駒場にいるのはあと一年ですが、いつか是非一度先生にお目に掛かる幸運を持てれば幸いと存じます 押忍! * * 実は私のこのサイトは、ここから東京大学の私のHPには飛べるが逆には飛べないように細工してあるので、大学関係者の目には通常は止まらないことになっている。学内には稽古相手もいないし最近はボクシング部にも顔を出していないので稽古をすることもなかった。ところがO君がこうしてメールをくれたのである。まさしく天の配剤か、とうれしくなり、水曜にさっそく緊急の返事を出した。内容は、木曜の午後、スパーの相手をして欲しい、というものである。送信してわずか十分後、O君から電話があった。OKとのこと。翌日は朝から会議だったが、午後一時に体が空いたので携帯で連絡をとりあってトレーニング体育館に集合した。O君はまだ審査を受けていないので下履きだけで道衣の上は着ておらず、Tシャツ姿である。こうして極真の一年生と大道塾の教官のマス・スパーが始まった。1分1ラウンド。計、10ラウンド弱。 O君、まだ体ができていないので極真ルールではパンチをもらうと下がってしまうが、左右からカカトを落としてくるのと、散打風の横蹴りがあって、これはなかなか捌きにくく、またサウスポーなのでローもいれにくい。松井館長の百人組み手のビデオを見て、連続組み手はやはり足払いからのキメで有効を取る作戦でいくべきと考えていたが、サウスポーだとそれも難しい。これは課題だ。 ところがこちらがスーパーセーフを付けると、向こうは殴られないので下がらずガンガン打ってくる。ときおり顔を掌底で寸止めではたくのだが、グローブでばかばか打つので、顔を何発かかすめてしまった。サイドにステップするのも今回の審査の格闘ルールで私がテーマとしているので、これとそこからダックしつつステップイン・1−2と同じくジャブからの右ボディアッパーも反復する。ここでも横蹴りは有効で、入りにくい。野地先生からのアドバイスもあるのかもしれないが、臆さずこうした変則蹴りをしかけてくるのが昔の極真とは違うような気がする。 終了後、二人で渋谷に。やはり極真ルールのあとは焼き肉だろう、と言うことで遅い昼食を焼き肉屋で取る。彼、食事中もよくしゃべり、HPの他のコラムについてまで感想を聞かせてくれた。こうした学生との交流は、ゼミ生とでもなければ滅多にない。楽しいひとときで、審査に向けて良い調整ができた。では、やるぞ! |
| (2月某日)昇段審査編 19日、審査当日。先週の支部長昇段審査で受けてもよかったのだが、日頃一緒に汗を流している諸君とガチガチに殴り合っておきたい。その方が昇段しても仲間からも認知されるのではないか。だが、その仲間に負けるかもしれない。誰も容赦してはくれないからなあ。 午後四時半からのいつものクラスなので、起きてから時間がある。昨日は軽く走った。ダッシュは寒くて筋肉の故障が怖いから、太股にきかせる姿勢でのジョギングである。緊張して眠れないかと思ったが、深夜まで仕事したらそのまま熟睡できた。今回、審査対策は絞り込んでいる。顔面も極真も、足払いもしくは投げからのキメで手堅く勝っておくことだ。5人組み手だが、おそらくスタミナは切れても最後の寝技では足を絡めて休めるだろう。これまでの昇段審査は顔面と極真の二つのルールだけだったが、今回は寝技が別になっている。そんな安心感がこれまでの審査とは違う。 午後三時まで仕事。ビデオを用意し、VAAMと審査中に飲む飲料、オーバードライブをバッグに入れる。いつもより半時間は早く、道場へ。今日は終了後池袋で宴会なので、タクシーで行くことにした。 一部の途中というのに、早くも来ている人がいる。そそくさと着替え、決めていた通り、右肩のインナーマッスルの筋トレ、太股・肩・内股のストレッチ。終わって昇段試験組はと見渡すと、他団体で黒帯だったというTさん、今回で再受験のN君の顔がある。両氏とも、現在一級。いささか固い顔つきだ。N君に頼んで、投げの打ち込みをする。大きな投げは原則としてはスタミナを失うだけだから使わないつもりだが、確実に投げられそうなら思い切っていくかもしれない。投げればもちろんキメに行くつもり。最近は背負いに凝っている。 そうこうするうちに人が集まり、塾長が入ってこられた。と、見ると、綺麗に散髪しておられる。いやそんなことはどうでも良い、道着を着ておられるではないか!そのうえ拳には赤いテーピングが!なな、なんと相手をするおつもりであろうか。先週の支部長会議で誰の相手ができなかった腹いせか。あの塾長が誰が相手であれ流す組み手で終わるはずがない。となると、八分の力で手堅く勝つという予定が狂ってしまう。どうせ最初に当たるのだろうから、一気に行く方向で予定を変えるしかない・・・と考えていると移動稽古も塾長が先頭でかけ声をかけ進めていかれた。私は塾長対策で頭が一杯である。「1.ローの次にくる足払いに注意。ローも足払いも脛受けせず、カウンターの右ストレートを狙う。2.後ろ蹴りにくるだろうから、あらかじめ左に回り続ける。3.前蹴りからパンチがくるから、体で蹴りを受けながら同時にパンチを打つ・・・」などと対策を練りながら、移動終了。 塾長は寮生とともに審査用紙を机に広げて組み合わせを考えておられる。後ろからそっと近寄って、「最初は先生とですかねー」、と探りを入れてみた。「なんだあ、やりたいのかぁ?上等だねえ」と笑顔の塾長の目は笑っていない。やばい、やぶ蛇だったか?次いで目慣らし。数人とやったが、あちこちで結構バチバチやってる。端で緑帯とやっていると、塾長とTさんが組み合ったままもつれあってぶつかってきた。周りなどないかのようなエキサイトぶりである。先行きが思い知らされる。私は途中で人数の足りない分、極真ルールの女性Iさんの相手をしたが、この方のパンチ、腹で受けるとマジに痛い。当然審査の相手はは本ページでもおなじみ(?)のO女史。これは見物だ。 「まず昇段審査からあ、松原さんとTさん、最初に二人がやって、そのあと分かれて松原さんはNさんと、それから黄帯二人と極真ルール、最後にTさんと寝技」。なんだ、上から順番に当たるということか。それでも塾長が回避できたのにはほっとした。あの拳の赤いテープは一体何だったのだろうか?ここでビデオを頼もうとすると、ありゃ、電池切れのサインが。あっちゃー、せっかく先週から充電しておいたのに、さっきテストでボタンを回したらそのまま放電されてしまったようだ。なんとなく嫌な気分。 面をかぶって、中央に。この間、いつものことだが、しーんとしている。キナ臭い感じ、いやフルコンだねえ。肩を回して緊張を解く。「始め!」。作戦通り、左右に軽く回る。そこから沈み込んで1−2で突っ込む。がつんとぶつかり、組み合う。Tさん、いつもの通り、まったく避ける気がないようだ。こちらが下がればそれだけつっこんでくるに違いない。肘に行くかどうか気にかけつつ空間を取ろうとすると、いきなり投げにきた。キメられないよう抱きついて下になり倒れる。この日Tさん、後数回投げにきた。しかしこれは審査の作戦としては間違いだと思う。なぜといって、北斗旗ですら単独の投げはポイントにならない。投げるのはスタミナを消耗するが、試みる以上はキメを取らねば意味がない。審査の顔面ルールはもっぱらパンチの攻防を見るのが趣旨で、蹴りもよほどきかさねば副次的な技でしかないことになるはず。となると投げはとにかく危険なのだ。むしろ現在のルールではつかみあってからのパンチも有効であるはずだ。結局、数回ぶつかり、私のパンチが何発か当たった。Tさんは最後に、後ろ回しからタックルにくる。これも審査としてはポイントにならない技。通常の空手の試合ならば大いに評価されるのだろうが。終了、引き分けかな、と思ったが、塾長の手は私に。どうやらパンチをとっていただいたようだ。Tさん、ルールに不案内でちょっと不運ではある。ご自分では悪くない出だしだと実感していたはずだから、ここでポイントを落とすと精神的にはがっくりくるだろう。逆に私は拾いものをした感じ。 N君とも同様の展開。彼は7人組み手の前に私の相手をさせられている。少々かわいそう。しかし真面目な奴だ、全力でつっこんでくる。スウェイして、直後に反撃。パンチが一発当たった分をとってもらったのか、これも勝ち。ここでもN君もしきりに投げに来る。逆に私は足払いのローを狙ったが、ジャブの押し込みが足りなかった。「ローにパンチ合わせろ」、と後ろからN君に声援した声の主は石○氏だな。牧君からのメールで足が短いと指摘された腹いせか。孤独でうれしくなる。 さっさと面をとって、帯を解く。たった二分だが、結構疲れた。腹が苦しいのでズボンのひもも解く。二勝にはほっとした。S君がさっと寄ってきて、肩をもんでくれる。ついで氷を首筋に。誰が買ってきてくれたのだろうか。「次は足払いからのキメ」、とぶつぶつ口の中でくりかえすと、二分が経過。服装を正して、中央に。極真ルールだ。 いきなりどかどかの殴り合いになった。Y君、鬼の形相でどつきに来る。うれしいじゃないか。疲れを最小に抑えるために、前の左手を相手の右手の内側に入れる。こうすると相手の右パンチはすべて背中に当たって殺せる。そのままパンチとローで応戦。離れたところで足払い!ところが狙いすぎて、一緒にコケてしまった。大失敗!相手のYさん、気づいて逆に道着をつかみながら足払いにくる。仕方ない、もう一度どかどかの殴り合いに。そちらに気持ちを振り向けて、再度の足払い。これがやっと決まって、キメ。後十秒あったが、相手に背中を殴らせて休む。相手も一分間、無酸素上体で暴れてへとへとになっている。これも勝ちを戴いた。しかし相当に疲れが溜まってきた。 次の方は緊張しているようだったのでこちらから前に出る。ところが相手の蹴りに合わせてパンチを出すと、同時に左足の前蹴りが。これが五月蠅い。なんどか捌いているうちに足払いにいく気力が失せてきた。なんとか引き分けにするために気合いをかけながらこまめに右ストレートを打つ。石○氏、今度は「こかしてキメろー」とか私を声援してくれている。でも疲れてできないのよ。同じ動作を反復する以外を試みることがスタミナを消耗しそうでできない。引き分け。 さらに二分の休み。後は引き分けで良いと思うと急に楽になった。寝技は上と下、各一分。まず上から。足を捌いて横につく。そのまま相手の足が上がって落ちるのに合わせてまたぎ、一気にマウントに。しかしここでパンチを寸止めにしようとしたところ、当たってしまった。一時中断、しかし再度パンチを打つ気にはなれず、終了。次は下だ。すぐ足を絡める。そのまま抱きついた。これで一分動かなければ良い。途中、足ははずされたが上体を立てた馬乗りの姿勢にはさせず、終了。これも総合で勝ちをいただいた。効果を取ったわけではないが、どうやらコントロールしたのがポイントとなったようだ。 「ふー」とため息をついで、塾長に礼。そのままどかっと腰を落としてN君の連続組み手を観戦。多くの人がスタミナを失って大の字になってしまうところを凌いだので、皆からは「まだまだいけますね」と言われる。しかし当方がそんな弱みを見せたら次の組み手で何されるか分かったものではない。そうした意味ではすれすれだった。ほっとしたような、うれしいような、気持ち。頭の中が白くなった。 整理体操をすると、塾長から「昇段を、認めます」との言葉を戴いた。浮かれる。全員で正座すると「道場訓を」と振り返りながら塾長が仰る。それではと、「押忍、我々は空手道の修行を通じ・・・」と私が主唱。そのまま「黙想!」。あれ、変だなとは思ったのだが・・・。「やめて!」と言うと、塾長がまた振り返り、「『黙想』は俺が言うんだ!」。ありゃ、しまった。失礼致しました。しかしこの失敗、最初にやらかさずに良かった。やってたら、塾長が相手だっかも。一敗かつスタミナ・ロス状態から審査が始まるというのは、実戦的かもしれんが酷ではあるよ。 外に出ると加藤清尚さんがおられる。昇段できました、と報告。でも、これでは段位が同じになってしまうではないか。「加藤さん、早く百段でも取って下さい」。塾生が社会生活の中で日頃精進する目標として、昇段審査は最適だ。これだけの孤独と祝福を享受できる機会は滅多にないぞ。 |
| (2月某日)北斗旗カラオケ道選手権編 昇級審査後、池袋カラオケハウス『パセラ』にて宴会。ここはビジネスマン・クラスのKさんが部長さんをしておられて、さぞ迷惑ではないかと推察されるが、しばしば使わせていただいている。ここで昇級審査の打ち上げと新年会を兼ねて、恒例の北斗旗カラオケ道選手権開催。 だが、今年は司会の天才・太田君が参加できず、ディフェンディング・チャンピオンの中村哲也さんも急遽参加取りやめになったために勝敗なしとなった。そもそもこの選手権は、かつて熱海でのビジネスマン宴会の折りに発足したものだ。二次会の店を小生が探していたところ、閑古鳥の鳴いていたあるスナックで、三千円飲み放題歌い放題でかまわないとの交渉が成立した。十人はいた我々の連れが、顔だけみれば四十代ということで、それで元がとれると踏んだのだろう。しかしそれは大間違いであった。なにしろその十人で、ビール百本にウイスキー2本、ブランデー一本に焼酎と日本酒まで空けたのだから。最後には店がひれ伏して助けてくれというので、一人四千円を支払ったといういわくがついている。その際、もっとも豪快に聞こし召されたのが塾長夫人であった。ビールだけで軽く十二本は空にされたのではないか。大瓶ですよ、それも。 その折り、最初は大人しくカラオケしていたのだが、太田君の司会は次第に歌の途中で打ち切りを命ずるようになり、他の見知らぬ方のグループまで勝手に「たぬきさんチーム」だとか称して歌合戦に引き込んでしまった。この経験が翌年の忘年会に引き継がれ、洗練されてカラオケ道選手権となったのである。 今回はいつものお約束で石○君は前奏だけで「帰れ」の判定の手を挙げられ、まったく歌わせてもらえなかった(「歌えない」のが彼の芸)。他にも完遂できない者が続出。そこで私は一つ覚えの「回し蹴りリンダリンダ」に工夫を加えることにした。三人に頼んで、ダンサーに仕立てたのである。ベンチプレス60キロのゴールドジム副支配人・MissO、エアロビ選手・ハイの華麗なM君、それに顔の怖いハイテク・デザイナー・Nさんである。要は「リンダリンダ」の部分で回し蹴りを出し続けるのだが、M君の華麗なハイ連打に引き続き出てきたNさんは何を思ったかズボンを脱ぎ、猿股で蹴りを連発したので、大変な盛り上がりとなった。 あまりの馬鹿騒ぎに、塾長夫妻はお喜びのご様子だったが、初めて参加された新宿支部の女性Iさん(お嬢様中学校の教諭であられる)は「ついていけない」とあきれていた。ところでこのIさん、小生は審査前の目慣らしでパンチを受けたのだが、重さがハンパではない。MissOとのドツキ合いは極真の三瓶・中村戦を彷彿とさせる壮絶なものとなった(唾を飲む音が聞こえたのは気のせいか?)。その方に「ついていけない」と言われてもねえ。私は「まあ、中学生の集団みたいなものですから」と答えておいたのだが。 さてこの飲酒してのリンダリンダ、通常私は最後にはヘタってしまうのだが、この日は審査後に「オーバードライブ」を6錠飲み、飲酒中にさらに4錠飲んだところ、余裕で完遂できた。本当にきくという認識を新たにした。「オーバードライブ」は成分からいってもただのマルチビタミンではないかという説があるが、それにしても「きく」と仰る方は多い。今回私は身をもって実感したのだ。 塾長は立ち上がって「みなさーん」と連呼しておられた。同じ年輩の塾生だと気楽になられるのだろうか。翌日にはご子息の審査を控えていたそうだが、ご機嫌のようではあった。小生としても、久しぶりに心から爽快な酒が飲めた。いや、うれしい。 |